明けましておめでとうございます。本年もDTMステーションをどうぞよろしくお願いいたします。今年最初の記事は、国内のDAWのシェアについてです。昨年12月1日~31日の期間で実施したアンケート「普段使っているDAWは何?」に多くの方々にご協力をいただいた結果が出ました。
あくまでもWeb上のDTMステーション調べということなので「実態とは違いある」という声もあることは重々承知しておりますが、今年は合計2,541人もの投票をいただいたこと、国内にこの手のデータがほとんどないことを考えると、一つの参考にはなると思います。また過去6年間の調査結果の推移もまとめてみたので、これまでの流れも振り返りつつ、少し考察してみたいと思います。
まずは、昨年投票していただいた読者のみなさんにご協力のお礼を申し上げます。2017年に行った際には1,636票だったのが、2,541票に増えたので、50%以上伸びたことになります。これは昨年9月30日にDTMステーションがリニューアルしたタイミングでアンケートのシステムを変更したため、スマホでも簡単に投票できるようになったことが、投票数増加の大きな要因かな、とも思っています。
普段使ってるDAWは何?
- Cubase (25%, 635 Votes)
- Studio One (23%, 581 Votes)
- Logic (12%, 295 Votes)
- Ability/SSW (9%, 218 Votes)
- SONAR/Cakewalk (7%, 168 Votes)
- FL Studio (5%, 133 Votes)
- Live (5%, 130 Votes)
- Pro Tools (4%, 95 Votes)
- その他 (4%, 90 Votes)
- Digital Performer (4%, 90 Votes)
- Reaper (2%, 48 Votes)
- Reason (1%, 35 Votes)
- BITWIG (1%, 17 Votes)
- Music Maker (0%, 6 Votes)
投票人数: 2,541

ちなみに、この投票システムは従来と同様に同じIPアドレスからの投票を受け付けないようになっているため、同じ人が何度も投票できないのはもちろん、メーカーの社員がみんなで会社から投票する…といった不正なことも、基本的にはできないようになっています。そのため、ある程度は信用できる数字になっているのではいかと思います。
改めて今回の結果を見てみると、このようになっており。過去6年間Cubaseがトップシェアを守った形になりました。が、Studio Oneが22.9%と急伸したため、Cubaseに迫る勢いで、実際アンケートのスタートから数日後にはトップ逆転現象も起こったほとでした。その結果、CubaseとStudio Oneで国内市場の約半分を占めるという結果になっています。
ちなみにこのStudio Oneは2006年にCubaseの開発チームがスピンアウトする形で作られたDAWであり、ここに並ぶDAWの中では比較的新しいソフトですが、思想的にはCubaseと近いDAWともいえるわけですね。そして3位に入ったのがLogicです。LogicはMac専用ではありますが、価格が安く、GarageBandの上位版的な位置づけであることから人気も高く、安定的に10~15%程度のシェアをキープしています。
大きくシェアを伸ばして4位に入ってきたのが国産DAWであるインターネット社のAbility/Singer Song Writerでした。1か月の投票数を見ている中、途中で急に数字が伸びてきていたので、多少組織票があったのでは……という疑いはあるものの、Studio OneとAbilityで共通して言えるのは、SONARからの移行組をうまく捕まえて伸びた、という点でしょう。
ご存知の通り、SONARを開発してきたCakewalkはGibsonの経営破綻に伴い、2017年末に会社が解散。日本でSONARを扱ってきたTASCAMも販売を中止せざるをえない状況になりました。結果的には「SONARが名称変更して復活!旧ユーザーは無料でアップグレード!?Cakewalkを買収したBandLabのCEOに聞いてみた!」、「シンガポールのBandLab社によりCakewalk=SONARが奇跡の復活、全ユーザーへ完全無料公開!インストール方法と、いくつかの注意点」といった記事でも紹介した通り、フリーソフトとして生き残る形にはなりましたが、多くのユーザーが他のDAWへ移行していったのも事実です。
フリーウェアになったCakewalk=SONARはシェアダウン
その際にいち早く移行キャンペーンを実施したのがStudio OneとAbilityだったので、これらのシェアが伸びたのではないでしょうか?2018年のシェアが大きく変わったのは、このSONARが大きな要因であったのは間違いないと思います。
ここで、過去6年間の推移を見てみましょう。投票数が毎年上がってきているので、ここではシェア数で比較していますが、あまり見ることのない面白いデータではないでしょうか?アンケートの選択肢が多少変動していますが、ほとんどをカバーできていると思います。ただ2013年の実施時の項目にAbility/SSWおよびDigital Performerが入っていなかったので、2014年の結果を元に「その他」項目から割り当てるという推定処理をしているので、その点ご了承ください。
各年の投票結果のすべての数値は「アンケート結果」(https://www.dtmstation.com/pollsarchive)のページで公開していますが、上記推定処理をした結果の表を以下に載せておきます。
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
Cubase | 243 | 239 | 297 | 385 | 395 | 635 |
Studio One | 83 | 117 | 150 | 307 | 288 | 581 |
Logic | 101 | 136 | 167 | 187 | 220 | 295 |
Ability/SSW | 36 | 42 | 47 | 52 | 47 | 218 |
SONAR/Cakewalk | 151 | 130 | 175 | 200 | 193 | 168 |
FL Studio | 34 | 50 | 75 | 99 | 136 | 133 |
Live | 43 | 60 | 76 | 101 | 112 | 130 |
Pro Tools | 39 | 46 | 41 | 64 | 55 | 95 |
Digital Performer | 24 | 29 | 33 | 43 | 43 | 90 |
Reaper | 41 | 39 | 48 | |||
Reason | 26 | 35 | ||||
BITWIG | 16 | 19 | 22 | 17 | ||
Music Maker | 11 | 11 | 20 | 8 | 6 | |
その他 | 56 | 66 | 63 | 63 | 52 | 90 |
合計 | 810 | 926 | 1151 | 1581 | 1636 | 2541 |
ところで、国内にいる外国人の方々や海外にいる日本人の方々から、TwitterやFacebookで多く指摘されたのは、「日本はAbleton Liveのシェアが信じられないほど低い!」、「なんでFL Studioのシェアがこんなに低いんだ?」といったこと。確かに、海外の調査結果などを見ると、Ableton LiveやFL Studioはかなりシェアが高いようですから、日本のDTM環境はやや特殊なのかもしれませんね。ただ、最近になってAbletonの日本法人が設立されたり、FL StudioもMacに対応するなど、環境に変化が出てきているので、今年あたりは大きく変化してくる可能性もありそうです。
ほかのDAWについても少し見てみると、プロのレコーディングスタジオではデファクトスタンダードであるPro Toolsも、一般DAWユーザー全体でみると3.7%という数字に。またDAWというかMIDIシーケンサ時代からの老舗であるDigital Performerも3.5%という数字になっています。全体から見ると決して大きいシェアではありませんが、プロ用・業務用ツールとしては安定したユーザーがいるということなんだと思います。
もう一つ、結構多くの方から指摘されたのは「なんでKORG Gadgetが入っていないんだ!」というお叱りの言葉でした。以前は似た指摘をReasonに対して言われていたのですが、私の勝手なDAWの定義で今回Reasonは選択肢に入れつつ、Gadgetは外しています。
そのDAWの定義とは
2.マルチトラックであること
3.エフェクト/インストゥルメントのプラグインに対応していること
4.WindowsかMacで動作するソフトであること
の4つ。以前Reasonもプラグイン非対応だったのが、2017年から対応しているので、これは選択肢に入れていますが、Gadgetは対応していないため、ここに入れていません。
とはいえ、これは単なる定義の話であって、KORG Gadgetを否定しているわけではありません。同様にiOS用の強力なDAWもいろいろあるので、今後ますます音楽制作の仕方も多様化していくとは思います。
2019年のDAW調査については、また年末ごろを予定しております。その際には、またみなさんのご協力をお願いします。
コメント
藤本様
あけましておめでとうございます。興味深い記事ありがとうございます。
protoolsがこれほどシェアが少ないのは意外でした。
cubaseはDTMの講師が「中田ヤスタカさんの影響がでかい。若い人はほとんどそこから興味持ってくる」とおっしゃってました。
logicはapple純正で昔からのユーザーに人気。
なので、40代以上はcubaseユーザーは少ない、ききました。
実際どうなのか気になるところです。
年代別の調査もあると面白いかもしれませんね。
海外のFL,Live人気を裏付ける興味深いデータ…となるのかわかりませんが、ループ音源の販売をしているGhosthackさんがFacebookのグループ内で使用DAWのアンケートをとっていました(昨年7月末から現在までのデータ)
スクリーンショットも撮ったのですが何かと問題になりかねないので結果と数字だけ紹介してみます。
票数 DAW
89 FL Studio
52 Ableton
26 Logic Pro
12 Cubase
10 StudioOne
7 Protools
3 Garageband
23 Other(Bitwig等)
まだサンプル自体が少ないので一概には言えないのでしょうが、日本国内とまったく結果が違う中でLogic Proが国内外問わず支持率が高いんだな~などと興味深く読ませていただきました。
明けましておめでとうございます。今年もまた楽しい記事を、たくさん読ませていただきたく、心よりお願い申し上げます。
このアンケートは、正直、微妙ですね笑。自分も文系の割には、理数思考とか数字のハンドリングは出来るほうだと、思いますが。
まず藤本さんの人気とか知名度が上がっているせいで、投票総数が増えた、これは間違いないと思います。
ただ例のSONARの「半落ち」で数が少しだけ減っているのに対して、幾つかのソフトが、とても伸びています。
そのなかで組織票についても、考えなければいけないという。正直、どこまで本当か、分かりませんね。
今度各DAWメーカーの方とお会いになられるとき、シェア認識も聞いて頂きたいように思います笑。自社製品だけか、全体についてか。何か数字は持っているでしょう。DAW教室の方とか、楽器屋さん、出版社の方、アマゾン関係者さんなどでも♪
自分はキューベースで、キューベースがもっとシェアが高いようにも感じますが、S1さんも、やはり無料版があるのは、大きいのでしょうね。
キューベースもAIを無料にして、エレメンツをオーディオインターフェイスに付属するなどしたら、易々とさらにシェアを伸ばせる気はします。
毎年のバージョンアップで、自分はここ何回かお金を払っていますが、なかなか良いので、納得しています。キューベースなどの商売はここ。だから初心者には、無料配布が絶対良いのでは、などと、社員でもないのに笑、感じたりする記事でした。
とても楽しい記事、新年はじめから、本当にありがとうございました。
おおよそ国内の実情を反映してると思いました。
Abilityのシェアの高さは少し意外でしたが…。
SONARのシェアを他DAWが取り込んだという解説でしたが、僕は逆にCubaseからCakewalkに移行しました。フリーになったのがきっかけで触ってみたら、これが予想以上に使いやすいDAWで驚きました。
あけましておめでとうございます。
アンケートの内容は、ここで取り上げた記事の数が、そのまま反映されていると思われます。
自分は、Live Suite、Logic Pro X、Cubase Pro、Studio One Professional、Bitwig、Digital Performerを所有してます。
メインはLive SuiteとLogic Pro Xで、曲によって切り替えています。
LiveはPush 2とtouchAble Proでコントロール出来るのが、気に入ってます。
Cubase ProとStudio One Professionalは、コードトラックに興味があって使い続けていますが、
ある程度、形になったらLiveやLogicへ移行します。
BitwigとDigital Performerは、それぞれLiveとLogicで事足りているので、今は使っていません。
Pro Toolsは、サブスクリプション版に抵抗があり、永続ライセンス版も、今の自分には高嶺の花です。
また、Cubase ProはUSBキーの持ち運びの際、紛失の可能性があるので、外出先では使えません。
次回のアンケートは、新規/アップグレード価格、USBキーの必要/不必要、
Live以外のDAWユーザーに、Liveにおけるセッションビューは必要か?など、
深く掘り下げた質問を、いくつか用意してみるのもいいかと思います。
CubaseはYAMAHAだからまぁねぇと。
> 思想的にはCubaseと近い
ならCubase使った方が理解は早いと思うんですが、まあ乗り換え組かな。
違うものも試したい。
が、Cubaseと違いすぎるのも困る…みたいなw あとはまぁ営業のちかry
Protoolsのデータが低いのは当たり前かなと。
DTMerよりニッチな業界がメインだし、
仕事で忙しい人が時間をかけてここで投票する必要は…
Cubaseとか殆どアマチュアで、ある意味業界より人数多いというか。
日本は英語苦手なのでまあAbleton LiveやFL Studioは伸びないでしょうね。
流行で広がるかもしれませんが、そこをどうするか?が営業の思案のしどころかな。
EDM流行らない、ギターとAKBメインな国なのでw
まあでもiPhoneみたいに短期間?でがらっと変わる可能性もありますけどね。
Logic Pro XはMacでしか使えないのに3位って事は、Macユーザーの殆どはLogic Pro Xを使っているって事ですよね。
Windowsユーザーの方が圧倒的に多い訳ですし、Cubaseはオーディオインターフェイスを買うと無料版が同梱されてるから、それを使ってる人も多い筈なので単純に比較対象にならないと思うんですが。
Cubaseはドラムキット単体では簡単にステレオ・パラアウトも出来ない仕様なので、音が鳴れば良いって人と細かく設定できるヘビーユーザーの両極端に分かれるDAWだと思います。
個人的には楽典をちゃんと理解している人には使いにくいモノだと思ってます。
studio oneはもうコードトラックがあるんですね。だったら使ってみようかなぁ by cubaseつかい
StudioOneユーザーですが、このところ巷ではStudioOne4の評判があまりよろしくなかったのでこの結果は意外でした。
前バージョンからのアップグレード組からは”音の傾向が変わった(=悪くなった)”・”初めからコンプがかかったような音になった”・・・云々、どちらかといえば恨み言のようなネガティブな意見が散見されていました。
まあそういった感触は確かにありましたけども、アップグレード組の一人としてはそれをどう捉えるか?次第かなと。
個人的にはそもそも評価の高かった前バージョンまでのキャッチフレーズだった「音質の生々しさ(というよりトゲトゲしさ)」にはさほど魅力を感じていなかったので今回のまとまりのある音質変更はむしろありがたく、その他プラグイン読み込みスピードの格段の向上・細部操作性の簡略化・ソング間でのデータ交換・・・など各種ポジティヴな改善として感じられましたけども。
前バージョンにこれといった拘りのない新規ユーザーからすれば、その利点の恩恵に素直に与ることができる点で広く支持された結果なのかな?という気がしました。
明けましておめでとうございます
今年もこちらで音楽機材の勉強をしたいと思います
DAWで更に細やかなカスタマイズ方式が出たら良いと思うのですが 例えば軸になるDAWは無料で必要機能にお金を支払う形 バンドマンだったら打ち込み関係はほぼ不要ですし 打ち込み系の方でしたらレイテンシー関係ほぼ不要 必要な機能だけで作業するDAW環境はマシン不可や作業効率 初心者からプロフェッショナルまでニーズがあると思うのですが また1つのDAWをグループで購入し追加した機能はメンバーで共有できたらリスナーの作曲環境が面白い事になると思います 利用する人の要望に応えるDAWが出ればと願います
CubaseからNuendoに移行したので「その他」に投票しています。
「Cubase/Nuendo」と2つのDAWを纏めて頂くか、「Nuendo」の項目を増やして頂いた方が良いと思いますが・・・
ご検討頂ければと思います。
なんの意味があるアンケートなのかいまいちわからない。
ちなみに自分はcubaseだけど周りはみんなlogic。 余計アンケートの意味がわからないw そもそもdawメーカーはほぼ海外だしマーケットも世界。日本のシェアがなんの参考になるの?w下にあるアンケートはもっとひどい。モニタースピーカーはどのメーカーが好き?って、それ選択肢のモニター全部使った事ある人の答えしか参考ならんやろw
[…] ON』の記事を参考にさせていただきました。DTMをするなら必読のサイトです。≫Studio OneがCubaseを猛追、大きく変化した2018年の日本のDAWシェア | DTM Stationhttps://www.dtmstation.com/archives/23191.html […]
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[…] <参考にしたサイト>・Ask Audio:Top 12 Most Popular DAWs 2017・DTM Station:2018年の日本のDAWシェア調査・Sleepfreaks:最新のDAWソフトランキング2019 […]