波形編集の老舗ソフトであり、WindowsにおいてはデファクトスタンダードであるといっていいSOUND FORGEのエントリー版、SOUND FORGE Audio Studioがバージョンアップして、SOUND FORGE Audio Studio 13となりました。今回のバージョンアップでUIが向上するとともに、5.1ch出力も可能になり、従来通り32bit-float/384kHzに対応していることを考えれば、波形編集ソフトとしては十分すぎる機能を装備しています。
しかもSOUND FORGE Audio Studio 13にはiZotopeのマスタリングソフト、Ozone 8 Elements(サウンドハウス価格¥10,584)が付属して5,780円という、メチャメチャな価格設定となっています。例によってソースネクストからダウンロード版として発売となっていますが、実際どんなソフトなのか試してみたので、紹介してみましょう。
ブラック基調のUIに変わって誕生したSOUND FORGE Audio Studio 13
みなさんは、波形編集ソフトって使ってますか?「DAWがあれば、基本的な波形編集はできるので、使ってないよ」という人も少なくないと思います。確かに、DAWでも一通りのことはできるのですが、使っている方ならよくご存じの通り、DAWとは別に波形編集ソフトを利用することで、非常に便利に、そして効率よく編集作業を進めることができるのです。実際、私自身、波形編集ソフトというか、SOUND FORGEは絶対手放せないソフトであり、常に使っているソフトでもあるのです。
例え方が正しいかは微妙ですが、DAWをMS Officeのような統合ソフトと捉えれば、波形編集ソフトは秀丸のようなテキストエディタ。何でもできるマルチソフトではないけれど、キビキビと軽く・高速に動作する、ソフト。波形編集ソフトという通り、まさに波形を編集する上では、DAWより圧倒的に扱いやすいんです。
サンプル単位でのエディットができるのもSOUND FORGE Audio Studio 13の大きな特徴
たとえば波形をサンプル単位で拡大して見ることができ、必要に応じて、1サンプル単位で波形を描いてしまうことだって簡単にできてしまうし、1曲丸ごとノーマライズを掛けるといったことも瞬時にできるし、サンプリングレートを変更するとかビット解像度を変更するといったことも、非常に高精度に、そして高速に処理できるので、一度この快適さを知ってしまうと手放せなくなるんです。
その波形編集ソフトのデファクトスタンダードといっていいSOUND FORGEには
・SOUND FORGE Audio Studio
という2つのラインナップがあります。SOUND FORGE Proが上位版で、SOUND FORGE Audio Studioがエントリー版となっていますが、この度Proより先にAudio StudioがVer 12からVer 13へと進化しました(海外では、つい先週SOUND FORGE Pro 13が発表されたところですが、日本語版も数か月以内に発売されると思います)。
この2つには、もちろん機能的に色々な違いはあるのですが、Proにあって、Audio Studioにない大きな機能は2点。
・バッチ処理
のそれぞれです。そうProのほうは最終的なDDP出力ができたり、POW-rというディザリング機能を使って高品位に24bitや32bitのサウンドを16bitにする機能があるのに対し、Audio Studioでは、それらができません。また、何百という数のオーディオファイルを、一括で変換処理するといったことを行うバッチ処理機能がないので、膨大な数の処理を行う業務用としては使えないのです。逆にいうと、普通の波形編集という点ではSOUND FORGE Audio Studio 13で十分すぎる機能が備わっているのです。
現在SOUND FORGEはドイツMAGIXのソフトですが、以前は米SONY Creative Softwareが開発・販売を行っていました。その当時のAudio Studioは24bit/192kHzまでしかサポートされていませんでしたが、現在は32bit-Float/384kHzまで対応していますからね。オーディオフォーマットという面でも申し分のない形です。
数多くのオーディオのファイルフォーマットの読み込み、書き出しが可能
また読み込み・書き出しのファイル形式としてもWAV、MP3、AAC、WMAなどはもちろんのこと、MP4、MOV、QT、AVI、WMVなどのビデオファイル、さらにはDSFのDSDファイルフォーマットまで対応しているのですから、オーディオファイル変換ソフトとして考えても、この値段でいいのか……と思ってしまいますよね。
ノイズリダクション機能が充実しているのもSOUND FORGEの特徴であり、その機能・性能においてはSOUND FORGE Proのほうが優れてはいるのですが、このSOUND FORGE Audio Studio 13でも、レコードやカセットテープから取り込んだ音を対象にしたノイズリダクション機能が備わっています。具体的にはツールメニューから「オーディオ復元」とするか、そもそもレコードを取り込む時点において「レコードの録音と復元」というものを選ぶことで実行できるのですが、“サー”というヒスノイズや“プチプチ”いうクリップノイズ、クラックルノイズを取り除くことができるようになっています。
各種エフェクトを装備しているけれど、SOUND FORGE Audio Studio 13はやや少なめ
エフェクトに関して言うと、SOUND FORGE Audio Studio 13にはコーラス、ディレイ、ノイズゲート、ダイナミクス、EQ……とさまざまな機能が備わっていますが、VST2およびVST3に対応しているので、いくらでも自由に拡張可能。そのため、とくにSOUND FORGE搭載のエフェクト機能にこだわらなくてもいいと思います。
VST2/VST3のプラグインにも対応しているので、エフェクトは自由に拡張できる
ちなみに、このエフェクトの使い方が、波形編集ソフトとDAWでは考え方に大きな違いがあります。DAWの場合、通常、トラックに対して設定を行い、再生しながらエフェクト処理をするのに対し、波形編集ソフトでは、エフェクトを掛けたい波形を選択した上で、その部分に対して処理を行い、波形そのものを変換してしまうのです。もちろん、どんな音に変化するかは事前にプレビューすることは可能なのですが、一度処理してしまえば、その後エフェクト処理をする必要はないので、エフェクトにCPUパワーは必要なく、軽く動作させることができるわけです。ただし、後でパラメーターを変える……といったことはできないので、一長一短。なので、状況によってDAWと波形編集ソフトを使い分けるわけです。
iZotopeのマスタリングソフト、Ozone 8 Elementsがオマケについてくる
ところで、価格という面で、ちょっとトンでもないことになっているのが、SOUND FORGE Audio Studio 13のオマケソフトです。そう、これを買うともれなくiZotopeのマスタリングソフト、Ozone 8 Elementsが付属してくるのです。これはiZotopeの超人気ソフトであり、国内でも10,000~14,000円程度で販売されているもの。それが、5,780円のソフトに付属してくるのですから、さすがソースネクストという感じで、かなりメチャメチャですよね。
人工知能でオーディオを自動解析してマスタリングするAssistant機能
Ozone 8 Elementsは、人工知能を用いてマスタリングを行うAssistant機能も備わっている非常にユニークで優秀なソフト。SOUND FORGEのプラグインとして使えるはもちろんですが、CubaseやStudio One、Ability、FL Studioなど各種DAWのプラグインとして使用することも可能です。
さらにちょっと裏技的な利用法を紹介すると、このオマケとしてのOzone 8 Elementsは、ソースネクストからダウンロードするのではなく、シリアルナンバーだけを入手して、インストーラはiZotopeに登録後にダウンロードする形になっています。そしてSOUND FORGE Audio Studio 自体はWindowsソフトではありますが、Ozone 8 ElementsはWindowsでもMacでも使えるハイブリッド。つまりMacユーザーがOzone 8 Elementsを目的にこのSOUND FORGE Audio Studio 13を購入するということもできるわけです。もちろん、BootCampでWindowsソフトを使うこともできるので、SOUND FORGEも活用してみてくださいね。
【関連情報】
SOUND FORGE Audio Studio 13製品情報
【価格チェック&購入】
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