70年代、80年代から革新的なエフェクトを次々と生み出してきたEventide(イーブンタイド)。最近は、自らの手でソフトウェア化して復刻していることで、大きな話題を呼んでいますが、そのEventideの中に、Newfangled Audio(ニューファングレッド・オーディオ)という異色のブランドが存在します。ここはELEVATEというAIを用いたマスタリングリミッターやEQUIVOCATEという特殊なEQなど、ほかにない独特な世界観を持ったエフェクトを開発しているのですが、この度GENERATEというかなり変わったシンセサイザーを14,200円(税抜)という手ごろな価格でリリースしました。
※1月4日までEventide製品がセール中で9,400円になっています。
GENERATEは「いくつもの革新的でカオスなオシレーターとファーストクラスのシンセサイザーに期待されるすべての機能を組み合わせたポリフォニックシンセサイザー」と形容されていますが、正直言って、どういう構造なのか、まったく理解できなそうな異次元なシンセサイザーです。そのため、これまで聴いたことのないようなサウンドを作り出すことができるのが面白いところで、膨大なプリセットが用意されているから、構造が分からなくても即、実践で活用できるのも嬉しいところです。実際どんな音源なのか試行錯誤しつつ触ってみたので、紹介してみましょう。
独特な世界観を持つソフトウェアシンセサイザー、Newfangled AudioのGENERATE
GENERATEは、そのパラメータなどを言葉で説明するよりも、画面を見つつ音を聴いてみるとどんな雰囲気なのかが、なんとなく分かると思うので、まずは以下のビデオをご覧ください。
いかがですか?独特な世界観を持ったシンセサイザーであることが感じられたのではないでしょうか?これをライブパフォーマンス的に演奏してみると、たとえば以下のような感じで利用することも可能です。
このGENERATEの画面を見て、いろいろな感想を持たれたかもしれません。そう、ソフトウェアシンセサイザの画面としては比較的シンプルであり、膨大なパラメーターが並んでいるモジュラーシンセのエミュレーターなどと比較すると分かりやすそうな見た目ではあります。
パッと見は、比較的シンプルな構造のシンセサイザーのようにも見える
でも、よく見てみると普通のシンセサイザーとは何やら構造がまったく違うことに気づくと思います。そう、普通のシンセサイザーであればオシレーターがあり、フィルターがあり、アンプがあり、そこにエンベロープジェネレーターやLFOなどがモジュレーションする形になっているのですが、そうしたものとはかなり違うのです。
普通にエンベロープジェネレーターなども搭載されているようだが……
まあENV1、ENV2、LFO1、LFO2という表記はあるので、似た部分があるようではありますが、全体的に見ると、普通のシンセサイザーではないようです。一方で、画面には黄色いグラフィックスで波形のようなものがリアルタイムにグニャグニャと表示されるのも気になるところ。これがGENERATEの重要な特徴でもあるわけですが、各モジュールごとの動作状況をリアルタイムにアニメーションで表示させることができ、まさにシンセサイザーサウンドであることが感じられるようになっているのです。
音を鳴らすと黄色いグラフィックでモジュール上に波形がアニメーション表示される
どのように音を作るかは、一旦置いておき、プリセットを見ると、かなり膨大な数が入っています。カテゴリーを見るとBASS、KEYS、PADS、SEQUENCES、TEXURES、PLUCKS、LEADS……とあり、これらを選んでみると、かなり実践的に使える音色がいっぱいです。
さらに下のほうを見るとAdam Schatz、Anthony Baidlino、Black Shee……とアーティスト名が並んでおり、彼らが作ったプリセットも収録されています。まずは、これらを選んで使うだけでも、非常に豊富な音色があるので、いいと思います。
RNDボタンを押すことで、各パラメーターがランダムに設定される
一方で、実は画面、右上のほうに[RND]という表記がありますが、これはランダマイズボタンとなっているのです。つまり、これをクリックすると、各パラメーターがランダムに設定され、毎回まったく異なるサウンドが生成されるようになるのです。まあ、使える音、使えない音、いろいろではあるけれど、まさに運を天に任せた音色づくりをしても悪くない音作りができるわけなのです。
もちろん、意味がよく分からないとはいえ、各パラメーターは1つずつ動かすことが可能で、そのUIもちょっと変わったものとなっています。たとえば、左上のモジュールであるCHAOTIC GENERATORには
・CHAOS SHAPE
・ANIMATE
・SUB 1
・SUB 2
と5つのパラメーターがありますが、それぞれ四角い形の外側の水色部分でパラメーターの状況が分かるようになっており、マウスで動かすと中央にパーセントで値が表示されます。そして、これを動かすことで、音が変化していくことが分かります。
このCHAOTIC GENERATOR、まさにカオスな音を作り出す元となる部分ですが、ここがいわゆるオシレーターに相当する部分と考えてよさそうです。その種類としては
Vortex
Pulsar
Dischage
Tubine
と5種類の中から選択できるようになっているのですが、この名前を見てもさらにさっぱりわかりません。
マニュアルを見てみるとDouble Pandulumは2重振り子の方程式に基づくシステムになっており、オルガンやベースサウンドに合うのだとか。ちなみに2重振り子とは以下のようなものであり、完全に物理の世界ですね。
二重振り子の動きを物理的・数学的にシミュレーションして波形を生成する
またVortexは信号経路が吸い込まれるような非線形性を持ったものなのだとか……、さっぱり分かりません。Pluserは二重振り子に近いけれどもっと不安定なもので、Dischageは静的なあまり動きのない音、Tubine=タービンは予測のつかないサウンドを生成するものなのだとか……。
どうも深い追いしても、より分からなくなりそうですが、まあ、適当に触るだけで、ずいぶんとサウンドが変化していきます。
GENERATORで作られた音を加工するWAVEFORLDER
中央のWAVEFOLDERは、CHAOTIC GENERATORで生成された波形を加工するところですが、フィルターではなく、ウェーブシェイピングという形で波形を折り返す形で加工していくもので、入力信号の高調波を作り出していく構造になっているようです。
ここにも
Animated
Fractal
という3種類があります。259はモジュラーシンセとして知られるBucla 259eをエミュレーションするもの、Animatedはサイン波を元に加工したもの、Fractalはフラクタル理論に基づく数学的計算をするものなのだとか…。やっぱり難しくてよく分かりませんが、タイプを変えることで、ずいぶんと違ったサウンドに変化します。
ローパスフィルターとVCAを組み合わせたLOW PASS GATE
そして右側のLOW PASS GATEはローパスフィルターとVCAを組み合わせたものとのことで、もっとも普通のシンセサイザ的な考え方で成り立っているようです。実際、FREQUENCYとRESONANCEがあり、普通のフィルター的に動かすことができ、ADSRでのエンベロープ調整も可能になっています。
一方で、画面下でGLOBALを選択すると、GENERATEのシンセサイザーとしての設定ができるようになっており、ピッチベンドでの動きや、ポルタメントの設定、ポリ数などの指定が可能です。
またENV1やENV2、LFO1、LFO2を選ぶと、上記の3つのモジュールとは独立したエンベロープジェネレーターやLFOの設定ができるようになっています。
さらに、サンプル&ホールドや8ステップのシーケンサなども用意されています。
これらを上記の各パラメータとパッチングしていくことで、より動きのあるサウンドを作っていくことができるという構造。真剣に考えていくと、頭が混乱してしまいそうですが、適当に動かすだけでも面白い音作りができそうです。
そのGENERATEのサウンドデモがSoundcloud上にも数多く公開されていました。
これらを聴くと、やはり独特な世界を作り出すシンセサイザーだと感じられると思います。なお、動作環境としてはWindowsおよびMacのVST2、VST3、AU、AAXのそれぞれ64bit環境での動作となっています。
WindowsおよびMacのVST2、VST3、AAX、AUのプラグインで動作する
どう使うかはアイディア次第だと思いますが、これまでにない新しいサウンドを取り入れたいという人にとってはかなり有用なアイテムではないでしょうか?
【関連情報】
Newfangled Audio GENERATE製品情報
Eventide ホリデー・プラグインセール情報
【価格チェック&購入】
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