Avidから12年ぶりとなるMBOXの新製品、MBOX STUDIO(116,600円税込)が発表されました。MBOXはデスクトップタイプのオーディオインターフェイスとして親しまれてきた製品でしたが、久しぶりとなる今回の新製品は、最高24bit/192kHzに対応しており、24bit/96kHzでの使用時には22in/21outの同時入出力が可能です。通常のオーディオインターフェースに搭載されているようなマイクやラインの入出力、デジタルの入出力、ノブでの操作などに加えて、Bluetoothの入出力やトークバック機能、リアンプ用ジャック、コンパクトエフェクタを繋ぐためのFX端子……など、音楽制作で使用する機材のハブになる機能を完備しています。
また、MBOX STUDIOをコントロールするMBOX Controlが万能で、好きなようにルーティングを作ったり、0レイテンシーでEQやリバーブなどを掛け録り、モニターのみに適用可能。Avidが出しているオーディオインターフェースなので、ProToolsとの連携は完璧。もちろんProToolsに限らず、各種CoreAudioもASIOも使えるので各種DAWとの連携も可能だし、OBSをはじめとする各種配信ソフトでの利用も可能となっています。個人クリエイターのみならず、小規模のスタジオでも見る機会が増えそうなMBOX STUDIOの概要を紹介していきましょう。
クリエイター向けオールインワンのデスクトップオーディオインターフェースAvid MBOX STUDIO
MBOX STUDIOは、ミドルレンジのオーディオインターフェースの部類に入るわけですが、他社の近いランクの機材と比べると、また違った個性が光っています。とにかく、入出力のバリエーションが豊富となっており、かなりホームスタジオを意識した作りになっているのが伝わってきます。価格は10万を超えてきますが、これ1台あれば、あらゆるシチュエーションに対応できるので、機材を買い足す必要がない点も考慮すると、かなりコストパフォーマンスが高いといえます。
さてMBOX STUDIOの発表は、10月20日だったわけですが、その際にRockoNCompanyのYouTubeチャンネル内で、「【緊急発表生配信!!】Avidダニエル&バウンス清水&RED先生のアビットーーーク 〜本日発表のAVID新製品をどこよりも早く深掘り!〜」という放送を行っていたので、より詳しくMBOX STUDIOを知りたい方は、まずこちらをご覧いただくのがよさそうです。
1時間ほどある動画なので、お時間ある方はご覧いただきたいのですが、「とりあえずMBOX Controlがどういう機材なのか知りたいよ!」という方も多いと思います。そんな方に向けて、ここからはMBOX STUDIO特徴をピックアップして紹介していきます。
まずはハード部分から見ていきます。フロントにはマイクでもギターでも接続できるコンボジャックが2基搭載されており、その隣にはリアンプ用のジャックを1系統搭載。また独立コントロールが可能なヘッドホンアウトも2系統装備されているので、ボーカルレコーディングの際に片方にエンジニア、もう片方をボーカリストといった使い方が可能。
フロントにはコンボジャックが2つ、リアンプ用のジャック、ヘッドホンアウトを2つ装備
リアには3ch、4chに対応したコンボジャック、インプット5,6chのライン端子、MAINとALTのステレオ2ch分のモニターアウトが搭載。そのほか、OPTICAL、S/P DIF、MIDI in/out、FX SENDS/RETURNS、EXP/SWが装備されています。またBluetoothのIN/OUTにも対応しているので、スマートフォンとBluetooth経由で信号のやりとりが可能。スマホで流した楽曲をMBOX STUDIOに送ったり、MBOX STUDIOからの音声をワイヤレスイヤホンへアウトすることができます。出先で使うワイヤレスイヤホンでは、どう聴こえるのか簡単にチェックできるのはポイントですね。
1-2ch Mic/Line/Instrument input(コンボジャック)
3-4ch:Mic/Line input(コンボジャック)
5-6ch:Line input
7-8ch:Line input/FX Returns
9-10ch:S/PDIF input
11-18ch:ADAT input
19-20ch:Bluetooth input
21ch:Talk Back input
Bluetooth入出力以外にも珍しいのは、Hi-Z OUT TO AMP(リアンプ用のジャック)やFX SENDS/RETURNSだと思います。Hi-Z OUT TO AMPは、グランドリフトスイッチ付の1/4インチ端子のアウトとなっているので、ここからアンプに繋いで、アンプ側で音作りを行うことができます。またFX SENDS/RETURNSは、普通のLINEのin/outとして利用することも、Hi-Zに切り替えて使うことも可能となっており、コンパクトエフェクタを繋ぐこともできるのです。ギタリストにとってかなり嬉しい仕様になっていると思います。
1-2ch: MAIN Output
3-4ch: ALT Output
5-6ch:Headphone1 Output
7-8ch:Headphone2 Output
9-10ch:Line Output/Hi-Z Output/FX Send
11-12ch:S/PDIF Output
13-20ch:ADAT Output
21-22ch:Bluetooth Output
さらにEXP/SWは、外部スイッチの接続が可能です。MBOX STUDIO本体には、トークバック用のマイクが仕込んであるので、これを外部スイッチの操作でオンオフしたり、エクスプレッションペダルとして認識させることも可能です。ギターのリアンプ、エフェクタの接続、外部スイッチ、Bluetooth入出力……など、システムのハブとしての機能性を推しているだけあって、接続できるソースの種類が多いです。
トップパネルを見てみると、入力の操作系は左側に、モニターの操作系は右側にまとまっています。左のノブを回したり、押し込んだりすることで入力信号を調節したり、チャンネルの選択が可能。左上のボタンには、48Vの切り替え、INPTでMIC/LINE/INSTの切り替え、Bluetoothのペアリングボタン……などになっています。筐体には、メーターやインジケーターが搭載されているので、視認性がいいのもグッドポイントですね。
トップパネルでは出力のコントロール以外にも、便利な機能をワンタッチで操作できる
モニターコントロールセクションのノブでは、MAINとALTの出力レベルを変更できます。MONO、MUTE、DIM、TALKといったレコーディング時や、ミックスするときに使い勝手のいい機能が、ワンタッチでアクセスできるのは、流石といえます。さらに中央には、専用のソフトウェアであるMBOX Controlの開閉ボタン、TUNEボタン、カスタマイズ可能なユーザーボタンが配置されています。
サイドには、MBOX STUDIOのロゴマークが刻印されている
TUNE(チューナー)ボタンをオンにすると、チューニングをMBOX STUDIOのメーターで行うことが可能となります。接続しっぱなしで手軽に使えるチューナーで、シールドを接続したギター以外にも、トークバックマイクを使ってアコースティック楽器のチューニングを行える仕様となっています。細かいところまで、気の利いた機材ですよね。
そして、専用のソフトウェアMBOX Controlでは、インプットに4バンドEQとソフト・リミッターを搭載しているので、これのコントロールが可能。またリバーブ&ディレイを搭載しているので、ボーカル録音時に歌いやすい環境をPCに負荷を掛けず行うことができます。さらにルーティングが自由に作成できるのでループバックを作ったり、設定をプリセットとして保存、呼び出すことも可能です。上段にMBOX STUDIOの物理入力チャンネル、中段にMBOX Controlへの8つの内部ソフトウェア入力、下段にMBOX STUDIOの物理出力が表示されており、それぞれProToolsのi/o設定と一致するようになっています。
MBOX Controlでは、ルーティングの設定、エフェクトのコントロールなど、あらゆる操作を行える
そんな多機能なMBOX STUDIOですが、付属するソフトウェアも豪華なのです。付いてくるのは、
Pro Tools年間サブスクリプション
Sibelius Artist年間サブスクリプション
Pro Tools Inner Circle
Ignition Pack
のそれぞれとなっています。プロのレコーディングにおけるスタンダードDAWであるPro Tools Studio年間サブスクリプションは、38,830円(税込)。楽譜作成ソフトSibelius Artist年間サブスクリプションは、12,870円(税込)。Pro Tools Inner Circleは、本来であればPro Tools年間サブスクリリプションユーザーに付与される特典であり、2,000ドル相当以上のプラグインがバンドルされているプログラムなので、これらの価値を考えれば、116,600円という価格も、高くはなさそうです。ちなみにIgnition Packは以下のプラグインが付属しており、これはサブスクではなく、永続ライセンスとなっています。
・BPM Create —サウンドとサンプルを備えたMBOX Producer Toolkit
・Brainworx A/DA Flange r—A/DA Flanger Stompbox エミュレーション
・Brainworx Ampeg SVT -VR Classic—Ampeg ベース・アンプ・エミュレーション
・Brainworx bx_bluechorus2 —Boss CE-2 Chorus Stompboxエミュレーション
・Brainworx bx_console N —Neve VXSコンソール・チャンネル・ストリップ・エミュレーション
・Brainworx bx_greenscreamer —Ibanez TS 808 Tube Screamer エミュレーション
・Brainworx bx_megadual —Mesa Boogie Dual Rectifier エミュレーション
・Brainworx bx_opto compressor —オールラウンド・コンプレッサー・エミュレーション
・Gauge LUSH VOX —パラレル・コンプレッション + ボーカル用プロセッサー
オマケというには豪華すぎる、本体価格以上のソフトが使えるのも、かなり魅力的ですよね。
以上、MBOX STUDIOの概要を紹介しました。10月27日18時からは「Avid MBOX STUDIOをギタリストが生レビュー~自宅スタジオ構築の大本命機の実力に迫る!」と題し、アビッドテクノロジーのダニエルさんとRock oNクーパー天野さんによるライブ配信もあるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
【関連情報】
MBOX STUDIO製品情報