EDMやダンスミュージックを中心とした音楽制作ツールとして人気のソフトKORG Gadget。起動すればすぐに音楽制作ができ、音楽知識がない初心者でも楽しめる一方、プロユーザーにとっても魅力的なサウンドがいっぱいということで、世界的な大ヒットとなっているのです。最初はiOSアプリとしてスタートしたKORG Gadgetでしたが、その後Mac版をリリースし、Nintendo Switch版も登場させるなど、マルチプラットフォームに展開していました。
そのKORG Gadgetが本日2月28日、初のメジャーバージョンアップを果たし、第2世代のKORG Gadget 2になりました。機能強化をすると同時にガジェットの数も40個に拡充。そしてついに待望のWindowsにも対応し、Windows環境でもKORG Gadgetのサウンドを使えるようになりました。今回Windows用に登場したのはプラグイン版で、KORG Gadget 2本体であるスタンドアロン版はありません。KORG Gadget 2がどんな進化を果たしたのか、実際に使ってみたので紹介します。
第2世代となったKORG Gadget 2がリリース。Mac、iPhone/iPadに加えWindowsのプラグインとしても動くようになった
「KORG Gadgetを知らない」、「ちょっと見たことはあるけど、よく分からない」……という方ももちろんいると思うので、まずはこちらのビデオをご覧ください。
KORG Gadgetは、このような感じで簡単に楽しく音楽制作を可能にするソフトウェアです。そのKORG GadgetがKORG Gadget 2へと進化したわけですが、一言でKORG Gadget 2と言っても、実はいくつかのラインナップがあるのです。具体的には以下の5つです。
② KORG Gadget 2 for Mac
③ KORG Gadget 2 Plugins for Mac/PC
④ KORG Gadget LE for iOS
⑤ KORG Gadget LE for Mac
一般的なソフトの場合、Mac版とWindows(PC)版って同じ機能・性能であっても、iOS版は低機能だったり、音質的に劣る……ということが多いと思うのですが、KORG Gadgetがスゴイのは、UIの違いはあっても機能・性能は同等となっていること。
それは、今回の新バージョンKORG Gadget 2でも同じであり、KORG Gadget 2 for iOSとKORG Gadget 2 for Macは基本的に同機能であり、音質的な違いもありません。データの互換性もあり、お互いにデータのやりとりが可能となっています。ただし、製品構成においてはちょっと違いがあって、KORG Gadget 2 for Macは2月28日現在、計40個の音源が標準で付属しているのに対し、KORG Gadget for iOSのほうは標準では20個。残りの20個はオプション扱いで1つずつ増やしていく形となっています。結果的に40個そろえると、だいたい同じ程度の価格になるようになっているみたいですね。
iOS版のKORG Gadget 2、基本的に機能も音質もMac版と同様
ちなみに、KORG Gadget 2 for iOSは従来のKORG Gadget for iOSのユーザーなら無償でアップグレードできるようになっています(for Macは有償です)。また④と⑤のLEは無償版でもあるため機能制限はありますが、Gadgetがどんなものであるのかを体験するには十分な機能、性能を持っているので、まずはこれを使ってみるというのがよさそうですよ。
KORG Gadget 2になり、4つのガジェットが新たに追加された
さて、今回、KORG Gadget 2となったタイミングで
Pompei (6Voices Analogue Synthesizer)
Taipei (MIDI-Out Control Module)
Durban (Bass Effect Processor)
という4つのガジェット=シンセサイザーが追加されています。簡単に紹介すると、Memphisは見てもわかる通り、KORGのビンテージアナログシンセMS-20を完全な形で再現したもの。私も以前、MS-20のアナログシンセとしての復刻版MS-20 miniを購入し、今でもときどき引っ張り出して遊んでいますが、これがGadget 2に搭載されたというのは嬉しいところ。ここにはリング・モジュレートが可能な2基のオシレーター、独特の歪みを持つ自己発振可能なハイパス/ローパス・フィルター、外部オーディオ入力が可能なエクスターナル・シグナルプロセッサを装備したパッチセクションなどMS-20のすべてを再現してくれています。
PompeiもやはりKORGのビンテージシンセPolysixを完全に再現した音源のガジェットです。ポリフォニック化がなかなか難しかったアナログシンセの時代に、6音ポリを実現したPolysixは当時世界中で大ヒットとなった製品でした。そのガジェット版のPompeiにはSAW、PM、PWMの波形選択が可能な1VCO(サブ・オシレーター付き)、1VCF、1VCA、1EGというシンプルな構成のシンセサイザーになっているほか、コーラス、フェイズ、アンンサンブル・エフェクト、コード・メモリー、アルペジエーター、ユニゾンなどの演奏モードを含めてPolysixのすべてが完全に再現されています。
ご存知の方も多いと思いますが、上記MS-20とPolysixは、すでにiOS版のアプリ、iMS-20 for iPad、iPolysix for iPadとして登場していたため、これらのユーザーの場合、KORG Gadget 2 for iOSに無償で追加されるようになっています。
さらに、初のユーティリティ系として追加されたTaipei。外部MIDI機器を自由自在にコントロールすることができるガジェットです。つまり、これ自体が音源というわけではなく、外部接続したMIDI音源モジュールなどをコントロールするシステムとなっています。ここにはアサイン可能な8つのノブとXYパッド、テンポに同期可能なアルペジエーターとLFOを装備しており、外部MIDI機器用にさまざまなMIDIメッセージを送信することができるようになっています。
そして4つ目のDurbanはベースアンプ・シミュレーターをガジェットにしたもの。これまでRosarioというギターアンプ・シミュレータがありましたが、今回のKORG Gadget 2でベースアンプが追加されたわけです。このDurbanには8種類のベースアンプと、12種類のキャビネットのモデル、また2系統x26種類のエフェクト、25種類のプリセットを搭載しています。KORG Gadget 2にベースを接続して、リアルタイムに演奏するといった使い方も可能になるわけです。またRosarioやオーディオレコーダーであるZurichと同様に録音したオーディオファイルを読み込んでエフェクト・プロセッサとして使うことも可能になっています。
今回この4つが追加されたわけですが、今後さらに少しずつガジェットは追加されていくようで、まず比較的近いタイミングで2つのガジェットが追加されるようですね。
一方で、今回のKORG Gadget 2ではメイン画面のカラーを見直し、各トラックの状況を一目で確認できる新デザインに進化しています。以下の画面を見てお分かりいただけるでしょうか?ガジェットの色とそれを設定したトラックの色が一致しているんですよね。これだとだいぶ見やすくなったと思いませんか?
また画面左下にあるFunctionボタンを押すとシーンごとに設定できるボタンなどが画面にオーバレイされるような感じで表示されます。
Functionボタンを押すとこんな画面になり、各ボタンなどに割り当てられている機能が表示される
そして、ここでは各シーンごとに拍を変更したりということも可能になっています。さらに新機能として、スムースなテンポチェンジをしたり、フェードイン、フェードアウトを設定することも可能になりました。
シーンごとにテンポを設定したり、フェードイン、フェードアウトといった設定もできるようになっている
さらに、各トラックにインサート可能なエフェクトは、従来からあったCompressorやSidechain、EQ、Filterなど10種類に加え、新たにFeedback Reverb、Enhancer、Exciter、Saturatorの4つが追加されてより表現の幅が広がっています。
インサーションエフェクトの数も4つ追加され、計14種類となった
さて、今回のKORG Gadget 2の最大の目玉ともいえるのがWindowsへの対応です。これについても少し試してみました。
前述の通り、KORG Gadget 2そのものがWindowsに対応したというのではなく、KORG Gadget 2の各ガジェットがプラグインとしてDAWで使えるようになったというもの。これまでMac版を使ってきた方ならご存知の通り、KORG Gadget 2をインストールすると、プラグインとして認識されてVST、Audio Units、AAXに対応すると同時にNative InstrumentsのNKSにも対応していたため、KOMPLETE KONTROL SやMASCHINEなどでも直接使えるようになっていました。
ついにWindowsでも各プラグイン・インストゥルメントとしてKORG Gadgetのガジェットが使えるようになった
今回、VSTプラグインとしてWindowsでも使えるようになったのです(AAXやNKSはアップデート対応予定のようです)。それが先ほど挙げた③のKORG Gadget 2 Plugins for Mac/PCというもの。もちろん、②のKORG Gadget 2 for MacをインストールしてもMacにおいてはプラグインとして使うことができたわけですが、プラグインだけ欲しいという人であれば、KORG Gadget 2 for Mac/PCなら少し安く導入できるというわけですね。
なお、2月28日現在、Windowsで使えるのは、以下の18のガジェットとなっています。
Berlin
Brussels
Chiangmai
Chicago
Dublin
Helsinki
Kiev
Kingston
London
Marseille
Memphis
Miami
Phoenix
Pompei
Taipei
Tokyo
Wolfsburg
コルグの担当者によると、残りの22種類についてはアップデートで順次公開していくとのこと。試しにWindows版のCubase Pro 10、Sutdio One 4 Professional、Ability Pro 2.5、Ableton Live 10で試してみたところ、いずれも問題なく使うことができました。この18種類だけでも十分楽しめますが、ほかの音源についても楽しみにしたいところですね。
Ability Pro 2.5でもKORG Gadget 2のガジェットが問題なく使うことができた
ちなみに、2年前の「Mac版KORG Gadgetがついに発売。DAWとの連携や録音機能が超便利!」の記事でも紹介していましたが、KORG Gadgetをタッチバー搭載のMacBook Proで使うと、タッチバーにガジェットのアイコンが表示されたり、鍵盤が表示されるなど、非常に使いやすいんですよね。その点は、新しいKORG Gadget 2でももちろん継承されていました。
MacBook Proのファンクションキーであるタッチバーにガジェット選択画面などがアイコン表示される
一方、Bluetooth接続のMIDIキーボード兼コントローラのnanoKEY Studioも同じKORG製品としてKORG Gadget 2との相性は抜群です。とくにiPhoneやiPadと接続して使った場合、まさに一体化したシステムとして使えるので、お勧めです。
Bluetooth MIDIで接続可能なKORG nanoKEY Studioとの相性も抜群
以上、KORG Gadget 2について、ざっと紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?楽しく遊べるけど、深堀りすればいくらでもハマっていく面白さがあるKORG Gadget 2 シリーズ。3月12日に放送したDTMステーションPlus!でも特集したので、ぜひご覧になってみてください。
なお、KORG Gadget 2 for iOSが50%オフ、KORG Gadget 2 for Macが33%オフなど、3月31日まで最大で50%オフになるセールが行われているので、今のうちに入手しておくのがよさそうですよ!
【関連情報】
KORG Gadget 2製品情報
【価格チェック&購入】
◎App Store ⇒ KORG Gadget 2 for iOS
◎KORG Shop ⇒ KORG Gadget 2 for Mac
◎KORG Shop ⇒ KORG Gadget 2 Plugins for Mac/PC
◎Amazon ⇒ nanoKEY Studio
◎サウンドハウス ⇒ nanoKEY Studio
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