すでに海外からのリーク記事、リーク写真がいっぱい出回っているので、もう、ご存じの方も多いとは思いますが、本日10月1日、ついにRolandから新製品、Roland Boutique(ブティーク)が正式に発表されました。10月下旬発売予定だという、この新製品群、80年代のRolandのビンテージシンセをご存じの方であれば、歓喜する機材となっています。
そう、JUPITER-8、JX-3P、JUNO-106の往年の名機、Rolandのアナログシンセ3機種を現代に蘇らせた製品なのです。2年前、やはりRoland自らがTR-808、TB-303などを復刻したAIRAシリーズが話題になりましたが、今回の製品はAIRAとは別ラインナップ。こちらRoland Boutiqueシリーズはデザインもオリジナルを彷彿させるもので、見た目にもグッと来ますよね!まさに当時を知る人にターゲットを絞り込んだ製品なだけに、限定数量販売となるようです。機種によっては、すぐに売り切れる可能性もありそうですが、まずはRoland Boutiqueとはどんな製品なのかを紹介してみましょう。
往年の名機、3機種を復刻させたRolandのRoland Boutiqueシリーズ
今回発表されたRoland Boutiqueシリーズは全部で4製品。JUPITER-8を復刻させたJP-08(オープン価格で実売は税込み5万円台、以下同)、JX-3P+PG200を復刻させたJX-03(4万円台)、JUNO-106を復刻させたJU-06(4万円台)、そして25鍵ミニキーボードのK-25m(1万5000円前後)のそれぞれ。
Roland Boutiqueシリーズは鍵盤のK-25m(左)とJU-06(右上)、JP-03(右中)、JX-08(右下)の計4製品
この形状からも想像できると思いますが、合体ロボという感じで各シンセサイザ本体部分とキーボードであるK-25mをガチャンと接続して使う形になっています。接続したものは平らのまま使うこともできるし、角度を2段階で切り替え、起こして使うことも可能になっています。
また、キーボードと合体させず本体だけでも使える音源になっているのも大きなポイント。これはMIDIの音源モジュールとなっており、MIDI入出力とともにUSB端子も持っているので、PCと接続して使うこともできるし、MIDIキーボードと接続して使うことも可能です。
さらに本体のみで動かす場合は、一番左のピッチベンド用のリボンコントローラがノート信号発生のためのスイッチとして機能し、指でタッチしたりスライドさせることで、発音させることができる仕組みとなっています。
シンセサイザ本体部分のサイズが300(幅)×128(奥行)×46(高)mmであることから(JU-06のみ高さが45mm)、その大きさが想像できると思いますが、コンパクトでありながらも、それなりのボタン、フェーダー、ノブのサイズとなっているから、本体でしっかりと音作りができるようになっているんです。
USB電源供給が可能なほか、単3電池4本で駆動することもできる
さて、ここで気になってくるのが、この音源が何モノであるのか、ということでしょう。オリジナルの3機種はいずれもアナログシンセサイザだったわけですが、このJP-08、JX-03、JU-06はいずれもそのアナログ回路をRoland自慢のACB(Analog Circuit Behavior)テクノロジーで再現したというものです。そう、AIRAと同じ手法での復元であり、かなりオリジナルに忠実になっているんですね。
個人的にも懐かしいJUNO-106がほぼ完全な形で復元されている
私、個人的には大学1年生のとき、自分で最初に買ったシンセがJUNO-106でした。もともとJX-3Pを買おうか、さんざん検討していた中、JUNO-106が発売されて、それに飛びついたという思いで深い2機種なので、とっても嬉しい限り。実機をチラッと弾かせてもらったのですが、まさに当時の思いが蘇りますね。
JUNO-106といえば、ここに搭載されていたアナログのBBDコーラスが特徴的だったのですが、これもかなりの出来栄えで復元されています。私の買ったJUNO-106は実家の倉庫の中で長年眠ったままの状態で音を比較したわけではないのですが、Rolandによると経年変化によってコーラスの音も結構変わってきているのだとか……。JU-06のデフォルトではそれなりに使い込まれたコーラスサウンドに設定されているけれど、3段階でモードを切り替えることにより、新品当時のサウンドにすることもできるそうです。
JX-03はPG200と統合させた形になっており、直接パラメータをいじることが可能
パネルに並ぶパラメータも当時のものとよく似た形になっていますが、明らかに新デザイン配置となっているのがJX-03です。オリジナルであるJX-3Pはプリセットサウンドを鳴らすことを全面に出したシンセサイザで、本体だけではパラメータ変更がしにくい仕様でした。でも、ここにオプションのPG200というコントローラをセットすることで、各パラメータをノブでいじれるようになっていたんですよね。今回復元されたJX-03は、見た目のデザインはJX-3P風でありながらも、ここにPG200を融合させた感じになっており、DCO、VCF、VCA、LFO、EGと各パラメータをノブで変えられるようになっています。
JUPITER-8を復元させたJP-08。これにもう一台JP-08をMIDIとオーディオで接続すると8音ポリになる
ところで、このRoland Boutiqueシリーズで復元した音源には、オリジナルを超えられない一つの壁がありました。それがポリ数です。そう、各機種にはDSPが搭載されており、それによってACBテクノロジーによるアナログ回路モデリングを行っているわけですが、その演算性能の限界によって、どの機種も4音までしか同時発音することができないのです。でも本来オリジナル機はそれ以上のポリ数を持っていますよね。そうJUPITER-8は8音ポリ、JX-3PやJUNO-106は6音ポリであるため、4音ポリではやはり実機を復元したとはいえない状況です。
そこで登場するのがチェイン機能というもの。たとえばJU-08を2台接続することで4音+4音=8音ポリにしてしまうことができるのです。詳細については、また改めて紹介する予定ですが、2台をMIDIとオーディオケーブルで接続することで、外部からは1台の音源のように扱えるようになり、ポリ数を増やすことができるんですね。
同じようにJX-03を2台とかJU-06を2台接続することでもポリ数を倍に増やすことができます。ただし、こうするとオリジナル機の6音ポリの仕様を超えて、8音ポリのJX-3Pや8音ポリのJUNO-106が誕生してしまうことになるわけですが……。
本体下に16個並んでいるLED搭載ボタン部分ステップシーケンサとなっている
さて、Roland Boutique 3製品には、もうひとつオリジナル機にはない機能が搭載されています。それが、ステップシーケンサです。これは3機種共通のもので最大16ステップのノートを入力可能で、それがループ再生される形になっています。16個あるボタンでノートのオン/オフの設定が可能であるほか、このボタンを押しながら鍵盤を指定することで音程を設定できるというもの。タイの入力やゲートタイムの設定といったことも可能になっているほか、MIDIクロックにも対応しているので、外部との同期なども可能になっています。
なお、リアパネルを見ると3機種ともに、共通で左から電源スイッチ、USB、ボリューム、ヘッドホンジャック、メイン出力、オーディオ入力、そしてMIDI入出力となっています。オーディオ入力は前述のチェイン機能において利用するほか、単なるステレオミニでの入力なのでiPod出力などを接続し、シンセの出力とミックスして音が出せる仕様となっています。
そのほか、本体には小さなスピーカーも内蔵されているので、本体だけで音が出せるのも楽しいところ。もちろん、このスピーカーでは出せる音質に限界がありますが、電源を入れればすぐに鳴るので、手軽るに遊べるのは楽しいですね。でも、メイン出力経由でモニタースピーカーなどに接続して音を出すと、ビックリするほど迫力あるサウンドが出てくるギャップもいいですよ。