12月25日、VOCALOIDが6.2から6.3へとアップデートするとともに、さまざまな強化が図られました。これまでVOCALOID 6ではAI歌声合成エンジンであるVOCALOID:AIに対応したボイスバンクが4種類搭載されていましたが、今回の6.3になるタイミングで日本語の女性ボーカルであるSAKURA、SHION、日本語の男性ボーカルであるASAHIとTAKUの計4種類が無償で追加され、計8種類(それとは別に従来からのVOCALOIDエンジンのボイスバンクも4つ搭載されています)となりました。また、今回のアップデートで合成音の品質も向上し、より人間的な歌い方が可能になっています。さらにTake機能のバリエーションが追加されたり、コントロールパラメーターにCharacter(従来でいうところのGender Factor)が追加されるなど、編集ツール機能もいろいろと強化されています。
一方で、このVOCALOID 6.3の登場に合わせ、12月25日~2024年1月9日の期間限定でVOCALOID6 Editorのセール販売も実施されています。通常VOCALOID6 Editorの単体が27,500円(税込)のところ15%オフの23,375円、すでにVOCALOID製品を持っている人用のVOCALOID6 Editorアップグレード版も通常16,500円が14,025円と同じく15%オフです。このVOCALOID6 Editorがあれば、VOCALID:AIのボイスバンクが8種類とVOCALOIDボイスバンクが4種類付属してくるわけです。さらにAI Megpoidをはじめとするボイスバンク商品と同時購入で適用されるPLUSボイスバンクキャンペーンも実施されています。実際、VOCALOID 6.3を試してみたので、今回のアップデートがどういうものなのか紹介してみましょう。
VOCALOID:AIボイスバンクが4つ追加に
今回、VOCALOID6がVOCALOID 6.3へとアップデートされたのですが、その中で最大の目玉ともいえるのがボイスバンクの追加です。このボイスバンク追加に関しては、VOCALOID6の登場時からアナウンスされていましたが、有償での追加ではなく、無償での追加というのはユーザーにとって嬉しい限りです。
具体的には以下のURLからアップデータをダウンロードすることで、これまでVOCALOID6を使ってきた方は無償でアップデート可能です。
今回、4つの新規ボイスバンクが追加されたことにより、VOCALOID 6.3には以下の計12種類が標準で入っている形となります。
従来からのVOCALOID:AIボイスバンク | 新たに追加されたVOCALOID:AIボイスバンク | VOCALOIDボイスバンク |
AKITO(日本語・男性) | SAKURA(日本語・女性) | Kaori(日本語・女性) |
ALLEN(英語・男性) | SHION(日本語・女性) | Ken(日本語・男性) |
HARUKA(日本語・女性) | ASAHI(日本語・男性) | Amy(英語・女性) |
SARAH(英語・女性) | TAKU(日本語・男性) | Chris(英語・男性) |
実際、そのSAKURA、SHION、ASAHI、TAKUの歌声のデモ音源があるので、ぜひ聴いてみてください。
いずれも、リアルな歌声で、いろいろなシーンで利用できそうですよね。
これまでVOCALOID 6を使ってきた方が6.3へアップデートした場合、ASAHI、SAKURA、SHION、TAKUの4つのボイスバンクが追加される形ですが、これら4つに関するオンライン認証が必要になります。
が、このアップデートタイミングで新たなシリアルコードが発行されるわけではありません。単に、以前ヤマハVOCALOID SHOPでVOCALOID6を購入した際に得たVOCALOID6 Voicebanksのシリアルコードを再度入力するだけです。これによってすべてが使えるようになるわけです。
アップデートで、より高品位な歌声に
このVOCALOID 6.3へのアップデートでは、もちろん機能面、性能面でも進化しています。中でも大きなポイントとなるのが合成音品質の向上です。HARUKAやAKITOなど6.3になった歌声を聴いてみてください。
いかがですか?HARUKA以下を聴いていただくと、VOCALOID6.0~6.2の歌い方からかなり進化しているのが感じられます。ヤマハによると特にピッチの遷移とピッチに伴う音色の変化を改善したとのことで、合成音品質が全体的に向上し、学習した声の本人の歌声に近くなっているようです。その結果、より人間っぽい歌い方に聴こえるわけですね。
一方、VOCALOID6で搭載されたTake機能も強化されています。Take機能とは、ノートの位置を変えずに、発音タイミングをずらしたものを複数生成してくれる、というもの。これにより、ユニゾンで歌わせた場合、複数の人が歌っているように感じさせることができる、という機能でした。
Take機能においてオン気味のTake6~Take10が追加された
これがVOCALOID 6.2まではTake1~5の5通りだったのが、今回のVOCALOID 6.3ではTake1~10の10通りに増えています。この10通りの中でTake1~5は従来と同じで、Take6~10が新たなバリエーション。こちらは発音タイミングが若干オン気味になっているので、ぜひうまく組み合わせて使ってみてください。
VOCALOID:AIトラックにCharacterパラメータが追加に
そしてもう一つ大きなトピックスは、多くのユーザーが待ち望んでいたパラメータの追加です。そう、声を男性っぽくしたり、女性っぽくするためのGender Factorというものが従来のVOCALOIDには搭載されていましたが、それとほぼ同等の機能がVOCALOID:AIトラックにも追加されたのです。
VOCALOID:AIトラックにおいてはGender Factorという名称ではなく、CHR:Characterというパラメータ名になっていますが低いと男性っぽい歌声に、高いと女性っぽい歌声になります。
従来のGender Factorに相当するCharacterというパラメータが追加された
一方、これまで歌い方の強弱をつけるためのエクスプレッションという機能がありました。各ノートに前方エクスプレッション、中間エクスプレッション、後方エクスプレッションを設定する形になっていましたが、今回の6.3ではEXP:Expressionというパラメータとしてコントロールパラメータエリアでも使えるようになりました。結果として2つの設定ができるようになったわけですが、実際には同じパラメータであるため、両方の合計値が合成音に反映される形となります。
ノートに設定できるエクスプレッションに加え、コントロールパラメータエリアでもExpressionパラメータが利用できるようになった
一括して歌い方を変更したい場合は、1小節1拍目にブレイクポイントを1つ打って調整する、といった使い方もできます。またロングトーンの中での変化を細かくつけるといった使い方も可能です。
ビブラートツールに2つのパラーメータが追加された
もうひとつパラメータ関連で追加されたものがあります。それがビブラートツールでの2つのパラメータです。
これまでビブラートツールでは速度と深さを調整可能となっていましたが、今回、前方深さ、後方深さというものが追加されたため、より細かくビブラートの動きを制御できるようになっています。その名前の通り、ノートの前のほう、後ろのほうでのビブラートのかかり具合を調整し、変化させられるようになっています。つまりビブラートがだんだん深くかかっていったり、だんだん弱くなっていく……といったことが可能になっているのです。
クオンタイズ機能やトルツメ機能も追加
そして、今回のアップデートでは歌声に関する性能だけでなく、基本的な機能もいくつか追加されました。
ようやく搭載されたか…というような基本機能ではありますが、1つがクオンタイズです。VOCALOID6 Editorはピアノロール画面でのマウス入力だけでなく、MIDIキーボードからのリアルタイムレコーディングができるため、どうしてもタイミングのズレが出て気になるところです。今回、クオンタイズ機能が搭載されたことで、この問題を簡単に解決できるようになったのです。
使い方は一般のDAWと同様で、レコーディング後に、ノートを選択した上で、右クリックするとクオンタイズという項目が出てくるので、これを選択することでこれを選択することでクオンタイズが可能です。また「Q」キーでもクオンタイズできますね。また「クオンタイズ50%」を選ぶと、完全なクオンタイズの半分だけ動かすことも可能になっています。ちなみに、どのタイミングにクオンタイズするかはGRID値で設定できるようになっています。
そして、これもようやくという感じなのが、トルツメ機能の搭載です。たとえば5小節目から8小節目を削除し、9小節目以降を5小節目以降に持ってくるという機能ですね。
これはマーカーで削除したい範囲を指定した上で編集メニューから「範囲を切り詰めて削除」を選ぶか、ALT+DELETEキー(Macの場合はOption+DELETEキー)でトルツメすることができます。
合成エンジンとボイスバンクの両方のアップデートが必要
さて、この歌声品質の向上や機能追加は、単に合成エンジンが改善しただけではないんです。ボイスバンク側も精度が向上したこともあり、この両方の組み合わせで性能向上するようになっています。
また今回のVOCALOID 6.3へのアップデートにおいては、その合成エンジンとボイスバンクの双方のアップデートが必須となりました。つまり、エディタだけをアップデートして、ボイスバンクが従来のもののままだと歌わせること自体ができなくなってしまいます。
もちろん標準搭載のVOCALOID:AIボイスバンクの8つについては、VOCALOID6 Editorをインストールすると同時にアップデートされるため問題ないのですが、気を付けなくてはならないのが、別売のボイスバンクについて。これらもヤマハ製、他社製ともに、このタイミングでVOCALOID 6.3対応のボイスバンクのアップデータが登場しているので、それらをインストールする必要があるのです。
ちなみに、インターネットのAI MegpoidおよびAI音街ウナのアップデータは以下から入手可能です。
一方、ヤマハの符色、ZOLA Project、Po-utaのインストーラーは以下から入手できます。
このヤマハのインストーラは、VOCALOIDサイトにログイン後、MY Page>購入履歴から、フルインストーラーをダウンロードすることで、アップデートできるようになっています。
既存のプロジェクトをそのまま開くためのダウングレードも可能
VOCALOID6に限る話ではないのですが、AI歌声合成では、バージョンアップすることによって、歌い方が結構変わってしまうため、すでに制作した作品がある場合、その歌声を再現できなくなってしまう可能性があります。そのため、できるだけ完成したら歌声をWAVとして保存しておくのが安全ですが、やはりどうしても開きたいとか、修正したい場合は、前のバージョンに戻す必要があります。
その旧バージョンのインストーラは手元で保管しておくのがお勧めではありますが、そうしたダウングレードニーズに対応するため、ヤマハからも旧インストーラがダウンロードできるようになっています。ここにはVOCALOID Editorもボイスバンクもあるので、以下からダウンロードしてみてください。
なお、AI Megpoidなど、ヤマハ製以外のボイスバンクについては、各発売元からダウングレードのインストーラが配布されているので、そちらをチェックしてみてください。
VOCALOID 6.3はもちろん初音ミクなど従来バージョンのVOCALOIDボイスバンクも利用可能
以上、VOCALOID 6.3について、概要をざっと紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?「以前にVOCALOIDは使っていたけど、最近バージョンアップしていない…」という方も少なくないと思いますが、これだけ多くのボイスバンクが標準搭載され、VOCALOID5以前とも互換性があり、初音ミクなどのVOCALOID3、4、5のボイスバンクも使えるので、そろそろバージョンアップしてみても、よさそうですね。
なお、VOCALOID6の体験版もあるので、まずはこちらを試してみてはいかがでしょうか?このVOCALOID 6.3がリリースされたタイミングで体験版も6.3になっており、SAKURA、SHION、ASAHI、TAKUの4つも加わった、8つのボイスが利用できます。
期間限定のセールも実施中
冒頭でも紹介したとおり、今回のVOCALOID 6.3のリリースと合わせ、VOCALOID6の年末年始セールが開催されています。これはヤマハが運営するネットショップであるVOCALOID SHOPにおけるセールで、12月25日(月)~2024年1月9日(金)の期間、以下のとおり、VOCALOID6 EditorおよびVOCALOID6 Editorアップグレード版が15%オフとなっています。
VOCALOID6 Editorアップグレード版:16,500円(税込)⇒14,025円(税込)
さらに上記のVOCALOID6 EditorまたはVOCALOID6 Editorアップグレード版とボイスバング商品と同時購入で適用されるPLUSボイスバンクキャンペーンというセールも実施中。これはAI Megpoidをはじめとするボイスバンクもセットで買うと、VOCALOID6が10%オフになるというもの。これは、VOCALOID6のボイスバンクに限らず、初音ミクV4Xなど、VOCALOID5までのボイスバンクも対象です。
つまり15%オフの価格がさらに10%オフとなるので、VOCALOID6 Editorの場合、27,500円が21,038円、VOCALOID6 Editorアップグレード版なら12,623円とかなり安く購入できるので、VOCALOID6を買うなら絶好のチャンスとなっています。
【関連情報】
VOCALOID年末年始セール
VOCALOID6 体験版ダウンロード
【価格チェック&購入】
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◎VOCALOID SHOP ⇒ VOCALOID6 アップグレード版
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