ABILITY 1.5の登場でオーディオ機能が劇的に進化する!

国産DAWとして注目度の高い、インターネット社のABILITY ProおよびABILITY。まだ今年6月に登場したばかりのソフトではありますが、間もなく大幅に機能UPした新バージョンとなるABLITY Pro 1.5およびABILITY 1.5がリリースされることとなり、楽器フェアのインターネット社ブースにおいて、披露されました。

新バージョンとはいえ、アップグレード費用は無料。ユーザーは無料でアップデータをダウンロードして適用することができます。実際どんなところが変わったのか、見ていきたいと思います。

2014楽器フェアのセミナー会場において、ABILITY Pro、ABILITYの新バージョン1.5が発表された

3年ぶりの開催となった2014 楽器フェア。VOCALOID4が初お披露目となったこともあり、大きな盛り上がりとなっていましたが、DTMステーションとしてもう一つの注目のポイントとなったのがABILIITYの新バージョン、1.5の登場です。楽器フェア会場の音楽電子事業協会AMEIのイベントとして「ABILITY Pro 1.5徹底講座」が行われ、ここでDTMの世界ではお馴染みの篠田元一さん、小川悦司さんがデモンストレータとなって、ABILITY Pro 1.5の発表が行われたのです。


11月21日~23日、東京ビックサイトで2014楽器フェアが開催

実際にアップデータのダウンロードが開始されるのは11月25日ということですが、ちょっと驚くようなユニークな機能がいっぱいだったので、順番に紹介していきましょう。


ABILITY Pro 1.5徹底講座においては、篠田元一さん(右)、小川悦司さん(中)がデモを担当。左が村上社長

今回のバージョン1.5になっての最大の目玉機能となるのが、ABILITY Proのみに搭載されたビートエディタというもので、レコーディングしたオーディオでミスった部分を修正できてしまうというユニークなものです。これはもともとあったオーディオ編集機能に新たに追加されたもので、基本的にはビート検出をした上でスライスしてくれるというもの。


オーディオのピーク、アタックを検出して自動でスライスしていく。画面は8ビートで弾いているベース。

まあスライスすること自体は、珍しい機能ではありませんが、ABLITY Proのビートエディタ機能は音楽制作、編集する上で非常に強力で画期的なものです。たとえばスウィングしているリズムパートと、8ビートで弾いているベースがあったとします。このベースをドラムに合わせるというの普通不可能ですが、このビートエディタを使うとできてしまうのです。


スライスされた縦のラインの上半分をマウスでドラッグすると、タイミングを変えることができる

スライスされた縦のラインを左右にドラッグしてタイミングを変えることができるのですが、この際、画面の上半分をドラッグすると、もともと8ビートであったものをスウィングさるといったことが簡単にできます。一方、下半分をドラッグしていくと、空白が作られるとともに、前の音が自動でフェードアウトされるため、音符が短くなり、スタッカート効果を簡単に出せるのもユニークな点です。


スライスするラインの画面下部分をドラッグすると空白を作りだすことができる

さらにスライスされたものを入れ替えることも簡単。たとえば、ギターのカッティングをレコーディングした際、ちょっとミスがいくつかあったとします。この場合、うまく行っている部分をコピーして貼り付ければ、まったく分からない状態でキレイに修復できてしまうのも、便利な使い方ですね。


スライスした音をピッチシフトして音程を変えてしまうもとも可能

さらにピッチタイムエディットでは、スライスした部分の、ピッチシフトも行えるので、ここでも違和感なく、ピッチ補正してしまうことが可能なのです。もちろん、単に修正するだけでなく、スライスした結果を並び替えたり、コピーしていくことで、まったく新しいパターンを作ってしまうことも可能。そんな無謀とも思える使い方をしても、キレイにつながってしまうのが不思議ですね。


ボーカルをMIDIのピアノロール風な画面でエディットできるボーカルエディタは、音質が劇的に向上した

2つ目は、以前の記事でも紹介したボーカルエディタが大きく進化した点です。ボーカルエディタV2という名前になっていますが、見た目や基本的な機能自体は大きくは変わっていないようです。ところが音を聴いてみるとビックリ。これまでの1.0と比較して音質が大幅に向上しているんですね。もう少し具体的にいえば、ノイズが軽減したのと同時に、ボーカルのピッチやタイミングを修正する際の制度が向上しているのです。さらにタイムコンプレス・タイムストレッチをする際のアルゴリズムが選択できるようになり、フォルマンとの調整もできるなど、多少トライ&エラーを繰り返すことで、よりマッチした方法でのエディットが可能になるようです。
3つ目は、先日の記事「11月にはABILITYの大幅アップデートも予定、ユーザーの要望がすぐに反映される国内DAWの強み」の記事でも予告していたオーディオファイルへの書き出し機能です。ABILITYに限らず、DAWを使っていると、レコーディング、編集した結果を、別のDAWへ渡す必要性というのはよく出てきます。その際、1つ1つのトラックをWAVファイルとして書き出すということが必要となるのですが、ABILITYも1.5になり、それを効率よく行う手段が搭載されました。

各トラックを別々のWAVファイルとして一発で書き出す機能も搭載された

そう、一回の操作で各オーディオトラックを書き出せるだけでなく、2MIXやグループ出力、さらにはVSTインストゥルメントでのサウンドまで、すべてオーディオデータとして並列処理で書き出すことが可能になったのです。WAVファイルか、MP3ファイルかを設定した上で、出力するトラックにチェックをいれるだけでいいので、とっても効率的になっています。

そのほかにもアップデート機能は数多くあります。
・ミキサーのフレームウィンドウ化
・オーディオデータからのテンポ検出機能
・VST3のプリセットブラウザ機能
・ソングエディタのトラックから直接VST2、VST3の音色選択
・オートメーション値のエディット入力
・ノートプロパティをドッキングバーで表示
・MIDI編集機能の追加
・音名の表記
・新しいアレンジデータの追加
などなど、列挙していくとキリがないほどです。

少し補足すると、「ノートプロパティをドッキングバーで表示」というのは入力済み音符の各種パラメータの確認・変更を行えるノートプロパティが、スコアエディタやピアノロールエディタにドッキング表示することを可能にするというもの。これにより複数の音符を連続して確認・変更が可能となりスピーディに編集ができるようになっています。


ノートプロパティをドッキングバーで表示

また、「音名の表記」というのは同じ中央ドをC4と表記するRoland方式とC3と表記するYAMAHA方式のいずれにするか、各トラックごとに設定可能にしたというもの。トラックごとに違う楽器を接続する可能性があるなか、こうした対応はなかなか便利だったりしますよね。


新たに追加されるプラグイン・エフェクト、Linplug社のrelectro 

もう一つ、ABILITYユーザーにとって嬉しいのは新たなプラグインエフェクトの追加です。ABILITY Pro、ABILITYにはもともとドイツLinPlug社のソフトウェア音源としてSPECTRAL、CrX4RMV、Saxlab2、Apphe3などが搭載されていますが、それに加えrelectroというものが追加されます。

これは、かなり不思議なエフェクトでアコースティックなドラムをEDM風なエレクトリックシンセドラムに変化させることができるというもの。といっても単にフィルターなどを使って音色を変化させるというわけではないんですね。
実はrelectro自体はシンセサイザであり、ドラムのビート検出した結果をトリガーにしてシンセを鳴らしてしまうというものなんです。もちろん、元のドラムを完全に消すこともできれば、うまい具合にミックスするといったこともでき、なかなか不思議な効果を出すことができます。

原音とのミックス度合いや、フィルターによってまったく異なるサウンドにすることができるのが特徴です。以下にそのサンプルを載せてみたので、聴いてみてください。

試聴サンプル エフェクト前 エフェクト後
サンプル1 試聴する 試聴する
サンプル2 試聴する 試聴する
(モーフィング)

このrelectro自体は単体のエフェクトプラグインとして販売されていますが、それがABLILITY 1.5にアップデートすることで追加される形になっています。

以上、ABILITY Pro 1.5、ABILITY 1.5で追加、強化されたポイントを並べてみましたが、いかがだったでしょうか?メジャーバージョンアップといってもいいような新機能のオンパレードではありますが、すべて無料で提供されるというのですからうれしい限りです。このアップデートは基本的には起動時のアップデータチェックにより自動的に行われるようになっているので、11月25日以降の対応を楽しみに待ちたいところです。

※追記 11月21日のこの発表会の内容がビデオで公開されましたので、以下に掲載いたしておきます。

【製品情報】
ABILITY Pro / ABILITY製品情報

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