Electronica-Tuneが秀逸!新ボカロ、セカオワのFukaseがスゴイ!

すでにご存じの方も多いと思いますが、1月28日よりVOCALOID4の新ライブラリ「Fukase」が発売になります。これは「SEKAI NO OWARI」のボーカリストであるFukaseさんの声を元に開発されたVOCALOID4のライブラリです。歌わせるとFukaseさんソックリな声であるのはもちろんのこと、男声VOCALOIDの本命登場といった感じもする使えるVOCALOIDなんです。

 

1パッケージに日本語と英語のライブラリが収録されているとともに、「Electronica-Tune」というJobプラグインがバンドルされているのが大きな特徴。これを使うことで、いわゆるケロった歌声を簡単に作り出すことができ、しかもその完成度がメチャメチャ高いんです。実際にこのFukaseを使ってみたので、これがどんなものなのかを紹介してみましょう。


SEKAI NO OWARIのボーカル、Fukaseさんの声を元に作られたVOCALOID、Fukase

VOCALOID4 Fukaseについては、2015年8月に開発が行われていることが発表されており、すでに特設サイトもできて、れるりりさん、キャプテンミライさんなどの作品もUPされているので「歌声も聴いたよ」という人も少なくないでしょう。

 

とはいえ、オケ無しで、まったく調教していないベタ打ちの歌声を聴くと、その実力がハッキリ分かると思うので、まずは、その素の歌声を聴いてみてください。

 

どうですか?いかにもFukaseさん、SEKAI NO OWARI、という声であり、とくにSoftの甘い歌声はなかなかなものですよね。


インストール時、3つのライブラリの中から必要なものを選択できる 

 

ここでまずはFukaseに入っているライブラリについて整理しておくと、以下のような3つが収録されています。

 

ライブラリ名 収録言語 推奨音域 推奨テンポ
Fukase_J_Normal 日本語 F2 ~ A3 80 ~ 160BPM
Fukase_J_Soft 日本語 F2 ~ A3 80 ~ 160BPM
Fukase_E 英語 F2 ~ A3 80 ~ 160BPM

 

先日、ヤマハで取材させてもらった際、レコーディングやライブラリ制作を担当したヤマハの吉田雅史さんは、Fukaseが開発された背景について、以下のように話をしていました。


内覧会においてFukase開発の経緯などを解説してくれた、ヤマハの吉田雅史さん 

 

3年ほど前に、Fukaseさんの事務所から『VOCALOIDできませんかね?』という話をいただいたのがキッカケでした。ヤマハとしても、歌手のVOCALOIDライブラリを増やしていきたいという思いがあり、その思惑が一致したことからスタートしたのです


1月28日に発売になるFukaseのパッケージには、結構立派な使い方マニュアルもバンドルされている 

 

Fukaseの開発において、最初から決まっていたのが日本語と英語のバイリンガルで作る、ということです。英語のライブラリ開発には時間がかかるけど、SEKAI NO OWARIには海外のファンも多いし、日本のユーザーでも英語を使いたいというニーズがかなりあるので、これにチャレンジしたんです。SEKAI NO OWARIには英語の歌詞の曲があるといっても、Fukaseさんは日本人で、必ずしも英語が非常に得意というわけではありません。そのため、ネイティブのスタッフを一人つけた上で、英語の練習をしてから録音に臨む、ということをやってきました。Fukaseさんもポジティブに協力してくれたので、海外でも十分通じる発音のVOCALOIDに仕上がっています

 

日本語のライブラリはFukaseさんの普段の声をそのまま収録したNormalと、優しく甘い声を収録したSoftがありますが、これらはVOCALOID4の特徴であるクロスシンセシスに対応させているため、自然な感じでつなげることが可能です


3つのライブラリに加え、クロスシンセシス対応を含めた5つのシンガーから選択可能

と吉田さん。実際にFukaseをインストールしてみると、確かに上記3つのライブラリに加え、クロスシンセシスに対応した「Normal/Soft」、「Soft/Normal」を合わせて計5つのシンガーの中から選択できるようになっています。


オーディオで書き出してみると、音量がかなり違うのが分かる。上がNormal、下がSoft

ただし、先ほどのNormalとSoftのデモからも分かる通り、声質が異なると同時に音量も結構違うんですよね。試しに、Normalで歌わせたものと、Softで歌わせたものを、それぞれオーディオ化してCubaseで波形表示させると、かなり違うことが見て取れますよね。


クロスシンセシスでは低い音はSoft、高くなっていくところでNormalに切り替えていくと、いい感じの抑揚感を演出できる 

 

低めのピッチはSoftを使い、ピッチが上がるところで、クロスシンセシスを使ってNormalにしていく、といった使い方をすると、ダイナミックス的な変化もついて効果的ですよ」と解説してくれたのは、デモを担当してくれた、DTMマガジンでもお馴染みの青木繁男さん。


内覧会では、DTMマガジンなどでお馴染みの青木繁男さんがデモを行ってくれた 

 

クロスシンセシスを利用することで、かなりいい雰囲気にはなるんですが、それだけだとFukaseさんのファンからは『Fukaseっぽくない!』と言われそうなので、SEKAI NO OWARIっぽい感じに仕上げるための特別なJOBプラグインを作ってみました」と吉田さん。

 

それが「Electronica-Tune」というものなのですが、先ほどのデモのNormalで歌わせたものに、このElectronica-Tuneを適応させたものを聴いてみてください。

どうですか?なんか、いかにもAuto-Tuneを使ってケロらせたような感じで、すごくいい仕上がりだと思いませんか?Auto-Tuneは業界御用達のケロらせツールではありますが、いい感じにするには、エンジニアさんが職人技的に、かなり作りこんでいるのが実態。でも、そのエンジニアの熟練の技のようなものを、Fukase付属のJOBプラグインで簡単に実現できてしまうんです。


Electronica-TuneというJobプラグインが同梱されている

 

でも、このJobプラグインって何をしているんでしょうか?その辺の技を吉田さんに伺ってみました。

 

まずはピッチスナップモードをオンにしてビブラートを除去しています。続いてピッチベンドセンシティビティ(PBS)を12に設定し、ピッチベンドでピッチ変化を描いています


Electronica-Tuneを適用すると赤い線ようなピッチの動きになる、と説明してくれた吉田さん

そのピッチベンドの描き方がやや特徴的になっているようです。まず前の音程をやや引きずるようにピッチが変化し、前の音程とピッチ変化が5度以上ある場合は、何段階かでカクカクと動くようになっているそうです。


拡大するとノートとピッチの動きの関係が見えてくる。またピッチスナップモードがオンになっている

これを手で描いていくとなると、かなり大変そうですが、それを自動で一発で調整してくれるのですから、すごく便利ですよね。

 

ちなみに、この「Electronica-Tune」というJobプラグインは、Fukaseにのみバンドルされているもので、ほかで公開されていたり、単品購入することはできないようですが、これを別のVOCALOIDライブラリに適用することも可能です。

 

VY1V4やZOLA PROJECTなどヤマハのライブラリで使えるのはもちろんのこと、初音ミクや結月ゆかり、Megpoid、IA……と各社のライブラリでも使うことが可能です。Electronica-Tuneを適用することによって、元の歌声とはだいぶ違った感じにはなりますが、インスタント的にPerfumeみたいな雰囲気に仕上げられるのは面白いですよ!

 

SEKAI NO OWARIファンの人も、そうでない人も、Fukaseはいろいろな意味で購入する価値がありそうですね。

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