ソフト版ユーロラックも誕生、スウェーデンの技術者集団Softubeが生み出す物理モデリングツールが国内で発売に

Softube(ソフチューブ)というスウェーデンのメーカーをご存知ですか?プロ用の大型ミキシングコンソールであるSSLSL 4000Eをプラグイン化するとともに、それをコントロールするハードウェアをセットにしたConsole 1という製品を出す一方、先日Marshallが発表したMarshall CODEシリーズというアンプにモデリング技術を提供したり、Fenderにも異なるモデリング技術を提供する、まさに技術者集団の企業。

自らも「ロックンロール科学者」と呼んでいるそのSoftubeが今度はユーロラックタイプのシンセサイザもソフトウェア化して、ハードウェアのユーロラックとも接続可能にするなど、チャレンジングなことをいろいろやっています。まだたった14人という小さい会社ではあるのですが、マーケティング担当者2名が来日するとともに、日本での新製品発表会が行われました。その発表会後、お二人に話を伺うことができたので、紹介してみましょう。


日本でのSoftube製品発表会に合わせてスウェーデンから来日したお二人



北欧の国、スウェーデンって電子楽器やDTM系の会社がかなりいっぱいあるんですよね。ReasonPropellerheadもスウェーデンだし、EZ DrummerTOONTRACK、赤い彗星Nord LeadnordOP-1やゲームウォッチ風の音源pocket operatorを開発するTeenage Engineering、ユニークなシンセをいろいろ出しているelektron……といろいろ。

どこも、魅力的な独自製品を開発しているところばかりという印象ですが、その一つとしてSoftubeもあるのです。知らない方もいるとは思いますが、2003年設立と経験豊富な企業であり、Tube-TechSummit Audioといったプロ用機材メーカーとパートナーシップを築いてプラグイン版をリリースしたり、最近はapollo twinにバンドルされるUADのプラグインとして話題になったり、Native InstrumentsPREMIUM TUBE SERIESの開発元として登場するなど、Softubeの名を目にする機会も多いと思います。

そのSoftube製品の国内代理店となったのは、Studio OnePresonus製品)、Seaboard(ROLI製品)、Max(Cycling ’74製品)などを扱うエムアイセブンジャパンで、このたび新製品であるConsole 1 + BRITISH CLASS AMODULARの2製品に関しての発表会が同社で行われたのです。

その発表会に合わせて来日したSoftubeのマーケティング・マネージャーのヘンリック・アンダーソン・フォーゲルさんとマーケット・ストラテジストのジョー・ロートンさんにお話しを伺うことができたので、インタビューとして紹介していきましょう。


取り扱い代理店となるエムアイセブンジャパンでSoftube製品の日本発売の発表会が行われた

--まず、社名の由来から伺いたいのですが、Softubeというのはどんな意味を持っているんでしょうか?
ヘンリック:真空管をソフトウェアで実現しようという思いがあってスタートしているので、SoftとVacume Tubeを合わせてSoftubeとしています。2003年の創業当初は、その真空管のエミュレーションに注力し、ギターアンプを再現した最高にリアルな製品を開発しています。その後10年以上にわたってMarshallアンプほか、多くの有名オーディオメーカーのDSPパートナーとしてモデリング技術を提供しています。

Softubeのマーケティング・マネージャーのヘンリック・アンダーソン・フォーゲルさん
--Marshallへのソフトウェア提供を手掛ける一方で、新価格となったConsole 1にNEVEを物理モデリングしたBritish Class Aプラグインを追加したり、さらにはユーロラックのソフトシンセも発表するなど、ずいぶん幅広い分野を手掛けていますよね。

ジョー:我々の会社では3本柱の技術で事業展開しております。1つ目はMarshallのギターアンプへのモデリング技術の提供やNative Instruments、Universal Audioなどへ提供するエンジンに代表されるギターアンプのモデリング技術、2つ目はConsole 1などミキシングコンソールを再現させ、そこに搭載されるチャンネルストリップやエフェクトなどを忠実に再現させていくプロオーディオミキシング技術です。そして、3本目の柱として据えたのがシンセサイザを再現する技術なのです。


Softubeのマーケット・ストジャジストのジョー・ロートンさん

--MarshallやNative InstrumentsなどOEMの形で他社から発売されるものがある一方、Softubeの自社ブランドで出しているものもありますが、その自社ブランド製品でいうと、どのくらいの数の製品があるのですか?

ジョー:具体的には37製品になります。イコライザ、コンプレッサ、エフェクト、ギターアンプからバーチャル・インストゥルメントまで、リアルなエミュレーションを最新のモデリング技術を使いネイティブ(PCのCPUで動作するという意味)およびUADのDSPプラットフォーム環境で実現させています。こうしたSoftubeの製品は世界でも名高いアーティスト、プロデューサーに使われていて、カニエ・ウエスト、テイラー・スウィフト、ビヨンセ……など数えきれないほどのヒットアルバムに使われていますよ。


次世代ミキサーソリューションであるConsole 1のハードウェア 

--それではオプションが増えたConsole 1について、これがどんなものなのかを教えてください。
ヘンリック:Console 1を一言でいえば、次世代のミキサー・ソリューションです。既存のDAWに業務用で用いられるミキシング・コンソールを有機的に統合するためのシステムとなっており、ハードウェアとソフトウェアから構成されています。日本では新価格の税込み74,800円という設定です。具体的にはSolid State LogicのSSL SL4000Eが標準でバンドルされるほか、オプションとしてSSLのXL 9000K(29,800円)およびBRITISH CLASS A(24,800円)が用意されています。BRITISH CLASS Aはイギリスの著名なコンソールをモデリングしたものですね。

Console 1のソフトウェア側の画面
--Cakewalk SONARのPro Channelにも近い機能が搭載されていますが、確かこれもSoftubeの開発でしたよね。
ヘンリック:その通りです。Console 1はSONARの上位版に搭載されているチャンネルストリップであるPro Channelをさらに発展させるとともに、さまざまなDAWで使えるようにし、しかもハードウェアのノブで自在に操作できるようにしたものとなっています。具体的にはダイナミック・シェイプ、EQ、コンプレッサ、ドライブなどとなっており、画面とハードウェアが同じレイアウトになっているので、直感的に操作ができるようになっています。

Studio One 3.2のミキシングコントローラーとしても使えるようになる予定
--このハードウェアにはDSPなどが入っているのでしょうか?それとも単純なコントローラであるという理解でいいですか?
ジョー:DSPは入っていません。Console 1としてソフトウェア部と連携して動く専用ハードウェアと考えていただいて結構です。なお、どのDAWでも使えますが、近い将来Studio One 3.2とはよりインテグレーションされた形で接続できるようになります(2016年下半期の予定)。具体的にはトラック選択の同期ができるほかフェーダーのコントロール、センド・レベル・コントロールができるほか、ソロ/ミュートの操作もConsole 1のハードウェアから操作できるようになるのです。また実際に使っていただくと分かりますが、かなり軽い動作であるため、多チャンネルで同時に使ってもPCに大きな負荷がかからないのも特徴となっています。

ユーロラックをソフトウェア的に実現させる新製品、MODULAR
--では、もう一つの目玉である、ユーロラックのシンセサイザに関しても教えてください。
ジョー:MODULARという名称で製品を間もなく販売開始させます。これはユーロラックを生み出したDoepfer社、それに現在のユーロラック市場で多くのファンを集めるIntellijel社の2社に正式な許可を得て、両社が販売するユーロラックのモジュールをエミュレーションしたソフトウェアであり、クロスプラットフォームのプラグイン(VST、AudioUnits)としてリリースします。今後他社のものも含め、数多くのモジュールを追加していく予定です。これらはアナログの回路レベルから忠実にエミュレーションする「True dynamic circuit-emulation」という我々独自の技術を用いて実現しており、見た目だけでなく、機能、音、そのすべてを実機と同様に再現した製品となっています。

ヘンリック:ユーロラックに興味は持っているけれど、なかなか難しそうで……と敬遠している人も少なくないと思います。このMODULARはそうした人たちのためのユーロラック入門として使えるようにしたもので、画面上でさまざまなモジュールを自由に配線して接続できるようになっています。またその接続においては、出力端子をマウスで選択すると、そこと接続可能な端子が緑で表示されるなど、初心者でも使いやすいガイドが設定されているのも大きな特徴となっています。実機と同じ画面、同じ音が出せるし、もちろん価格的には圧倒的に安いというのもMODULARの大きな特徴となっています。


さまざまなモジュールを読み込んで並べ、接続していく 

--実際、いくらぐらいで入手できるソフトなのでしょうか?
ジョー:基本セットとして登場するMODULARには、Doepfer A-100シリーズをモデリングしたモジュールが6基(A110-1 VCO、A-108 VCF、A-132-3 Dual VCA、A-140 ADSR、A-118 Noise/ Random、A-147 VCLFO)と、20種類のユーティリティー・モジュール(シーケンサ、ミキサー、MIDI TO CV、セパレーターなど)が付属しており、価格は9,800円を予定しています。さらに追加モジュールが4,900円で、ここにはIntellijelのRubicon、Korgasmatron II、µFold IIなどが入る予定となっています。また、SoftubeのHeartbeatというドラム・シンセサイザーをお持ちのユーザーはここにあるドラム・チャンネルとEQの各モジュールをMODULAR内にロードして利用することも可能です。いずれも日本で初回プロモーション価格を予定しているので楽しみにしていてください。

Reasonの裏側の画面を彷彿させるパッチング画面
--このパッチングの画面を見ると同じスウェーデンのソフトであるReasonを思い起こしてしまいますが、シンセサイザの知識を身に着けるという上でもとっても魅力的なソフトですね。でも、このMODULARでユーロラックに興味を持った人が、Deopfer製などのハードウェア製品を買ったときに、MODULARと接続できたりすると面白いのですが、そんなことは難しいですよね……。
ヘンリック:それができるのがMODULARの大きい特徴になっています。DC(直流)を扱えるオーディオインターフェイスを介すことで、CV/GATE信号を入出力可能となっているのです。具体的にはメイン出力とは別に用意されているAUX OUTPUT×8chを使って外部をコントロールできるほか、外部からのCV/GATEの信号を受けて、MODULARの各モジュールをコントロールすることもできるのです。もちろん、オーディオ信号のやり取りも可能ですし、DAWと連携させてDAW側でエフェクトをかけていくといった使い方も可能です。
ジョー:場所も取らないですし、とにかく安いですから、まずユーロラックの入門機として使っていただけるのではないかと思います。ぜひ、多くの日本のユーザーにご利用いただけると嬉しいです。

--楽しみですね。どうもありがとうございました。
【関連情報】
Softube日本語サイト
Console 1製品情報

【価格チェック】
◎Amazon ⇒ Console 1
◎サウンドハウス ⇒ Console 1
◎MI7 STORE ⇒ Console 1
◎Amazon ⇒ Console 1+SSL XL 9000 K バンドル
◎サウンドハウス ⇒ Console 1+SSL XL 9000 K バンドル
◎MI7 STORE ⇒ Console 1+SSL XL 9000 K バンドル

Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • イヤン

    MODULARとりあえずポチってみました
    記事では追加モジュールがセット売となっていますが、今のところ単体販売だけですね。

    2016年6月16日 10:21 AM

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