声優業界ではDTMがブーム!? 永遠の17歳・井上喜久子さんも小岩井ことりさんに続いてCubaseユーザーに!

あの井上喜久子@atmanbow_staff)さんが、今年からDTMをはじめ、自身が作曲した楽曲の打ち込みなどを行っていることが先日生配信されたYouTubeでの「井上喜久子お誕生日配信♪~時空はゆがむよどこまでも~」の番組内で明らかにされました。その番組によれば今年1月からレッスンに通ってDTMを習っているとのこと。また「私、小岩井ことりちゃんみたいじゃない?いや、なれないなれない、あんな風にできたら夢のようです」とも話していました。

番組内で披露された写真を見ると、Cubaseを利用し、UR22Cを使って作業していたことも判明。それを見た小岩井ことり(@koiwai_kotori)さんもTwitter上ですかさず反応するなど、思いがけない盛り上がりを見せていました。ぜひ、取材させてほしいと連絡してみたところ、即座にOKのお返事をいただけてしまったので、先日、井上喜久子さん、小岩井ことりさんのお二人とお会いして、実際どんなことをしているのかなど、いろいろお伺いしてみました。

今年からDTMを始めたという声優の井上喜久子さん(左)に小岩井ことりさん(右)とともにインタビューしてみました

まずは、その井上喜久子さんの生配信のアーカイブがこちら。

再生すると、ちょうどDTMに関する話のところからスタートするので、ぜひご覧になってみてください。このYouTubeを見てすぐの小岩井ことりさんのツイートがこちら。

https://twitter.com/koiwai_kotori/status/1307710179123671041

私は、この小岩井さんのツイートで初めて気づいたのですが、これは大事件!?と思って連絡させてもらったのです。ご存知の方も多いと思いますが、井上さんは、VOCALOID・桜乃そら(はるのそら)のCVも担当されており、「“VOCALOID・VOICEROID制作は自分の歌声のMRIみたい!?”、声優・井上喜久子さんが語る『桜乃そら』開発の裏舞台」という記事でインタビューさせていただいたこともありました。そのため、お会いするのは今回が2回目。

Twitterでのやり取りの中、インタビューに小岩井さんも同行してくれるということになったので、ちょっと相談してみたところ、インタビュー自体を小岩井さんのプライベートスタジオで行えることになりました。というわけで、さっそくそのインタビューを紹介していきましょう。

 

ーー井上さんのYouTubeを見て驚きましたが、いつごろからDTMをやってみようと思っていらしたのですか?
井上:だいぶ前から、そんなことができたら楽しいだろうな…とは思っていました。私自身で作詞・作曲したアルバムをこれまで4、5枚だしているのですが、私はただ歌ってるだけなんですよ。当初は歌だけをカセットテープに吹き込んで編曲の先生にお渡しして、オケを作ってもらう…というのをずっと続けてきました。ただ、自分の中では、すごく申し訳なく思っていたんです。せめてコードをつけたり、もうちょっとちゃんとしたものを作ってみたい、いつかDTMのようなことができたら…と思っていました。

こちらからの無理なインタビューのお願いに即OKをいただき、気さくに応じていただいた井上さん

ーーご自身で作詞・作曲のアルバムをいっぱい出されていたんですか!
井上:最初に出したのが1994年の「ただいま」というアルバムでした。当時は作詞・作曲という感覚より、自分の思ったことを、なんとなくメロディーにしてみたくらいだったんです。でも、何年かやっているうちに、楽器とか弾けたらいいな、子供のころにピアノも習っていたし、中学校のころはクラシックギターもしていたので、何かできないかな、って。こっこちゃんは、以前から楽器はやっていたの?
小岩井:私は吹奏楽部にいたので、金管楽器ならある程度吹けます。ちょっとだけならトランペットも。逆にキーボードはちょっぴりやっただけで、ちゃんとは弾けないんです。それをカバーできるのがDTMの凄さですよね。

小岩井さんのスタジオのロビーで、井上さんにインタビュー

ーーその井上さんが、なぜ今年のタイミングでDTMをはじめることになったのですか?
井上:何年も前から、ラジオ番組や雑誌の取材などで「DTMをやりたいです!」とは宣言していたんですよ。娘(井上ほの花さん)が音大に入ったから、ほっちゃんにDTMを覚えてもらって、教えてもらえばいい、と思っていたものの、全然DTMをやる気配がなく……。これは自分でやるしかない!と思い立って、今年1月から習い始めたんですよ。

小岩井:喜久子さんなら、教えてくださる作曲家の先生とかがいっぱいいるんじゃないですか?
井上:確かに、教えますよとおっしゃってくださる方もいらっしゃって。でも、DTMの大前提となるパソコンが大の苦手なんですよ。だから、そんな方に倣ったら申し訳ない気がして、あまりにも私ができなさすぎるから……。永遠に謝り続けながら習うのも悲しいじゃないですか。だから、スマホで「DTM レッスン」で検索して、本名で申し込んだんですよ。ごく普通の一般人として! 普通のレッスンなら、できなくて当たり前でしょ(笑)。

素性を隠して(!?)DTMの先生を探してみたという井上さん

ーーパソコン苦手な井上さんが、DTMレッスンを受けてみて、どうでしたか?
井上:もう、ホントに楽しくて楽しくて仕方ないんですよ。CTRL+Sとか、CTRL+Zとか知って嬉しくなっちゃって!でも先生もビックリしたと思うの。Zキーを探すだけで、2~3分。「先生、Zが見当たりませんねぇ……」って具合で(笑)。パソコンはお仕事の関係もあって、メールを開くのと、動画を見ることだけはできるんですよ。台本と動画を合わせるために使うので、でも、それ以外がさっぱり分からなくて……。こっこちゃんは、いつごろからパソコンをやってたの?
小岩井:幼稚園のころからPCはさわっていて、物心ついたころからインターネットはあった感じです。だからリアルな友達より、インターネットの友達のほうが長く続いていました。でも、もしパソコンがなかったら、本当に何もできなかっただろうなと思います。パソコンのおかげで、楽しい世界がひろがり、DTMはもちろん、画像の編集ができたり、映像の編集ができたりと、世界が広がりました。

DTMレッスンについて、とても楽しそうに語る井上さん

ーーそのパソコン、DTM用としてどんな機材を使っているんですか?
井上:レッスンを申し込んで、最初に体験レッスンをしたときに、先生に相談したんです。それまでMacBook Airは持っていたけれど、それだとちょっと難しいだろう…と言われました。Cubaseを使うことも、そのタイミングで決めたのですが、DTMをやるためには、この程度のスペックのパソコン、それにDTM機材がいいですよ、と勧められたものを買いました。実は、私のマネージャーさんの旦那さんがパソコン業界の方なので、購入やセッティングを手伝ってもらい、Cubaseのインストールは先生にやってもらいました(井上さんが購入されたのは下の写真にあるパソコン工房のノートPCで、 Core i7-9750H / 8GB / 500GB M.2 SSDというスペックのもの)。
小岩井:確かにパソコン選びやセッティングはハードルが高いですよね。私も色々な声優さんに相談されて、機材を一緒に選んだり、おうちに行ってセッティングなどをしてます。

Cubaseが入ったご自身のノートPCを持参してくれました

ーーつい先日もRyzen Threadripper 3970Xをベースにした100万円超のハイエンドPCを自作しちゃう小岩井さんは別格です(苦笑)。とはいえ、喜久子さんも、先日のYouTubeを見たところ、しっかり曲を作ってらっしゃいましたよね。どのように作っていったんですか?
井上:当初は本名で申し込んでいたので、普通の主婦の習い事のような感じでしたが、徐々にお仕事の話などをするようになり、自分が作詞・作曲したCDがあることなどを伝えたところ、ぜひ、それをCubaseで作りましょう、ということになったんです。先生がApple Musicで調べて、このアルバムですか?どの曲を作りましょう?……という展開で「ウェンデにゃんのうた」を入力することになったんです。ただ、ちょうどコロナの時期で緊急事態宣言になっちゃったから、途中でお休みになってしまって……。宣言解除後にようやく入力作業に入っていくことができました。

小岩井さんのスタジオで興味深そうに機材チェック

ーー実際、どんな方法で入力をしていったのですか?
井上:習い始めた最初のころは、パソコン上にコードトラックを表示させて、マウスを使いながらポツポツとやっていたんですが、どうも私には合わない…。「この方法以外に、いい入力方法はないですか?」って先生に相談したら、「キーボードで入力することもできますよ」と言われ、すぐにAmazonで5,000~6,000円と手ごろな価格だったKORGのmicroKEY-25というのを買って使ってみたら、私にはそっちが合っていました!それで入力すると楽しくて!

井上さんのご自宅にはUR-22C、MSP 3、microKEY-25などの機材がある

小岩井:喜久子さん、やっぱりキーボードが得意だから、リアルタイム入力ができるんですね!私はマウスを使ってピアノロールでの入力です。
井上:私もそんなに上手に弾けないから、テンポを遅くした状態でメトロノームを鳴らしながらゆっくり弾いて、あとから速くするんです。それでも、タイミングがズレちゃうから、ナントカカントカっていうのをして……。

小岩井:クォンタイズですね(笑)!
井上:それそれ!初めてやってみて、なんじゃこれー!って。実行するとピュッンって、ピッタリのタイミングに移動して、ビックリしちゃった!先生、いろんなことを教えてくれるんだけど、すぐには覚えきれなくて。だから、ノートにいっぱい。ほら、ここにも「矢印をピアノの横に置いて、右クリックを中指で押しながら、人差し指で、鉛筆マークのところで、そこで中指を離す」とか書いてある(笑)。とにかくパソコンのキーボード入力とかが苦手なんで、「ウェンデにゃんのうた」というのを入力すること自体が大変で、違う名前に変えようかなと思っちゃったほどで……。

DTMレッスンの先生の話を非常に丁寧にノートにメモしている

ーーとはいえ、ご自身で作曲された曲を1曲丸ごと完成させているんですもんね。スゴイです。DTM機器を持っているユーザーで、実際に曲を完成させたことがある人は10%未満という情報もあるくらいですから、素晴らしいと思います。実際完成してみて、いかがでしたか?
井上:すっごく嬉しくて…。「ウェンデにゃんのうた」は世界的にもご活躍されている作曲家の川井憲次さんに編曲していただいたのですが、そのアレンジが素晴らしすぎるんです。私は、その上澄みだけをなぞったようなもので、赤ちゃんくらいのことしかできてない。でも、だからこそ、この先、果てしなく色んなことができそうという楽しさがあるんです。Cubaseを使うことで、その中に数えきれないほどたくさんの音色がある。この音色を試してるだけで、楽しくてすぐに時間がなくなっちゃう。ホントはずっとやっていたいのに、そこまで時間が取れないのがもどかしい。でも、1曲作ってみて思うのは、あるものをコピーするより、新しいものを作ってみたいなって。ただ、どうすればいいのかな……。
小岩井:そこまで行っていれば、すぐだと思いますよ!私も最初に鼻歌でなんとなく作ってみて、それをメロディーとして打ち込んでいるんです。あとは、それにコードを付けていく感じで、どんどんできると思いますよ。

今回の曲のテーマになった「ウェンデにゃん」

ーー井上さん、今後はどんなことをしていきたいですか?
井上:メロディーを作って、オリジナルの曲を作ってみたいですね。歌うの大好きだからアルバムを作りたいな。一方で、VOCALOIDの桜乃そらと、どうにかコラボをしてみたいですね。そらちゃんの声って、私のすべてを注いだから。何十時間もかけて録らせていただいたものなので、もっと使ってあげたいし、もっと多くの人に使ってほしいし…。そらちゃんの声で音楽を楽しんで欲しいし、自分でやってみたい。

ーー井上さんのお話を伺っていると、本当にDTMを楽しんでいらっしゃるのがよくわかります。ぜひ、次の作品を聴いてみたいですし、さらに声優さんでDTMをする人が増えてくれると嬉しいところですが、井上さんのDTMへの参戦、小岩井さんはどのように感じますか?
小岩井:すごく嬉しいし、とっても励みになります。声優で作曲する人ってあまりいないので、「声優なのに作曲なんてするの?結局、何をやりたいの?」なんて非難されることもあるので、大先輩がDTMに興味を持ってくれるのは、すごく勇気がでます。ぜひ、今度、喜久子さんと一緒に何かやりたいです!
井上:こっこちゃんと一緒に何かをできるようになるには、まだまだ時間がかかりそうですが、ぜひ何かやっていきましょう。

ーーお二人の共作、どんなものができるのか、楽しみにしています。本日はありがとうございました。

※2020.12.03追記
2020.11.24に放送した「DTMステーションPlus!」から、第164回「UVIの新製品がDTMに無限の可能性を!」のプレトーク部分です。「声優業界ではDTMがブーム!? 永遠の17歳・井上喜久子さんも小岩井ことりさんに続いてCubaseユーザーに!」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
井上喜久子 オフィシャルサイト |ファンクラブ @manbow
小岩井 ことり | PEERLESS GERBERA

【Twitter】
井上喜久子さん(@atmanbow_staff
小岩井ことりさん(@koiwai_kotori)

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