DTM歴が長い人でも、波形編集ソフトを使っていない、という方が結構いるようです。確かにDAWは万能で、さまざまなことができ、もちろん波形編集処理も可能なのですが、得意不得意があるのも事実。とくにファイル操作や細かな波形編集、そしてノイズ除去、さらにはマスタリングという操作は、DAWではなく波形編集ソフトに任せるのが圧倒的に効率的です。もちろん、波形編集ソフトと一言でいっても、AudacityのようはフリーウェアからWaveLab Proのように6万円近いものまでいろいろありますが、私がぜひお勧めしたいのはMAGIXのSOUND FORGE(サウンドフォージ)です。
基本的にWindows限定となってしますが、とにかく高性能で、高機能で、しかも軽くて、安く、持っていない理由がないといっていいほどのもの。個人的には、もう25年以上使っているなくてはならないソフトなのですが、7月2日に、また新バージョンがリリースされ、SOUND FORGE Pro 14となりました。このタイミングに改めて、なぜSOUND FORGEが有用なのか、DAWユーザーにとっても必要なソフトなのかを解説してみたいと思います。
SOUND FORGEを知らない、という人もいるとは思うので、まずその概要と歴史を簡単に紹介しておきましょう。SOUND FORGEは波形編集ソフトと呼ばれるジャンルのソフトで、DAWが世の中に登場するより前の1991年に誕生したソフトです。当初はSONIC FOUNDRYというアメリカの会社のソフトで、その後SONY CREATIVE SOFTWAREに移行し、ソニーのソフトというイメージで展開していましたが、2016年にドイツMAGIXが買収したという経緯があります。基本的にはオーディオを録音し、波形表示させ、編集し、再生、保存するというとってもシンプルなもの。個人的には1995年に当時フックアップが扱っていたWindows 3.1用のSOUND FORGE 3を入手したのが最初で、それ以来バージョンアップを重ねつつ、使い続けている必須のアイテム。
昔のパッケージが残っていたので、引っ張り出してみましたが、基本的な機能、使い勝手は当時も今も変わらずですね。その後SteinbergからWaveLabが登場してからは2大波形編集ソフトなどと言われ、価格はともに58,000円となっていました。が、国内の発売元がソースネクストに変わってから、機能はそのままに価格が異常なほどに安くなったのはご存知のとおり。最新版のSOUND FORGE Pro 14は12,900円というめちゃくちゃと以外いいようがない価格設定になっています。
事実ヨーロッパ価格は€399(48,000円強)、アメリカ価格でも$399(43,000円弱)なので、日本の価格だけが突出して異常なのがよくわかると思います。もちろんユーザーとしては嬉しいこと、この上ないのですが…。こうした状況からもわかるようにSOUND FORGE Pro 14はまさに、その名のとおり、世界中のプロが利用する業務用のソフトでもあるのです。
長いSOUND FORRGEの歴史の中で、一時はMac版も登場し、使いやすいソフトとして高い評価もあったのですが、残念ながら現在はWindows版だけになってしまったのが大きな欠点ではあります。が、Windowsユーザーであれば、絶対に持っておくべきツールなので、その理由を列挙してみましょう。
1.とにかく軽い
2.落ちずに安定した録音ができる
3.対応フォーマットがとにかく豊富
4.大量の音声データ処理を自動で行える
5.64bit/768kHzにも対応
6.マスタリング機能が充実
7.細かなノイズリダクション処理にも最適
このようにSOUND FORGEはDAWとはちょっと違った違った方向を向いたソフトであるだけに、DAWとは役割分担させて使うことで、大きな真価を発揮してくれるのです。無理に何でもDAWで行うのではなく、それぞれの得意不得意を考えた上で、利用していくのがいいと思います。
もちろん、上記に上げた7つのポイントだけでなく、マルチチャンネルでのレコーディングができる、VSTプラグインが使える、MIDIタイムコードでの外部同期が可能、周波数解析機能の装備……などなど数えていけばきりがないほどの機能を装備しているSOUND FORGE Pro 14。以前は下のバージョンであるSOUND FORGE Audio Studioと結構な価格差がありましたが、ソースネクストの販売になってからは、価格差が小さいというか、SOUND FORGE Proが安くなりすぎているので、DAWユーザーであれば、間違いなくSOUND FORGE Proのほうを買っておくべきだと思います。
ちなみに、最新版のSOUND FORGE Pro 14になっての新機能も少しピックアップしておきましょう。ひとつはARA2に対応したので、MelodyneやSpectraLayersと有機的な連携が可能になったこと。ARA2については以前の記事「ARA 2対応で何が変わるのか?Melodyneの開発者にインタビューしてみた」をご覧いただきたいのですが、これは最近のDTMソフトのトレンドともいえますね。
今回最大のポイントともいえるのはWindowsのエクスプローラー上でオーディオファイルを選んで右クリックすると、SOUND FORGE関連のメニューが出てきて、ファイルフォーマット変換などを直接行えるようになったこと。単純な操作においては、飛躍的に効率が上がりそうです。
Windowsのエクスプローラーから直接SOUND FORGE機能にアクセスできるようになった
どう使うのか、まだ私自身はピンと来てないのですが、WAVECOLORという機能が搭載され、波形の特性に応じて色付けできるようになりました。説明を読むと「ピッチとサウンド特性に異なる色と彩度レベルを割り当て、波形でどのような変化が起きているかを簡単に確認できます」とあります。つまり、この色を見れば、どんな音なのかが分かるということのようです。試しにドラムループを開いてみるとキックが茶色、ハイハットが水色、スネアが黄色に分析されるので、視覚的分かりやすくはなりそうです。
ドラムループを開いて色付けしてみると……
UI的にはインスタント・アクション機能なるものが搭載されています。これは頻繁に使う機能をワンクリックでアクセスできるようにするもので、大きなアイコンで表示されるから、SOUND FORGEの初心者には便利に使えそうです。また、目的に応じたウィンドウ構成のテンプレートなども用意されているので、この辺も参考にはなりそうです。
以上、WinodwsのDTMユーザーがSOUND FORGEを持っておくべき理由をいろいろと紹介してみましたが、お分かりいただけたでしょうか?個人的には海外と同等の価格であったとしても必携のソフトだと思っていますが、ソースネクストにより世界的に見ても異常な価格設定になっているので、間違いなく持っておいて損のないソフトだと、ここに断言します。
※2020.07.15追記
2020.07.14に放送した「DTMステーションPlus!」から、第155回「Synthesizer Vで歌声合成の新時代を先取りしよう!」のプレトーク部分です。「Windows DTMerがSOUND FORGE Pro 14を持っておくべき7つの理由」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
SOUND FORGE Pro 14製品情報
【価格チェック&購入】
◎ソースネクスト ⇒ SOUND FORGE Pro 14