ドラムセットに11本のマイクをセッティングした状態なので、身一つで行けばすぐに自分の好きなDAWにユーザー自らレコーディングすることができるスタジオが東京・神田にあります。PC装備で、オーディオインターフェイスもセッティング済みだから、面倒な準備もなしに、簡単な調整だけですぐにプロ環境での収録が可能になっているんです。
しかもこのスタジオ、ボーカルレコーディング用のブースも備えていて、憧れのNEUMANN(ノイマン)のU87Aiを標準装備。これを使って、本気のボーカルレコーディングもできちゃうんです。ここは宮地楽器の2階のスタジオを大きく改修してリニューアルオープンしたDrumスタ・RECスタ。以前にもDrumスタ、RECスタを記事で紹介したこともありましたが、装備が大きく変更され、大幅グレードアップしているので、改めて紹介してみたいと思います。
13本のマイクが予めセッティングされたスタジオで即レコーディングができる
打ち込みや電子ドラムではなく、生ドラムを録るとなったら、なかなか大変な作業であることは想像がつきますよね。キック、スネア、タム、ハイハット……とそれぞれに専用のマイクを立てる必要があるし、シンバル類をキレイに収録するにはトップマイクを、さらに全体の響きを録るためにアンビエンスマイクを装備して……ということを考えると、かなり大がかりになります。
Drumスタではスネア、タムなど1つずつに1つまたは複数のマイクが仕込まれている
それぞれにスタンドを立ててマイクを設置し、オーディオインターフェイス経由でパラで拾い、それぞれのレベル、音がいい感じになるように調整するとなったら、もうそれだけで半日くらいかかってしまいそうですよね。
天井にはシンバルなどを録るためのトップマイクが
それを予めセッティング済みで用意してくれているというのが、宮地楽器のDrumスタなんです。以前はLEWITTのドラムマイクセット8本で行っていたものが、先日大きくリニューアルしたことで最大16本chでのレコーディングまで対応可能と大幅にグレードアップしてるんです。
BD IN | Audiotechnica/ATM25 or Audix D6 |
BD OUT | Solomon mics/LoFReQ(sub kick) |
SN TOP | Audix/i5 or SM57 |
SN BOT | Audix/i5 |
HH | LCT340 |
RIDE | LCT340 |
TOMS | DTP340TT or Audix D2 & D4 |
TOP | Earthworks/QTC30 Pair or C414XLS |
※マイクの種類や組み合わせは定期的に見直すため、上記は2017年12月現在のものです
それぞれのマイクの接続先にはオーディオインターフェイスとしてUniversal Audioのapollo 8pが2台待ち構えており、これらのマイクで捉えた音をPCへとしっかり11chパラで届けてくれます。
オーディオインターフェイスはapollo 8pが2台。その上にはAntelopeのクロックジェネレータも
プロのレコーディングスタジオでも、これだけの装備、これだけのセッティングを用意するのは、結構な時間と費用がかかりますが、これを1時間4,000円。3時間パックなら10,000円で借りて使えるというのは、かなりスゴイですよね。
宮地楽器の澤田玲さん
このスタジオを企画し、運営しているのが、レコーディングエンジニアでもある宮地楽器の澤田玲さん。
「以前はリハスタと兼用で使っていたのですが、それだとどうしても部屋鳴りがリハスタ的になってしまうため、今回大きく改修し、壁材、床も弊社防音事業部で取り扱っているVery-Q、TOPAK Q-on、WICANDERSという3つのブランドの製品をふんだんに使用し調音施工しました。楽器の録音で重要な要素である部屋の音響バランスがよくなったことで、いつも通りにドラムを叩くだけでもハッキリとしたアタック感やスッキリとしたリリースを感じることができるようになり、マイクで拾われるサウンドも大きく向上しました」と話していました。
ドラムを4つのパネルが囲んでいる
写真を見ても分かるとおり、ドラムの周りを4つので囲んでいますが、片面が吸音、反対面が反射する素材になっているので、設置の仕方で、ライブな音、デッドな音を調整することも可能です。
パネルの向きをひっくり返すとともに、少し部屋が広がる形で設置してもらった
試しにパネルをひっくり返すとともに、設置場所を変更した後に叩いてみたら、ずいぶんと雰囲気が変わりました。
見た感じも明るくなるとともに、響きのある音に変化した
また、かなりマニアックなのがマイクからapollo 8pへ接続をはじめとする各種ケーブル。ここは高級オーディオアクセサリーで人気のAcoustic Revive社の全面協力の元、ほぼすべての電源&配線まわりをAcoustic Revive製品で統一しているそうで、総額ウン百万円相当なのだとか……。それでどれだけ音が違うのかは知りませんが、かなりのこだわりであるのは間違いなさそうです。
配線には超高級なケーブルが利用されている
「キックペダルやハイハットスタンドもTAMA/SPEED COBRAの最上位モデルを常設したので、よほど自分のペダルでないと嫌だ、という人以外は、これでOKだと思います。さらに近日中に、ドラムセット自体も入れ替えを計画中なんです。すでにYAMAHAのPHXというフラグモデルを発注済みで、これが受注生産のため、届くのにはもう数ヶ月かかる見込みとなっています」と澤田さん。まだまだ進化しているということのようですね。
キックの中にマイクが突っ込まれていると同時に、前にはデンデン太鼓みたいなマイクが…
ところで、このマイクの中ですごく気になったのがキックの前に取り付けあれているデンデン太鼓みたいな形のマイクです。
「これはちょっと珍しいマイクで、Solomon Micsという会社のLoFReQというキック専用のマイクです。構造的には、YAMAHAのモニタースピーカーであるNS-10Mのドライバ部分を取り出して、逆に配線する形にしたリバーススピーカーと呼ばれるタイプのもの。これによって迫力あるキックを録音することができるんです」と澤田さん。これだけでも、どんな音なのか試してみたくなりますよね。
スタジオ内にあるiMacを使って、自分の好きなDAWを使ってレコーディング
もう一つすごいのが、オーディオインターフェイスにapollo 8を使っている点で、ここに装備されているUAD-2のプラグインもすべて使うことができるんです。これはDTMユーザーにとっても、かなり贅沢な環境です。また装備されているPCはCore i7-3.1GHzのiMac(Yosemite 10.10)で、ここに
StudioOne 3.5
Cubase Pro 9.5
Pro Tools 12
Ableton Live 9
Logic Pro X
の各DAWが入っているので、これを使って自由にレコーディングし、持ち込んだUSBメモリなどに入れて持ち帰ることが可能です。
「ただし、ここは自炊=セルフレコーディングのスタジオであるため、エンジニアがつくわけではありません。だからこそ1時間4,000円という価格を実現しているんです。事前に用途などを連絡いただければ、ある程度のセッティングまでは行っておきますが、その点はご注意ください。どうしても必要とあれば、僕がオペレーションなどを行うことは可能ですが、その場合オプション料金がかかります。また希望があれば、ミックスまで行いますのでご気軽にご相談ください」(澤田さん)
ボーカルブースもあるので、ボーカル録りも可能。いまキャンペーンでU87Aiが標準装備
ところで、このスタジオは冒頭でも触れたとおり、ドラム録りだけでなく、ボーカルブースもあってボーカル録りにも使うことが可能となっています。しかも、驚くのは現在リニューアルオープンキャンペーン中ということで、本来1時間1,000円かかるNEUMANNのU87Aiが無料で利用できるとのこと。これもかなりの魅力ですよね。
「このスタジオではドラムレコーディング、ボーカルレコーディングを可能にしていますが、スタジオ内にBEHRINGERのCueBOXを4台用意しているので、同時に4人までレコーディングすることも可能です。Drumスタとはいえ、ドラムを移動させて広く使うことも可能で、先日はカホン、アコギ、コーラス、ストリングスを録ったりもしたんですよ」と澤田さんは話していましたが、工夫次第で、いろいろな利用法がありそうです。
CueBOXが4つ用意されているので、工夫次第で4人でのレコーディングも可能
実名をここで書くことはできませんが、澤田さんの話によれば、著名アーティストがここでレコーディングすることもしばしばなのだとか。一般利用者も含め半分がドラム録り、半分ボーカル録りとのこと。この場合、アーティストとプロデューサーが2人で来て、プロデューサーがDAW操作を行って……というケースが多いそうですよ。なかには、業務用のレコーディングスタジオでの音に満足できず、わざわざ首都圏外の地方からここを訪れて、自分でDAWを操作してレコーディングする人もいるのだとか。
「今回、スタジオを大きく改修し、機材もより充実させたことで、価格を1時間3,500円だったのを1時間4,000円に上げさせていただきました。ただ、2018年3月までは『DTMステーションの記事を見た!』と言っていただければ500円引きの従来価格で対応したいと思いますので、ぜひご利用ください」と澤田さん。
こんなことができるスタジオはほかにないため、結構予約で埋まってしまっているようですが、ぜひ利用してみてはいかがですか?
【関連情報】
Drumスタ・情報ページ
RECスタ・情報ページ
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