オーディオテクニカの開放型モニターヘッドホンATH-Rシリーズのエントリーモデル、ATH-R30xが3月28日に発売されることが決定しました。プロ用として約10年間販売され続けてきた大人気製品ATH-R70xの後継モデルであるATH-R70xaをフラグシップに、DTMer向けのATH-R50xの2製品が先日発売されていたATH-Rシリーズ。NAMM ShowでそのエントリーモデルであるATH-R30xが発表されていたので、楽しみにしていた方もいるのではないでしょうか?そのATH-R30xが発売されることにより、プロユースのATH-R70xa、ホームスタジオ向けのATH-R50x、エントリーモデルのATH-R30xと、きれいにラインナップが揃いました。
そんなATH-R30xは、最上位モデルATH-R70xaのコンセプトをしっかりと引き継いでおり、コストを抑えつつも、音質や装着感など音のために必要な部分は、高いクオリティで実現しています。価格は18,150円(税込)と、エントリーモデルとして標準的な価格ですが、実際に試聴してみると1ランク上のヘッドホンと比べても、遜色ないサウンドに仕上がっているのです。初めての開放型モニターヘッドホンとしてピッタリという感じのATH-R30xを一足早く試してみたので、その特徴を紹介していきましょう。
60年以上にわたるオーディオテクニカの技術が詰め込まれた、最新鋭の開放型モニターヘッドホンATH-Rシリーズ
まずは、ATH-Rシリーズのラインナップを改めて確認しておきましょう。各モデルの価格は以下のようになっております。
ATH-R50x 27,830円(税込)
ATH-R30x 18,150円(税込)
価格からも分かるように、上位モデルからATH-R70xa、ATH-R50x、ATH-R30xと3ラインナップで展開されています。ATH-R70xaとATH-R50xは以前「オーディオテクニカの最新技術が詰め込まれた開放型モニターヘッドホンATH-R50x、ATH-R70xaの実力」という記事で紹介していて、実際に3機種とも試聴してみましたが、音の方向性はどれも同じ。それぞれ聴き比べてみても違和感なくモニタリングすることができました。
そんなATH-Rシリーズの3機種ですが、それぞれターゲットが異なっており、フラグシップモデルのATH-R70xaはエンジニアなどプロの現場で使うために設計されており、ミドルレンジのATH-R50xはホームスタジオ環境向け、まさにDTMer向けのモデルとなっています。そしてATH-R30xは、リスニング用途だったり、これから音楽制作を始める初心者向けの製品という位置付けがされています。とはいえ、たしかに価格的に見てもATH-R30xは初心者向けですが、1つ上のATH-R50xと比べても遜色ないサウンドをしているのです。他社も含めると1ランクも2ランクも上のサウンドといっても過言ではないかもしれません。
ちなみに、3機種のスペックを並べてみると以下のようになっています。
ATH-R30x | ATH-R50x | ATH-R70xa | |
型式 | オープンバックダイナミック型 | オープンバックダイナミック型 | オープンバックダイナミック型 |
ドライバー | 40mm | 45mm | 45mm |
出力音圧レベル | 92dB/mW | 93.3dB/mW | 97dB/mW |
再生周波数帯域 | 15~25,000Hz | 5〜40,000Hz | 5〜40,000Hz |
最大入力 | 1,000mW | 1,600mW | 1,000mW |
インピーダンス | 36Ω | 50Ω | 470Ω |
質量(コード除く) | 約 210g | 約207g | 約199g |
入力端子 | 3.5mmステレオミニジャック | 3.5mmステレオミニジャック | 3.5mmステレオミニジャック |
ATH-R30xのみドライバーは40mm、再生周波数帯域が少し狭まっていますが、インピーダンスはATH-Rシリーズの中で最も低いので、どんなデバイスでも十分な音量で再生することができますね。重量でいうと、ATH-R30xが最も重く210gとなっていますが、SONYのMDR-CD900STが約200gなので、かなり軽い分類に入ることが分かると思います。
密閉型と開放型。それぞれのメリット・デメリットとは?
さて、ATH-R30xのより詳しい紹介に入る前に、改めてではありますが密閉型ヘッドホンと開放型ヘッドホンの特徴について紹介しておきましょう。ヘッドホンはその構造から、大きく密閉型(クローズド型)と開放型(オープンエアー型)の2つに分けられています。ちょうど耳に着ける丸いパーツであるハウジングの特徴がそれぞれ異なり、ハウジングの中にはドライバーが搭載されていますが、そのドライバーの背面が密閉されているのが密閉型。背面を解放したタイプが開放型となっています。
主な特徴として、密閉型ヘッドホンは遮音性が高く、ヘッドホンから出ている音を外に漏らさず、外部からの音を遮断しやすいというメリットがあります。そのため、たとえばボーカルレコーディング時など、ヘッドホンの音がマイクに入りにくいので、レコーディング時のモニター用途として使われることが多いです。またサウンドとしては、ハウジングが密閉されていることで、低域が耳まで漏れずに届き、結果力強い低音を再生できる一方、音がこもったり、音場が狭くなってしまうという傾向があるとされています。
続いて開放型ですが、こちらは遮音性は低く、ヘッドホンから出る音は外部に漏れますし、外部からの音もほぼ直接耳に入ってきます。なので、レコーディングや外部が騒がしい場所では不向き。こういったデメリットがある一方、サウンドとしては、高音域がよく伸び、音抜けがいいため長時間の使用も快適で、広い音場感のクリアなサウンドが特徴となっています。ただし、低音域は増強することができないので、低音域の力強さが不足することがあるとされています。
密閉型と開放型で、以上のような傾向があるのですが、もちろんこれらは各機種によって差があります。それぞれの企業が、コンセプトを元に各形状の弱点を克服しながら、開発を行っているのです。さて、前述の通りATH-R30xは開放型なので、レコーディングや屋外での使用は向いていません。ボーカルレコーディングなどのヘッドホンを探しているのであれば、密閉型を選ぶといいでしょう。一方、作曲や編曲、ミックスやマスタリング用途としてのヘッドホンを探しているのであれば、ATH-R30xは最適。
開放型の特徴でもある、クリアな中音域、高音域を再生することができ、高音域の広がりや細部の表現も完璧。苦手とされている低音域も、開放型専用設計のドライバーを採用しているので、実際低音域の物足りなさを感じることはありません。さらにハウジングの共振を利用しないサウンドとなり、ドライバーの再生音が直接耳に届き、周波数が人工的に変換されたり、音響空洞(アコースティックダクト)がない、自然なサウンドをモニターすることが可能です。色付けがなく、特定の周波数にピークのないフラットなサウンドを作れるのは、日本メーカーであるオーディオテクニカの技術力によるところでしょうね。
上位モデルと比べても引けを取らない高級感が魅力のATH-R30x
では、ATH-R30xについて、より詳しく見ていきましょう。ATH-R30xのデザインは、上位機種と比べても安っぽさはなく、むしろ高級感があり、見比べただけではどちらが値段が高いモデルか分からないほど、よく作られています。
ヘッドバンドは、ATH-R70xaに近い形となっており、ATH-R70xaはマグネット式のヘッドパッドである一方、ATH-R30xはマジックテープでヘッドパッドの位置を調整できるようになっています。ヘッドホンの重量を均等に分散させるヘッドバンドとなっており、音質も相まって長時間着けていても疲れにくい仕様となっています。
イヤーパッドは、柔らかいベロア素材でできており、側圧もちょうどよく、実際付けてみると本体が軽いこともあり、快適でした。
装着感は上位モデルに引けを取らないATH-R30xですが、ケーブルは両出しで、着脱式ではないので、ここで悩む方もいそうだなと感じました。着脱式であれば、断線した際も簡単にリケーブルできるのですが、着脱式でないとそうもいきません。とはいえ、実際私もいくつかヘッドホンを所有していますが、断線したことは一度もありません。特に自宅で使用する方であれば、そう簡単に断線するものではないので、価格から考えると全然許容できる範囲なのでは、と思いますね。
ATH-R30x、ATH-R50x、ATH-R70xaの選び方
さて、そんなATH-R30xを含むATH-Rシリーズですが、選び方としては、前述の通りプロクオリティを求めるのであればATH-R70xaとなってきます。ただし前回の記事でも書いていますが、インピーダンスが高いので、ATH-R70xaをしっかりと鳴らすにはそれなりの機材が揃っている必要がある点には注意が必要です。そして、多くの方が迷うとすれば、ATH-R50xにするか、ATH-R30xにするかだと思います。
約1万円の価格差をどう見るかにもよりますが、構造的な大きな違いでいうと、ATH-R50xはケーブルが着脱式、ATH-R30xは非着脱式という点。音質的には、やはり上位モデルになるほど、順当に精度が上がっていきます。といっても、ATH-R30xも音楽制作で全然使えるレベル。ぜひ、聴き比べできる機会があればご自身の耳で確かめていただきたいのですが、DTM初心者やリスニング用途であればATH-R30xは十分過ぎるスペックだと思いますよ。特に初めての開放型ヘッドホンだとしたらATH-R30xは最適ですね。
一方で、音楽制作の経験があって、すでにヘッドホンも持っているけれど、もう1ランク上で精度が高く、音のいいモニターヘッドホンを探しているのであれば、ATH-R50xを選ぶのがいいでしょう。ATH-R30xは、ケーブルの長さが3m固定ですが、ATH-R50xは別途1.2mのケーブルも付属しているので、デスクの上で作業が完結するのであれば、1.2mケーブルはかなり取り回しがいいですよ。
以上、ATH-R30xについて紹介しました。初めて導入する開放型モニターヘッドホンとして最適なATH-R30x。密閉型とはまた違った魅力があるので、ぜひ1度試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
ATH-R30x製品情報
ATH-R50x製品情報
ATH-R70xa製品情報
「オーディオテクニカの最新技術が詰め込まれた開放型モニターヘッドホンATH-R50x、ATH-R70xaの実力」
【価格チェック&購入】
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