イギリスのボーカルエディットソフト、Revoice Proを使ってみた

ボーカルエディットソフトというと、みなさんは何を思い浮かべますか?antaresのAuto-Tuneや、CelemonyのMelodyne、またSONARからの撤退で少し影が薄くなったRolandのV-VOCALなどがありますが、もうひとつイギリスのSynchro Arts社が出すRevoice Proというソフトがあるのをご存じでしょうか?

Synchro Artsは別々のオーディオデータの抑揚のタイミングをピッタリ合わせるVocALignというソフトで一躍有名になったソフトメーカー。そして今回試してみたRevoice ProはそのVocALignの上位版として2012年にリリースされたソフトです。ボーカルのピッチやタイミングを修正できるのはもちろんのこと、異なる2つのボーカルトラックのタイミングを合わせることや、1つのボーカルトラックからハーモニートラックを派生させる強力なダブラー機能を備えているなど、Revoice Proならではの機能もいろいろ備えているのが特徴です。ちょうど、いまVer 3.3へのアップデート・キャンペーンを実施中とのことだったので、改めてこのRevoice Proとはどんなソフトなのか紹介してみたいと思います。

英Synchro Arts社のボーカルエディットソフト、Revoice Pro 3.3を使ってみた



まず、このRevoice Proとは、何をするための、どんなソフトなのか、以下の紹介ビデオをご覧ください。英語のビデオですが、音と画面だけ見てても、何をしてるのか、だいたいのニュアンスは分かると思います。

https://youtu.be/jJ3Z5BMyopY

では、実際に使いながら、Revoice Proについてもう少し見ていきましょう。このRevoce ProはWindowsおよびMacでスタンドアロンで起動するソフトです。とはいえ、当然のことながらDAWと連携して使うことを前提としたソフトとなっており、各DAWとの橋渡しの役目のVSTおよびAU、AAXプラグインが存在しており、これを介して、さまざまなDAWと連携可能になっているんですね。

数多くのDAWに公式対応

具体的にはCubase/Nuendo、Studio One、Pro Tools、Ableton Live、Bitwig Studio、Logic Pro、FL STUDIO、SONAR、Digital Performer、Reaper……と一通りのDAWが対応しているようで、Synchro Artsサイトには、各DAWでの設定方法や基本的な使い方がビデオでも紹介されているので、安心です。

事前にDAW側とテンポ、サンプリングレート、同期フレームレートを合わせておく

ここではWindows版のCubaseを使いながら、Revoice Proでどんなことができるのかを見てみましょう。事前準備として、DAW側とRevoice Pro側のテンポとサンプリングレートを合わせるとともに、SMPTEの同期フレームを合わせておく必要があります。まあ、難しいことが分からなくても、おまじないとして設定しておきましょう


DAWからクリップ=リージョンをドラッグ&ドロップでRevoice Proへ持っていくだけ

ここでCubaseでボーカルレコーディングしたクリップをRevoice Pro側へドラッグ&ドロップで持っていきます。これでもう簡単にRevoice Proへデータが渡せちゃうんですね。


Revoice Proへ持って行ったオーディオに対し、「ワープリージョン」を作成すると…

さらに受け渡した波形上で右クリックするとメニューが出てくるので、いろいろある中から「Make Warp Region」を選択すると、波形が解析され、ピッチなどの情報が抽出されるので、これを拡大してみてみると……、そう各社のボーカルエディタなどとよく似た画面が出てくるんですね。


ボーカルがピアノロールのような音程として解析され、自由にエディット可能になる

実際に再生しながら、ちょっとピッチがおかしいところがあれば、それを上下して修正することもできるし、タイミングがおかしければ左右に動かして調整することもできます。また、ピッチの動き自体がよくなければ、ペンツールで自分で線を書いてしまうこともできます。


音量変化についても同様にグラフィカルに表示され、エディットできる

またピッチだけでなく、音量カーブを表示させ、各音符ごとの音量の動きを調整することも可能で、それに伴い元の波形の大きさも変わってくるんですよね。

同じフレーズを歌ったけれど、かなりタイミングズレている2つのトラック
さらに面白いのは、先ほどのビデオにもあったように2つのトラックのタイミングをピッタリ合わせるというワザで、これはRevoice Proの元となったVocAlignが得意としたものです。

先ほどと同じように、2つのトラックのクリップをそのままRevoice Proへ持っていく

たとえば、トラック1にボーカルをレコーディングし、トラック2に別の人が同じフレーズを歌って入れたとしましょう。上手なボーカリスト2人が、お互いの歌をモニターしながらレコーディングしていれば、キレイにマッチするでしょうが、そうでないと、どうしてもズレが目立ってしまいます。

「B」キーを押すと「New Process Setting」のダイアログが開く

とくに別々の場所でレコーディングした素材をデータのやりとりによって1つのプロジェクトにまとめたような場合、どうしても粗が目立ってしまいます。そんなとき、Revoice Proを使えば、ピッタリに合わせてくれるのです。しかも、あまりにも機械的にピッタリ合わせすぎるのではなく、いい具合に合わせてくれるのもRevoice Proの便利なところです。


「APT」を選択した上でガイドとダブの設定を確認して実行 

先ほどと同じように、CubaseからRevoice Proへドラッグ&ドロップで2トラックともに持っていきます。この状態ではCubaseのトラックにあったままのタイミングとなっていますが、ここで「New Process Setting」というメニューを選ぶと、ダイアログが登場してきます。この中の一番上のSelect Processをクリックしてみると、APT=Audio Performance Transfer、Doubler、Volume、Warp、Analyserという5つがあるのですが、ここではAPTを選択します。


これでトラック2のオーディオをトラック1のタイミングに合わせたものがトラック3に生成される

そしてその下のInputsのところにはGuide=ガイドとなるタイミングのトラック、Dub=タイミングを調整する側のトラックの設定があるので、どちらをガイドにするかを設定します。さらにその下のOutputのところには調整した結果がそこに作られるようになります。準備ができたら「New Process」をクリックすると、これで完了、調整された結果がAudio 3のトラックに書き出されるのです。


ズレていたトラックをミュートして再生すると、完璧に一致した気持ちいいタイミングになる 

ズレていたトラックをミュートし、新たに作られたトラックと合わせて再生してみると、ピッタリ合ってすごく上手なハーモニーになっているんです。ホントにいい感じに仕上げてくれるんですよね。あとは、またドラッグ&ドロップでCubase側に持って帰って、差し替えればいいわけです。

さらに、もう一つのDoublerという機能についても紹介してみましょう。これは名前の通りのダブラー。つまりあるボーカルトラックに厚みを出すために、普通は同じパートを複数回録音して重ねていくのですが、それと同じようなことを自動にできるというもの。


今度はDoubler機能を使ってみる。ここでは「Stereo Vocal Loose Timing」のプリセットを利用

使い方は、元のトラックを選んだ上で、先ほどのNew Process Settingのダイアログを表示させ、Doublerを選択して実行するだけ。たったこれだけで、すごくいい感じでダブリングしてくれるんです。


これによっていい感じのダブリングトラックがステレオで生成される 

この際のダブラー効果を出す設定として、いろいろなプリセットが用意されているのも嬉しいところ。モノラルのボーカルから、同様にモノラルを作ることもできるし、さらに2人が加わるような感じでステレオで作成するといったことも可能。その際、タイミングをそれなりにズラしてより複数の人で歌っているように演出したり、ディレイを付けたり、マイルドな感じに仕上げたりと、いろいろ選べるので、その違いを試してみるのも楽しいところですね。


必要に応じて、かなり細かなセッティングまでできるのもRevoice Proの優秀なところ

ここではボーカルをエディットすることを前提にRevoice Proの基本的な機能について見てきましたが、楽器を対象に利用することもできるし、さらに細かなパラメータを表示させて、綿密に調整していくといったことも可能なので、実際に触ってみると、かなりいろいろな処理ができて面白いですよ。

ちなみに、海外サイトのPRO TOOLS EXPERTで昨年ピッチ修正ソフトに関する読者アンケート調査が行われていました。これはRevoice Pro、Auto-Tune、Melodyneのそれぞれでピッチ修正した結果、どれがいいかを投票するというものですが、Revoice Proが1位となっていました。もちろん、レコーディングした素材や操作によっても結果に違いは出てきそうですが、一つの参考にはなりそうですよね。


PRO TOOLS EXPERTで昨年行われたアンケート調査結果

このRevoice Proは、冒頭でも紹介したとおり、最新のVer 3.3がリリースされたことに合わせて、通常54,000円のものが37,800円とセールされているので入手するチャンスでもあります。また、いきなり買うのは怖い……という方は、14日間、全機能をフリーで使うことができる体験版も入手可能なので、試してみてはいかがでしょうか?

ただし、この体験版を含め、Revoice Proを使うにはiLokが必要になるので、これだけは別途入手しておいてくださいね!
【製品情報】
Revoice Pro 3製品情報
VocAlign Pro 4製品情報
VocAlign Project 3製品情報

【ダウンロード】
Revoice Pro 3体験版ダウンロード(14日間機能制限なし)

【価格チェック】
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