MIDI、USB、CV/GATE、Bluetooth…すべてを橋渡しするゲートウェイ、Roland A-01の威力

今回のNAMMでは各社からさまざまな製品が発表されましたが、DTMの観点で見て、とっても興味深かったのがRolandA-01という機材です。これは「JUPITER-8、JX-3P、JUNO-106を現代に蘇らせたRoland Boutiqueデビュー!」などの記事でも紹介したRolandのBoutiqueシリーズのラインナップとして追加された新機種で、1月29日に発売予定となっているもの。

 

これまでリリースされた3製品とはかなり趣向が異なり、楽器というよりもユーティリティ的意味合いが強い製品となっているのです。パッと見は、小さなシンセサイザーキーボードにしか見えませんが、実際に使ってみると「今のDTM環境に欲しかったのは、まさにこういう機材だ!」と感激してしまう便利な製品だったのです。そのA-01を発売前に試してみたので、何ができる機材なのかチェックしてみました。


さまざまな機器、ソフト・アプリの仲介役となるゲートウェイとして機能するRolandのA-01

数量限定販売ということで、昨年末、慌ててBoutiqueシリーズを購入したという人も少なくないと思います。私も懐かしさいっぱいでJUNO-106を復刻させたJU-06を購入したのですが、今回登場したA-01はそれらとはだいぶ方向性が異なる製品になっています。


Roland Boutiqueシリーズとして誕生したA-01。手前は筆者が購入したJU-06 

 

実際の機能解説に入る前に、製品構成について紹介しておくと、国内で発売されるのはA-01K(市場想定価格52,000円:税別)というもので、A-01本体と従来から発売されている合体式キーボードのK-25mをセットにしたもの。個人的にはK-25mはすでに持っているので、無くてもよかったのですが、現時点でA-01単体の発売される予定はないみたいですね。また、A-01は限定発売ではなく、今後も継続的に販売していくラインナップとなっているようです。


手に持っているA-01本体と合体型キーボードK-25mがセットとなったA-01Kとして販売される 

 

さて、そのA-01、確かにモノフォニックのシンセサイザー機能も搭載されているので、楽器として使うことも可能ですが、それはむしろ付加価値的な機能。メインとなるのは、A-01を中心にさまざまな機器と接続し、HUBとしてその仲介をするというものなんです。

もう少し具体的にいうと、PCやiPad/iPhone、MIDIキーボード、MIDI音源モジュール、CV/GATEのアナログシンセ……などなど接続した上で、相互に信号のやりとりをすることができるようになっているのです。それを端的に表した図が以下のものですが、お分かりになりますか?


Roland A-01のシステム接続図

これだけを見ても、まだどう使うのかイメージしにくいかもしれませんね。例を示しながら、その活用方法を考えていきましょう。


USB接続すれば、すぐにPCからはMIDIデバイスとして認識されMIDI入出力が可能になる 

 

まず、このA-01は電源は他のBoutiqueシリーズと同様、単三電池×4本かmicroUSBでの供給となっており、A-01単体での起動は可能です。ただDTMユーザーであれば、WindowsやMacとUSBケーブルで接続することで、電源供給できると同時に、MIDI機器として接続できるようになっており、WindowsでもMacでもドライバ不要で認識されます。


GarageBandのBluetooth MIDIデバイスの機能を用いて接続する 

 

一方、A-01はBluetooth LEを使ったMIDI接続にも対応しています。「MIDI over Bluetooth LE」という最近各社が出し始めているのと同じ仕様となっているので、iPadやiPhoneとの接続ができるのです。たとえばGarageBandでは、設定メニューの詳細にある「Bluetooth MIDIデバイス」を選ぶことで接続が可能です。


接続が確立するとBluetoothロゴが点滅から点灯へと変わる 

 

細かな設定手順の解説は省きますが、一度接続を確立してしまえば、GarageBandを落としても各シンセアプリなどとのやり取りができますよ。また、このBluetooth LE接続が確立するとA-01に青のBluetoothロゴが点滅から点灯に変わります。

 

この状態でA-01のキーボードを弾くと、iPadやiPhoneの音源が鳴るわけですが、レイテンシーはほとんど感じません。もちろん厳密には違いがあるはずですが、Lightningケーブルを使って有線でMIDI接続するのとほぼ差がないと思いますよ。

 

ここでユニークなのは、PCと接続しながら、MIDI over Bluetooth LEでの接続も同時にできている、という点なんです。そして、A-01を介して、PCとiPadやiPhoneが接続されているんですよ。つまり、PC上でDAWを動かし、MIDIの出力先をA-01に設定すると、iPadやiPhoneの音源も鳴らすことができるんです。


A-01のリアパネル。左からmicroUSB、ヘッドホン出力、CV出力、GATE出力、MIDI OUT/INと各種端子が並ぶ

さらにA-01にはMIDI INとMIDI OUT端子も用意されているのも大きなポイント。このMIDI OUTのMIDI音源モジュールを接続しておけばPC上のDAWからはA-01をMIDIインターフェイスとみなして鳴らすことができるし、iPad/iPhoneのDAWや鍵盤付き音源アプリから鳴らすことも可能になります。

 

またMIDI INにMIDIキーボードを接続すれば、このMIDIキーボードの演奏でPCのDAWへリアルタイムレコーディングすることもできるし、Bluetooth LEを介してiPad/iPhoneで動いている音源アプリを弾くこともできるわけです。


A-01にはCV OUT、GATE OUTの端子が用意されているので外部のアナログシンセと接続してコントロールできる 

 

そしてもう一つの目玉機能となっているのが、A-10にアナログシンセをコントロールするためのCV/GATE端子が用意されているという点です。昨今のアナログシンセブームで各社からCV/GATE端子を搭載された音源が発売されるようになりましたが、これらもA-01から接続できるようになっているんですね。

 

ただしCV/GATEにはRolandをはじめとする多くのメーカーが採用しているV/OctとKORGなどが採用しているHz/Vの大きく2種類の規格がありますが、A-01が採用しているのはV/Oct。実際、手元にあるArturiaのMicroBruteに接続してみたところ、これで完全にコントロールできますね!もっとも先ほどの図を見ても分かる通り、CV/GATEに関しては一方通行となっています。


8bit CPUで実現させたモノフォニックのアナログモデリングシンセサイザーも搭載されている

 

接続についてある程度、分かったところで、面白いのはここからです。まずは前述のとおり、A-01には内部にJX-3Pなどの開発を担当したエンジニアによって生み出された8bit CPUシンセサイザーが搭載されています。アナログモデリングによるモノフォニックのシンセサイザーなので、利用シーンはある程度限定されそうですが、プリセット音色も用意されており、16トーン(8トーン×2バンク)でのメモリも可能になっているため、結構楽しく使えますよ。A-01に接続されたPCやiPhone/iPad、MIDIキーボードなどの機器から見れば、一つの音源として利用できるわけですね。

さらに、A-01には16ステップのシーケンサも搭載されているのも面白いところ。A-01単体で簡単に打ち込めるシーケンサであり、このパターンで内蔵の8bit CPUシンセサイザーを鳴らせるのはもちろん、CV/GATEで接続したアナログシンセを鳴らせるほか、DAW上のソフトウェア音源やiPhone/iPadの音源アプリを演奏することだってできるんです。


16ステップのシーケンサも搭載されている 

 

また、この16ステップシーケンサは、作ったパターンをメモリできるのも一つのポイント。16パターン(8パターン×2バンク)までメモリすることができるので一度設定してしまえば、用途に合わせたコントロールが可能になります。まあ、いまの時代シーケンスパターンをメモリできるなんて当たり前の話ではあるけれど、CV/GATEコントロールが可能な手ごろなシーケンサでメモリできるのって意外と少ないですからね。それだけの用途で買っても損はないと思いますよ。

 

A-01をさまざまな機器のHUBである、ゲートウェイであるという見方をすれば、8bitCPUシンセサイザーも16ステップシーケンサもデバイスの一つとみなしたほうが、分かりやすいかもしれませんね。その意味で、あえて別デバイスのように先ほどの図に書き加えてみると、このようになるわけです。


A-01内蔵のシンセ、シーケンサをあえて別デバイスのように書き出した図(水色がA-01内部機能)

 

でも、「こんなにいっぱい繋がっているとワケが分からない」、「1つの鍵盤を弾くと全部が鳴るのでは困る」、「DAWからCV/GATE接続のアナログシンセと、MIDI接続の音源を別々にコントロールしたい」……なんて声が聞こえてきそうです。そこも大丈夫、A-01ってうまくできてるんですよ。

 

ここはMIDIのチャンネルを活用できるようになっています。デフォルトの設定ではすべてがONとなっているので、K-25mの鍵盤を弾けば、8bitCPUシンセサイザーも、iPhone/iPadの音源も、CV/GATE接続のアナログシンセも全部鳴ってしまうのですが、どの信号をどのMIDIチャンネルに割り振るかを設定できるパッチ割り当て機能が用意されているんです。たとえば、8bitCPUシンセサイザーは1ch、CV/GATEは2chのように設定すれば、DAWから鳴らしわけができますよね。


MIDIチャンネルのパッチング機能により、信号の流れを自由に設定することができる 

 

また16ステップシーケンサの出力をどのMIDIチャンネルに割り振るかの設定もできるようになってますよ。もちろんMIDI機器やBluetooth LEで接続しているiPhone/iPadのアプリ音源は、そちら側でMIDIチャンネル設定はできるはずですから、それぞれ別々にコントロールできますね。しかも、A-01では、その設定を16パッチ(4バンク×4パッチ)までメモリーすることができるので一度設定してしまえば、用途に合わせたコントロールが可能になります。


液晶下のツマミを利用することで、コントロールチェンジ情報などを送ることもできる 

 

このように、混在するさまざまな機材をすべて接続し、その信号の流れを自由に制御できるのがA-01という機材なのです。現在のDTM環境の交通整理機材として、現代のMIDIパッチベイとして1台持っていておくと絶対に便利な機材といえそうですよね。

【関連情報】
Roland A-01製品情報

【価格チェック】
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