ライブ配信をするとしたら、やはり高音質で配信を行いたいもの。オーディオインターフェイスとコンデンサマイクを利用することで音質向上は見込めるけれど、スマホからの配信だといろいろ面倒だったり、ここにエフェクトを掛けるとなると一気にハードルもあがります。できるだけ簡単に、わかりやすく、しかも運用しやすい方法を探している人は少なくないと思います。
そうしたニーズにピッタリなのが昨年ZOOMが発売したZOOM V3という機材。数多くのボイスエフェクトを搭載する一方、ハーモニー機能によって一人でハモることができたり、ケロった歌声にしたり、リバーブ、ディレイなどを搭載する強力な機材です。ライブ配信のみならず、ライブパフォーマンスでも、楽曲制作のレコーディングでも使えて、価格も19,800円(税込)と入手しやすい価格帯なのも気になるところ。先日、DTMステーションPlus!の番組でも特集したので、その番組も振り返りつつ、実際どんな機材なのか、紹介してみましょう。
ZOOMが発売している、ボーカル専用エフェクトZOOM V3
先日、DTMステーションPlus!の番組中にゲストとして来ていただいた、シンガーの小和瀬さとみ(@wasessam)さんにZOOM V3を使って、リアルタイムにボーカルにエフェクトを掛けた演奏していただいたので、まずはこちらをご覧いただけると全体的な雰囲気が分かると思います。
いかがでしょうか?ケロケロボイスやユニゾン、ハーモニーなどのボーカルエフェクトがいい感じに掛かっていて、すごくカッコいい演奏に仕上がっていますよね。曲の冒頭では、PITCH CORRECTを使って、設定したキーに合わせて音程の変化を機械的に補正することによって、うまくケロらせています。またUNISONを使って、ダブリング的な効果を作りだしたり、サビでハーモニーを付けたりしているのですが、これがボーカルエフェクターならではの演出で、ボーカルエフェクターがないとできない演出です。
2021年1月12日のDTMステーションPlus!の放送から。
ボーカルエフェクターは、いくつかのメーカーからさまざまなタイプが販売されており、大別すれば単機能のコンパクトエフェクター、多機能なマルチエフェクターに分けることができます。また、配信でトークすることを想定して作られたもの、ライブシーンでの使用を中心にしているかなど、ものによって搭載している機能が違います。その中でも、ZOOM V3は、マルチエフェクターに分類されるボーカルエフェクターであり、ネット配信でフル活用できる性能を持ちつつ、音楽的に非常に優れていて、エフェクトを掛けたときの違和感だったりレイテンシーがないのがポイントなのです。
リバーブやコーラス、ディレイ、コンプなど、ボーカルで必要な基本的機能を搭載しており、1人で多重コーラスを行ったり、ラジオボイスを使って声を加工することができます。また、フォルマントキャラクターを使って、簡単に男性ボイスを女性ボイスっぽくしたり、女性ボイスを男性っぽく変化させることが可能。
また、ACアダプターを使う以外にも、単3電池4本で駆動させることが可能なので、取り回しが楽に行えます。重量は590gというのも圧倒的に軽いのも嬉しいところ。以前「VTuberもビックリ!? 声を変幻自在にメイクアップできるボーカル専用エフェクト、ZOOM V6がスゴイ!」という記事で、ZOOM V3よりも多機能なZOOM V6についても紹介しましたが、ZOOM V3は、よりコンパクトで持ち運びやセッティングもしやすいというメリットがあります。また、ZOOM V6同様ファンタム電源供給も可能なので、ダイナミックマイクだけでなく、レコーディングでよく使われるコンデンサーマイクを使用できるのも特徴。さらに、AUX INも備えているので、ここでオケを流しながら、ボーカルエフェクトを駆使して歌うこともできます。さてここからは、ZOOM V3の具体的な機能について見ていきましょう。
ZOOM V3は、中央に4×4のボタンが配置されており、ここにHARMONYやPITCH CORRECTなどのエフェクトボタンがあるので、これを押すとそのエフェクトを使用することができます。搭載されているエフェクトは
HAMONY | TALK BOX | VOCODER | PITCH CORRECT KEY |
OCTAVE | UNISON | WHISTLE | PITCH CORRECT CHROMATIC |
DISTORTION | TELEPHONE | BEAT BOX | CHORUS |
DEEP | ROBOT | CHILD | FORMANT CHARACTER |
と16種類あります。エフェクトの掛かり具合は、EFFECT ADJUSTで簡単に調整でき、メニューの奥深くに潜らなくても前面に出ているツマミやボタンで行えるので、ボーカルエフェクターを使ったことがない人でも、かなり扱いやすいですよ。
また左下には、歌の高音域を強調することによって歌の輪郭をはっきりさせたり、歯擦音を抑えて聴きやすい声にしてくれるENHANCE、エフェクトを瞬時にオフにすることができるEFFECT OFFボタンが搭載されています。
ENHANCEを使うことで、歌をはっきり聴かせることができる
さらに、これら16種類のエフェクトとは独立した形で、右側にCOMP、DELAY、REVERBが搭載されているのも非常に便利で重要なポイント。独立しているので、EFFECT OFFボタンを押しても、COMP、DELAY、REVERBは有効になったままになるので、曲の雰囲気を崩すことなくエフェクトを切り替えることができます。ちなみにリバーブサウンドはきれいで、ディレイもナチュラル、コンプをかけてボリュームを整えたりできます。
COMP、DELAY、REVERBが、エフェクトとは別に独立して装備されている
エフェクトをいくつかピックアップするとすれば、まずはHARMONYでしょう。HARMONYでは、2声まで追加することができ、ひとりで最大3和音を歌うことが可能となっています。しかも単に3度上、3度下が出る、というだけでなくキーセレクトノブが搭載されているので、そのキーに合ったハモリを生成することが可能。実際に小和瀬さとみさんが、HARMONY機能を使いながら、活用術を教えてくれました。
全体のハーモニーの量は、ほかのエフェクトの量を調整するときと同様にEFFECT ADJUSTのツマミで調整でき、さらに個別に加えたハーモニーのバランスも調整可能となっています。使い方としては、加えたいハーモニーの高さが配置してあるボタンを押し、個別で追加したハーモニーの音量を変えたい場合には、もう一度同じボタンを押すだけです。以下がボタンに割り振られた音程です。
High +4度または+3度
Fixed キーのルート音
Low -4度または-3 度
Lower -6 度または-5 度
Higherを見てみると、+6度または+5度となっていますが、これはキーを設定した際に自動でスケールに収まるようにピッチ感を調整してくれるので、うまくハモリが生成されるように、ときには6度ハモリをしてくれます。またFixedでは、声を出した際にルートの音がずっと鳴るので、バグパイプっぽいハーモニーが付きます。リバーブを組み合わせれば、1人聖歌隊みたいなこともできたりします。
また、PITCH CORRECTでは、ケロケロボイスを作ることが可能です、冒頭の「東京は夜の七時」の実演動画できも小和瀬さとみさんが使っていましたが、これについても番組内で解説してくれていたので、ご覧ください。
PITCH CORRECTは、キーセレクトノブで合わせたキーに追従して音程の変化を機械的に補正してくれるPITCH CORRECT KEY、半音ごとのピッチ修正になるPITCH CORRECT CHROMATICの2種類存在します。使い分け方としてPITCH CORRECT KEYは、積極的にケロケロボイスを使う時に使用し、PITCH CORRECT CHROMATICは常に薄く掛けとくといった使い方でしょうか。
キーセレクトノブを使って、キーを指定することでエフェクトを効果的に使える
そして、フォルマント系のエフェクトである、FORMANT CHARACTERでは、かなり自然に声のキャラクターを変えることが可能です。EFFECT ADJUSTノブを右に回すと高くなり、左に回すと低くなります。VTuberなどが使うフォルマントチェンジャーとしても使うことができますよ。フォルマントチェンジャーやボイスチェンジャーなどは、ソフトでも存在していますが、レイテンシーが大きかったり、不自然になってしまうもの。一方、ZOOM V3のフォルマントチェンジャーはリアルタイムにナチュラルなサウンドを出力してくれるのはポイント。しゃべるときに使ったり、音楽にまったく関係ないところでも使えそうな機能です。
FORMANT CHARACTERで、声のキャラクターを変えることができる
またDTM的な視点でいうとZOOM V3には、microUSB端子が搭載されており、これでWindowsやMacと接続できるほか、iOSデバイスとは、Lightning-USBカメラアダプタ/Lightning-USB 3カメラアダプタを使って接続可能なのも見逃せないポイントです。基本的には、USBクラスコンプライアントなデバイスであるため、MacおよびiPhone/iPadとはそのまま接続して使える一方、Windows用にはZOOMがASIOドライバを公開しているので、これをダウンロードして使うことができます。
microUSBでPCと接続することで、ZOOM V3の音を劣化なくレコーディングできる
実際試してみたところ、PC側からは2IN/2OUTのオーディオインターフェイスとして見え、ZOOM V3からはエフェクトがかかった音がステレオで入力されます。ただし、サンプリングレートは44.1kHz固定なので、あまり過大な期待はしないほうがいいかもしれませんが、音質劣化なく取り込めるという意味では非常に便利です。またPC側からの音はそのままヘッドホン出力へ行く形になっているので、さまざまな活用ができそうです。
ZOOM V3は、2IN/2OUTのオーディオインターフェイスとしても使える
なお、ZOOM V3へはキャノン端子でどのマイクとの接続も可能なので、ライブでよく使われる、SHURE SM58でも十分に威力を発揮してくれます。でも最大限ZOOM V3の実力を引き出したいというのであれば、オプションの専用マイクZOOM SGV-6を使うのがお勧め。見た目は普通のダイナミックマイクのようにも見えますが、実はこれはファンタム電源で動くコンデンサマイクであり、しかも指向性が非常に高いショットガンマイクになっているのです。これによって周りで楽器が鳴っていても、そちらを拾うことなく、声だけにエフェクトが掛かかる仕組みです。ボーカルエフェクターはマイクによってエフェクトの掛かり具合が変わってしまうので、専用にチューニングされているマイクが用意されているのはとても安心です。
ショットガンマイクの構成となっているコンデンサマイクZOOM SGV-6を使うことで実力を最大限発揮できる
以上、ZOOM V3はライバーでもVTuberでもライブでもDTMでも、使える強力なボーカルエフェクターです。ここでは紹介しきれなかったエフェクトが多数搭載されているので、さまざまな使い方が可能ですし、エフェクトとしてのクオリティーも高いのでひとつ手元に置いておいて損のない機材だと思います。持ち運びも簡単なので、いろいろな用途で使うことができそうですね。
【関連情報】
ZOOM V3製品情報
ZOOM V6製品情報
小和瀬さとみ 公式サイト
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