AT50シリーズで2ndアルバム制作中。繊細な音で魅了するシンガーソングライター。XinUの歌声、そのサウンドの秘密に迫る

最近FMラジオなどでもよくその楽曲を聴く、シンガーソングライターのXinU(シンユウ)さん。2021年10月に「ココカラ」でデビュー後、EPを3枚、アルバムを1枚と精力的に作品を作り続ける一方、すき家のCMとのタイアップが決まり石原さとみの「うな牛」のBGMとしてテレビに流れたり、Instagramはフォロワーが10万人を突破し、老若男女問わず、幅広い層のファンを集めています。そのInstagramフォロワーの2割程度が台湾の人たちというのも非常にユニークな特徴で、これまで2回行った台湾でのライブも満員御礼の大成功を果たしています。

そのXinUさんは、現在行っているクラウドファンディング「XinU ART MARKET 3」を通じて2ndアルバムを制作中。そのレコーディングのマイクにはオーディオテクニカのフラグシップマイクのAT5047、AT5040が使われています。非常に繊細な音までハッキリ捉え、モニターすることができるから、喉に引っかけて歌う独特なテクニックで歌唱するXinUさんにとって非常に強力な武器になるのだとか。そのXinUさんに曲の作り方やDTM環境、そしてマイクの使い方など、話を伺ってみました。

インタビューに応えてくれたシンガーソングライターのXinUさん

XinUとしてのデビューへの道筋とSNSがもたらした転機

--XinUさんには、XinUとしてのデビュー前にDTMステーションPlus!の番組に出演していただいたこともありましたが、改めてデビューまでの経緯などを教えてください。
XinU:もともと日本の曲や海外の曲、ジャズなどジャンルを問わず歌っていたのですが、コロナ禍に入る少し前くらいに、自分で歌ったアカペラの動画をTwitterやInstagramにアップしていたんです。iPhoneで多重録音・録画して4分割画面で一人でコーラスを重ねる、というもの。これを現在のプロデューサーであるM-Swift松下昇平さんが偶然見かけて、共通の友人を通じて連絡してくれたのがスタートです。

これまで3枚のEPと1枚のアルバムをリリースしている。

--それ以前もプロのシンガーとして活動されていましたが、オリジナル曲は作っていなかった?
XinU:はい、オリジナルは本格的にはやってなかったんですが、松下さんとの出会いから、自然に何か作ってみよう、という流れになり、どうなるかは分からないけれど、松下さんのスタジオに通いながら曲作りを進めていったんです。何曲かできて、作品としてリリースしてみようか……となったとき、これまでの活動とはちょっと別のことを始めるのだから、プロジェクト名というか、アーティスト名を考えようという話になったんです。そうした中、「英語表記がいいんじゃないか」、「日本人だから、アジアから発信することも考えてアジア的な響きにしよう」といった思いから、私がいろいろなアジアの方の名前を探していて、「シンユウ」さんとか「シンユエ」さんといったものを見つけたんです。この「シンユウ」って響きがいいな「親友」にも通じるな、って。松下さんの付き合いのあるグラフィックチームと相談すると「X in U」、「Cross(X) in You」ということから「あなた(U)の中にクロス(X)する思い」意味になる、音楽で交差していくという意味を持たせられると言われて、じゃあ、この響きでこの表記にしようってなり、そのコンセプトを元にやっているんです。

「あなた(U)の中にクロス(X)する思い」という意味を込めてXinUとした、とのこと

セルフプロデュースで進化する音楽制作のアプローチ

--これまで3枚のEPと1枚のアルバムを出されていますが、ほとんどの曲にXinUさんが作詞・作曲で参加しています。これだけのクオリティーのものがすぐに作れるようになったのですか?
XinU:最近でこそセルフプロデュースの形で曲を作っていくことができるようになりましたが、やはり1stEPのときはギタリストの庄司陽太さん、松下さん、私の3人で集まって、みんなで作っていました。たとえば庄司さんが、ギターを弾きながら「こんな感じでどう?」というのに対し、私がちょっと鼻歌で歌ったものを、松下さんがメロディーとして組み立てる……みたいな。そうした作業を重ねるうちに、いまは一人で自宅で形にすることができるようになった感じですね。

--そうした曲作り、DAWやDTM機材などどんなものを使っているんですか?
XinU:松下さんと一緒に曲作りをするようになってすぐのころに、LogicProを買って使い方を教えてもらいました。その際、FocusriteのScralett Solo(3rd)とマイク、ヘッドホンのセットを購入して、それで使っていました。ただコロナ禍になって、配信ライブをやるようになったのですが、Scraltt Soloだとマイク入力が1つしかないから、これでは物足りない。ピアノと私で演奏するのに最低2つは入力が欲しかったので、このタイミングでPreSonusのAudioBox iTwoというものを購入して使っています。もちろん本番のレコーディングはスタジオで行うので、あくまでもプリプロでの話ですが。

--セルフプロデュースの場合、どうやって曲として作っていくのでしょうか?
XinU:一番最初に完全に一人で作詞・作曲したのが2nd EPの中の「やまない雨」という曲でした。これはみんなに向けての曲というよりは、よりパーソナルというか、結構内向的な、すごく親しい友達に向けてのメッセージになっているんです。だからかっちりスタジオで歌うというよりは、自宅で自分でいつもやっている場所でリラックスしながら歌ってきました。このときはハンドマイクで、胡坐かいて座って歌いましたね。その後、エンジニアさんが「この曲、電話で語りかけてるみたいでいいよね」と言ってくださって、家で録ったボーカルを電話っぽいサウンドに処理してくれて、そのまま使ったんですよ。一方、トラックのほうはLogicに入っているループ集をいろいろ聴いていた中、ポコポコする面白い音があったので、それを使ってみるなどして組み立てていきました。

マイク選びのこだわり:AT5047が引き出す歌声の魅力

--先日、XinUさんのYouTubeでの配信を見ていたら、マイクにオーディオテクニカのAT4033aを使っていましたよね。
XinU:はい、すごく気に入っていて、今、自宅で録音する際はほぼこのマイクを使っています。事務所のスタジオから借りているもので、松下さんが20年前にロンドンにいたときに入手して以来、ずっと使っていたものだそうですが、すごくいいマイクなんですよね。

--これまでレコーディングではどんなマイクを使っていたんですか?またボーカル以外のパートはどんなマイクで録っていたのでしょうか?
XinU:NeumannのTLM103を使うケースが多かったですが、別の場所でレコーディングした際はU87Aiを使ったり……。
松下:少し補足させてもらうと、たとえばギターはここにあるTwinReverbで鳴らしたものをTLM103で録ったり、アコギは先ほどのAT4033aで録ることも多かったですね。あと、ShureのSM-7Bを使って雰囲気を変えてみたりもしています。ここではオーディオインターフェイスはRMEのFireface UCX IIを使ってます。ただドラムは生ドラムを叩いているわけではなく、これまで20~30年近く録り貯めてきたワンショットがHDDに山ほど入っているので、それらをLogicのトラック上に並べていく形で作っています。当初はNative InstrumentsのBatteryやそのほかのソフトウェアサンプラーも使ってみたのですが、どうもタイミングがしっくりこないので、この並べる方法になっています。

レコーディング用のオーディオインターフェイスにはRMEのFireface UCXIIを使っている

--そうした中、現在制作中の2ndアルバムでは、オーディオテクニカのAT50シリーズを使われているんですよね。
XinU:はい、今回AT5047、AT5040を使う機会が得られたので、試してみたのですが、本当に驚きました。とくにAT5047に感激したのですが、モニター音をヘッドホンで聴いた瞬間にこれまで使ってきたマイクと明らかに違うことが感じられました。本当に小さな、些細な音まで全部聴こえちゃうんです。私は喉に引っかけて歌う歌い方をするのですが、そのスロート音がいつもより凄くハッキリと聴こえるんです。だから自分での歌い方の調整がメチャクチャやりやすい。スロート音で表現できる幅が大きく広がり、より繊細な声の出し方ができる感じです。私自身はあまり声が大きいほうではないのですが、このマイクを使うことで確かに全部を録ってもらっている感じがしました。正直最初はちょっと怖いほどでした。

--一方のAT5040のほうの印象はいかがですか?
XinU:確かにクリアなサウンドなんですが、AT5047とは違い、いつも使っているAT4033aに近い印象で、慣れている音、という感じではありました。そこまでハッキリさせたくないとき、少し柔らかい表現をしたいときはAT5040がいいなと思いました。これは曲によって使い分ける感じですね。でもAT4033aと比較すると解像度がずっと高くシルキーな感じでいいですね。

--ちなみにモニターする際、コンプなどはかけているのですか?
XinU:普段はモニターする際にできるだけ細かい音を捉えるため、音量を上げてもらうのですが、そのままだとキツイときはでコンプをかけてもらうこともあります。ところがAT5047の場合、モニターの感じが全然違い、コンプをかけなくても歌いやすいし、コンプがないほうが、より自然な感じです。
松下:XinUさんの楽曲はすべて日本語なので、英語の音楽に比べて子音をどう表現するかというのをいろいろと研究しているところです。やはり英語と比べて日本語だと子音が立ちにくいので、グルーブが出しにくい。英語だと「It’s」っていうだけでもかっこいいじゃないですか。だからこれまでレコーディングで調整しながらコンプ、EQを駆使しながら、トラックのちょっと硬いところ、立っているところを削ってボーカルを前に出そう……なんて工夫もしていたのですが、AT5047だと無理なく表現できる、というイメージですね。

--いろいろなマイクを使いつつも、オーディオテクニカのものをかなり使っているようですが、XinUさんが最初に使ったオーディオテクニカ製品って何ですか?
XinU:大学生のときに初めて買ったヘッドホンがオーディオテクニカのATH-M50x WHでした。白いヘッドホンでしたね。そういう意味では、すごく身近なメーカーという印象です。
松下:最近はライブでエンジニアさんがオーディオテクニカのマイクを試させてくれるケースもあるんです。この前は都内のライブハウスで、ダイナミックマイクのATS99を使わせてもらったんですが、あれもすごくよかったですね。声の通りがすごくよくて、お客さんの評価もすごくよかったし、実際モニターしていても、細かなニュアンスまでしっかり拾えていたのがよかったですね。

台湾での成功とクラウドファンディングへの想い

--話はまったく変わりますが、先日台湾でライブをされていましたよね。写真などを見ましたが、かなり盛り上がっていたようですね。XinUのネーミングのタイミングからアジアでの展開を…ということでしたが、思惑通りの大成功ですよね。
XinU:昨年台湾で初めてライブに行って、多くのお客さんに来ていただけたのはすごくいい思い出なんですけれど、それも2023年5月に台湾で行って撮影した『罠』という曲のMVが大きなキッカケになったんです。意図していたわけではなかったのですが、台湾の街をバックに日本語の歌を歌っているのが台湾の方々に不思議に見えて話題になったらしく、ワッと広まっていったんです。いまInstagramのフォロワーが10万人となっていますが、その2割ほどが台湾の方なんですよ。そんなこともあり、今年の台湾でのライブも多くの方に来ていただきました。

--そして、現在2ndアルバムのためのクラウドファンディングをされているんですよね。
XinU:9月28日から”XinU ART MARKET 3″ というクラウドファンディングをスタートしました。これまでもEPの制作をART MARKETという名前でクラウドファンディングを展開してきたのですが、今回は2ndフルアルバム制作と、その音楽を日本はもちろん世界へと広げていく映像制作、そして初のリキッドルームワンマン公演の成功という3つの目標を目指すものになっています。またニューアルバムの世界観を、音楽のみならずビジュアルでも伝える限定アートフォトブックをメインに、さまざまなアートを用意しています。写真家、グラフィックチーム “GUTSON” 、スタイリストとコラボレーションしつつ、さまざまな形のアート作品にします。集まった応援は、2ndフルアルバム、新しいMVの制作に充て次の一歩を切り開いていきます。実際台湾でのMVの展開を経験すると、音楽を広めるためには映像が非常に重要であることを3年で強く感じました。ただ映像制作にはどうしても大きなコストがかかってしまうので、クラウドファンディングを展開しています。ぜひ、多くの方に応援していただけると嬉しいです。

--ありがとうございました。ぜひ、これからの活躍期待しています。

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オーディオテクニカ AT50シリーズ製品情報
XinUオフィシャルサイト
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