自分でプラグインを開発できるプラグイン!? プログラム経験がなくてもオリジナルソフトが作れるBlue Cat’s Plug’n Scriptを試してみた

もし自分のオリジナルエフェクトやオリジナルシンセが作れたら楽しいだろうな……そんなことを考えた人も少なくないと思います。それを実現するためのツールとしてCycling ’74のMax/MSPやNative InstrumentsのReaktorといったツールもありますが、もっと手軽に、より簡単に、より安く作れるツールが、Blue Cat Audioというメーカーから発売されています。Blue Cat’s Plug’n Scriptというソフトがそれ。これ自身がVST、AudioUnits、AAXで動作するプラグインでありつつ、ここからまったく新たなプラグインを作り出すことができ、それをオンラインソフトとして配布したり、販売することだって可能というユニークなソフトです。

アイディア次第で、まさに自分自身がプラグインメーカーになることを実現できるツールであり、とっても大きな可能性を持ったソフトなのです。開発ツールというと、とっても難しいもののようにも思えますが、まずは数多くあるプリセットを読み込んで、普通のエフェクト、シンセとして使うことができ、そのデザインを変更したり名前を付けて自分だけのプラグインに進化させることが可能。その上で、プログラミングの知識をつければ、完全にオリジナルのエフェクトプラグインを作ったり、インストゥルメントプラグインを作っていくことが可能というものです。そんなBlue Cat’s Plug’n Scriptをちょっと試してみたので、紹介してみたいと思います。

ユーザーが自由にプラグインをカスタマイズしたり、オリジナルプラグインを作れるBlue Cat’s Plug’n Script

Blue Cat Audioは、あのPatchWorkを開発したメーカー

Blue Cat Audioはフランス・パリにある非常にユニークなプラグインメーカー。以前に「VST、AU、AAX、RTAS…何でも来い、Blue Cat PatchWorkが超便利!」という記事で、PatchWorkというプラグイン規格を乗り越える相互変換ユーティリティを紹介したことがあり、大きな話題になりました。これを使えば、VST版しかないプラグインをProToolsで使うことができたり、反対にAAX版しかないプラグインをAUやVSTプラグインとして使えてしまうなど、とっても便利なんですよね。その後PatchWorkもバージョンアップを繰り返し、最新版は2.5となるとともに、機能・性能とも向上していますちょうど、このソフトも現在10%オフのセール中です)。

以前にも紹介したプラグイン規格間のコンバーターでもあるPatchWork

今回紹介するPlug’n Scriptは、またちょっと趣向が異なり、ややマニアックではあるけれど、とっても夢のあるユニークなソフトです。WindowsでもmacOSでも使うことができ、スタンドアロン版もあれば、VST2版、VST3版、AudioUnits版、AAX版があるなど、オールマイティな環境で動作するソフトとなっています。

プリセットの読み込みでさまざまなプラグインに変身

Plug’n Script、起動時には何も動作しない状態
たとえばWindowsのスタンドアロン版を起動すると、こんなシンプルな青い画面が登場してきますが、このままだと何もできません。ところが、ここでFactory Presetsを読み込むことで、さまざまなエフェクトやシンセに変身させることができるのです。

数多くのプリセットが用意されている

たとえば、SynthフォルダにあるOrgan-Charchを選択すると画面がレンガ色のように変わるとともに、Mini Drawbar Organという文字が表示され、ツマミ型のドローバーなど、7つのパラメーターが表示されます。ここで接続されているMIDIキーボードを弾いてみると、オルガンとして演奏できるんです。DAW不要で、スタンドアロンのオルガンとして使えるので、結構便利です。

Organ-Charchを読み込むとオルガンに変身した

また、AudioFXフォルダにあるFazzを読み込んでみると、今度はエフェクトとしてファズに変身。オーディオインターフェイスの入力にギターを挿して演奏すれば、ファズがかかった形でオーディオインターフェイスから出力されます。これもDAWなしでスタンドアロンで動くので、ギタリストなどプレイヤーにとっては、簡単にPCをエフェクトにできるソフトとして便利に使えそうです。ただし、このファズ、ステレオ入力になっているので、ギターをLチャンネルに入れると、出力はLチャンネルのみなのがネックではありますが…。

Fazzを読み込むことで、スタンドアロンで動作するファズに

ほかにもコンプレッサ、エコー、ゲート、リミッター、リングモジュレーター……など数多くのエフェクトのプリセットがあったり、Filterフォルダを見ると、ハイパス、ローパス、ノッチ、ピーク……などなどいろいろなものが用意されています。これらを読み込めば、Blue Cat Plug’n Scriptはすぐにそのエフェクトに変身してくれます。

ローパフィルタにもなる

いまはスタンドアロン版で試してみましたが、前述の通り、このソフトはWindowsおよびmacOSのVST2、VST3、AU、AAXの各プラグイン環境でも動作するので、CubaseやStudio One、FL Studio、Ableton Live、Ability……といった各種DAW上で同じように使うこともできるので、ある意味、このソフト一本で数多くのシンセやエフェクトを手に入る……ともいえるわけです。

DAW上で使う場合、プラグインとしても動作する。画面はFL Studio 20

もちろんDAW側でのトータルリコールが可能ですから、各種プリセットを読み込み、パラメータ設定をした状態で、その楽曲を保存し、再度読み込めば、しっかり元の状態に戻ります。当然、複数のPlug’n Scriptを起動し、それぞれをさまざまなインストゥルメント、エフェクトにして使うこともできますからね。

プラグインのUI、デザインを自由に変更可能

というところまででも十分、買う価値があるソフトだと思いますが、ここまでの話はBlue Cat Plug’n Scriptの触りの部分。本番はここからです。

そう、このソフトはプラグインを開発できるプラグインなのですが、いきなり開発するといったってプラグラミングしたことがない人にとっては無理な話。でも、とりあえずプリセットの音源やエフェクトのUIを自由にカスタマイズすることができるので、それだけでも楽しいですよ。

鉛筆アイコンをクリックすると画面右にEditionが表示される

プリセットを読み込んだ状態で、画面上にある鉛筆ボタンをクリックすると画面右側にEdtionなるものが表示されます。

ここにGUI Optionというものがあるので、少し触ってみましょう。Background Colorで、パネルの色を変更できるし、Display Level Meterをクリックしてオフにすると、レベルメーターが消えてスッキリした画面になります。

Background ColorをOrangeに設定すると、パネルの色がオレンジに

さらにGUI ControlsのSelect Control Styleを使って選択すると、ツマミやボタンのデザインを大きく変化させることが可能。またSelect Text Colorを使うと表示されている文字の色を変更できる……といった具合です。

Select Control Styleでノブのデザインを変更

エクスポート機能で単独のプラグインを生成できる

このように自分の気に入ったデザインに変更できたら、エクスポート機能を用いて新たな専用のプラグインにしてしまうことができるのです。そのためにはExportというボタンを押し、必要に応じてプラグインの名前などを設定した上で「Build」ボタンを押せば完成。

エクスポート機能を使うと、設定したデザインのプラグインを単体プラグインとして書き出すことができる

「Open」ボタンをクリックしてみると、ここにはMacOSX、Win-x64、Win-x86という3つのフォルダができています。そう、Windowsで作業しても、Macで作業しても、Mac版プラグイン、Windowsの32bitプラグイン、64bitプラグインがそれぞれ生成されるのです。この完成したプラグインはとくにプロテクトやライセンス管理などはないので、まったく別のマシンにインストールしたり、友達のDAWに組み込んだり……ということが可能になっているのです。

エクスポートするとWindows用、Mac用のVST2、VST3、AAX、AUと各フォーマットにあったプラグインが生成される

もっとも、このようにして作ったプラグインは色やデザインを変更しただけで、機能としてはプリセットのものそのものなので、これを自分のオリジナルのようにして配布したり、販売したりするのはNG。ある程度の範囲内で留めておくのがよさそうです。

プログラム自体はAngelScriptで記述する

一方で、ある程度プログラミングの知識があれば、オリジナルのプラグインを作ることも可能です。この場合も、まずはプリセットのプログラムを改変していくのが分かりやすいと思いますが、ここで使われているのはAngelScriptというスクリプト言語です。以前VOCALOID3、VOCALOID4の時代にJobプラグインとして使われたスクリプト言語でもあるLuaとも近い言語ですが、LuaがC言語的なものであるのに対し、AngleScriptはC++的なものであり、変数型付けが動的ではなく静的なものとなるなど、違いはありますが、C++が分かる人であれば、さほど難しくなく記述していくことができそうです。

エフェクト処理するプログラムはAngleScriptで記述する

以上、ほんの触りだけではありますが、Blue Cat AudioのBlue Cat’s Plug’n Scriptについて簡単に紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?プリセットだけでも豊富なエフェクト、音源などが揃っており、これをエクスポートすることで、新たなプラグインを生成できるのですから、持っていて決して損のないソフトだと思います。

単なるプラグインとして利用したい人はもちろん、自分オリジナルのデザインに変更したい人、さらにはあと3歩進んで自らソフトを組んでみたい人にとっては、さらに大きな可能性を持ったソフトといえそうです。

興味ある方は、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Blue Cat’s Plug’n Script V3製品情報
Blue Cat’s PatchWork V2.5製品情報

【価格チェック&購入】
◎beatcloud ⇒ Blue Cat’s Plug’n Script V3
◎beatcloud ⇒ Blue Cat’s PatchWork V2.5

Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • naka

    いつも楽しく読んでます。

    こちらは面白そうなプラグインですね。
    beatcloudのページでカートに入れてみたのですが、 クーポンが利用できない?(入力画面が出てこないようです)ようなのですが、
    期間終了、ということなのでしょうか?

    ではよろしくおねがいします。

    2021年4月15日 3:13 PM
    • 藤本 健

      nakaさん

      beatcloudでのクーポン利用ですが、カートに入れて、「お会計へ」のボタンを押した後に
      「クーポン/ポイント」という項目が現れます。ここに記事の最後にあるクーポンコードを入力してみてください。

      2021年4月15日 8:50 PM
  • naka

    無事購入できました。 ありがとうございました。

    これって、DAW動かしながら、コンパイルいらずでスクリプトを変えられるんですな!
    (再読み込みで、即座に動くって!)

    シンセのはらわたイジってるようで楽しすぎる…

    2021年4月16日 6:22 PM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です