先日NAMM Showで発表されたオーディオテクニカの最新の開放型モニターヘッドホンATH-R50xとATH-R70xaが、2月14日に発売されました。ATH-R70xaは、約10年間発売され続けてきた大人気モデルATH-R70xの後継モデル。ATH-R50xは、ATH-R70xaの音質を継承しつつもコストを抑えた、開放型モニターヘッドホンの新たなラインナップとなっています。両機種とも圧倒的な軽量設計となっており、ATH-R70xaは約199g、ATH-R50xは約207gと長時間の作業でもストレスの掛からないヘッドホンに仕上がっています。
スタジオ向けのATH-R70xa、ホームスタジオ向けのATH-R50x。60年以上にわたり、音の純度を追求し、革新と献身を通じて高品質のオーディオを提供することを目指してきたオーディオテクニカの技術が詰まった最新のモニターヘッドホンとなっており、出音は完璧。作曲からミックス・マスタリングまで、音楽制作に必要な要素が搭載された、日本メーカーであるオーディオテクニカのATH-R50xとATH-R70xaを試してみたので紹介していきましょう。
60年以上にわたるオーディオテクニカの技術が詰め込まれた、最新鋭の開放型モニターヘッドホンATH-R50xとATH-R70xa
NAMM Showで発表され、2月14日に発売されたのは、
の2機種。さらに手ごろに開放型の音を楽しめるモデルとして、ATH-R30xの発表も行われていますが、こちらも登場したら改めて取り上げいきたいと思います。では、まずはATH-R70xaから詳しく見ていきましょう。
現代の音楽制作環境に合わせてアップデートが行われたATH-R70xa
ATH-R70xaは、冒頭にも書いたようにプロ用の開放型モニターヘッドホンとして定番になっているATH-R70xの後継モデル。発売から約10年経った、このタイミングで、より現代の音楽制作にマッチするようにアップデートされました。見た目的な大きな違いとしては、ATH-R70xで採用されていた、3D方式ウイングサポートが廃止され、マグネットでつけ外し可能なヘッドパッドに変わりました。
また、スライダーやロゴの位置などデザインの変更も行われており、重量はATH-R70xが約210g、ATH-R70xaは約199gとさらなる軽量化が行われています。ケーブルの構造など、以前から引き継がれているものもあり、サウンドについても継承されているとのことなので、ATH-R70xユーザーの方も、違和感を感じることなく、ATH-R70xaを使うことができそうですね。
そんなATH-R70xaは、トゥルーオープンエアー(真の開放型)オーディオという振動板の動きだけで原音再生する設計で作られています。これは、2015年にATH-R70xが登場してきた際に作られたコンセプト。その後2017年に発売された261,800円(税込)の開放型トップエンドモデルのATH-ADX5000や2024年に登場した165,000円(税込)のヘッドホンATH-ADX3000にも引き継がれており、ATH-R70xaもこの設計技術を継承しているのです。従来の密閉型やセミオープン型ヘッドホンは、その名の通り、低域をなるべく漏らさない設計となっており、耳にダイレクトに低域が届くのに対し、このトゥルーオープンエアーオーディオでは、ドライバーそのものを1から設計することにより、低域でも十分な音圧を出せる振動板が最適にチューニングされることで、空気の流れを淀みなく、ダイレクトに運び、自然な音を再生しています。
圧倒的な開口率を誇るパンチングメッシュにより、ドライバーの再生音を直接耳に届けることができ、純粋でリアルな、長時間モニタリングでも聴き疲れしない自然な音を再生することができるのです。このドライバーの設計が行えるのも、オーディオテクニカの技術力があるからこそ。オーディオテクニカの開放型ヘッドホンの音は、長年培われてきたトランスデューサー(変換器)技術によって作られており、この技術をトゥルーオープンエアーオーディオのために開発されたドライバーに注ぎ込んでいるのです。そんな高い精度で作られたドライバーによって、色付けがなく、特定の周波数にピークのないフラットなサウンドを実現。なおATH-R50xも同様にトゥルーオープンエアーオーディオを実現しています。
DTMerにベストマッチな開放型モニターヘッドホンATH-R50x
ATH-R70xaとATH-R50xには、約3万円の価格差がありますが、この2機種には明確なターゲットの違いがあります。ATH-R70xaは、まさに業務用として設計されており、レコーディング・ミキシングスタジオでの使用などプロ機器との接続を想定したハイインピーダンス仕様となっています。そのため、大きな出力を持つヘッドホンアンプがないとしっかりした音で鳴らせないという面があります。
一方、ATH-R50xは、業務用機器以外のスマートフォンやポータブルプレーヤーなどにおいても、正確なモニタリングが行えるようローインピーダンス仕様となっており、DTMerにマッチしたヘッドホンとして開発されているのです。そのため、一般的なオーディオインターフェイスなどのヘッドホン出力でも無理なく、大音量で鳴らせるというのが大きな違いとなっているのです。
スペック表を見てみると分かるようにATH-R70xaは470Ω、ATH-R50xは50Ωで設計されています。また、重量に関してATH-R70xaは約199gである一方、ATH-R50xは約207gとなっています。付属品は、どちらも着脱式の3.0mコード(φ3.5mm金メッキステレオミニプラグ)、φ6.3mmステレオ変換プラグアダプター、ポーチで、ATH-R50xには追加で自宅で取り回しやすい1.2mのコードが付属しています。
ATH-R50x | ATH-R70xa | |
型式 | オープンバックダイナミック型 | オープンバックダイナミック型 |
ドライパー | 45mm | 45mm |
出力音圧レベル | 93.3dB/mW | 97dB/mW |
再生周波数帯域 | 5〜40,000Hz | 5〜40,000Hz |
最大入力 | 1,600mW | 1,000mW |
インピーダンス | 50Ω | 470Ω |
質量(コード除く) | 約207g | 約199g |
入力端子 | 3.5mmステレオミニジャック | 3.5mmステレオミニジャック |
付属品の着脱式の3.0mコードは共通と書きましたが、正確にはATH-R50xは片出し、ATH-R70xaは両出しとなっているので、コードの種類は異なります。いずれにせよ着脱式なので、断線した際など、簡単にリケーブルすることができるので便利ですよね。また、ポーチもATH-R50xは合皮、ATH-R70xaはベロア生地と素材に違いがありました。
また、ATH-R50xとATH-R70xaは、インピーダンスやケーブルの形式以外にも、ヘッドバンドに違いがあり、前述の通りATH-R70xaはマグネット式のヘッドパッドである一方、ATH-R50xはヘッドバンドにクッションが固定された作りとなっています。
スライダーの構造や頑丈な金属製ヘッドバンド構造は似ていますが、デザインは若干異なりますね。また見た目では分かりにくいですが、ハウジングの形状にも少し違いがありました。ちなみに、スペック表にもありますが、ドライバーの口径はいずれも45mm、再生周波数帯域も同じで5~40,000Hzとなっています。
ATH-R50xとATH-R70xaのサウンドの方向性は同じ
ほぼ見た目は同じ両機種ですが、重要なのは音質ですよね。実際に聴き比べてみたところ、音の方向性は同じ。どちらも解像度が高く、奥行き感、定位感、トランジェント感、量感、残響感…など、どの要素においてもトップレベル。出音はフラットになっているので、音楽制作で使いやすいモニターヘッドホンに仕上がっていました。
たとえばトランジェント感、リリース感、音の再現性が高いのでキックやスネアなど、アタックとリリースが重要なソースも正確に判断することができますし、奥行き感、定位感がいいので上モノの左右の広がりや距離感も調整しやすいですね。ボーカルも正確に再生されるので、歯擦音の判断、ブレスのボリューム感、リップノイズ…など、ノイズになる部分も繊細なコントロールが可能です。またバランスがいいので個々のソースの音作りだけでなく、全体的なミックス時にも使いやすいですね。
精度の高くないヘッドホンや、色付けや低音の増強が行われている製品だと、「ここがこのヘッドホンのクセだから、少し控えめにしよう…」など脳内で補正する必要がありますが、ATH-R50xとATH-R70xaは、ありのままを再生してくれているので、この出音を信じてミックスをすることができますよ。
もちろんATH-R50xとATH-R70xaには多少の差がありますが、正直ATH-R50xでも十分過ぎるクオリティ。同価格帯のヘッドホンと比べてみても、かなりコストパフォーマンスが高い機種だと感じましたね。
強いていえば、ATH-R50xの方がロック感のあるサウンドをしていて、ATH-R70xaと比べると中音域以上が歪みっぽい印象。ATH-R50xは元気のあるサウンドで、ATH-R70xaはよりピュアなサウンドですが、好みもあると思うので、ATH-R50xの方が好きという方もいそうなぐらい、ほぼほぼ同クオリティでしたね。これで約3万の価格差なので、ATH-R50xはかなり人気なモデルになるのでは、と思ってしまいます。前述の通り、ATH-R70xaは業務機器との接続を想定して作られているので、環境によってはATH-R50xの方が、いい音で鳴るということもあると思いますよ。
以上、ATH-R70xaとATH-R50xについて紹介しました。このモデルはぜひ試聴できるタイミングがあれば、聴き比べてみてほしいですね。開放型モニターヘッドホンデビューとして、ATH-R50xやATH-R70xaを試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
ATH-R70xa製品情報
ATH-R50x製品情報
【価格チェック&購入】
◎オーディオテクニカ公式オンラインストア ⇒ ATH-R70xa
◎オーディオテクニカ公式オンラインストア ⇒ ATH-R50x
コメント
旧70xも価格帯ナンバーワンで低音が見えるという話だったので、ちょっとお手頃になった?50xでそれが実現できるなら期待できますね。70xaは当然見えやすいんでしょうが、その当たりの印象はどうでしょうか?
あと70xのウイングサポートは他のウイングサポートと比べても明らかに頭を選ぶ形状だったのでこの改良も好印象ですね。
Naoさん
あくまでも試してみての印象ですが、R50xの音のほうが、R70xaよりもR70xに近いのではと感じではありました。コストパフォーマンス的に見ても、すごくいいヘッドホンだと感じました。