フランス・パリにある大手プラグインメーカー、UVI。最先端のシンセシス、DSPの研究と設計によって作り出されたソフトウェア音源、エフェクトは多くのプロ作家、プロミュージシャンからも評価され、世界中の音楽制作現場で使われ、数多くの音楽作品、ヒット映画、人気ゲームでその成果を耳にすることができます。そのUVIの現行製品は116種類。金額にして$12,000=約180万円分となるもので、トータルすれば37,000プリセット、200万サンプルという膨大なライブラリとなっています。
そのすべてをまとめた、まさにUVIの全部入りパッケージ、SonicBundleが発売されたのです。価格は$799=12万円と93%オフが標準となっていますが、すでにUVI製品を持っている人なら、4月14日までの期間限定でさらに価格が安く購入することが可能。またハードウェアバンドル品などでも事前に登録することで、ある程度の割引が適用されるようなので、初めてUVI製品を購入するユーザーでも手持ちのバンドルソフトなどを見直すことでお得に入手できる可能があります。どうしてこのタイミングで全部入りのSonicBundleを出すことになったのかなど、UVI Japonの富田家維さんにお話しを伺ってみました。
各方面からの要望とタイミングが合致してSonicBundleを発売
--まず、SonicBundleをリリースした経緯を教えてください
富田:話せば長いのですが、簡単に言えば出すタイミングが来たと言うことでしょうか。遡ること10年以上前、最初の大型バンドルであるVintage Vaultをリリースしたのですが(※DTMステーションでも2014年に「サンプリングにとことんこだわるUVIのビンテージシンセの継承手段」として記事で扱っています)、そのころから全部入りを出そうといった話はありました。既にNative Instruments社がKompleteという全部入りバンドルを出していたので、Vintage Vaultを出す前から「UVIは全部入りをやらないの?」リリース後も「どうして全部入りじゃないの?」という声は少なくなかったです。ただ、当時は今ほどインターネット環境が快適ではなかったですし、UVIとしてはパッケージ中心の販売形態からダウンロードのみに向かっていたので、当時は時期尚早でした。現在は快適なダウンロード環境も整ったし、3年前の全製品を対象にしたサブスクリプションサービスのSonicPassの開始や、昨年のFalcon 3、先日リリースのUVI Workstation 4でブラウザーも強化されたので、インストールした音源の音色探しも快適になったので、リリースをしても大丈夫だろうというのがこのタイミングです。あとは前出のSonicPassをリリースしてからも永続ライセンス製品の販売も落ちることなく伸びていたことや、販売店からの要望もありましたのでセールス戦略の面でも出した方が良いだろうという決断になりました。
--価格も約93%オフと、かなり衝撃的ですよね……
富田:そうですか?他社さんも似たような感じだと思いますが、普段、極端な値引きのセールをやらない分、また他社の多くがやっているのに対してUVIがやってこなかったため、特にユーザーの方には衝撃的に感じられるかもしれません。ただ冷静に分析すれば、一括で供給することで、さまざまなコストカットができます。たとえば、SonicBundleは1つの製品なので、ライセンスも1つです。そしてこれに伴う、ライセンス発行のコストが100分1以下になります。あとは、調整をした結果、この価格(799ドル|ユーロ、12万円)になった、というわけです。
永続版のSonicBundleとサブスク版のSonicPassの相違点
--先ほどお話に出たSonicPassとSonicBundleの違いはどうなっているのでしょうか?
富田:両方とも全部入りですが、SonicPassは月次/年次契約のサブスクリプションサービスで、SonicBundleは永続ライセンスの一括払いです。また、前者は契約期間中にリリースした製品も追加料金なしで利用可能できるのが大きな特徴です。逆にいうとSonicBundleは現時点での全製品を網羅していますが、今後登場する製品は含まれません。実際のところUVIはほぼ毎月新製品をリリースしていますので、来月登場予定の製品はSonicBundleには含まれない、というわけです。一方でSonicPassは契約を中止して、期間を置いて再契約した場合、その間に廃盤になった製品は利用できなくなる可能性があります。SonicBundleは廃盤になっても継続利用可能であるというのが一つの違いです。これはUVIが提供する新しい選択肢です。最もお値打ち価格で全部を一気に揃えるSonicBundle、使う時だけ都度払いのSonicPass、全部要らないので欲しいものだけを購入する単品やジャンル特化バンドルなどがあるのです。UVIとしては選択肢が多いことは良いことだと考えており、このようなラインナップにしたわけです。
--実際にSonicBundleを3月19日にリリースして、既存ユーザーからの反応はいかがですか?
富田:まだリリースしたばかりなので、なんとも言えませんが、総じて言えるのは、製品であれ、サービスであれ、全員が100%満足いく、ということはあまりない、ということですね。もちろん、UVIはそれを目指しています。今回のリリースに合わせて既存ユーザーには、割引価格をご案内しています。これは便宜上、アップグレードと言っていますが、実質新規ライセンスです。今持っているライセンスも同時に利用できます。これはシステムの関係上、2025年4月14日までで、UVIストア限定になります。割引価格は一律ではなく、保有ライセンス数に応じて、たくさん持っていれば持っているほど、割引額は大きくなる形になっています。具体的な算出方法や条件については、今後の企業戦略のこともありますので、これ以上言及できないのですが、すでにユーザーである方はぜひご自身の場合がどうであるのかチェックしてみてください。
バンドル版でも4月14日まではアップグレード割引を適用
--これまでUVI製品を持っていないユーザーの場合、12万円ということだと思いますが、何らかを先に購入したり入手すると割引があったりするのでしょうか?またキーボードやオーディオインターフェイスなどのバンドル品としてUVI製品を入手した人もいると思いますが、そうした人は割引対象になりますか?
富田:バンドル品でも正規ライセンスであれば、登録されていれば、割引対象になります。最低限の割引です。ただし、システムの関係上すぐに割引が自動反映されない可能性があるので、その場合はサポートまでご連絡いただければ対応します。期間が限られているので、お早めにどうぞ。
--少し気が早いのですが、今後のSonicBundleアップデートはどうなるのでしょうか?
富田:将来への安心が、現在の購入の後押しになることは理解しています。ただ、リリースしたばかりなので、将来のことはその時の発表までのお楽しみにしていただければ幸いです。いま、言えることは、単品製品の無償アップデートは、SonicBundleでも無料です。細かいバージョンアップは勿論、これまでメジャーアップデートを無料で提供してきたFalconも、方針転換がなければ、SonicBundleユーザーは無料で入手できるでしょう。また、これまで、VintageVaultは3回メジャーアップデートして、内容を拡充してきた事例をみれば、同じようにある程度未バンドルの製品が溜まったところで、メジャーアップデートするでしょう。そしてこの前例に倣えば、既存のSonicBundleユーザーには未バンドル品の保持数に従ったアップグレード価格が提供されます。また、既存ユーザーはその間に廃盤になった製品を継続利用できます。ただし、これは前例からの予想であって公式のお約束ではないということはご理解ください。
FalconとUVI Workstationの位置づけ
--では製品について伺っていきます。まず、FalconとUVI Workstationの違いについて少し教えてください。?
富田:Falconはこれまで数回のDTM Station Plusの出演でも紹介させていただいている通り、豊富なサウンドデザイン機能を持ったモンスターシンセで、UVIエンジンそのもの、サウンドウェアやサウンドバンクと呼ばれるUVI音源の開発環境と言って良いものです。それに対してUVI Wokstationは、そのフロントパネルだけに制限した、Falconのプレーヤーバージョンです。
--でもどうしてFalcon Playerではなく、UVI Workstationとなっているのでしょうか?
富田:UVI Workstationの方が歴史が長いからです。Falconをリリースした時も、そのあとも数回、この名前のままで良いのかと社内検討されてきましたが、そのままにしている一番大きな理由はこれまで使っているユーザーがUVI Workstationが違う名前になるとそれを使った昔のファイルが開けなくなるからです。
--なるほど、ということはSonicBundleを購入するとFalconが手に入るわけだから、無料版であるUVI Workstationは必要なくなるわけですよね?
富田:必要ないと言われれば必要ないです。Falcon専用のエクスパンションはUVI Workstationでは使えないので、Falconだけの方が良いかもしれません。ただし、いくつかのが場面でUVI Workstationの方が良い場合があります。例えば、NKS対応音源を使う場合、UVI Workstationが必要になります。あと、共同作業で相手がFalconを持っていない場合や、Falconでプログラミングの裏側に手を入れる必要がなく、スクリーンの占有面積を減らしたい場合なども有効です。最新バージョン同士であれば、音質や負荷の差はほとんどありません。
SonicBundleの中で、まず最初に使うべきプラグインは!?
--富田さん個人として、SonicBundleを購入したらすぐに触って欲しい製品ってありますか?
富田:Falconを極めたいのなら、まずFalconで、Falcon FactoryやFalcon Expansionを開いて、その構造を分析すると良いでしょう。あとは先月出たMosaiq、Quadraシリーズ、Percussion FactoryやDrum Designerなどのシーケンスを装備したものも楽しいです。Falconには色んなアルペジエーターやシーケンサー、シーケンスジェネレーターが装備されているので、これらの製品はそれを具体的に活用した例です。最新のFalconやUVI Workstationは、個々のプリセットの響きを耳で確認できるので、実際に試してピンときたものから使ってくのが良いでしょう。エフェクトプラグインは、Opal、Plate。この2つは競合商品が多く、ほとんどが実機に忠実な見た目と内容なのですが、UVIの実機に忠実な音がするだけでなく、使いやすい機能であったり、創造性を刺激する能力が備わっています。これはどのUVIエフェクトにも言えることです。あとはShade、これはフィルターとモジュレーターのモンスターです。
--ところで100を超える製品のバンドルでその多くがサンプルベースの割に容量が800GB未満というのはどうしてですか?
富田:ロスレス圧縮で供給しているからです。これはアコースティック楽器の方が効率が良く、実はシンセサンプルだと半分程度にしか圧縮できません。いずれにしても音質をキープしつつ、容量が少なくて済むのとサンプルのストリーミング時の負荷も軽減にも繋がっています。
--最後にプリセット数も37,000というのは製品数からすると少ないように思えますが、この点はいかがですか?.
富田:十分な数だと思います。我々はポリシーの1つにプリセットはそれ自体が使えるものであるのと同時に、新しい音色を生み出すための礎にもなるように配慮して作成しています。ぜひ、調整に挑戦して新しい自分だけの響きを見つけましょう。
--ありがとうございました。
YouTube Live/ニコニコ生放送 DTMステーションPlus! UVI SonicBundle特集を3月31日に配信
今回記事で紹介したUVI SonicBundleに関して、急遽3月31日にYouTube Liveおよびニコニコ生放送のDTMステーションPlus!の番組で特集することが決まりました。ゲストにはこの記事でインタビューさせていただいている富田家維さんです。お楽しみに。
日時:2025年3月31日 20:00~22:00
【YouTube Live】
【ニコニコ生放送】

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