難関MIDI検定2級、99点のトップ合格者は声優の小岩井ことりさんだった!

DTMに関連する検定試験として、さまざまな人がチャレンジしているMIDI検定。1級~4級までがあり、級によって出題されるレベルや内容も大きく異なってきます。その中で多くの人がチャレンジする2級1次と3級の今年度の申し込みが、まもなくスタートするところですが、先日ちょっと面白い話を聞いたんです。前回のMIDI検定2級において一次試験を95点、二次試験を99点と、トップで合格したのが、声優の小岩井ことりさんだったというのです。

正確には二次試験を100点で通過した人が1名いるので2位だったとのことですが、「声優さんがMIDI検定を?」、「若い女性でMIDI検定にチャレンジする人がいるの?」、「しかもそんな好成績って、どんな勉強をしているんだ?」といろいろ疑問が浮かんできます。MIDI検定を実施する一般社団法人音楽電子事業協会(AMEI)を通じて、小岩井さんにインタビューを申し込んだところ、快く受けてくれてので、いろいろとお話しを伺ってみました。


昨年、MIDI検定2級をトップの成績で合格した声優の小岩井ことりさん



[小岩井ことりさん:Profile]

京都府京都市出身、2月15日生まれ。ピアレスガーベラ所属の声優・ナレーター。2011年よりプロの声優として活動しており、アニメ、CM・ナレーション、ラジオ、ゲームなどを幅広くこなす。京都弁、大阪弁、広島弁を自在に操り、趣味・特技は釣り、作詞作曲。出演した作品としては「田中くんはいつもけだるげ」(白石役)、バトルスピリッツ ダブルドライブ(メイ・メリーハッダ役)、「のんのんびより りぴーと」(宮内れんげ役)、「GATCHAMAN CROWDS」(うつつ役)などがある。


作詞作曲も行うなど、幅広く活躍する小岩井ことりさん

--MIDI検定2級、合格おめでとうございます。いろいろと驚いたのですが、まず声優さんとMIDI検定、ずいぶんギャップがあるように思います。そもそも、どうしてMIDI検定を受けようと思ったのですか?

小岩井:声優としてお仕事させていただいている一方で、実は作詞・作曲ということもさせていただいているんです。そういったお仕事などでもお世話になっている関西のスタジオがあるのですが、ここで音楽について色々と幅広く教えてもらってきました。そのスタジオでは社員研修としてMIDI検定を受けているというのを知って、私もチャレンジしてみようかな、と思ったのがキッカケです。


二次試験99点で合格した小岩井さんのMIDI検定2級合格証(小岩井さんのブログ記事より) 

--作曲のお仕事もされていたんですね!小岩井さんご自身、作曲っていつごろからされているんですか?
小岩井:小さい時からメロディーを作って歌うのが好きで、家族といっしょに遊びですが歌を作ったりしてきたので作曲はすごく身近なものでもあったのです。いつしか楽曲提供というと大げさだけれど、自分の作ったメロディーをピアノで弾いて渡すなんてことをするようになっていったんです。
--楽器も子供のころから弾いていたりするのでしょうか?
小岩井:習ったのは小学校のころにピアノを少しという程度ですが、中学・高校では吹奏楽部にいて、ユーフォニアムを担当していました。ただ人数が足りないときにはフルートでも、トランペットでもできる範囲で、いろいろと演奏しました。でも、電子楽器系はまったく経験がなく、今になってようやくアナログシンセに興味を持つようになったんですよ。もっとも、いま使っているのはSUPERWAVE P8というフリーのソフトシンセなんですけどね(笑)。

--作曲をしたり、さまざまな楽器を触ってきたとはいえ、やっぱりMIDI検定は、ずいぶん遠い存在のようにも見えますね……。
小岩井:そう見えます?でも私PCもすきなんです。オンラインゲームとか絵を描いたり……。お友達を作るのが上手なほうではなかったから、PCで遊んでいました(笑)。といっても、お小遣いはあまりなかったから、家にあるものや、譲ってもらった機材で遊んでいたんですけどね。周りにはプログラムが得意な人もいたので、なんとなく話は聞いていましたが、詳しいことはよく知らないままでした。それが、MIDI検定を受けることになって、bitから始まるさまざまなことを知ることができて、とっても楽しかったです!物理や数学は好きだったし、勉強は嫌いじゃなかったので、MIDI検定のテキストをキッカケに分からないところ、納得いかないところは、ネットで調べたりしていったので、どんどん興味も広がっていき面白かったですね。

仕事でお世話になっている関西のスタジオでMIDI検定のためのノウハウも教えてもらったという小岩井さん
(写真は都内のスタジオ、株式会社シーミュージックにて)

--最初はMIDI検定3級からだったんですよね?

小岩井:はい受けたのは2014年でした。その前の年に受けることを決めて、勉強していったのですが、やっぱり分からないこともいろいろあり、頑張りました。結局4点問題を一つ間違えちゃったので、96点で合格したと思います。これがその当時のノートで、覚えることをいろいろまとめていたんですね。


MIDI検定の試験のため暗記用に整理したメモ 

--しっかり、整理して暗記していたんですね。その後、2級に?
小岩井:3級の合格通知をもらって、すぐに2級の勉強に入りました。もっともお仕事との兼ね合いなので、試験を受けることができるかはスケジュール状況次第でしたが、今回はうまく受けることができました。やっぱり2級になると、より深い理解を求められるし、広い知識を求められるんですが、MIDIのシステムメッセージとか、チャンネルメッセージを理解するのに結構手間取りました。先ほどお話したスタジオのエンジニアさんの中にMIDI検定2級の講師資格を持っている方がいたので、自分で調べてみて分からなかったところなどは質問させて頂いて勉強していきました。中でも一番難しかったのはアナログシンセですね。私自身が当時、シンセをほとんど触ったことがなくて、慣れ親しんでいなかったので、苦労しました。

小岩井さんのテキストを見ると、各ページ書き込みがいっぱい 
 
--そうした勉強は1年間コツコツする感じだったのですか?

小岩井:時間が空いたときにグワァ~ってやって、しばらく間を空けてから、またグワァ~って勉強する感じです。だから期間的には1年間ありましたが、実質的には数週間くらいですかね。一次試験の勉強もしながら、平行して二次の勉強もして、打ち込みも上手になるといいな……と思ってやっていました。練習曲がMIDI検定公式サイトに上がっているので、それを打ち込んで練習しました。

--MIDI検定を受けるために身に着けた知識やスキルは、今後、小岩井さんにとって役立ちそうですか?

小岩井:すでにすごく役に立っていると思います。たとえば声優として日々こなす必要のある基礎練習用のオリジナルメニューを自分で打ち込んで作っているんです。声出しのための曲や、音階をたどるためのものなどが簡単に作れて便利です。また台詞や歌の収録でレコーディングスタジオに行ってエンジニアさんと話す機会がよくあるのですが、そんなとき、今までだったら、よく分からなかった単語も理解できるようになり、コミュニケーションがよりスムーズになりました。そして、やっぱり音楽を作るときに、自分のやりたい表現に近づくきっかけをもらったように思います。


次はMIDI検定1級にもチャレンジしたいと話す小岩井ことりさん 

--MIDI検定の3級、2級と来たわけですが……
小岩井:ぜひ1級にもチャレンジしてみたいです!もちろん、うまくスケジュールが合わないといけないのですが、頑張ってみたいですね。ただ合格率を見ると、自分にできるんだろうか……と不安にも感じます。でも、やっぱりやりたいな!

--ところで、いま小岩井さんが使っているDTM機材やDAWなどについて、少し教えてもらえますか?

小岩井:Windows 7のタワーマシン(Core-i7 4770K、メインメモリ16GB、SSD 256GB+SSD 240GB+HDD 3TB、マザーボード:Asrock Z97 extreme6、グラフィック:GEFORCE GTX650)にCubase 6という環境です。オーディオインターフェイスは、先日のDTMステーションの記事を見て、UniversalAudioのapollo twin USBを導入したところなんですよ。音源にはHALion4のほか、NativeInstrumentsのKOMPLETE 10 Ultimate、ドラムはBFD3ですね。これが自宅のDTM環境の写真です。


小岩井さんの自宅のDTM環境 

--機材の話をしだすと、ますます目がキラキラしてますね(笑)。

小岩井:ホントに最近になって、ようやく少し好きにお金が使えるようになってきたところなんです。女の子なんで、そろそろ化粧品とかしっかり買ったり、服もあんまり持ってないので、揃えなくちゃとは思うんですよ。でも、この服買わなければ、あのプラグインが買える、これを我慢すれば、あの機材が買える……って思っちゃうんですよね。それにプラグインとか音源って50%オフなんてのが普通によくあるので、服って高いなぁって(笑)。で、今一番欲しいのはね、Xhun Audio Iron Axe。物理モデリング音源のバーチャル・エレキギターです!多くのパートは打ち込みで行っているけど、ギターはだいたい弾いてもらっているんです。でも、あとで変更箇所などが出たときに弾き直していただくのって、申し訳ないじゃないですか。だからより表現力の高い、この音源があったらなぁって。機会があった、ギターも演奏できるよう練習してみたいのですが、ほかにも勉強したいこともいろいろあるし、基本的に私って不器用だから……(笑)。

--写真を見ると、マイクは30万円以上するNEUMANNのU87Aiを使ってますね。

小岩井:U87Aiを買ったのは、東京に出てきてすぐだから2012年だったと思います。最初のお仕事の時は何も分かっていないような状態で全然できなくて。だから、せめてレコーディングスタジオに近い環境を揃えて練習するぞと、U87Aiを買ったんです。そしてCubaseで録って練習していったんです。


小岩井さんはMIDI検定受験以前からCubaseを使っているという 

--MIDI検定の勉強はここ2、3年だけど、その前からCubaseを導入していたんですね。

小岩井:はい、なので未だにCubase 6なんですよ。演技の場合は、テンポに関係なくレコーディングしていましたが、歌もうたうので、そのときはオケをもらってトラックに流し込むか、楽譜をもらって自分で少し打ち込んでみたり……。それなりにしっかりレコーディングできる環境にもなってきたので練習にも熱が入ります。


MIDI検定試験のための公式ガイドブック「ミュージッククリエイターハンドブック」 

--凄いですね!日本中探しても、そんなことが自分でできちゃう声優さんって他にいなそうですよね。最後に、今後MIDI検定を受ける人へアドバイスをもらえますか?
小岩井:私自身、まだまだ勉強中の身ではありますが、MIDI検定の教科書である「ミュージッククリエイターハンドブック」をしっかり読んで理解するのが重要だと思います。この本には幅広い知識が詰まっているので、それをどれだけ掘り下げるかではないでしょうか?読み込んでいくと、ホントにワクワクしてきますよ!この本をきっかけに興味のある所やより深く知りたい所を、ネットで調べたりするのもいいと思います。そう、この教科書はさまざまなことを知るキッカケを作ってくれる大切な本なんです。ぜひ、MIDI検定の勉強を楽しんでくださいね。

--ありがとうございました。
【関連サイト】
小岩井ことりオフィシャルブログ「ゆめはキミの太陽。」
小岩井ことりさんプロフィール(ピアレスガーベラのサイト)

【MIDI検定関連サイト】
MIDI検定公式サイト
一般社団法人音楽電子事業協会サイト

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