先日、Avid Technolgyから発売されたオーディオインターフェイス、Fast Track Duo(実売31,080円前後)とFast Track Solo(実売18,585円前後)。いずれも2IN/2OUTのUSB接続のオーディオインターフェイスなのですが、ここには他の機材にはない大きな特徴があります。それは、これがiPadはもちろんiPhoneでも使えるという点。TASCAMのiU2が発売停止となってしまった現在、iPhoneで直接利用できる汎用的なオーディオインターフェイスはほとんどなかったのですが、そこを突く形でAvidから2製品がリリースされたのです。
このFast Track DuoとSolo、iOS上の各種DAWアプリで使うことはできるのか、iPhone5やiPad miniなどLightningコネクタデバイスでも利用できるのか、そして電源供給はどうなっているのか……と気になることがいっぱい。先日、Avid Technlogyにお願いして、この2機種を借りて試してみたので、レポートしてみましょう。
iPhoneおよびiPadで利用できるAvidのオーディオインターフェイス、Fast Track Duo
まず、この2製品の概要を説明すると、DuoもSoloも同時入出力できるのは2chずつとなっていますが、Duoにはマイクプリが2つ、Soloには1つが搭載されており、大きさ的にもDuoの横幅が少し大きくなっています。
フロントパネルを見ると分かるとおりDuoには2つのコンボジャック(マイク接続用のXLRとギターなどが接続できるTRSフォンの兼用ジャック)が搭載されているのに対し、SoloはXLRのジャックが1つ(左)、TSフォンのジャックが1つ(右)という構成になっています。また、必要に応じて+48Vのファンタム電源を利用できるため、コンデンサマイクの使用が可能なのです。
マイク入力+標準入力のFast Track Solo(上)とコンボジャック×2の入力を持つFast Track Duo(下)
リアを見てみると、DuoのほうにはTRSフォンのステレオの入出力が装備されているのに対し、SoloのほうはRCAのピンジャックのライン出力が装備されているという構成です。ただし、Duoのほうもフロントの入力とリアの入力を同時に使えるというわけではなく、フロントのスイッチで前後を切り替えるようになっています。
リアパネルにも入出力に違いがある。SoloはRCA出力のみなのに対し、DuoはTRSフォンでの入出力を装備
と、ここまでは至って普通な仕様のオーディオインターフェイスですが、前述のとおり、これをiPhone/iPadに接続できるというのが大きな特徴です。といってもLightning-USBアダプタやCamera Connection Kitを使ってUSB接続するというわけではありません。Fast Track Duo/Soloにはちょっと変わった形状のコネクタ端子(USB端子の左にある平たいコネクタ)があり、付属のケーブルを使うことで、30ピンDOCKに接続できるようになっているのです。
付属の黒い30ピンDOCK接続用ケーブルにLightning-30ピンアダプタ(白)を利用してiPhone5に接続
そのため、これで直接iPhoneにも接続できるわけですね。もっともiPhone5の場合はLightning端子であるため、このままでは接続できないのですが、Lightning-30ピンアダプタを介すことで、バッチリ接続、動作することが確認できました。
ちなみにiOSは最新版の6.1.4で試しており、iPhone5の設定画面からも認識されているのが確認できます。とりあえず、iTunes管理の曲を再生させると、iPhoneのスピーカーやヘッドホンからではなく、Fast Track側から出てきます。ちょっと聴いた感じでも、本体から聴くよりも低域・高域ともに延びたいいサウンドのように思えます。
Fast Track Solo+iPhone5の構成でGarageBandのギターアンプシミュレータを使ってみた
では、iPhoneでGarageBandを起動して動かしてみると……。こちらもバッチリですね。マルチトラックの再生はもちろん、Fast Trackにギターを入力し、エフェクトをかけてみるとリアルタイム処理された結果がモニターから出てきます。
同様にMultiTrack DAWを動かしてみると、こちらもしっかりレコーディングすることができ、コンデンサマイクを通して録音することが確認できました。iPadでなく、iPhoneでできるため、さらにコンパクトなDTMシステムが構築できるわけですね。
Auriaでのレコーディング、マルチトラックのプレイバックの動作が確認できた
さらにiPad miniでもLightning接続で試してみました。こちらもまったく問題なく動作してくれます。たとえばDAWのAuriaでもしっかりと録音・再生することができたし、Cubasisでも確実にレコーディングすることができました。もちろん、iPolysixやAnimoog、iMS-20、SUNRIZER、iMini……といったソフトシンセでも使うことができましたから、どれでも大丈夫そうですね。
CubassisもFast Trackを通してしっかりと動いてくれる
ところで、「これの電源どうやっているの?」と気になる方も多いはず。そう、iPhoneもiPadも電源供給の能力が非常に低いため、これでオーディオインターフェイスを動かし、ましてや+48Vのファンタム電源を供給するというのは事実上不可能。どこからか電源を得る必要があるわけです。そこで採用されたのが、PCと接続する際に利用するUSB端子から電源供給するという手段です。
そう、iPhoneやiPadの充電用に用意されたACアダプタから普通のUSBケーブルでFast Trackに電源を供給するわけです。そのため、電源のない屋外などでは扱いにくいわけですが、それでもUSBへ電源供給するための電池ボックスなどで駆動することも可能なので、方法はいろいろありそうですよ。
ちなみに、Fast Track DuoもSoloもiPhone/iPad専用のオーディオインターフェイスというわけではなく、もちろんWindows/Macで利用することもできます。また、製品にはProTools ExpressというProTools 10ベースの機能縮小版DAWが同梱されているので、これを買えばすぐにDTMパッケージとして使うことが可能なのです。
ハードウェアの設計自体、業務用機器としてのデファクトスタンダード、ProTools|HDの開発エンジニアが手がけているというだけに、聴いた感じでは、なかなかな高音質。近いうちにAV Watchのほうで、音質チェックなどをしてみたいと思っていますが、結構いい結果が出そうな気がしています。
なお、このFast Tcak Duo、SoloともにEDU版なる教育機関向けが存在しており、大学や専門学校など教育機関向けの価格設定があるそうです。詳しくはアビッド製品取扱い販売店で確認してみてください。ソフトのアカデミック版というのはよく見かけますが、ハードでそうしたサービスをしているのは珍しいですよね。
コメント
はじめまして小太郎と申します。
先日このブログでFocusriteのiTrack SoloとAvidのFast Track Soloが発売されていると知り、購入を考えています。
耳コピ用にiPhoneと電子ピアノをデジタルで接続するためTASCAMのiU2を購入したのですが使い勝手が悪過ぎだため(いちいちケーブルを抜かないとiPhoneが認識されない)結局使わずに終わってしまいました。
そこで質問なのですが、二つを比較した時、
音にどのように違いがありますか?
使い勝手はどちらが良いですか?
FocusriteのiTrack Soloのヘッドフォン出力は音量がかなりとれるとありましたが、AvidのFast Track Soloはどうですか?
アナログで電子ピアノに接続し、電子ピアノのヘッドフォンで聴いた際、iU2は音量がほとんどとれなかったのでずが両製品のアンプの性能はどうでしょうか?
使い方はiPhoneからデジタルで接続し、アナログで電子ピアノに接続し、ヘッドフォンで聞き取ろうと考えています。
長々と申し訳ありません。
ご教授宜しくお願い致します。
小太郎さん
こんにちは。iU2、そんなに悪かったですか??個人的にはかなり気に入って使っていましたが…。ただヘッドホンの出力レベルという意味では電源を別途供給するだけにFast Track Duo/SoloやiTrack Soloのほうが上ですね。
いま手元に2つともないので、比較できないので、お答えできない状況です。
いまいち、接続の仕方が理解できていないのですが、要するにヘッドホンからピアノの音とiPhoneの音がミックスされて聴けて、かつ大きな音が出ればいいということですか?
返信有難うごさいます。
デジタル接続のiPhone音とピアノの音がミックスされて、音量がとれればと考えています。
普段はiPhoneを民生機のコンポのLine Inに接続し、そのコンポからLine Outで電子ピアノに接続し、電子ピアノのヘッドフォン出力で聴いている状態です。
耳コピ用なのでiPhoneのDACをスルーしてオーディオインターフェイスでD/A変換すれば解像度が上がると考えて購入を考えています。
接続方法は
iPhone→Fast Track SoloのLINE OUT
→電子ピアノ→ヘッドフォン
宜しくお願いします。
小太郎さん
はい、それで問題なくいけると思いますよ。
ただ最終的な音量については、電子ピアノのものですよね。
また、電子ピアノ側に入力音量調整がなく、バランス的にみて、iPhoneの音が小さいのだとしたら、それはそれで問題かもしれません。
やはり本来は
iPhone→ ミキサー ← ピアノ
↓
ヘッドホン
とするべきだと思います。こうすればiPhoneとピアノのバランスがとれますから。ただ、Fast Trackなどのオーディオインターフェイスはこのミキサー機能も兼ねるし、iPhone間はデジタル接続なので、音質向上というメリットもありますから、この接続を試してみたほうがいいのではないかと思いますよ。
電子ピアノ側に入力音量調整はありません。
なので藤本さんのおっしゃる
iPhone→ オーディオI/O ← ピアノ
↓
ヘッドホン
とした方が音量がとれそうですね。
その場合Line InがあるFast Track Duoがよさそうですね。
ちなみにですがiOS対応で同軸、光出力ができるDDCのND-S1も持っているのですが、
このどちらかの入力端子があり、
入力音量調節機能が搭載され、
外部電源のある
オーディオインターフェイスのなかでFast Track Solo/Duo程度の価格帯の製品をご存知ありませんか?
小太郎さん
こんにちは。
同軸・光のデジタル=S/PDIFでの接続というのは、音量調整ができないことが基本となります。iOSデバイス用でなくてもいいなら、たとえばTASCAMのUS-366などですかね。
機材が一つで済むのでFast Track Duoにしようと思います。
長々とお付き合い頂きありがとうございました。
非常に助かりました。
fast track soloを購入したのですが、 iPhone6との繋ぎ方
がわかりません。同梱されているものを見ても繋げそうな
ものがありません。
iPhone6と接続するには何か買い足す必要があるのでしょうか?
森島さん
こんにちは。この記事にもある通り、Lightning-30ピンアダプタというものが必要になります。
ありがとうございます。見落としてました。