CoWRITEが主催する、作曲コンテスト「S-1 グランプリ」のエントリーが12月2日よりスタートしています。主催のCoWRITEは、乃木坂46、嵐、家入レオ、中島美嘉…をはじめ、2017年にはレコード大賞作曲賞を受賞している、作詞家、作曲家、編曲家でミュージシャンでもありプロデューサーである杉山勝彦さんが代表を務める作家事務所。数々の有名作品、有名アーティストの作詞、作曲、編曲を手掛けるプロダクションが主催する作曲コンテストなので、参加して損のないイベントだと思います。今年夏に「DTM甲子園」というコンテストがありましたが、それに続く大きな作曲コンテストとなっているようです。
部門は、song writer部門とsinger-songwriter部門の2つ。それぞれ大賞には20万円と副賞としてiZotope Music Production Suite7、CoWRITE studioでのレコーディングの権利が送られます。また2位は4万円、3位は3万円、4位は2万円、5位は1万円の賞金も用意されています。募集楽曲は、歌ものでワンコーラス、89秒以内の楽曲。テーマは、春に誰かの背中を押せる歌、失恋ソング、ご自身で定めたテーマとなっているので、実質テーマは自由です。締切はsong writer部門が1月31日まで、singer-songwriter部門が2月28日まで。両部門ともに1位、2位の方は双方希望の場合、CoWRITE所属でプロ活動を開始できます、とあるのでプロデビューを狙っている人にとってもチャンス。そんなワンコーラスで気軽に参加することのできるS-1 グランプリの詳細をまとめたので、杉山さんのインタビューも含め紹介していきましょう。
song writer部門とsinger-songwriter部門の2つ部門で開催
まず今回開催される作曲コンテストS-1グランプリの部門はsong writer部門とsinger-songwriter部門の2つ。
song writer(ソングライター)部門
song writer部門は、曲そのものを競う部門で、作詞、作曲、編曲、そしてミックスも含めた音源としての総合力100点満点で評価されます。ボーカルが入った89秒以内の楽曲が応募条件となり、楽曲全体が評価対象なので、イントロがいいだけでも高評価とのこと。ちなみにボーカルは、歌声AIでもボカロでもOKですが、楽曲が同じレベルだった場合、評価の高さは ボーカル>歌声AI>ボカロと評価されます。知り合いのボーカリストに頼んだり、友人やバンドでの共作もOKですが、その際は誰がどこのパートを担当したか応募の際に明記する必要があります。
singer-songwriter(シンガーソングライター)部門
続いて、singer-songwriter部門ですが、こちらは歌唱力、作詞、作曲の100点満点、プラス最大10点加点される行動力で評価される部門となっています。この部門は、弾き語りでも参加でき、アレンジはいいに越したことはないですが、基本的に問わないとのこと。また弾き語りで応募する際は、なるべく音質がいいほうが好ましいと書かれていますね。singer-songwriter部門では、時間の制約はなく、ワンコーラスでもフルコーラスでもOKとなっています。
行動力の部分に関してですが、こちらは希望者のみで、1月25日までに加点申し込みフォームを送る必要があります。ちなみに行動力は、歌で真剣に活動しようとしている方に向けてCoWRITEが推奨している歌配信アプリ「ColorSing」での配信ライブスコアによって評価されます。1位は10点、2位は9点…といった具合ですね。なお歌配信アプリColorSingの審査期間は2月1日〜2月28日までとのこと。ちなみに現時点では、singer-songwriter部門のエントリーはまだスタートしていません。こちらの部門は2025年1月1日からとなっています。
特に明記はされていませんが、ミックスやマスタリングをプロに外注するのはNG。またループ素材に歌を乗せるだけでは、評価されるのは難しいと思っておいたほうがいいでしょう。注意事項について詳しくは特設ページをご覧いただきたいのですが、AI作曲サービスからアイディアを得るのはOKですが、そのまま提出するのはNG。なお、応募は1人1曲までですが、song writer(ソングライター)部門とsinger-songwriter(シンガーソングライター)部門はそれぞれ1曲ずつ応募することは可能なので、最大各部門1曲ずつ、最大2曲までエントリーすることができます。
ちなみに楽曲のテーマは、両部門共通して
2失恋ソング
3ご自身で定めたテーマ(自由)
とあり、3番目に自由と入っているので、基本自由です。もしテーマが決まらないな、という場合は1または2のテーマで応募してみるのがいいと思いますよ。一応、ストックしている楽曲でもエントリー可能ですが、できる限り今回のS-1グランプリに向けて書き下ろした楽曲をご提出くださいとのことです。
審査員は最前線で活躍する作家の方々
審査員は以下の方々です。
小川 智之 1980年9月17日東京生まれ 早稲田大学卒業 IMAGINE VOICE代表取締役 CoWRITE所属主な参加作品 藍井エイル「IGNITE」(共作詞・作曲) 佐香智久「ゲッタバンバン」(作曲) Claris「SHIORI」(作詞・作曲) ふくい舞「臆病な私への子守唄」(作詞・作曲) 西野カナコーラスアレンジ多数 他 |
大賞は20万円と副賞iZotope Music Production Suite7、CoWRITE studioでのレコーディングの権利が送られる
各部門それぞれ1位20万円、2位は4万円、3位は3万円、4位は2万円、5位は1万円の賞金。1位の方には副賞としてiZotope Music Production Suite7、CoWRITE studioでのレコーディングの権利が送られます。
また両部門ともに1位、2位の方は双方希望の場合、CoWRITE 所属でプロ活動を開始できるとのこと。ちなみにiZotope Music Production Suite7は今の価格で101,800円(税込)。CoWRITE studioでのレコーディングは、通常利用する場合は3時間パックでスタジオ使用料が33,000円、エンジニア料が13,200円となっているので、かなり豪華な副賞ですよね
CoWRITE studioでのレコーディングの権利は、1曲を録り切るまでとなっているので、時間を気にしなくていいのは、かなり親切だと思います。
開催期間
開催期間は以下の通りです。
エントリー期間:12月1日(日)〜1月31日(金)23:59
最終審査:2月15日(土)13時〜
エントリー期間:1月1日(水)〜2月28日(金)23:59
最終審査:3月20日(木)13時〜
song writer部門とsinger-songwriter部門では、約1ヶ月スケジュールがずれている形ですね。また前述しましたが、singer-songwriter部門には、加点要素があり、これのフォーム提出期限は1月25日までとなっていて、歌配信アプリColorSingの審査期間は2月1日〜2月28日なので、注意してくださいね。
最終審査については各部門とも、杉山さんのYouTubeチャンネルにて生配信されます。上位5名の参加者は、その結果発表の会場に参加することができ、後ほど杉山さんのインタビュー内でも出てきますが、実際にディスカッションする時間もあるらしいですよ。
エントリー方法
エントリーは各部門特設ページの応募フォームボタンをクリックすると、Googleフォームが表示されるので、ここから必要事項を入力して送信します。その後確認メールが届いたら、応募完了です。
ギガファイル便またはdropboxのURLを記載したり、mp3音源と歌詞カード、ファイル名の指定などなどあるので、しっかり確認した上で応募しましょう。
杉山勝彦さんさんインタビュー
今回のS-1グランプリを主催するCoWRITEの代表である杉山さんに、S-1グランプリを開催した背景などについて伺ってみました。
--今回なぜ、S-1グランプリを開催しようと思ったのでしょうか?
杉山:前迫さんのところが開催していたDTM甲子園の影響は大きいですね。前迫さんとは、以前からの知り合いで、時々一緒に食事に行ったりもしています。それこそ彼もスクールを始めていたり、割と近い仕事の仕方をしているんんですよね。最近の作家事務所系は、育成期間あったほうがいいよね、というムーブメントが起きていて、どうやって周知しているかとか話していた際、DTM甲子園の話が上がってきたんですよ。将来的には、みんなで集まって、作曲家ドラフトみたいなのがあったら、盛り上がるよね。という話もあったのですが、まずは自分のところで開催してみたいという思いがあって、今回僕らとしてS-1グランプリを開催しました。
--やはりDTM甲子園がきっかけだったんですね。S-1グランプリにはシンガーソングライター部門がありますが、これは作曲コンテストとしては珍しいですよね。
杉山:そうですね、たとえばシンガーソングライターとして活動していて、一生懸命動いて発信していたり、ストリートライブだったり、歌ってみたに載せたりしている人はたくさんいると思います。でも、すごくいい歌声で、いい曲を書けても、レコーディングする環境とか、アレンジで困っていて、あまり納得のいく形にできていないということも多いんですよね。ただ、その中で光る人がいたら、マッチングすることもできるし、単純にうちもアーティストを抱えたりとか、スタジオを持っていますし、僕自身アーティスト活動していたノウハウもあるので、サポートすることもできるよ、というのが1点。
そして、最近ColorSingというライブ配信プラットフォームを見つけたこと。これは2023年スタートの歌特化のサービスなんです。今までのライブ配信アプリは、良くも悪くもインターフェイスも含めて、ごった煮だったんですよ。夜のお店の方がおしゃべりしていて、めっちゃ稼いでいたりとか、その中にシンガーソングライターやシンガーが入るのは抵抗がありました。それに対しColorSingは歌に特化しているので、みんなシンガー。リスナーもそういうのに明るい人たち、なのでいいと思ったんですよね。中国のライブ配信のマーケットも先行したのは何でもあり、ですけど後発で歌特化のものが出てきて、抜いたりもしているので、日本で同じ現象が起きるか分からないですが、一定のニーズがあるのは、ほぼ間違いないだろうと。
ライブ活動を頑張っているけど、まだまだ生活できていない子とかに、アルバイトよりもはるかにいい割合で稼げて、しかも自分の歌を広げるきっかけにもなる、という意味でもすごくいいと感じ、最近ライバー事業も始めました。シンガーソングライターって単体で動けて、歌がうまいとそれなりになんとかできてしまうんですね。一方、バンドとかと違って、孤独で鎖国状態になりがちで、ほかの情報とか知識が入ってこなかったりということもあるんです。なので、そういった方をサポートできるという要素もありますね。
--ソングライター部門、いわゆるDTM部門についても教えてください。
杉山:定期的にうちの作家事務所に、作家活動したいですというメッセージとともにデモをいただくんですね。けど、そのデモが明らかに前作ったものや、とりあえず送っておこうというものが多いんです。きっといろいろなところに送っているのだと思いますが、そういったものだと、本当の実力や熱が伝わってきません。本来は、それでも自分を律して頑張ってほしいんですけど、何かキッカケがあると頑張れるというのはありますよね。もし、S-1グランプリでいい方がいれば、すぐにうちで作家活動を始めればいいと思いますし、こういった機会があると、自分の限界値を超えるものを作れたりすることもあると思い、企画してみたんです。
前迫さんと内容は近いですが、人が違えば選ばれる楽曲も違うので、そういう意味でも開催する意義はあると感じています。うちの事務所は、ボカロP事務所ではないというのもあって、歌の評価としては、実際にシンガー中に仮歌が1番です。それが難しければ、Synthesizer VなどのAI歌声、最後にボーカロイドという評価にしたんです。というのも、作曲家として動いていく場合、人間に提供する楽曲なので、ボーカロイドの魅力をうまく伝えるのとは、また違うんですよ。まあもちろん、サウンドメイクがよければ、もちろん高評価になるのですが、いわゆる職業作曲家に寄っているコンテストにはなっていると思います。
--参加する側としては、こういったコンテストがたくさんあるほうが嬉しいと思います。
杉山:いくつあってもいいですよね。甲子園で夏があるなら、こっちは冬に開催しようかなという感じですね。スクールも運営していますが、新しい才能、若手を育てていって、クリエイティブに真摯に向き合うクリエイティブ集団を作りたいという思いがあるんですよ。一緒に作りませんか?という感じですよね。うちは手数料は業界最低水準ですし、たとえばアーティスト活動しながら、作家している人もいるのですが、アーティスト活動に関しては完全ノータッチで、ご自由にどうぞなので、マージンよこせとかないですし、お互いにとっていい事務所にしていきたい気持ちは強いですね。そういった、遠い目的もありつつのコンテストになっていますね。
--単純な作曲コンテストである一方、オーディションの場でもあるという側面もあるんですね。
杉山:はい、グランプリだけを狙って参加していただいてもOKですし、プロになりたいという気持ちがあれば、一緒に頑張りましょうという感じですね。また、上位5名の最終審査は可能であれば会場に集まっていただいて、どうやって作ったのかとか、どう考えたのかとか、なんの機材を使っているのとか、ディスカッションできればと思っています。そこから、この人はプロとして通用すると思うから、今すぐ始めようよ、という話もあるかもしれないですね。たとえば、うちの作家事務所の雰囲気と合わなかったとしても、すごくいい人だからと、それこそ前迫さんに紹介しますし、Akira Sunsetさんとか、Carlos K.くんのところとか、すばらしい事務所たくさんあるので、そこに繋げていければなと思っています。あくまで双方の合意のもとですし、極端な話グランプリ取ったとしても、仕事を一緒にしたくない人であれば、お誘いはしないと思います。逆に入賞しなくても、お声がけすることはあるかとも思いますね。
--グランプリはあくまで、グランプリ。そこは実力主義なんですね。
杉山:世知辛い音楽業界をそのままにしたいな、という思いがありますし、それが正しいと思うので。作品がよければ、どんな人柄であろうが、グランプリはグランプリですね。
--ありがとうございました。
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