74か国語対応の自動通訳機、POCKETALK Wは実戦で使えるのか?上海Music Chinaの取材用に試してみた

10月10日~13日の4日間、上海で楽器の展示会、Music Chinaが開催されました。ちょうど日本の楽器フェアの1週間前に行われる形だったわけですが、以前から気になっていたこのMusic Chinaに今回初めて行ってきました。取材に行くというよりは、どんな状況なのかを見学に行くという軽い旅行感覚。当然通訳なんているわけもないし、同行者も無し。事前に入場のためのプレス申し込みだけはしていたものの、どうなるか予想もつかないまま単身の、ほぼ飛び込みで行ってきたのです。

実際に行ってみたら、まずはその巨大さに度肝を抜かれました。面積的な規模からいえば、楽器フェアの軽く10倍以上。そもそも会場の面積が幕張メッセ全体の4倍ですから。ここに世界中の楽器メーカーが中国に集結すると同時に、中国の楽器メーカー、ディストリビューターが数多く出展していたのです。そんな異国の地でのDTMはどうなっているのかを見てくるのが、今回の目的。ただ、ここで大きな壁となるのがコミュニケーションです。言葉が通じないと、情報も集められないですからね。そこで、コミュニケーションの助けになれば、今話題の自動通訳機、POCKETALK Wを持って行ってみました。実際にPOCKETALKは役に立つのか?DTMそのものの話ではないですが、そんなMusic China取材の舞台裏について少し紹介してみたいと思います。


74か国語に対応する自動通訳機、POCKETALK Wが取材で使えるのか試してみた

Music Chinaそのものに関するレポートは私のAV Watchの連載、Digital Audio Laboratoryで掲載したところです。前編、後編と2回に分けての記事にし、その前編である「アジア最大の楽器展示会『Music China』。巨大ホールで見たユニークな展示」が先日掲載されたところなので、そちらもぜひご覧いただければ、と。そこにも掲載しましたが、Music Chinaの雰囲気がどんなものなのかを、なんとなく疑似体験できるよう、会場内を練り歩きながらiPhone XSのビデオで撮影してみたのでご覧ください。

なかなか活気ある様子を実感できるのではないでしょうか?ただ、ここで大きな問題となったのが爆音。そこかしこで、演奏が繰り広げられていて、会場内はものすごい音量になっていたのです。「音量を控えるってことを知らないのか!!」と思ってしまうほどで、それぞれが譲り合うのではなく、「隣より大きい音でアピールするぞ!」って勢いで音量がエスカレートしていくんですよね。先ほどのAV Watchの記事の中でも紹介しましたが、Rolandブース内で、隣のブースで爆音演奏が行われていた時に測った音量が110dB。尋常じゃないですよね。


とにかく広かった上海Music Chinaの会場

ここまで音が大きいと、日本語も中国語もあったもんじゃない、という感じでコミュニケーションも成り立ちそうにありません。会場内に入った瞬間に、POCKETALKは持ってきたけど、さすがにこのノイズの中じゃ、使えないだろうな……と諦めにも似た思いを持ったのでした。ところが、この悪環境の中でもPOCKETALKは結構活躍してくれたんです。もう少し具体的にPOCKETALKについて紹介してみましょう。


Music Chainaの会場内は、いたるところで爆音が鳴り響いていた

ご存知の方も多いと思いますが、POCKETALK Wは9月7日にソースネクストから発売されたばかりの自動通訳機。前モデルである初代POCKETALKから大きく機能、性能強化されて新発売になったもので、明石家さんまさんによるCMや広告を見かけた方も多いのではないでしょうか?


バッテリー内蔵で100gととってもコンパクトなPOCKETALK W

約100gと軽く、手のひらに収まるこのPOCKETALKのボタンを押しながら話しかけると、その言葉を認識するとともに、それが別の言語となって、この機械が喋ってくれるのです。しかも、対応言語は74か国語というのですから、スゴイですよね。やっぱり21世紀になったんだ、ドラえもんの世界が現実になったんだな……なんて実感するところです。


世界74か国語に対応するPOCKETALK W

そのボタンは左右2つあり、それぞれのボタンにあらかじめ言語を設定しておきます。たとえば左に中国語(簡体字)、右に日本語のようにするわけですね。この状態で右の日本語ボタンを押したのちに日本語で喋るとその日本語を認識するとともに、中国語へと翻訳してくれます。反対に左ボタンを押しながら中国語で喋りかければ、それが日本語へと変換されるというものです。


左右のボタンに言語を設定し、そのボタンを押して喋りかける

もっとも、このPOCKETALK自体が翻訳の頭脳を持っているというわけではないようです。実はこれは単なる通信端末であって、実際の翻訳の頭脳はクラウドにあるみたいですね。そのため、POCKETALKは通信回線と接続されていることが必須となっています。新製品であるPOCKETALK Wの場合、ソースネクストの通販サイトを見ると
グローバル通信なし  24,880円
グローバル通信2年付き 29,880円
の2ラインナップが存在しており、今回中国に持って行ったのは上記のグローバル通信2年付きというモデルでした。要するにSIMなしとSIMあり、ということですね。


2年間使い放題の内蔵SIMを使って利用してみた

SIMなしの機種であるグローバル通信なしのほうもnano-SIMのスロットはあるので手持ちのSIMを入れて使うことは可能(ただしソースネクスト指定のSIMカード以外での動作はサポート対象外)で、SIMありのほうは2年間制限なしで、世界中で通信し放題という仕様になっています。対応しているのは4G:FDD-LTEおよび3G:W-CDMAですね。さらにいずれの機種もWi-Fiでの接続も可能になっています。携帯電話会社のグローバルローミング機能を使うと、数日で5,000円なんて超えちゃいますが、2年間5,000円で使い放題ってスゴくないですか!?

では、実際、これが現場で役に立つのか、そもそも楽器の展示会、しかもDTM系といった、かなりマニアックな用語が入る会話の通訳が成り立つのでしょうか?結論から言うと、かなり使えます。正直なところ、こちらの日本語を正確に認識できる音声認識能力があるのか疑っていたのですが……、ごめんなさい、スゴイです。100%とまではいかないものの90%以上の認識能力を持っていました。


それなりの専門用語でもしっかりと通訳してくれる

たとえば「この会社はキーボード専門のメーカーですか?」、「このミキシングコンソールにはオーディオインターフェイス機能がありますか?」といった言葉をしっかり認識して、やりとりができちゃうんです。

でも、冒頭でも紹介した爆音の中で使えるのかというのが大きな課題なわけですが、これも難なく乗り越えてくれました。そう爆音の中であってお、POCKETALKのマイクに向かって大きい声で喋りかけると、それを確実に聞き取って通訳してくれるのです。絶対に無理だろうと思っていたのですが、この聞き取り能力のすごさにはビックリしました。

とはいえ、この爆音の中ですから問題もあります。そう、いくらPOCKETALKが中国語に通訳した言葉を喋ってくれても、周りの音が大きすぎて聞き取ることは不可能です。とはいえ、その言葉が液晶にも日本語、中国語でそれぞれ表示されるので、これを見せれば概ねやり取りはできてしまいます。


みなさん違和感なくPOCKETALK Wを介したやり取りをしてくれました

そんなやり取り、かなり違和感のあるものに思われるのでは……と気になっていたのですが、モバイル先進国の中国だけに、いたって普通に受け入れられたのは、ちょっとこちらが拍子抜けするくらい。どちらかというと私自身のほうが、機材に頼る恥ずかしさを感じていたかもしれません。


Wi-Fiに接続すると、もっと早いレスポンスでの通訳が可能になる

このPOCKETALKの能力を見て、電波さえあれば、世界中どこに行ってもなんとかなるという思いは持ちました。が、スムーズな取材をするという面では、まだ課題もありそうです。一番のネックとなったのは喋ってから翻訳されるまで30秒程度の時間を要すること。クラウド側で処理するために仕方ないのだと思いますが、ここがどうしてももどかしく感じるところです。高速なWi-Fi接続であれば5~10秒程度で処理できるようなので、もっとずっとスマートな会話になりそうですが、これは通信環境次第、というところかもしれませんね。


かなり大昔に受けた中国語検定の合否通知

また個人的にいうと、今回の取材ではPOCKETALKに頼り切ることにはならなかったのですが、その理由の1つは私自身が中国語をちょっぴりだけ理解でき、話すことができたこと。もう20年近く前ですが、中国語を習っていたことがあり、その当時、中国語検定4級とかをとったこともあるんですよね。取材会話をしっかりするには程遠いレベルだし、もう15年以上まったく勉強していなかったので、単語もすっかり忘れてしまったけれど、片言ながらコミュニケーションができたのは意義があったようです。

中国でWi-Fi接続する場合はGreat Firewallを超えるための設定を行っておく必要がある

一方、少し会話をしたところで、ほぼ必ずといっていいほど、「英語は喋れますか?」といって英語を話しだすか、英語ができる担当者を連れてきて、英語のコミュニケーションに切り替わってしまうので、POCKETALKの出番が減ったこのと大きな要因にもなりました。30秒待ってやり取りするよりも、英語でやり取りしたほうが断然速いですからね。

とはいえ、小さなブースで社長一人で出展しているベンチャー企業の場合、まったく英語が伝わらないケースもあり、そんなときは、少しゆっくりペースだけど、POCKETALKでやりとりし、モノを見せてもらって写真を撮ったりしていました。いざというときは、これでなんとかなる、という安心感が得られたのはすごく大きかったですね。


個人的に街中ではPOCKETALKなしでの会話ができたが、これがあれば世界中どこへでも行けそう

ぜひ、またPOCKETALKを持って海外取材に挑んでみようと思っているところです。

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