DTM Stationでも何度も登場しているドイツの老舗マイクメーカー、NEUMANN(ノイマン)。U 87 Aiなどスタジオのスタンダードとして君臨するマイクが有名ですが、近年はKH 80 DSPやNDH 30など自宅でも使えるモニターまわりの製品も多くリリースしていて、スピーカー、ヘッドホンともに徐々にラインナップが拡充されています。NEUMANNは1991年より同じくマイク・ヘッドホンのメーカーとして有名なSENNHEISER(ゼンハイザー)のグループ企業で、2005年にスピーカーの老舗メーカーであるKlein + Hummel(クライン・ウント・ハンメル)をゼンハイザーが買収したころからスピーカーやヘッドホンをリリースするようになりました。スピーカーのKHシリーズのモデル名は、Klein + Hummelの名前からきているそうです。
現在ラインナップされているヘッドホンは密閉型のNDH 20と開放型のNDH 30。どちらもなかなかのお値段がするヘッドホンですが、プロのエンジニアだけでなく、自宅で制作を行うクリエイターにも人気があるヘッドホンです。NDH 20は2019年リリースですが、数量限定でNDH 20 Black Editionというブラックバージョンがリリースされていることをご存知でしょうか。このNDH 20 Black Edition、カラーが黒いだけでなく、仕様も少々異なっており、最近リリースされたばかりのNDH 30の特徴を持っている、いわばNDH 20とNDH 30のいいとこ取りモデルになっているそうです。NDH 20とNDH 20 Black Editionを比較しながら紹介してみたいと思います。
そもそもNDH 20とはどんなヘッドホン?NDH 20の概要を紹介
NDH 20はレコーディングやミキシングに使える密閉型のヘッドホン。マイク同様にプロフェッショナル向けの製品という位置づけなので、価格はやや高めです。
実際に音を出すユニット(ドライバー)については、SENNHEISERの特許技術を含むDoufol(デュオフォール)膜とネオジウム磁石を採用した 38mm ダイナミックドライバーを採用していて、低音は5 Hzから高音は30 kHzと、人間の可聴範囲を超えるワイドな周波数特性を誇っています。
ドライバーの他、遮音性が非常に高いことも特徴のひとつ。密閉型ヘッドホンは音が漏れにくいためレコーディングに使えることが特徴ですが、どの程度音を遮るか(遮音性能)はヘッドホンによって大きく異なります。
NDH 20は大型のイヤーカップや形状を記憶するイヤーパッドの効果もあり、高い遮音性能を発揮。ボーカルレコーディングでもマイクに音が入りにくいのです。深夜のミキシングやアレンジの作業でも周囲に音が漏れにくく、家族にも迷惑をかけずに済みそうです。
以前掲載した「9万円で買えるNEUMANNのコンデンサマイク、TLM 102でどこまでできるのか?ナレ録り、歌録りを試してみた」という記事でもNDH 20を使用してリハーサルスタジオで録音しましたが、高い遮音性能に助けられてクリアな音で録音できました。
また、PAや同時に複数人で作業する場合など、外の音が入ってこない方が良い環境でも高い遮音性能がクオリティの高いミキシングに貢献。集中したい人にはうってつけのヘッドホンといえます。
ただし、高い遮音性能に伴ってヘッドホン自体はやや大型で、重さは390gありますので注意が必要です。しかし、高品位なパーツ類のおかげで、長時間つけていても苦になることはありませんでした。
最後に挙げておきたいのはハードウェアの造りの良さでしょう。カッチリとした重厚かつ精密な造りは、安価なヘッドホンでは味わうことのできないものです。特にヘッドバンド部を伸ばしたり縮めたりしたときのカッチリ感はぜひ体感していただきたい部分です。
イヤーカップは折りたたみが可能で、持ち運ぶ際にはコンパクトにまとめることができます。もちろん、折りたたみ部もヘッドバンド同様の精密感あふれる構造です。
NDH 20とNDH 20 Black Editionの違いは?
続いて、通常版のNDH 20と、ブラックバージョンであるNDH 20 Black Editionの違いを見てみましょう。NDH 20 Black Editionは単純なカラーバリエーションだと思っていましたが、中身も少し違っているんです。
NDH 20とNDH 20 Black Editionではケーブルが異なっており、NDH 20 Black Editionの方が線が1本多いケーブルが採用されています。また、NDH 20はカールコードですが、NDH 20 Black Editionはストレートコードになっていて、ややオーディオライクな雰囲気があります。
これはNDH 20 Black Editionの内部構造がバランス構造になっていることによるもの。NDH 20では左右チャンネルのグランド(マイナス)は共通ですが、NDH 20 Black Editionでは左右のグランドが独立した信号経路として扱われているため、ステレオイメージがより高精度になるといった効果があるそうです。
聞き比べてみるとかなり微妙ではありますが、NDH 20 Black Editionの方がややくっきりした音に聞こえるような気がしました。
この内部バランス仕様は先日「NEUMANNがスピーカーと同じ音を目指して開発した、初の開放型ヘッドホン、NDH 30の実力」で紹介した開放型のNDH 30で採用された仕様なので、大変であっても可能なところだけでも良い仕様に変更しようというNEUMANNの姿勢が伺えますね。
また、NDH 20はケーブルが右側から生えている珍しいヘッドホンなのです。市販されているヘッドホンの多くはケーブルが左側から出るため、NDH 20を装着する際に左右を間違えやすいのも事実。ということで、NDH 20 Black Editionではイヤーカップ内に大きくL/Rと印字され、間違えにくくなっています。
最後に、NDH 20 Black Editionは、ゼンハイザープロオーディオ公式店(楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングの3店舗)限定で販売されています。将来的な販売方法は未定とのことですが、現段階ではこの3店舗限定での販売となるようです。一方でNDH 20はSENNHEISER/NEUMANNを扱っている販売店であれば購入が可能です。
NDH 20とNDH 20 Black Editionどちらを買うのが良い?
内部構造に違いがあり数量限定ということで、ブラックカラーが嫌いでなければBlack Editionを購入しておくほうが良いように感じました。とはいうものの、NDH 20が決定的に劣るほどの差ではないので、価格や販売店などを参考に、ご自身の条件に合う方を選べば良いと思います。
NDH 20はシルバーでいかにもスタジオ機器といった雰囲気が魅力ですね。
周囲にもNDH 20を愛用しているエンジニアやミュージシャンがいますが、Bkack Editionに買い換えるという話は今の所聞いていません。しかし、これから買うならBlack Editionが良いかも、という話はちらほらと見受けられました。
なお、本体の違いではないのですが、NDH 20 Black Editionは数量限定でNEUMANNメタルキーホルダーがついてくるようです。このメタルキーホルダーは非売品のものらしいので、NEUMANNフリークの方には垂涎モノのアイテムかもしれません。NEUMANNメタルキーホルダーも含めて、ご自身に合うモデルをチョイスしてみてください。
【関連情報】
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