激安のミキサーなどでお馴染みのメーカー、behringer(ベリンガー)。最近はMini Moogを再現させたアナログシンセのModel Dやセミモジュラー・シンセのNEUTRONを発売するなど、シンセの世界でも大きな話題になっていますが、behringerはオーディオインターフェイスもいろいろな製品を出しているのをご存知ですか?
かなり多くのラインナップがあるのですが、behringerのU-PHORIAシリーズのエントリーモデルUM2だと直販価格が4,698円と激安。24bit/192kHzに対応した2IN/4OUTのUMC204HDでも12,744円と他社と比較にならないほどの値段。ここまで安いと怖くて買えない……、そんな思いの方も少なくないと思います。そこで、U-PHORIAシリーズの中から価格の安い4製品を借りて試してみました。実際、まともに使えるものなのかチェックしてみたので、レポートしていきましょう。
behringerの激安オーディオインターフェイス4機種を借りて試してみた
ご存知の方も多いと思いますが、昨年8月から、behringerの日本国内での流通体制が大きく変わり、現在はヒビノのグループ会社であるエレクトリが扱うようになっています。その点だけでも、かなり安心感があると思いますが、そのエレクトリが扱っている製品なのに、この価格設定になっているというのは、なかなか衝撃的ですよね。
今回は、そのエレクトリにお願いして、試しに……ということで、以下のUSBオーディオインターフェイス、4機種をお借りしました。
UMC22
UMC202HD
UMC204HD
ブラックボディーの1Uの1/3~1/2ラックサイズであり、パッと見が、Rolandの以前のオーディオインターフェイス、QUAD CAPTUREやDUO CAPTUREなどのCAPTUREシリーズとよく似ているんですよね。いずれもUSBバスパワーで動作するので、ACアダプタなどの外部電源は不要です。
上がBehringerのUMC202HD、下がRolandのQUAD CAPTURE。雰囲気がよく似ている
一番安いUM2のみ、入力ゲインや出力レベルを調整するノブがトップパネルについていることや、これだけがプラスティックボディー(ほかの3機種はアルミボディー)なので、同じU-PHORIAシリーズでもちょっと違うな、という印象です。
一番下位のモデルUM2は、デザイン的にも他の3つとは少し異なる
とはいえ、どれも似た大きさではあるので、何がどう違うのかスペックで並べて比較したのが以下の表です。
UM2 | UMC22 | UMC202HD | UMC204HD | |
最高サンプリングレート | 48kHz | 48kHz | 192kHz | 192kHz |
入出力数 | 2in/2out | 2in/2out | 2in/2out | 2in/4out |
マイクプリ | 1 | 1 | 2 | 2 |
ライン入力 | mono | mono | stereo | stereo |
インサート入力 | - | - | - | 2 |
TRS出力 | - | 2 | 2 | 2 |
RCA出力 | 2 | - | - | 4 |
MIDI入出力 | - | - | - | 1in/1out |
直販価格(税込) | 4,698円 | 5,670円 | 9,558円 | 12,744円 |
そう、UM2とUMC22は24bit/48kHzまで、UMC202HDとUMC204HDは24bit/192kHzまでとなっているので、グレード的にみると型番の最後にHDが付くか、付かないかで2つに分かれるわけですね。
4機種すべてに共通するのは、これらがUSBクラスコンプライアントなデバイスであるということ。つまり、Macでも、Windowsでも、ドライバなしに、接続すれば、すぐに使うことができるんです。ただし、DAWで使うことを考えるとWindowsの場合、ASIOが必須。さすがにWindows標準の機能ではASIOドライバに対応していません。
Macならドライバ不要でCoreAudioですぐに使える。写真はFL Studio 20を動かしたMacBook Proでの利用
そこでbehringerではUMC202HDおよびUMC204HD用にはWindows用の専用ドライバを用意しており、behringerのWebサイトからダウンロードできるようになっています。一方、UM2およびUMC22には専用のドライバは用意されていないものの、同社サイトからはASIO4ALLへのリンクが貼られており、これを使ってASIOを使えるようにしているんですね。
UMC202HDおよびUMC204HD用には専用のWindowsドライバが用意されている
せっかくなら専用のドライバを用意してもらいたかったような気もしますが、実際に使ってみるとまったく問題なく使えちゃいますね。
実際、これらをStudio OneやCubase、FL Studio、Abilityなどで試してみました。いずれもMac、Windowsともに、まったく問題なく使うことができますね。音質的にどうなんだろう……と心配していましたが、まず再生性能においては、どれも結構いい音で他社の2~3万円クラスのオーディオインターフェイスと比較しても引けを取りません。
ヘッドホンの出力レベルは、UMC202HDとUMC204HDはかなり大きめ。ただ、この2機種の場合、PC側の再生レベルを0dB=最大の状態で、ヘッドホンレベルを最大にすると音が割れてしまうのがちょっと気になったところ。使ったのがインピーダンスの低いSONYのMDR-CD900STだったからで、よりインピーダンスの大きいものだと問題にならないのかもしれませんが……。CD900STの場合だと、ヘッドホン出力のツマミの位置が3時(右真横)を超えると歪むので、それ以下に抑える必要があるようでした。メイン出力は最大でも問題ないですよ。
MDR-CD900STを接続した場合、ヘッドホン出力を最大にすると音が割れてしまった
一方、録音機能はというと、機種によって機能は違いますが、マイク接続、インストゥルメント接続、ライン接続とも問題はないですね。いずれの機種もマイク、ライン、インストゥルメント(ギター)の入力が可能になっており、どれを使うかによって挿す端子が違ったり、スイッチで選択する形になっています。上位2機種においてはPADスイッチも搭載しているので、大きな入力に対してはPADで抑えることも可能になっています。
INST/LINEの切り替えボタンや、入力音量を抑えるPADボタンも用意されている
またマイク入力においては、いずれも+48Vのファンタム電源供給が可能なのでコンデンサマイクの接続も可能です。
実際に音をチェックしていった結果、マイクプリについていうと、UM2のみ、ほかの3機種と比較してやや音質的に落ちるかな、という印象。もちろんノイズが気になるとか、明らかにある音域が欠けている……といったことはありませんよ。基本的な水準はクリアしており、ネット放送用に用いる、ゲーム実況に使う…といった用途ならまったく問題ないと思います。
各機種のリアパネルには+48Vのファンタム電源のON/OFFスイッチが用意されている
ただしボーカルを録音したり、楽器をレコーディングするならUMC22以上がお勧めです。製品紹介ページを見るとUMC22、UMC202HD、UMC204HDの3機種は「MIDAS設計のマイクプリアンプを搭載」と記載があります。MIDAS=マイダスとはイギリスの老舗オーディオコンソールメーカーのブランド。現在、そのMIDASはbehringerが買収したというか、behringerの親会社であるMUSIC TRIBEの傘下にあり、その技術がこれらオーディオインターフェイスにも反映されているんですね。
4機種ともダイレクトモニタリングが可能になっており、ギターやマイクなどの入力音を、PC側の出力音と合わせて聴くことができます。UM2、UMC22、UMC202HDはDIRECT MONITORスイッチで、そのON/OFFを設定することができます。
それに対しUMC204HDのみは、MIXというノブでダイレクトモニタリングとPC側からの音のバランスを調整できるようになっています。また、UMC204HDのみにSTEREO/MONOというスイッチが用意されています。これはダイレクトモニタリングの音をステレオで出すか、モノラルで出すかを選択するもの。たとえば、片方のチャンネルのみにギターを接続して演奏していた場合、下位3機種およびUMC204HDのSTEREOでは、片チャンネルからしか音が聴こえませんが、MONOにすると左右から同じ音量で聴こえるようになるんですね。ささいな機能ではあるけれど、ダイレクトモニタリングにおいては、これが重要なポイントにはなるんですよね。
UMC204HDのみはMIXツマミでダイレクトモニタリングとPC再生音のレベル調整ができ、STEREO/MONOスイッチもある
もちろん、ダイレクトモニタリングではなく、DAWでリバーブなどのエフェクトをかけた音をモニターする場合は、この限りではありませんが。
ところで、多くのオーディオインターフェイスは、CubaseやAbleton Live、Studio OneなどのDAWの機能制限版がオマケとして付いてきますが、このbehringerのU-PHORIAシリーズにはDAWは付属しません。そのため別途購入するか、以前にDTMステーションの記事でも紹介したStudio One 4 Prime、Cakewalk by BandLabなど、無料で入手可能なDAWを使うのも手。
Studio One 4 Primeでもバッチリ使うことができた
もっとも、多くの読者のみなさんの場合、なんらかのDAWをすでにお持ちだと思うので、それらを使い、サブのオーディオインターフェイスとして持っておくのもよさそうです。
ところで前述のとおり、U-PHORIAシリーズ4機種はいずれもUSBクラスコンプライアントなデバイスなので、iPadやiPhoneでも動作する可能性はありそうです。これについて、behringer側ではとくに使える、使えないのアナウンスは出していないようですが、実際に動くのかもチェックしてみました。
まずは先日「【速報】新型iPad Proチェックで判明。歓迎!USB Type-C対応、iOSがよりオープンなDTMの世界へ」という記事で紹介した最新のiPad Proで試してみたところ、これは4機種とも問題なく使うことができますね。バスパワーで動作させることができ、UMC204HDでは2IN/4OUTで動作することも確認できました。
USB Type-C端子のiPad Proなら、そのまま接続して使うことができた
一方、iPhone XSやLightningのiPadで試してみたところ、こちらは残念ながら動きませんでした。Lightning-USBカメラアダプタだと、バスパワーなので電力不足で動かないというのは予想通りでしたが、外部電力供給ができるLightning-USB3カメラアダプタでも試してみたのですが、うまく動いてくれません。11インチiPad Proでは接続すると、iOSのリセットがかかってしまったので、ハード的に接続すると危険もありそうなので、やめておいたほうがよさそうですね。
以上、簡単にbehringerの激安オーディオインターフェイス、U-PHORIAシリーズについてレポートしてみました。この価格でこれだけ使えるのなら、1つ持っていても損はないと思います。なおU-PHORIAシリーズにはさらに上位機のUMC404HD、UMC1820といった機種もあるので、機会があれば、チェックしてみたいと思っています。
【関連情報】
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