9月17日、TASCAMから新しいオーディオインターフェイスが3機種発売になりました。2IN/2OUTのUS-2×2(ツーバイツー:実売価格18,000円前後)、4IN/4OUTのUS-4×4(フォーバイフォー:実売価格30,000円前後)、そして16IN/8OUTのUS-16×08(シックスティーンバイエイト:予想実売価格42,000円前後)のそれぞれです。このうち、US-16×08は11月上旬発売予定ですが、US-2×2とUS-4×4は、すでに出荷が開始されており、私も実機を入手しました。
実際に試してみたところ、音質的にとてもクリアでいいオーディオインターフェイスであるとともに、使い勝手がいいのが特徴。また、デザイン的にもちょっと変わっていてカッコイイんですよね。実際どんな機材なのか紹介してみたいと思います。
発売されたばかりのTASCAMの新オーディオインターフェイス、US-2×2(上)とUS-4×4(下)
US-2×2およびUS-4×4は、システム的にはとってもシンプルなオーディオインターフェイスであり、誰が使っても簡単で分かりやすいというのがポイントです。TASCAMでは同価格帯でUS-366というオーディオインターフェイスも出していますが、これとはまったく方向性が違うんですよね。そう、US-366の場合は24bit/192kHz対応で、DSPミキサーやエフェクト、ループバック機能……とあらゆる機能を詰め込んだモデルあるのに対し、US-2×2、US-4×4はとにかく音質を追及したモデル。
音質追及モデルだけに、ボディーも結構ガッチリしています。アルミのフレームにスチールのボディー。重量的にみてもUS-2×2は1.1kg、US-4×4は1.6kgあるので、自宅のDTM環境に備え付けるタイプの機材ですね。
実際にヘッドホンからの出力、ラインアウトを通じてのスピーカー出力を聴いてみれば、「これはいい!」って一瞬で感じられます。といっても、いわゆるオーディオの音ではなく、すごく解像度の高いモニターサウンド。また内蔵のマイクプリアンプ(ヘッドアンプ)を通して録音するマイクの音や、Hi-Z入力から録るギターの音も、すごくクッキリしているし、ノイズはなく気持ちいいんですよ。
実際の周波数特性などは、AV Watchの連載「Digital Audio Laboratory」で測定してチェックしようと思っていますが、とにかく聴いて確かめてみて、いいサウンドです。
フロントパネルを見比べてみるとわかりますが、US-2×2の入力はコンボジャックの2入力なのに対し、US-4×4のほうはXLRとTRSが分離された形の4入力。リアパネルにはUSB端子とともに、MIDI INとMIDI OUTがあり、US-2×2はTRSフォンのバランス対応のライン出力が2つ、US-4×4は4つあるのみという、とにかくシンプルで分かりやすい構成なんです。
基本的な構造はいっしょなので、単純に必要とする入出力の数を持つほうを選べばいいわけですが、1つ大きな違いもあります。そう、US-2×2はUSBバスパワーで動くけれど、US-4×4はACアダプタでの駆動となります。その意味では、できるだけシンプルな構成にしたいという人にとってはUS-2×2がいいのかもしれません。
ところで、US-2×2とUS-4×4、パッと見て気になるのがサイドパネルの部分ではないでしょうか?デザインのよさももちろんですが、大きなポイントとなるのが、傾斜がついていてフロント部分が少し持ち上がっているという点です。ここについては恐らく賛否両論あると思います。ただ、デスクの上に置いて使う場合、水平になっているより、持ち上がっているほうが、明らかにジャックの抜き差しがしやすかったり、ノブやスイッチの操作がしやすいなど、使いやすさでは抜群でした。こんな形のオーディオインターフェイスって無かったように思いますが、これは便利だと思いました。
サイドパネルによって、フロントが少し持ち上げられいて、使いやすくなっている
その目を引くサイドパネル、ハニカムとも違う、不思議なデザインとなっていますが、これをデザインしたのはドイツ人デザイナーのAxel Hartmann(アクセル・ハートマン)。先日の記者発表会でそれを聞いてビックリしましたが、みなさんはAxel Hartmannってご存知ですか?彼は、まさに知る人ぞ知るシンセサイザのデザイナー。回路設計ではなく、筐体のデザインをする人であり、MOOGのMiniMoog VoygerやWaldorfのMicroWAVE XT、またAlesisのAndromeda A6やionといった数々のデザインをしているほか、自らのブランドでNeuronというシンセサイザーを出した人としても知られている人。そのAxel Hartmannがデザインしたオーディオインターフェイスというだけでも持っておく価値があるような気もするのですが、いかがでしょうか!
でもやっぱり水平に置きたいという場合は、自己責任になりますがサイドパネルの取り外しも可能です。一方US-16×08では、ラックマウントアングルが付属しているので付け替えできますよ。
一方で、US-2×2およびUS-4×4は、これまで数多くあったTASCAMのオーディオインターフェイスとは一線を画している点があります。それがドライバーです。これまでのUSシリーズ用のドライバは、ドイツのPloytec社が開発するドライバーを使っていたのに対し、今回のものはTASCAMによって開発・監修された純国産ドライバーになっているんです。
個人的にはPloytecのインストーラってあまり好きではなかったので、ここについては大歓迎。WindowsでもMacでもドライバをTASCAMサイトからダウンロードの上、スムーズにインストールできます。ドライバ設定画面はシンプルなもので、それほどパラメータがあるわけではないのですが、レイテンシーを決めるバッファサイズの設定のほか、ダイレクトモニタリングに関するモノかステレオ化の設定、どのオーディオ入力を有効にするかの設定、ラインアウトに出力する信号の設定などがあるだけなので、難しいことはなさそうですね。
Mac版の設定画面。Windows版と異なり、ここにバッファサイズ調整はなく、これはMacのCoreAudio設定で行う
このドライバの設定画面で最初分からなかったのが「ERP2 Setting On/Off」という項目でした。ここにチェックを入れても何も変化が起こらず何なんだろう…とマニュアルを調べてみたら見つかりました。「スタンドアロンモード動作時に、本機に入力信号が検出されない状態(-60dbFS以下の状態)が30分間経過した場合に、自動的に電源をオフ(スタンバイ状態)にするかを設定します」と書かれていました。
ん??スタンドアロンモードって何だ??と調べてみたら、US-2×2もUS-4×4も、PCと接続していない状態でも使うことができるんですね。何に使うって、そう、単体のマイクプリとして使用することができるんです。DTMユーザーの場合、こういう使い方はあまりしないとは思うけど、クセがなく結構高音質なマイクプリなんで、ほかのオーディオインターフェイスイスの前段につないで使ってみるなんていうのも、ありかもしれません。
Macなら、とりあえず接続しただけでも、MIDIポートも 認識されている
さて、このドライバに関連して、もう一つ言っておかなくてはならないのが、ハードウェア側の仕様です。先ほど「Mac用のドライバ」というような表現をしましたが、Macの場合、正しくはドライバではなくセッティングパネル。そう、実はMacはこれをインストールしなくても、接続するだけで使えちゃうんですよ。なぜかというと、US-2×2やUS-4×4がUSBクラスコンプライアント(USB Audio Class 2.0で動作)という仕様だからです。
Windowsの場合、Windows 8.1になってもUSB Audio Class 2.0対応していないため、ドライバのインストールが必須なのですが、MacはOS自体が対応しているんで、そのまま使えます。
さらに、USBクラスコンプライアントであるということは、iOSデバイスで使えるということでもあります。間にLightning-USBカメラアダプタを挟む必要はありますが、これでiPadと接続しても動くし、先日買ったばかりの、iPhone 6 Plusでも動かすことができました。ただし、iOSデバイスからの電源供給では動かすことができたいため、US-4×4の場合はもちろん、US-2×2でもACアダプタが必要となります。US-2×2の場合は別売りのACアダプターが必要となるため、注意が必要です。
SONAR X3 LE、さらにはAbleton Live 9 Liteもバンドルされている
なお、US-2×2もUS-4×4も標準で2つのDAWがバンドルされています。1つがSONAR X3のライトバージョンであるSONAR X3 LE、もう一つはWindowsでもMacでも使えるAbleton Live 9 Liteです。SONAR X3 LEを試してみたところ32トラックまでという制限はあったものの、かなり使えるDAWとなっていたので、今度改めてレポートしてみようと思っています。
【関連情報】
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【価格チェック】
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