オーディオテクニカのフラグシップマイクAT50シリーズの使用感をレコーディングエンジニアの森元浩二さんに聞いてみた

オーディオテクニカのコンデンサーマイク、AT50シリーズをご存知でしょうか?オーディオテクニカは、配信やボーカルレコーディングのエントリーマイクとして人気の高いAT2020をはじめとするAT20シリーズや汎用性が高くフラットで使いやすいAT40シリーズがありますが、このAT50はそれらの上に位置する、オーディオテクニカとしてのフラグシップのラインナップ。具体的にはスティック型のAT5045、オーソドックスな見た目で、ボーカルやアコースティック楽器をはじめ、さまざまな用途で活用できるAT5040AT5047の3つの製品があります。

そしてAT50シリーズは、自社開発で唯一無二の長方形ダイアフラムを搭載しているのが大きな特徴。この長方形のダイアフラムは、大口径ユニットが持つ、SN比が高く音の情報量が多いが、高域特性を伸ばすのが難しいという特徴と、小口径ユニットが持つ高域特性をきれいに伸ばすことができるが、SN比と音の情報量が少ないという、それぞれのメリットとデメリットをうまく調和。4つの長方形ダイアフラムを搭載することにより、短辺方向によって小口径ユニットの特性を引き出し、長辺方向によって大口径ユニットの特性を引き出すことにより、デメリット抑えつつ、メリットを最大化しているのです。そんなAT50シリーズを購入すると、オーディオテクニカ高級インターコネクトケーブル、AT-IC500X/1.3がもらえるというキャンペーンが11月1日より実施されます。そのタイミングでエイベックス・エンタテインメントprime sound studio formのジェネラルチーフエンジニアである森元浩二さんにレビューしてもらったので、その内容を紹介していきましょう。

オーディオテクニカのフラグシップマイクAT50シリーズを実力とは?

オーディオテクニカのフラグシップラインナップ、AT50シリーズ

AT50シリーズは、AT5045、AT5040、AT5047の3製品からなる、オーディオテクニカのフラグシップのマイクです。価格いずれもオープン価格となっていますが、メーカーの公式オンラインストア価格においては、AT5045が181,500円(税込)、AT5040が387,200円(税込)、AT5047が459,800円(税込)となっていることからも想像できるとおり、オーディオテクニカとしても非常に力をいれて開発した最高峰製品となっています。最大の特徴は、長方形のダイアフラムを搭載していることにあり、これにより繊細なニュアンスを捉え、低ノイズでクリアなサウンドを実現しています。

AT50シリーズ共通で搭載している長方形のダイアフラムの特徴

一般的なコンデンサーマイクの傾向としては、振動板の面積を大きくすると、SN比が向上します。ただ一般的な円形のダイアフラムの場合、四隅に隙間ができてしまうため、最大面積は円の直径に依存します。一方、長方形のダイアフラムでは、円形のダイアフラムの四隅を埋めることができるのに加え、縦方向にも伸ばすことができ、同じ筐体サイズの場合でも、より面積を大きくすることが可能となることから、オーディオテクニカのAT50シリーズでは長方形のダイアフラムを採用しているとのこと。

AT5047の内部に4つの長方形のダイアフラムが入っている

しかし、長方形にすればすべてOKというわけにはいきません。確かに面積を大きくすると、SN比が高く音の情報量も多くなりますが、可聴域である20kHzの波長、約17mmを超えると高音域の再現に影響が出始めます。これを解決するために、AT50シリーズでは、長方形のダイアフラム1つを搭載するのではなく、4つ搭載することにより、面積を確保しつつ、1つのダイヤフラムの大きさをコントロールするという方法をとっているのです。

さらにダイアフラムを4つにすることにより、小口径ユニットの高域特性をきれいに伸ばせるというメリットも引き出しつつ、面積が大きいことによって得られるSN比と音の情報量のすべてにおいて優れた特性を得ることに成功しているのです。

AT4045には大きい長方形のダイアフラムが入っている

AT5045は、スティック型のコンデンサーマイクで、オーディオテクニカ史上最大サイズの長方形ユニットを搭載した管楽器、弦楽器やパーカッションなどの収音に最適な製品。

型式 バックエレクトレット・コンデンサーー型
指向特性 単一指向性
周波数特性 20~20,000Hz
出力インピーダンス 100Ω
感度(0dB=1V/1Pa、1kHz) -35dB
最大入力音圧レベル(1kHz T.H.D.1%) 149dB S.P.L.
固有雑音の等価音圧レベル 8dB S.P.L.
ダイナミックレンジ 141dB
SN比(1kHz at 1Pa) 86dB
電源 ファントムDC48V
消費電流 1.4mA
質量 197g
外形寸法 約φ25×177mm
コネクター 3ピンXLRM

AT5045の指向特性と周波数特性

AT5040は、AT50シリーズ最初に開発された製品。上記の長方形ダイアフラムの特性に加えて、フラットで癖の無いクリーンな特性を実現するためにシンプルなトランスレス回路を採用しています。

AT50シリーズ最初に開発されたAT5040

型式 バックエレクトレット・コンデンサー型
指向特性 単一指向性
周波数特性 20~20,000Hz
出力インピーダンス 50Ω
感度(0dB=1V/1Pa、1kHz) −25dB
最大入力音圧レベル(1kHz T.H.D.1%) 142dB S.P.L.
固有雑音の等価音圧レベル 5dB S.P.L.
ダイナミックレンジ 137dB
SN比(1kHz at 1Pa) 89dB以上
電源 ファントムDC48V
消費電流 3.8mA
質量 582g
外形寸法 約φ57×165mm
コネクター 3ピンXLRM

AT5040の指向特性と周波数特性

AT5047は、最上位モデルのコンデンサーマイク。最大のダイナミックレンジを目指して開発されたため、感度はAT5040より低く設定されており、最大許容入力音圧レベルを上げるためにトランス出力回路を採用。トランス出力回路は、ポジティブと捉えられる音質の変化、接続する機器との相性による変化が少なくなるといった特徴もあるため、どんな環境、どんなソースでも最高音質での録音を可能にしています。

最上位モデルのコンデンサーマイクAT5047

型式 バックエレクトレット・コンデンサー型
指向特性 単一指向性
周波数特性 20~20,000Hz
感度 ‒29dB(35.5mV)(0dB=1V/Pa, 1kHz)
出力インピーダンス 150Ω
最大入力音圧レベル 148dB SPL(1kHz THD1%)
ノイズ 6dB SPL(A特性)
ダイナミックレンジ 142dB(1kHz at Max SPL)
SN比 88dB(1kHz at 1Pa、A特性)
ファントム電源 48VDC、2.7mA
質量 592g
寸法 長さ:165.3mm、本体最大径:57.0mm
出力コネクター 3ピンXLR-Mタイプ
アクセサリー対応コード R10

AT5047の指向特性と周波数特性

森元浩二さんにAT50シリーズをテストしてもらった

このAT50シリーズを実際に第一線のプロのレコーディングエンジニアが使うとどのようなマイクとして見えるのか、さまざまなメディアでもおなじみのprime sound studio formのジェネラルチーフエンジニア森元浩二さんに、AT5045、AT5040、AT5047のそれぞれを試してもらい、その実力を探ってもらいました。

prime sound studio formのジェネラルチーフエンジニア森元浩二さん

--これまで、森元さんはAT50シリーズを使ったことはありましたか?
森元:以前にAT5047は使ったことはありました。ボーカルのレコーディングで使用したのですが、そのときはスタジオにある定番のマイクだと女性ボーカルがきつく聴こえてしまったので、いくつかあるマイクを試した中、AT5047が非常にマッチしたので、実際のレコーディングにおいてAT5047を採用したのです。AT5047は、柔らかさがあり、それでいてしっかりとした輪郭があり、前に来るサウンドを録ることができましたね。一般に柔らかいマイクは、音が前に来ないことがほとんどです。しかしAT5047は柔らかいけれども、とても存在感もあって、いいマイクだと思いますよ。私は、高音域のチリチリする歪み感がよくて、真空管マイクを使用することが多いのですが、これが合わないときに選べるマイクとしては使い分けができますね。

以前にもAT5047をボーカルレコーディングに使ったという森元さん

--やはりAT5047は使用されたことがあったんですね。
森元:今回AT50シリーズ、3製品を試してみた中、歌を録るなら、AT5047が一番よかったですね。先ほど柔らかさがあるといいましたが、これはこもったサウンドとか、そういうわけではなく、むしろ全然こもってなく、オーディオテクニカらしいハイファイで柔らかいサウンドという絶妙なバランスなんですよ。声が合う人であれば、個人で持つのもありですね。声質や歌い方にもよりますが、これでなきゃダメ、これが絶対にいいという人は結構いると思います。

--今回AT50シリーズ、3製品のテスト、実際にはどのように行ったのですか?
森元:これはいつもよくやっている方法なんですが、複数のマイクを立てて、それぞれの前で同じ台本を読んで比較するというのをまず行っています。実はしゃべり声というのはさまざまな要素を含んでいるので、これを行えば歌った場合にどうなるかも、すぐにわかるし、ヘッドホンでモニターしながら行うことで、その場でマイクの特徴がわかるという意味で便利なんです。昨日、うちのスタジオのエンジニア約10人を集めて、音の比較をしてみた中、とくにAT5047、AT5045の評価はみんな非常に高かったですね。

他社製定番マイクも並べて比較テストを実施

--そのAT5045を試してみた印象について、もう少し詳しく教えてください。
森元:AT5045は、伝説的なエンジニアである故アル・シュミットがドラムのトップで使っていたというのは知っていたのですが、実際に使ってみると、なるほどな、と思いました。スムーズなのに、エッジがあって高級感のあるサウンドでしたね。ドラムだけでなく、アコギとかピアノでもストリングでもマッチすると思います。定番のマイクと比べても、むしろこっちの方がよく、サイドアドレスというのもよくて、業務用のレコーディングスタジオに入れるのであれば、まず検討すべきがAT5045ですね。価格も2本で30万円ぐらいで、性能に比べて安いのも驚きでした。マイク本体の良さはもちろんのことながら、付属しているショックマウントもしっかりしていて、これも好印象でしたね。

prime sound studio formでマイクのサウンドチェックをする森元さん

--AT50シリーズ、どれもしっかりしたショックマウントですよね。
森元:振動による影響だと思いますが、ショックマウントで音はすごく変るので、ここもすごく大事ですね。AT50シリーズのホルダーは本当によくて、日本メーカーによる開発って、すごいなって思いました。オーディオテクニカさん、自社マイク用のショックマウントだけでなく、この技術で他社向けのものも出したら、世界的に爆発ヒットするのでは……と思いましたよ。

--AT5040はいかがですか?
森元:音の傾向はAT5047と近い柔らかいサウンドではある印象です。ただ、AT5047の良さがズバ抜けていることもあって、並べてしまうとAT5047がいいな、と感じてしまいました。とはいえ、他社マイクとは明らかに違う柔らかいけれどS/Nのいいキレイなサウンドなので、オールマイティーに利用できると思いますよ。

堅牢な作りのショックマウントが付属している

--最後に森元さん的には、これからAT50シリーズを使っていくことはありますか?
森元:正直ボーカルマイクだと、今はいろいろなマイクがたくさんあって、レコーディングエンジニアの立場からすると、レコーディングの時間も限られているので、やはり定番のマイクを使うケースが多いだろうとは思います。とはいえ、声質から見て、明らかに定番のマイクが向かないなという際には、積極的に使っていきたいですね。それよりもエンジニア的には、AT5045は使えるマイクだと確信できたので、実際来年の予算で買おうと思っているところです。楽器に立てるので、普段使っているマイクにプラスして立ててみて試せるし、アシスタントにも勧めやすいと思います。エンジニアは、常に楽器に立てる新しいマイクを探しているので、そういった点でも出しやすいです。AT50シリーズは、いいマイクなので、まずは使いやすいAT5045から広がっていくといいですね。

--ありがとうございました。

AT50シリーズを購入すると高級インターコネクトケーブル、AT-IC500X/1.3をプレゼント

AT50シリーズのいずれかを購入するとオーディオテクニカの高級インターコネクトケーブルAT-IC500X/1.3がもらえる「専門店限定 AT50 SERIES購入者プレゼントキャンペーン」が11月1日からスタートします。

オーディオテクニカ高級インターコネクトケーブルAT-IC500X/1.3

専門店限定 AT50 SERIES購入者プレゼントキャンペーン
期間:2024/11/1 (金) ~ 2025/1/31 (金)
対象店舗:Rock oN Shibuya/Rock oN Umeda/宮地楽器 RPM/島村楽器 名古屋パルコ店
キャンペーン概要:対象店舗にてAT50シリーズのいずれかの製品をご購入いただいたお客様へ購入特典として
XLRケーブル『AT-IC500X/1.3』をプレゼントいたします。

【関連情報】
AT5045製品情報
AT5040製品情報
AT5047製品情報

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