Softubeの2つのプラグイン、ステレオ感を自在に調整するWidener、音作りと音圧を絶妙にコントロールするClipperが半額セール実施中

これまで数々のハードウェアをメーカー公式の元、プラグイン化してきたスウェーデンのSoftube(ソフチューブ)。MarshallのアンプをMarshallブランドを付けた形でリリースしたり、世界一有名な大型コンソールともいえるSSLのSL 4000EをSSLブランドでプラグイン化するなど数多くの実績を持つメーカーとして日本でも多くのユーザーがいる、まさに技術者集団の会社です

そのSoftube、これまで日本国内ではMI7 JAPAN(元ジェネレックジャパン)が輸入代理店として展開してきましたが、2024年8月から代理店がフックアップに変更となり、同社のオンラインストアであるbeatcloud.jpでの販売に切り替わっています。そのbeatcloud.jpへの移行記念セールということで10月1日~14日までの2週間、Softubeの人気の高い2つの製品のセール展開をしています。具体的にはサウンドのステレオ感を広げるWidener、音楽的な歪みとクリッピングを司るClipperのそれぞれで、通常税込で各11,060円のものが、それぞれ50%強オフの5,500円と手ごろな価格になっています。実際使ってみると非常に強力で便利に活用できるプラグインだったので、これらがどんなものなのか紹介してみたいと思います。

SoftubeのWidenerとClipperが50%オフのセール展開中

スウェーデンの技術集団、Softubeの実力

Softubeをご存じの方は多いと思いますし、実際Softubeのプラグイン、さらには同社のコントローラー、Console 1を使っている方も少なくないと思います。が、改めてSoftubeを紹介すると、同社はスウェーデンにある会社。アナログモデリングを中心としたプラグインの開発やミキシングツールの開発を行っているメーカーです。

Softubeという名前が、そのことを象徴していると思いますが、ソフトウェアでTube=真空管を再現してやろう、ということで2003年にスタートしている会社です。そうした創業の経緯については以前「ソフト版ユーロラックも誕生、スウェーデンの技術者集団Softubeが生み出す物理モデリングツールが国内で発売に」の記事の中でSoftbeのマーケティング担当者にインタビューしているので参考にしてみてください。

アナログモデリング、真空管アンプを再現しているメーカーは数多くありますが、Softubeはその中でも突き抜けた技術力、再現力を持っていることから、Marshallの独占ソフトウェアパートナーに選ばれているのがその実力の証の一つです。実際、Marshallのアンプに採用されているDSPプログラムの供給を行うなど、単なるプラグインメーカーに留まらず、Marshallの現在のアンプ開発を支える、縁の下の力持ち的な企業でもあるのです。

Softubeは現在名だたる企業とアライアンスを組んでいる

そうした大手メーカーとの関係はMarshallに限った話ではありません。現在、Tube-Tech、Solid State Logic、Buchla、Abbey Road Studios、Trident、Drawmer、Chandler Limitedなど……数多くのメーカーとアランアンス契約を結んでおり、こうしたメーカーへ技術提供を行ったり、逆にこれらのメーカーのハードウェア製品をメーカー公認の形でプラグイン化してリリースしているのです。

Console 1も含め国内代理店がフックアップ/beatcolud.jpに移管

そんなソフトウェアメーカーとして高く評価されているSoftubeですが、Console 1というシリーズというソフトウェアとハードウェア組み合わせたハイブリッドなミキシング・エコシステムの開発・販売もしており、これもプロユーザーを中心に普及が進んでいます。

Console 1はアナログミキサーに近い操作性を実現しつつ、ソフトウェアとハードウェアが緊密に連携しており、快適なサウンド調整をデジタル的に行えるシステムになっています。現在のハードウェア的にノブ操作でチャンネルストリップの調整を行うためのConsole 1 Channel MKIII、フェーダー操作で各チャンネルのバランス調整を行っていくConsole 1 Fader MkIIIのそれぞれがあり、これらとともに、Softubeのソフトウェア群を組み合わせていく形となっています。

Softubeのハードウェアコントローラ、Console 1 Channel MKIII

冒頭でも紹介した通り、こうしたSoftubeのソフトウェア、ハードウェアはこれまでMI7 JAPANが国内代理店として展開していましたが、2024年8月1日から国内代理店が株式会社フックアップに移管されています。その結果、ソフトウェアに関してはフックアップが展開するオンラインショップであるbeatcloud.jpにおいて販売される形となり、ハードウェアであるConsole 1に関してはフックアップが各楽器店などに卸す形へと変更されました。

まあ、楽器店でConsole 1を購入する一般ユーザーからすれば問屋さんが変わっただけなので、あまり大きな違いはないとは思いますが、ぜひ一度チェックしてみてください。

Softubeのプラグインは現在、beatcloud.jpでの扱いとなっている

そんな代理店変更に伴い、WidenerとClipperという2つのプラグインが現在半額キャンペーンとなっているので、簡単に紹介していきましょう。いずれもWindows(10または11)およびMac(Monterey 12, Ventura 13, Sonoma 14)で動作可能で、VST2、VST3、AU、AAXをサポートしています。

ステレオ感を調整するプラグイン、Widerner

まずはWidenerのほうから。Widenerは名前からも想像できるように音をワイドにする、というか音のステレオ感を調整するためのプラグイン。いわゆるステレオ・イメージャーのジャンルに属するソフトです。何か特定のハードウェアをソフトウェア化したというものではないので、先ほど紹介してきたSoftubeのソフトウェアの本流ではないのかもしれませんが、Softube製品の中でも人気の高いものの一つです。

サウンドのステレオ感を自在に調整できるSoftubeのWidener

そもそもモノラルの音源をステレオにするにはどうするのでしょうか?たとえばサックスとかフルート、ギターだって基本は単音なわけですが、これをスタジオでもステージでも空間で演奏して、左右2つのマイクで捉えればステレオに広がった音になりますよね。こうした実空間を使わなくても、左右で微妙に何かを足したり引いたりすることで音に違いが出て、広がりが出てきます。具体的には位相をズラしたり、タイミングをズラしたり、ピッチをズラすなど、いろいろな方法・要素があります。

もちろん、ステレオ・イメージャーはこれまでも数多くのメーカーが数多くのハードウェア、そしてプラグインを出しているので、今さら珍しいものではありません。たとえばWaves AudioのS1 Stereo Imagerだったり、iZotopeのOzone Imager、また国内モノとしてはDotec-AudioのDeeWider……などいろいろ。ただ、ソフトによって得意・不得意があったのも事実だったと思います。

5つのアルゴリズムを切り替えて使えるWidener

そうした中、このSoftubeのWidenerは5つのまったく異なるアルゴリズムを搭載しており、それを切り替えることで、まったく違う手法でステレオ感を調整できるようになっているというユニークなソフトなのです。

具体的には

CLASSIC
FREQ SPREAD
ROTATION
AMBIENCE
REFLECTIONS

という5つのアルゴリズムです。簡単にいうとCLASSICはディレイ系、FREQ SPREADおよびROTATIONは位相シフト系、AMBIENCEおよびREFLECTIONSはリバーブ系となっています。実際、どんな音に変わるのかの実例があるので、これらを聴いてみると雰囲気が分かると思います。

softube · Widener

使い方としてトラックに入れてモノラル音源をステレオ化したり、ステレオ音源での広がり方を変えるというのもいいですし、マスタートラックに挿してステレオ感を調整するのもよし。どのアルゴリズムがいいかは、いろいろ切り替えてみて気に入ったものを選ぶのがいいと思います。

アルゴリズム(赤)を切り替えるとパラメーター内容(黄色)も変わってくる

その際、アルゴリズムによって、右側に表示される詳細パラメーターに違いがあるので、この辺を適当にいじってもニュアンスは結構変わってくれます。

オシロスコープ画面やA/B比較をしながらの音作り

一番大きいのはOUTPUTの右側にあるWIDTH。これが100%だと基本元のままですが、それを大きくしていくと音が広がり、小さくしていくと音が狭くなっていきます。これに伴い左側のオシロスコープのリサジュー画面を見ると、音がどのように広がっているのか視覚的に確認できるのも面白いところ。

WIDTHを調整することで音の広がり方を調整できる

ただ、いろいろなパラメータをいじっていくと音量に変化が出てしまう可能性もあります。そんなときは画面右側のGAIN MATCHを利用することで入力時の音量とピッタリ一致させることも可能なので、便利に使うことが可能です。

一方で、アルゴリズムを切り替えたり、パラメータをいじっていくと、どれが一番いい感じなのかわからなくなってしまうケースもあります。そんなときはA/B比較というかA/B/C/D比較機能があるので、これを利用すると一発で違いを見ることができてとっても便利。

もちろんプリセットもいろいろ用意されているので、まずは、これらを使ってみるというのもよさそうです。

歪みのコントロールとピークのコントロールの2つをこなすClipper

続いてClipperのほうも見てみましょう。Clipperは音のクリッピングに関するところをコントロールするためのプラグインで、Widenerと同様、何かをエミュレートしているわけではなく、Softubeのオリジナルプラグインとなっています。

そして、トラックに挿してもいいし、マスターに使ってもいいという意味でもWidenerと同様であり、目的はまったく異なりますが、WidenerとClipperはSoftube製品の中で兄弟プラグインとして位置づけられているようです。

RMSとPEAKの2つのセクションを持つSoftubeのClipper

基本的な使い方としてはINPUTのところにあるGAINを少し上げていき、ブーストさせます。それをRMSのところでHEADROOM、ANALOG COLORというパラメータを利用してサチュレーションさせて音作りをします。

さらにその下のPEAKにおけるCEILINGで頭をバッサリと落とすとともに、SOFTKNEEで切り落とし具合を調整するといった形になっています。

この際、RMS部分だけを利用してもいいし、PEAK部分だけを利用するのもOKですが、組み合わせることでかなり幅広い音作りが可能になります。このClipperにおいても使用前・使用後を比較するデモ音源があるので、ぜひ聴いてみてください。

softube · Clipper

波形を見ながら音作り。切り取った音だけをモニターすることも

Clipperの音作りにおいても、左側の波形画面を見ることで、非常にわかりやすく操作することが可能になっています。見るとわかる通り、入力される元の波形が薄い緑、Clipperを通した結果の音が濃い緑、そしてClipperによって切り取られた音がオレンジで表示される形になっています。

元の信号(赤矢印)、出力信号(緑矢印)、切り取られる信号(オレンジ矢印)

この際、AUDITIONというボタンをONにするとオレンジの部分、つまり切り取られた結果だけを聴くことも可能になっているので、面白いですよ。

またRMS部分、PEAK部分それぞれにフィルターが搭載されているというのも音作りの面では、工夫ができるポイントとなっています。つまり120Hz以下だけにサチュレーションをかけるとか、2kHz以上だけをピークカットする……といった使い方が可能になるわけです。

RMS、PEAKそれぞれでフィルターの設定が可能

ちなみにラウドネスに関しては、このClipperだけでもかなり稼ぐことが可能ですが、ほかのリミッタープラグイン、マキシマイザープラグインと組み合わせることで、よりパワフルな音作りが可能になります。たとえばClipperを前段として使い、DeeMaxやOZONEを後段に利用する……といった使い方です。こうすることで、Clipperでは音作りに専念し、ほかのプラグインで音圧を上げていくという役割分担もできます。

数多くの真空管のエミュレーションの実績を持つSoftubeならではのサチュレーションサウンドを自在にコントロールできるClipper。これ単体で利用するのもいいですが、ぜひWidenerとともに使ってみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Softube Widener製品情報
Softube Clipper製品情報

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