JUPITER-X/Xmにアナログモデリングシンセ、JUPITER-Xを搭載!? JUPITERの系譜を汲むまったく新たなシンセ誕生

4月20日、RolandJUPITER-XおよびJUPITER-Xmの新ファームウェア、3.0をリリースするとともに、新たなアナログモデリングシンセ、JUPITER-Xを搭載した、と発表しました。「JUPITER-XにJUPITER-Xを搭載」ってどういう意味だ……!?!? と混乱してしまいましたが、どうやらまったく新たな「JUPITER-X」というバーチャルアナログのシンセを開発するとともに、それを3年前に発売したハードウェアシンセであるJUPITER-XおよびJUPITER-Xmにファームウェアとして搭載した、ということのようです。

ある意味、これでついにJUPITER-X/Xmが完成した、といってもいいのかもしれませんが、「JUPITER-X/Xmという体にJUPITER-Xという命が吹き込まれて真のJUPITER-Xになった…」といったところなんだと思います。また、個人的に面白いと感じたのはこれまでもあったJUNO ChorusのIとIIというモードに加え、IIIというモードが登場した点。Rolandが、なんか面白いことをやってる!というのがいろいろ感じられるのです。先日、その新ファームウェア3.0が搭載されたJUPITER-XとJUPITER-Xmをちょっとだけ触れることができたので、これがどういうものなのか簡単に紹介してみたいと思います。

JUPITER-X、JUPITER-Xmの新ファームウェア3.0が登場し、新シンセ、JUPITER-Xが搭載に

JUPITER-XおよびJUPITER-Xmについては、これまでも何度か記事で取り上げてきました。その基本コンセプトは当時のRolandの社長であった三木純一さんにインタビューした「シンセのゲームチェンジャ製品、JUPITER-X/Xmはどのように誕生したのか」という記事に詳しく掲載しているので、ぜひそちらもご覧いただきたいのですが、昨年にはファームウェアを2.0にアップデートし、Roland Cloudと密接な関係を持つシンセに進化。

フル鍵盤・61鍵のJUPITER-X

それについては「ハードシンセをクラウド接続して機能拡張するRoland Cloud Connectが誕生。JUPITER-X/Xmが2.0になり、ボーカルシンセ機能搭載可能に」という記事で紹介していました。

ミニ鍵盤37鍵のJUPITER-Xm

そして今回の3.0での主なアップデートポイントは以下の5つ。

1.アナログモデリングシンセ、JUPITER-Xの搭載
2.ユーザーストレージの拡張
3.新たなシーンとトーンの搭載
4.ユーザーインターフェイスの改良
5.I-ARPEGGIOのアップデート

順番に見ていきましょう。ご存じのとおりRolandのJUPITERシリーズはRolandを代表するシンセであり、古くは1978年登場のJUPITER-4、そして1981年登場でフラグシップとして君臨していったJUPITER-8、さらにその少し後に登場したJUPITER-6などがあります。いまでも高い評価をされているシンセなわけですが、その流れを汲んだ、最新のJUPITERということで登場したのが、今回のJUPITER-Xなのです。

4VCOを持つJUPITER-X

つまり過去のシンセを復刻したものではなく、まったく新たに設計したアナログシンセなのですが、アナログ回路で作っているのではなく、JUPITER-X/Xmというデジタルのハードウェア機器上で動くシンセなので、アナログモデリングというわけですね。

オシレーターの波形にSuperSawを搭載

特徴的なのは4つのVCOを搭載しているという点。ここにはノコギリ波、矩形波、三角波、サイン波、ノイズが使えるのに加え、JUNOとSuperSawというオシレーターが利用できるようになっているんです。JUPITERとJUNOを融合させたという点も新しいですが、Roland得意の分厚いサウンドを出すSuperSawも利用できるのもグッとくる点です。

JUNOという新たなオシレーターも利用できる

4つあるオシレータのうち1と2、3と4がペアを組める形になっており、それぞれにリンク可能なピッチエンベロープが2つあり、ペアに対し独立したHPF,さらにVCFを通してミックスされた音がアンプに入っていくという構成。Rolandからブロックダイアグラムなどが発表されたらぜひ掲載したいと思いますが、ある意味2VCOのシンセが2系統足し合わせた構造となっているようです。それとは独立してLFOも2つあり、それぞれのLFOは自在にルーティングを組めるようになっていました。

フィルターENV、ピッチENVは2つずつ、LFOも2つが搭載されている

またJUPITER-Xは今世紀に誕生した新しいアナログシンセということで、当たり前ではありますが、ベロシティーに対応したシンセになっています。そう、JUPITER-8の時代にはまだベロシティーを検知する機能がキーボードに備わっていなかったため、JUPITER-8をモデリングするシンセもベロシティー非対応でした。それに対応した今のシンセであるというわけですね。

トーンリストのプリセット名はJUPITER-8もJUPITER-Xも頭はJP

このJUPITER-Xには158種類のプリセットが用意されているのですが、ちょっとわかりにくかったのがその名称。これまでのJUPITER-8を再現するプリセットも、JUPITER-Xのプリセットも頭がJPとなっているので、ぱっと見で判別しにくいんですよね。ちゃんとモデル名を見ればわかるのですが……。ちなみにJUPITER-Xは7セグのLEDでモデル名などを表示できるようになっているのですが、7セグだから「JPX」と表示できないため「JP=」となっていました。

7セグLEDなのでJPXはJP=と表示される

続いてはユーザーストレージの拡張について。ファームウェアのアップデートですから、新たにメモリーカードを追加する…というわけではないのですが、これまで256あったシーンメモリが512に増えているんです。内部を整理した結果、空き容量が出てきた…ということなのでしょうか…?

またそれとは別に新たに80のシーンのプリセットが刷新されるとともに、158のトーンのプリセットが追加されています。

そして4つ目のアップデートポイントがユーザーインターフェイスの改良です。任意のパラメータでENTERキーを押すとパラメータ値の一覧をスクロール表示できるようになったり、メニューページが階層化されるなど、使い勝手が向上しています。

5つ目がI-ARPEGGIOの強化です。以前にも紹介した通りJUPITER-X/Xmには人工知能によって演奏を解析し、バンキングを変化させ、創作意欲を刺激するという新型のアルペジエーター、I-ARPEGGIOが搭載されていますが、今回新たなI-ARPEGGIOが10タイプ、さらにI-ARPEGGIOリズムが21タイプ追加されています。

さらに人工知能型ではなく従来型のアルペジエーターモードも追加され128のプリセットスタイルが搭載されていたり、より自然な雰囲気になるように64種類の確率スタイルとそれに関連する設定が用意されるなど、これまでにないユニークなアルペジエーターとして進化をしているのです。

JUNO Chorus IIIが登場

そしてもう一つ気になるのが、冒頭でも紹介したJUNO ChorusのIIIモードです。JUNO-60やJUNO-106を使ってきた人ならよくご存じのとおり、JUNOにはIとIIという2つのコーラスがあり、これによって思い切りサウンドが広がった気持ちい音になるんです。Roland Cloudにはそれを再現するJUNO Chorusなんていうものもプラグイン化されていますが、そこにこれまで見たことがないJUNO Chorus IIIなるものが登場したんです。

JUNO Chorus I+II+IIIという設定も可能

ちょっと試してみたところ、確かにJUNOのコーラスなんですが、より今っぽいというか、より煌びやかに広がりを持ったサウンドになるので、ほかのサウンドに埋もれないんですよね。そしてIとIIに加えIIIも同時に使えるのも面白いところ。JUPITERなのにJUNOが進化しているのも今回の3.0というファームウェアの楽しい点ではあります。

なお、このJUPITER-Xという新しいアナログモデリングシンセを使えるのは、現在のところJUPITER-XおよびJUPITER-Xmの2機種のみ。将来的にはRoland Cloudでも使えるようになったり、FANTOMなどのシンセ上でも使えるようになるのでは…と期待しているところですが、Rolandのビジネス展開という点で考えると、そう簡単には出てこないのかもしれません。

以上、ざっとではありますがJUPITER-XおよびJUPITE-Xmのファームウェアアップデートにともなく新機能についていろいろ紹介してみました。もちろん、従来の機能もそのまま踏襲しているので、JUPITER-X/Xmユーザーはぜひすぐにでもアップデートしてみてください。ただし、シーンやユーザートーンなどは上書きされたり、消えてしまうので、アップデート前には必ずデータのバックアップをしておいてくださいね。

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