10月5日からスタートしたアジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展のCEATEC JAPAN 2010。その初日に会場を回ってきました。世の中的にはやはり3D全盛時代という感じで、大手メーカーは3D一色。ただ私個人的にはメガネをかけてまでして3Dを見たいという思いはなく、正直なところあまり興味を持てませんでした。
かといって、オーディオメーカーや楽器メーカーが何か目立ったものを出していたかというと、それもない。その点では、あまり収穫がなかったCEATECともいえるのですが、個人的にすごいと感激だったのはボーカロイドの活躍でした。
最初に、目を疑ったのは大きなホール2・3とホール4・5をつなぐエリアに並んでいた看板。目の前には巡音ルカ、その向こうにLily、さらにmiki、氷山キヨテル、歌愛ユキとあるではないですか。これは何だ!?と。各看板のところにスピーカーがあり、それぞれのキャラクタの声でしゃべっているのですが、実はこれヤマハが行っている「サウンドスタンプラリー」というものになっていたのです。
iPhone3GSまたはiPhone4に「INFOSOUND」という無料アプリを入れて、各キャラクターのところに行くとサウンドスタンプが得られ、CEATEC会場内にいろいろあるサウンドスタンプを5つ以上GETすると毎日先着100名にVOCALOIDキャラクターシールがもらえるという趣向です。まあ、ここで新たなVOCALOIDが発表になったとか、新サービスがスタートしたという話ではないものの、ちょっと楽しいイベントになっていました。
今回一番の収穫だったのは、名古屋工業大学が出展していた「MMDAgent」なるシステムです。ここでは技術的な詳細は割愛しますが、Juliusという音声認識エンジン、HTSおよびOpen JTalkという音声合成システムを組み合わせることで、3Dアニメーションで動く初音ミクとリアルタイムにおしゃべりができてしまうという、トンでもないシステムです。
めいちゃん、初音ミクとおしゃべりができる
おしゃべりができるのは初音ミクと名古屋工業大学オリジナルのキャラクタである「めいちゃん」の二人。マイクで向かってしゃべりかけると、結構普通に会話が成り立ってしまうのです。どんな感じかはぜひ、名古屋工業大学でアップしている以下の動画をご覧になってください。
そしてもうひとつボーカロイドが使われてたのは、国の研究機関である産業技術総合研究所(産総研)のロボット、「未夢(ミーム)」です。サイバネティックヒューマンHRP-4Cというロボットであり、昨年も見たという人もいるかもしれません。しかし、今回その未夢がさらに人間っぽく大きく成長していたのです。
このデモでは、未夢が初音ミクやメグッポイド、VY1の声で歌うというものなのですが、写真を見ても分かるとおり、この未夢、顔が妙にリアルなんです。そう、口や目、頬など顔の表情がかなりリアルに表現できるロボットになっていて、まるで人間が歌っているかのように動くのです。今回はVocaWatcherという技術を使って、実際に歌った人の表情を元にして、未夢に再現させているとのことです。
一方、ボーカルのほうもしかり。産総研が発表している動画での声を聴いていただくと分かるとおり、声は確かにボーカロイドのものなのですが、ちょっと尋常ではない調教がなされているんです。ご存知の方も多いとは思いますが、これは産総研が開発したVocaListener(通称ぼかりす)という技術で実現しているもの。簡単にいうと、実際の人の歌声を元に、音量の変化やピッチの変化を抽出した上で、それをベタ打ちのボーカロイドの歌声に反映させることで、より人間っぽい歌声にするという技術です。
このVocaWatcherとVocaListenerを組み合わせて未夢が歌っていたため、すごい人だかりで人気を集めていたのでした。
まさに近未来に触れられる、ボーカロイドによるデモ、興味のある方はぜひ急いでCEATEC会場へ。