本日10月10日、Studio Oneの最新バージョンであるStudio One Pro 7の詳細が発表されるとともに、発売がスタートしました。事前の発表では、PrimeとArtistが廃止されることや料金体系が変わることが通知され、SNS上では賛否両論、大きな話題になっていました。また新規音源としてはDeep Flight Oneが事前発表されていたほか、これまでアドオンまたはStudio One+のメンバーシップのみが使用できたいくつかの機能が開放されることが発表されていた程度で、小規模なアップデートなのでは……と思われていました。
ところが、実際蓋を開けてみるとStudio One Pro 7では予想を上回る大幅なアップデートとなっていました。事前に発表されていた新音源に加え、Ableton liveのセッションビューに近いランチャー機能の搭載やSplice連携の統合、ステム分離、高度なテンポ検出、グローバルトランスポーズなどAIベースの機能の搭載、CV Instrumentの登場、Ableton Linkに対応するなど、かなり大きいアップデートとなったのです。結果的に日本の価格は、新規であれば28,000円(税込)と安く、他のDAWからの乗り換えのクロスグレードであれば21,000円と主要DAWでは最安値を実現しています。全体で30項目以上のアップデートが行われたStudio One Pro 7について、新しくなった料金体系なども含め紹介していきましょう。
- Studio One Pro 7の購入方法は3つ。新規購入がちょっとお得になる方法も
- 永続版も入手可能なサブスクや、激安クロスグレード版もラインナップ
- トラックメーカー、パフォーマーに向けた新機能が追加されたStudio One Pro 7
- ループベースのトラックメイクに理想的なランチャーを統合
- ブラウザーにSplice連携を統合
- ステム分割、高度なテンポ検出、グローバルトランスポーズといったAIベースの機能を搭載
- 新しいバーチャルインストゥルメントDeep Flight OneとモジュラーシンセをコントロールするCV Instrument
- アドオンまたはStudio One Pro+メンバーシップ機能を永続版にも開放
Studio One Pro 7の購入方法は3つ。新規購入がちょっとお得になる方法も
これまで、Studio Oneは、Studio One Prime、Studio One Artist、Studio One Professionalの3つのラインナップで展開されていましたが、今回のバージョンアップに伴いPrimeとArtistが廃止されるとともに、Studio One ProfessionalではなくStudio One Proに名称が変更されました。なお、Studio One Prime、Studio One Artistのダウンロードや購入は停止していますが、すでに持っているものに関しては使用可能となっています。
もともと、新規であれば50,000円程度だった価格も改定され、新規購入は28,000円(税込)。クロスグレード版、バージョンアップ版、アップグレード版は、21,000円(税込)という価格になりました。後述しますが、
またStudio Oneは、これまで約2年に1回メジャーバージョンアップしていたのですが、これからは年に3〜4回新機能アップデートが提供される仕組みに変更になります。これは、DAWのBitwig Studioとほぼ同じ仕組みで、購入してから1年間は無償でバージョンアップできるけれど、1年を過ぎた後もバージョンアップをしたい場合は、別途アップグレードを購入するというシステム。いわゆるサブスクリプション制度ではないので、現状のバージョンのまま使い続けることは可能で、バージョンアップしたくなったら、その時点で再度払えばいいというものですね。なおアップグレードの価格は、21,000円(税込)です。
たとえば、2024年10月10日にStudio One Proを買ったとしたら、2025年10月10日までは最新にバージョンアップできますが、2025年10月11日以降に発表された最新バージョンにアップデートするには、アップグレードを再度購入する必要があるというわけです。もしラアップグレードを購入しなくても、Studio One Proが使えなくなるということはなく、2025年10月10日時点までの最新バージョンを2025年10月11日以降も使い続けることが可能です。ちなみにStudio One Pro 7より後は、バージョンは月日で表記されるとのこと。Studio One Pro 2025.10みたいになるということですね。
ちなみに2024年8月1日以降にStudio One Professionalを買ったという人であれば、Studio One Pro 7へ無償バージョンアップできます。
永続版も入手可能なサブスクや、激安クロスグレード版もラインナップ
Studio Oneはこれまで基本的に永続ライセンスを中心に展開してきたDAWではありますが、実はサブスクリプションサービスも存在していました。日本国内においては「Studio One+ Hybrid」というもののみが販売されていました。
そのサブスクリプションサービスが今回のバージョン7のタイミングでいくつかの変更があります。まずは名称が「Studio One+ Hybrid」から「Studio One Pro+ 12 MONTH」と変更となります。価格は従来通り26,000円で仕様も同様です。これは12ヶ月間の各種サービスを使えるとともにStudio Oneの永続ライセンスもついています。つまり購入後、12か月間はすべてのサービスが使え、最新版にアップデートできますが、12か月を超えてからもライセンスが切れる時点でのバージョンを永続的に使い続けられると仕組みになっています。
そのサブスクリプション分のサービスについて詳しくは、Studio One Pro+のページでご確認いただきたいでのすが、簡単に紹介すると、まずアドオンとして有料で販売されているPreSonusのプラグインやループ、サンプルライブラリが利用できるようになります。都度増え続けているので、その度に最新の製品を使えるようになります。ほかにも楽譜ソフトのNotionも利用可能になり、クラウドベースのコラボレーションとストレージの提供、プロが制作したプリセット音色へのアクセス、コミュニティチャンネル、学習ビデオが閲覧可能になります。
一方、今回新たに「Studio One Pro+ 6 MONTH」とものも追加されこちらは14,000円となっています。こちらは永続ライセンスはつかず6ヶ月のみのプランとなっています。
なお、一番安くStudio One Pro 7を入手する方法は「Studio One Pro 7クロスグレード」の購入です。対象DAWを持っている必要はありますが21,000円でお求め頂けますので、主要DAWの中では断トツの安値ともいえそうです。
年間ライセンスには、永続ライセンスが付属するようになった点以外、大きく内容は変わっていないので、ぜひ詳しくはStudio One Pro+を検索してみてください。
トラックメーカー、パフォーマーに向けた新機能が追加されたStudio One Pro 7
さて、ここからはStudio One Pro 7の新機能について見ていきましょう。ざっとバージョンアップの内容は以下の通りとなっています。
アレンジ | プラグインとインストゥルメント |
ランチャー統合 | 新しいバーチャル・インストゥルメント:Deep Flight One – Extended |
シーンとプレイリスト | CV Instrument |
イベントとパートのループ・ツール | Lead Architectが付属 |
イベント・ループ・オプション | Presence Editorが付属 |
グローバル・トランスポーズ | CLAPプラグインとインストゥルメントに対応 |
編集とミキシング | プラグインの自動ゲインオプションの機能向上 |
AIベースのステム分割 | [Impact] パッド・パラメーターのコピー・オプション |
高度なテンポ検出 | [Impact] サンプルをSample Oneにドラッグ&ドロップ |
ノート・エディターのImpact統合 | [Impact] サンプルをパターン・エディターにドラッグ&ドロップ |
マルチアウト・インストゥルメント用のインストゥルメント・バス | [Impact] ループからインストゥルメント・パートを作成 |
ノート・エディターのスケール・ツールのツールバー | [Analog Delay] カラー・セクションの新レゾナンス・コントロール |
ユーザー・スケールのスケール・エディター | [Surround Delay] EQセクションの新レゾナンス・コントロール |
ノートのスケール・フィルター・オプション | 一般 |
ピアノ・ビューの「未使用のピッチを隠す」オプション | Ableton Linkに対応 |
メロディ・パターンのステップごとの分解能とステップ数カウント | イベントの外観の向上(波形統合) |
ノート・エディター–ノート選択の機能向上 | ATOM/ATOM SQがランチャーのリモート・コントロールに対応 |
ブラウザーとコンテンツ | Audio Batch Converterが付属 |
Splice統合 | |
取り外し可能なブラウザー | |
ループ・タブの拡張リスト表示 | |
ダイナミック・タグ・メニュー | |
リスト項目の自然な並び替え |
ここでは、これ全部を紹介しきれないので、いくつかピックアップして紹介していきたいと思います。
ループベースのトラックメイクに理想的なランチャーを統合
まずは、ランチャーという機能についてです。最近いろいろなDAWにも搭載されてきていますが、冒頭にも書いた通り、Liveでいうところのセッションビューに近い機能が、このランチャー機能です。たくさん並んでいるブロックをセルと呼び、縦一列をシーン、シーンをまとめるプレイリストというように設計されています。
ここでDJプレイなども行っていくことができるし、ここでのパフォーマンス内容を記録していくことで、作曲を行っていくことも可能となっています。あくまでStudio One Pro 7のアレンジセクションの一機能であるため、これまでのStudio Oneが中心、加えて作曲方法の幅に広がりを持たせてくれる機能が追加されたというわけです。とはいえ単体でも使うことはでき、タイムラインとの連携もスムーズ、セル内にはオーディオでもMIDIでも配置することができ、直接録音することも可能となっています。ダブルクリックして、セル内のデータをエディットすることもできるし、本当にいろいろな使い方ができそうですね。
ブラウザーにSplice連携を統合
ド定番のサンプル音原サービスであるSpliceが、Studio Oneの機能に統合されました。Spliceのアプリケーションが、そのままStudio Oneに埋め込まれたような形になっており、ここから検索して、試聴して、そのままドラッグ&ドロップでタイムラインに並べることが可能となっています。
また、Splice AIを使用して自分の楽曲をベースにコンテンツを探すことも可能で、自分でアレンジした楽曲の1つまたは複数のイベントをSpliceホーム画面のドロップゾーンにドラッグ&ドロップすると、それを解析してマッチするループやサウンドを表示してくれる機能を搭載しています。
もちろん使用するにはSpliceのアカウントとサブスクリプションの契約が必要ですが、14日間はトライアルで使えるので、まずは試してみてください。サンプルやループのダウンロード時間は掛かるものの、動作もスムーズで、すごく快適に使うことができますよ。
ステム分割、高度なテンポ検出、グローバルトランスポーズといったAIベースの機能を搭載
Spliceの統合でもAIの話が出ましたが、AIベースの機能としてステム分割、高度なテンポ検出、グローバルトランスポーズ
ステム分割機能が新しく追加されました。中でもステム分割は、他社のプラグインやサービスを使わなくてはできませんでしたが、今回Studio Oneのみでこれが行えるようになりました。分割できるパートは、ボーカル、ドラム、ベース、その他の4つ。かなり品質も高く、分割できるまでの処理時間も短く、使いやすい機能となっていました。
また、ボーカルを除いた2mixを作ったり、ドラムとベースだけのミックスを作ったり、好きなパートだけのオーディオデータをいちいち書き出す手順を行うことなく、素早くタイムラインにバウンスすることも可能となっています。
新しいバーチャルインストゥルメントDeep Flight OneとモジュラーシンセをコントロールするCV Instrument
今回新しく追加された音源であるDeep Flight Oneは、公式からの情報を引用すると「複雑に進化し活気に満ちたパッドサウンドとテクスチャが特徴で、エモーショナルなサウンドトラックやダークなアンビエントミュージックに最適です。操作性に優れたグローバル編集コントロールと便利なレイヤー・スワッピング機能を備えたDeep Flight Oneなら、深いシンセシスの知識を必要とすることなく新しいサウンドを作成できます」とのこと。もともとは、Presenceのサウンドセットとして提供されていたものが、追加機能やアップデートを経て、単体のインストゥルメントとして登場しました。
CV Instrumentは、互換性があるオーディオインターフェイスが必要ですが、ハードウェアシンセサイザやモジュラーシンセサイザをStudio Oneから直接コントロールすることのできるというもの。インストゥルメントトラックからのノート・トリガーとピッチ情報をアナログトリガーとコントロール電圧に変換し、インターフェース出力からシンセサイザーのコントロール電圧入力に直接送信したりすることができます。
アドオンまたはStudio One Pro+メンバーシップ機能を永続版にも開放
これまで購入するか、Studio One Pro+に加入することでしか使えなかった機能が永続ライセンスにも開放されました。実質、新機能と新音源の追加になりますね。インストゥルメント音源であるLead Architectは、サウンド毎に最大3つのレイヤーを持ち、内蔵のオーディオ・エフェクトやNote FXとミックスして組み合わせることのできるシンセ。
続いてAudio Batch Converterは、複数のファイルを一度にWave、AIFF、FLAC、Ogg Vorbis、CAF、M4A、MP3に変換することもできるし、それらの複数のファイルにさまざまな処理をできるツール。もともとは6,160円で購入することのできたツールで、たとえば複数のファイルすべてにEQを掛けて、ノーマライズして、フェードイン、フェードアウトを掛けて書き出す、といったことを行えるツールとなっています。
Presence Editorは、音源であるPresenceに追加される開発ツール。こちらももともとは9,900円で販売されていたもので、サンプル編集、マッピング、スクリプト機能などを行える機能となっています。
以上、Studio One Pro 7の概要を紹介しました。まだまだ新機能はあるので、ぜひ詳細は公式ページをご覧いただければと思います。また、DTMステーションの姉妹番組であるYouTube Liveおよびニコニコ生放送のDTMステーションPlus!において、10月22日に田辺恵二さんをゲストにStudio One Pro 7の新機能をより詳しく紹介するので、ぜひこちらもご覧ください。
DTMステーションPlus!告知
第244回 DTMステーションPlus! 特集「大幅バージョンアップStudio One Pro 7」
配信日時:2024年10月22日 20:00~22:00
【YouTube Live】https://www.youtube.com/live/BOS2-q3Xeas
【関連情報】
Studio One Pro 7製品情報
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◎Music Eco System ⇒ Studio One Pro 7