みなさんはスピーカーのインシュレーターって使ってますか?スピーカーの振動の伝達を抑える役割を持つインシュレーターは、デスクやスピーカースタンドにモニタースピーカーを置いた際の振動を抑制し、ビビリや揺れを抑えるだけでなく、より正しくクッキリした音を出すことを可能にするアイテムです。私自身は、これまであんまり必要性を感じずに使ってこなかったのですが、先日、NiCSoというブランドのBUREEN(ブレン)というものを勧められて試してみたところ、確かにスゴイ効果があることが確認できました(6個入・税込価格 26,400円)。
1個20gの紫色のゴムパッドのような小さなモノですが、実は半導体製造装置に使う防振素材であるポリウレタンゲルというものをスピーカー・インシュレーター用に特別に配合した素材を使っているのだとか……。3つで120kgまでのスピーカーを支えられるというBUREENはDTMで使うモニタースピーカーを置くのにもピッタリで、ちょっと大きい音を出した際のデスクのビビリなどを完璧に抑えてくれます。その一方で、完全に目的外使用ではあるものの、軽さが原因で飛び跳ねてしまうスピーカーやiPhoneのようなスマホの内蔵のスピーカーに対しても効果があることも確認できたのです。このBUREENとはどんなもので、どんな効果があるのか、紹介してみましょう。
ポリウレタンゲルを使ったインシュレーター、BUREEN
まずは、このBUREENについて、概要から見ていくと、これは小さな箱に入った製品で、ふたを開けると、中には6つのBUREENが並んで入っています。大きさは30mm(W)x35mm(W)x20mm(H)で20gという小さなもので、真横から見たら台形をしたもの。また、下から見ると直径10mmのくぼみがある構造になっています。
触るとクニョクニョと曲げられるゴムというかシリコンみたいな素材だけど、前述のとおりポリウレタンゲルという特殊な素材が使われており、これが肝なんだとか。基本的に、このBUREENを3つ使って1つのスピーカーを支えます。通常は前に2つ・後ろに1つ、という設置にするのがいいみたいですね。
ちょっとプニプニしたゴムのような素材で横から見ると台形になっている
資料を見ると、このBUREENが1つで支えられるのは最低4.9kg、ベストは10.4kg、最大で39.1kgとなっています。3点で支えるわけですから、最大で約120kgものスピーカーを支えることができる、というわけですね。
使い方としては、単にこの3つをモニタースピーカーの下に置くだけですからとってもシンプル。音を鳴らしてみると、確かに音がクッキリとした感じがします。やや曖昧な言葉になってしまいますが、低音の濁りがなくなった感じで、パキっとしたサウンドになります。それより、大音量を出した際に気になっていた、机の共振や傍に置いた小物などの揺れがピッタリと止まること。これなら安心して大きい音も出せるというものです。
モニタースピーカーの下に置いてみると、確かに音の響き方に変化があり、よりクッキリしたサウンドになる
絶対振動が許されない半導体製造装置で使われる素材を利用
このBUREENをはじめとするNiCSoブランド製品を開発しているのは日本のメーカーである株式会社ナイスカンパニー。同社の代表取締役であり、レコーディングや音響の世界では著名な佐山元章さんに、BUREENを開発した経緯を聞いてみると、
「これは大阪にある枚方技研というメーカーとのコラボで作った製品です。その枚方技研は半導体製造用に使う防振シートや防振台などを作っている会社でして、たまたま、ここの社長と仲良くなり、ウチの製品に興味を持っていただいたことが製品開発のキッカケです。半導体を作る上で振動は絶対厳禁。そこで使われているのがポリウレタンゲルというもの。ゴムみたいではありますが、特殊な素材で、それをスピーカー用に配合して作ってもらったのです。これが可聴域での伝達率で、これを見ても分かるとおり、100Hz以上はゼロなんですよ」(佐山さん)
とのこと。確かに見てみる100Hz以上はゼロ。ただ、20Hzにおいて80%となってはいるのがちょっと気になるところ。
「単位を見てみてください。縦軸がdBではなく%ですからね。80%といってもエネルギー的にはかなりな削減ができているんです。一般的なインシュレーターと比較して圧倒的に伝達率が低いというのが大きな特徴となっています。またほかのインシュレーターは金属を使っているため、どこかの周波数で共振してしまう、という問題があります。よくその共振を『スピード感』なんて表現しているケースがありますが、それはただの共振ですからね。正確にはこのBUREENも34Hz付近で共振はするのですが、超低音であるためにそれが音に大きな影響を与えることはありません」(佐山さん)
軽すぎるために振動するデジタルスピーカーで実験してみると…
一方で、ちょっと変わったテストもしてみました。一つは、以前に「世界初の完全フルデジタルってどういうこと!?高音質・大音量な小型USBスピーカー、OVO。現在クラウドファンディング実施中」といった記事で紹介したこともあったOVO。残念ながら、メーカーであるJDSoundが解散してしまったことで、OVO自体すでにディスコンとなってしまっていますが、高音質なスピーカーとして愛用している方も少なくないと思います。
私自身も、DTM用というより通常用途のパソコン用スピーカーとして愛用しているのですが、難点は最大音量で鳴らすと莫大な音がするけれど、OVOの筐体が軽いため、机の上に置いても跳ねるような感じで震えてしまうという点。手で持って鳴らせば問題ないけれど、普通そんな使い方はしないですから、ほどほどな音量で鳴らすというのが通常の使い方です。
フルデジタルスピーカーのOVOにBUREENを使ってみると……
ちなみにOVO本体の重量は約400gと軽いので、BUREENの最低4.9kg~という仕様とはアンマッチです。でも、もしかして…と思って試してみました。すると……、完全にこの飛び跳ねる現象を無くすことができたのです。まさに手で持って鳴らすのと同じ音になる感じです。まあ、OVOの場合は3点で支えるのではなく、この大きさ重さなので2点でもいいかなとは思いましたが、より分かりやすい現象としてBUREENの威力を実感することができました。
iPhoneのスピーカーにも効果あり!?
もうひとつオマケに試してみたのがiPhoneです。いまのiPhoneって、すごくよくできていて、これを机の上に置いて最大音量で鳴らしたからといって、音がビビるようなことはないんですね。使っているのはiPhone 15 Proですが液晶側を上にしても、下にしても、そうしたビビりがないので、そもそも実験に向かないな…と思ったのです。が、わざと下にCDのジャケットを置いて、低音の効いた音楽を最大音量で鳴らしてみると、さすがにちょっとビリビリしてくれます(笑)。
CDジャケットの上にiPhoneを置いて鳴らすとジャケットが振動するが、BUREENを挟むと…
これをBUREENなら止らえるかな…と思って試してみたところ、こちらもちゃんとビビリを抑えてくれますね。しかもiPhoneのスピーカーの音がよりクリアに、より広がった音で鳴ってくれたのも面白かった点です。机スレスレの位置から鳴らすよりも、少し高度を付けたから…という面もあるとは思いますが、明らかにiPhoneのスピーカーの音がよくなるんですね。
まあ、OVOもiPhoneもBUREEN本来の用途ではありませんが、なんでモニタースピーカーの音がよく聴こえるのか、その理由が発見できる実験だったように思いました。
佐山さんにBUREENのDTM的な使い方についてアドバイスをお願いしたところ、
「3点支持を前提にした製品で1個につき10.4kg、3個で約30kgのスピーカーで最高のパフォーマンスを発揮できる設計になっています。最低で1個につき4.9kgとしていますが、それより軽いスピーカーだとダメというわけではありません。DTM用途だと、そこまで重くないスピーカーを使っているケースも多いでしょう。そうした軽いスピーカーの場合は、なるべく前に1点、後ろに2点という設置がお勧めです。またBUREENの上下をひっくり返すことで少し特性が変わるため、音の聴こえ方にも変化があると思うので、その辺も試してみると面白いと思います。ぜひ、DTMにおいてもうまく活用してみてください」(佐山さん)
とのこと。モニタースピーカーの音の響きや周囲の振動などが気になっている方は、使ってみる価値はありそうです。
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