100トラック以上余裕で使えるiPad/iPhone用国産MTR、Rectools Unlimited

iPhoneやiPad用の音楽アプリをいろいろ開発している株式会社ユードー。以前、社長であり、作曲家、ゲームクリエーターでもある南雲玲生さんのインタビューも行いましたが、そのユードーからRectools UnlimitedというMTRアプリがリリースされました。

iPhoneでもiPadでも使えるアプリで、3,450円とiPhoneアプリとしては高めな設定ですが、iPhone 3GSでも100トラック以上、理論的には500トラック以上が扱えるというパワフルなもの。それまであったRectools08proの8トラックを遥かに越えるスペックとなっているわけですが、実際にどんなものなのか、試してみました。
非常に強力なMTRアプリ、Rectools Unlimited

Rectools Unlimitedは従来からあったRectools02Rectools08proと同じユーザーインターフェイスのMTRアプリで、直感的に使いやすい構成になっています。基本的には新たなプロジェクトを作成し、そこにトラックを1つ作って録音していき、録音が終わったら、もうひとつトラックを作って、また新たな音を入れていく……という具合。マニュアルなど見なくても、たぶんすぐに使えると思います。各トラックへのレコーディングのフォーマットは16bit/44.1kHzのリニアPCM(非圧縮)のWAV。最終的にミックスした結果も同じ16bit/44.1kHzのWAVとなっています。

録音しては新トラックを生成して音を重ねていく

メトロノームも搭載されており、テンポや拍子を設定すれば、それを聴きながら録音することができるし、もちろん再生時に鳴らすことも可能です。最初、録音時にメトロノームが鳴らないので、おや?と思ったら、ヘッドフォンをしないと鳴らないんですね。ま、当たり前ではありますが、そうした点も含めてよく考えて作られたアプリといえそうです。
録音時、再生時に使えるメトロノーム機能

もちろんPCとの連携も簡単。iTunesとデータのやりとりができるほか、WiFi経由でWAVファイルをお互いにやりとりすることができるので、非常に汎用性があって便利です。試しにドラムループをPCからRectoolsにコピー(16bit/44.1kHzのWAVデータ)。これをRectools上で並べれば簡単にドラムパートの完成です。

WiFiでPCと接続し、WAVファイルのやり取りが可能

そこにトラックを追加してギターを録音、さらにトラックを追加してベース、キーボードと重ねていけば、結構分厚いサウンドを作り上げることが可能です。試しに10トラックまで作ってみましたが、動作にまったく不安定さはありませんでした。

またなかなかしっかりしていると思ったのが、モニタリング機能です。入力された音をしっかりとリアルタイムにモニタリングできるようになっているのは、このアプリのすばらしいところ。PCのDAWなら当たり前ですが、これができないソフトがiPhone/iPadアプリには多いですからね。

南雲さんのブログによれば、このアプリ、2年ほど前に作りかけて中断していたとのこと。当時、iPad対応させようとしていたものの、入力マイクやデバイスが揃わず、止まっていたのだとか。また、開発で一番大変だったのは、やはりモニタリング機能だったそうです。ハードウェアのMTR機材なら、アナログ回路的にバイパスしてダイレクトモニタリングできるけれど、iPhoneにはそうした機能がないので、処理を高速化して、一度処理したものをオーディオで出しているとのこと。確かに若干のレイテンシーがあるようですが、十分使える範囲内だと思います。
ミキサーでバランスをとることができる

マルチトラックとなると、重要になるのが各トラック間での音量バランスです。Rectools Unlimitedにはこのバランス用にミキサーが搭載されており、これを使って自由に調整していくことが可能です。もちろんトラックが増えていくと、最終段のマスターのレベルが上がっていくので、どのくらいに絞るかは重要なところです。

さらに、各トラックには3バンドのパラメトリックEQも搭載されています。デフォルトではオフの設定ですが、3バンド個別にオンにしていくことで、なかなか効き具合のいいEQとして使うことができます。3バンドともEQをオンにして何トラック同時再生できるか、というストレステストはしませんでしたが、結構いきそうですよ。

各トラックには3バンドのパラメトリックEQを装備

そしてもうひとつ個人的に気になっていたのは、iPadでの利用時にCoreAudioが使えるか、ということです。そうCamera Connection Kit経由でUSBオーディオインターフェイスに接続して利用できるかです。これが可能だと、さらに音質向上や接続機器の多様化が図れますからね。実は、これまでのRectoolsシリーズではCoreAudioにしっかり対応しておらず、USBオーディオに接続するとうまく動かないといった問題がありました。そこで、これがどうなのかをすぐに試してみたのです。

結果は成功。USBハブを通してRolandのUA-1Gと接続したところ録音、再生ともにバッチリでした。この構成でもかなり安定して動いてくれるところは、頼もしい限りです。

【関連サイト】
ユードーの開発スタッフのブログ

Commentsこの記事についたコメント

5件のコメント
  • DTM大好き

    小学生時代に初めて出会ったDTMソフトは、アスキーツクールシリーズ(現在エンターブレイン)音楽ツクール95+でした。小学生の時は、外部MIDI音源が買えなかったので、音楽ツクール95+に付いているソフトウェアMIDI音源を使って教科書の曲を打ち込んでいたことが有りました。今は、外部MIDI音源の、ヤマハMU2000を使うようになりました。さすがにXG音源は良い音します!!

    2011年9月6日 10:03 PM
  • 藤本健

    音楽ツクール、懐かしいですね…。
    しかし、いまMU2000を使っているって、きっとヤマハさんも喜びますよ。最近外部音源を使う人、かなり減ってしまいましたからね。

    2011年9月7日 8:22 AM
  • GumiTube

    さて書き込みを去ろうかなと思ったら、たまたまクリックしたこのページにアスキー「音楽ツクール」の文字が!
    懐かしい!で思わず懲りずに書き込み。だいぶ前に音楽ツクール中古で出てたのをハードオフで買いました。そのときは既にSonic Syndicate(=後のSynapse) “Orion v2.202″のユーザーでしたので、音楽ツクール、クセのある固いエディット方法だな~、などと言いながら使ったことを思い出します。そのときにそういう風に作ろうなどとと思わずにたまたま作れちゃった一曲目が面白く(←こういうこと別の人もあると思う)忘れられなくて、コードとか思い出しながらReason5で最近ほぼ同じ音で再現、もう時代が錯綜しておる(笑)。
    外部音源にこだわる方は減ったかと思えばまだ結構いる気配。DTMやっている人とはまた違った趣向のニーズかと思います。DTM派からの目線では見えないところでひっそりとやってるみたい。あくまで「俺らのは外部音源の音楽」みたいな感じで。こういう音楽は「GM音楽」とか言うんでしょうかね。
    しかし理論上500トラック可能って・・・もうPCで音楽作るのやめようかな。無理だもんな。iPhoneアプリの値段断然安いし。iPhone/iPad用VSTi充実してきたら私も音楽作るのではPC見なくなるかも。

    2011年10月8日 7:08 AM
  • 藤本健

    いっぱい書き込みありがとうございます(^^)
    音楽ツクール、私自身はあんまり使ってませんでしたが、いまでもSC-55mkIIやSC-88を大切に使っている方は多いですよ。私の手元にもGS音源、XG音源はいつでもすぐ使えるようにセッティングしていますし。ただ、最近マルチポートに対応しているMIDIインターフェイスが減っているんですよね。そこが大きなネックかな、と。昨日だったかな、MOTUがマルチポートの新MIDIインターフェイスを新たに発表していましたが、いまやっているのはMOTUが唯一かもしれません。
    iPhone/iPadアプリはどんどん出てきていて、すごい勢いですよ。ただ、PCでのものとはやはり違うものなので、今後もすみわけというか、使い分けがあるのではないかと思っています。全部がiPhoneにいってしまうことはないだろうな、と。まあ、iPhoneだけで作った音楽という新ジャンルの作品は増えていくと思いますけどね。

    2011年10月8日 9:42 AM
  • GumiTube

    そうですね、プロさんたちの音楽制作の現場はPC手放せない時代は今後も変わらずにしばらく続くだろうと思います。
    ただiPadが初めて発売されて少し経った時に想像したことがあるんですけど、A4版サイズを縦に眺めてそのまま本体と画面の幅が70cm位になったら、DTMのオペレーション環境としては相当便利だろうな、と。ミキサーはスクロールなしでもあちこち操作できるだろうし、曲のプレイ画面も長い一曲を最初から最後まで眺めることができるし、鍵盤アプリケーション起動させて演奏による打ち込みも楽、ミニ鍵盤モードでは全88鍵表示可能、ギター・アプリケーションや初音ミクのPVで登場した「あの楽器」と呼ばれるアプリケーション立ち上げてショルダーベルトで首から下げれば演奏できる・・・。実現したら時代はやっぱり変わっちゃうだろうな、と。

    2011年10月8日 1:12 PM

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