本日12月5日、Addictive DrumsやAddictive Keysなどで知られるスウェーデンのソフトウェアメーカー、XLN Audoが、また非常にユニークで画期的なプラグイン、Life by XLN Audioを発表し、国内でもさっそくダウンロード販売が開始されました。このLifeは街の雑踏や電車の中の音、料理をしてる音、会議中の声……など生活の中の音の一瞬を切り取って、その音をスライスしてまったく新たなにビートメイクするという発想のソフトです。
もちろん楽器じゃない音をリズムに利用するという発想は昔からあったものですが、その操作を本当に簡単に、そして自動で行ってくれるのが、このLifeなのです。スマホと連携するので、普段の音をiPhoneやAndroidで録音しておくと簡単にプラグインへ取り込むことが可能。できたビートが気に入らなければ、ランダムボタンを押したりパラメータ適当に動かせばまさに無限にさまざまなビートを作り出してくれるのです。まさにほかにはない自分だけのビートを作り出し、簡単にDAWに取り込んで使うことができる画期的なもの。価格はハイリゾリューションストアからのダウンロード版が通常価格24,421円のところ税込16,980円のイントロ価格で販売スタート。実際どんなものなのか試してみたので紹介していきましょう。
XLN Audioが発表した非常にユニークなビートメイキングツール、Life by XLN Audio
日常の何気ない音を元に自動でビートメイクする、Life
「日常生活のサウンドをビートに換える、機械学習と独自性を兼ね備えたビートメイク・インストゥルメント」というキャッチフレーズで登場した新たなプラグイン、XLN AudoのLife。このキャッチフレーズだけ見ても、何のことやらピンとこない人も多いと思いますが、このLifeをちょっと使ってみたところをビデオにしてみたので、まずは以下の動画をご覧ください。
だいたい何をしているのかお分かりいただけたでしょうか?こんな感じで、本当に一瞬にして日常の音を元にカッコいいビートを作ることができるのです。
日常の音を切り刻んでビートに何度でも再構成
でも、もう少し具体的に紹介していきましょう。
そもそも、このように日常の音を素材にビートメイキングすること自体は古くから行われています。実際同様のことをした経験のある方も少なくないと思います。ドラム缶を叩いた音とか、コップを叩いた音を録って、それを切り出してドラム音源に読み込ませて使うとか、素材をスライスした上で、並び替えるとか、いくつかの方法はありますが、しっかりしたビートに仕立てるにはかなりな手間がかかります。
また時間をかけてリズムパターンを作ったとしても、サウンド的にイマイチで……ということになりがち。でもこのLifeならほぼ一瞬にして、しかも即実践に投入できるクオリティーのビートを作り出してくれのですから、すごいですよね。
先ほどのビデオにもあったとおり、LifeにはあらかじめいくつかのWAVEファイルの素材が入っています。その一つがコートでバスケットボールをドリブルしながらプレイしている音を録音した素材。普通、こんな音からビートメイクしようなんて発想が起きないと思いますが、これを選択すると、即その素材をスライスして組み上げたリズムが生成され、結構いい感じのサウンドになっているんですよね。
Randomizeボタンを押すと、瞬時に新しいビートが作られる
さらにサイコロのアイコンのランダマイズボタンをクリックすると、そのリズムパータンをいろいろと組み替えてくれるので全然違うリズムが、クリックするたびに生成されます。また、Sound Variationというパラメータを適当に動かすと音程が変わったりフィルターがかかったような音になるなど雰囲気がどんどん変わっていきます。
そして右にあるPattern Variationというパラメータを動かすと、リズムパターンがいろいろと変形されていくため、かなり違う雰囲気のリズムが生成されるという感じです。いずれにせよあまり深く考えずに適当に動かすだけで、どんどんビートメイキングができるのです。
スマホとペアリングすれば録った音が自動でプラグインに
ビデオ後半では、スマホでテストレコーディングした「アアアア、アイウエオ」という声を選択したところを紹介していますが、こんな声でも、なんかカッコいいビートが生成されてしまうのはちょっと驚きでした。
スマホアプリとして無料公開されているLIFE。録音ボタンをタップして、日常の音をレコーディング
でも、そもそもどうやってスマホで録音した音をプラグインで利用するのか。その流れをちょっと見てみましょう。
スマホに表示されたコードをプラグイン側に入力するとペアリングされる
実はXLN AudioからはiOS、Android用にLifeというアプリが無償で提供されています。これをインストールして起動すると、画面にコードが表示されるので、これをLifeのプラグイン側で入力すると双方がペアリングされる形になっています。
Lifeでレコーディングした音は名前と、カラー設定、アイコン設定をしておく
一度ペアリングされてしまえばWi-Fiでも公衆回線でも、それぞれがネット接続さえされていれば、スマホでレコーディングした音のデータがXLN Audioのクラウドを介してWindowsやMacのプラグインのLifeで表示され、扱えるようになるのです。
スマホ側でレコーディングした素材がプラグイン側からそのまま見える
具体的には、アプリ自体はとってもシンプルな録音アプリなので、録音ボタンをタップして身の回りの音をレコーディングするだけ。生活音でもいいですし、もちろん楽器を演奏する音などでもOK。ペアリングさえしておけば、特に転送の手順など不要で、プラグインからそのまま利用することができるのはとっても便利です。
より自分の好みのビートにするためのカスタマイズ
基本的にすべて自動でいい感じのビートを作ってくれるLifeですが、もちろんユーザーの意思を反映させて、もっと欲しいビートにしていくことも可能です。そうした機能についても見ていきましょう。
画面中央の大きな円が現在生成されているビートを表しているのですが、前述のとおり左のRandomizeをクリックすれば別のパターンを作ってくれ、さらに左のSound Variationで音の雰囲気を変えてくれます。また右のPattern Variationでパターンの組み方を変化させてくれるのです。
一方、大きな円の下にはDensity、Syncopation、Symmetryという3つのパラメータが用意されています。これらを動かすことでも生成されるビートがかなり変化していきます。まずDensityは音の濃度というか密度を調整するもの。大きくすれば、ビート内で使う音符=スライスした音が増えていき、小さくすれば減っていきます。
またSyncopationはまさにシンコペーションで強拍と弱拍のバランスがいろいろと変化していくのでビートの雰囲気が大きく変わってきます。
SyncopationやSymmetryを使ってパターンを変化させていく
さらにSymmetryは対称という意味ですが、生成されたビートの前半と後半のバランスを調整するものとなっていて、前半と後半が似たものになるのか、全然違うものになるのかを変えていくことが可能です。
このようにして作っていったビートで、気に入ったものができたら、大きな円の上の「+」を押すと記録されていくので、あとで再度使うことが可能になります。
各スライスをシンセサイザ的にエディットした音作りも
画面右上にあるEDITというボタンをクリックすると画面は大きく切り替わります。
見ると分かるように1~4まで4つのパートに分かれて表示されており、それぞれでの音作りが可能になっているのです。その数字の下に色のついた四角のアイコンがあるのが、それぞれのパートを構成しているスライス。つまりどのスライスの音を変化させるのかがここで分かります。また音作りをしていく上ではM、Sボタンを使ってソロ再生させると分かりやすそうです。
EDITボタンを押すと、細かな音の設定のための画面に切り替わる
パラメータを見てみるとVolume、Pitch、Panと単純なミキサー的な調整ができるほかToneではEQ的な音質調整、Cutはカットフィルタとなっていて、横棒のパラメータの上下の〇を使って高域、低域の周波数を設定していきます。
さらにその右のRevとDelはリバーブとディレイを意味しており、エフェクトを掛けていくこともできます。
4つのパートが表示され、それぞれで音の調整ができるようになっている
その右はエンベロープジェネレータ。いわゆるADSDRではないのですが、ここにマウスカーソルを持っていくことで、トランジェントとホールド時間、ディケイのそれぞれを設定可能になっています。
右側にあるPatternは、まさにそのスライスをどのように鳴らすのかの16ステップのシーケンサとなっています。つまりこれをいじることで、ビートそのものを手動で打ち込んでいくことも可能。それぞれAパターン、Bパターンを設定できるようになっており、AB交互に鳴らすか、AAABで鳴らすかの設定も可能になっています。
スライスポイントの調整も可能
Lifeは、日常の音からビートメイキングできるように絶妙な具合に自動でスライスしてくれるのが大きな特徴ではあるのですが、あえてそれとは異なるスライスにしたい…というニーズもあるかもしれません。
Slice Pointsというボタンをクリックすると、スライスポイントを調整できる画面に切り替わる
とくに狙った音があって録った場合、「そうではなくて…」と思った場合はもちろん手動でスライスしなおすことも可能です。画面左上に「Slice Points」というボタンがあるのでこれをクリックするとスライス設定画面が現れます。
ここでスライス位置を動かすこともできるし、スライスを追加したい場合はその位置にカーソルを動かすと波形上部に「+」アイコンが現れるのでこれをクリックすることで追加できます。
反対に、このスライスは不要という場合、いらないスライスを選択すると画面下にゴミ箱アイコンが現れるので、これをクリックすることで消すことができます。
なお、画面左上には「Denoised」というボタンがありますが、これをオンにしてくと、ノイズをうまく除去してくれるようになります。
DAWとのテンポ合わせやキックの追加も
このLifeを使う上で、当然DAWのプロジェクトとテンポを合わせて使いたいわけですが、デフォルトでは録音した素材にマッチする形でのBPMが自動で設定されています。
ここで、画面下にあるTempo表示の右にあるカギのアイコンをロック状態にしてみると、DAWのテンポと同期されDAWでテンポを動かすとここも動くようになり、Lifeで生成されるビートのテンポもそれに準ずる形となります。
そのTempoの右側にはGrooveというものがありますが、ここをクリックするとSwingやRushuedといったメニューが表示されます。これを選らんだ上で、その右のスライダーを挙げていくと、選んだブルーヴにしたがったビートに変化していくので、これもビートメイキングにおいては役立ちそうです。
さらに、その右にKICKというボタンがあります。これをクリックすると、素材を元に作ったビートに追加される形でキックが入る形になります。デフォルトでは四ツ打ちの形になっていて、ドンドンドンドンとキックが入りますが、キックのリズムは自由に変えることができるし、キックの種類も808や909、Disco、EDM…などいろいろ変えることも可能になっています。
できあがったビートはループ素材としてDAWへ
このようにしてできあがったビートをどう活用するかというのが制作においては一番重要なところなわけですが、Lifeは単なるプラグインのインストゥルメントというわけではないんです。
Lifeで生成したビートは、自由自在にDAWで活用できるようになっているのが一番嬉しい点でもあります。つまり、ループ素材生成マシンとしてLifeを使えるということなのですが、それはどういうことなのか?
画面右上にある上矢印のアイコンをクリックすると、EXPORTダイアログが現れます。これを開くためには事前にEXPORTのフォルダを設定しておく必要があるのですが、これを見るといろいろなボタンがあることに気づくと思います。
EXPORT画面。ここからDAWへ各種素材をドラッグ&ドロップで持っていくことができる
この中で一番の中心となるのが、「Beat as WAV」というボタン。これをクリックすると、先ほど生成したビートがWAVとして保存されます。そして、このボタンをそのままDAWのオーディオトラックへドラッグ&ドロップすると、そのままループ素材として貼り込まれるのです。
「Beat as WAV」をDAWへドラッグ&ドロップすると、Lifeで生成されたビートをオーディオトラックに持っていくことができる
またその下には「Beat as MIDI」というのがありますが、こちらはMIDIデータとしてループ素材が貼り込まれる形となっているのです。
一方、左側にはSTEMSというのがありますが、これは各スライス素材をある程度まとめた形で4つのSTEMになっているので、それをバラバラにDAWに貼り込んでいくことが可能です。この際、前述の808や909などのキックだけのパートも使うことができます。
さらにスライス自体を単品としてDAWに貼り付けることもできるし、キックだけを貼り付けることができるなど、本当に利用の仕方は自由自在となっています。
以上、XLN AudioのLifeについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?普段の何気ない音を元に、まさに自分だけのオリジナルビートを簡単に生成できるので、オリジナリティーを求めるのであれば、導入する価値は大きいと思います。
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◎ハイリゾリューション ⇒ Life by XLN Audio