ドイツのMiditech(ミディーテック)というメーカーをご存知ですか? ドイツ・ケルンにある老舗メーカーであり、ヨーロッパ、アメリカでは大きな実績を持つMIDI機器に特化したハードウェアメーカーです。そのMiditechが正式に日本で流通を開始することになり、小回りの利くMIDI機材を数多くリリースしました。
その主力製品の一つが、実売価格11,000円のコンパクトな32鍵USB-MIDIキーボード、K32s。WindowsやMacに接続すれば普通にUSB-MIDIキーボードとして使えるのはもちろん、ここにGM音源、そしてスピーカーも内蔵しているので、本体から音を鳴らすことも可能。また単3電池x3でスタンドアロンで動かすこともできるから、いつでもどこでも持ち歩いて使える、ありそうでなかった便利な楽器といえそうです。実際試してみたので、どんな機材なのか紹介してみましょう。
ドイツの老舗メーカー、Miditechが日本に上陸。さまざまな製品の販売をスタート
Miditechは、ヨーロッパでは非常に知名度のある老舗ブランドではありますが、日本にやってくるのは今回が初。創立者でジェネラル・マネージャーのCosta Naoúm(コスタ・ナオーム)氏は、長年ハモンド・ヨーロッパの責任者として電子キーボードビジネスに携わってきた人で、その後、Connオルガン、Wersiオルガン、Goldstarキーボード、カーツウェルなどを経て、1998年に設立したのが、MIDI機器を扱うMiditechです。
そのMiditechが開発したさまざまな製品を日本の代理店であるファインアシストが取り扱う形で国内販売がスタートしました。
コンパクトで便利な機材がGM音源内蔵のUSB-MIDIキーボード、K32s
その一つがこのK32sという32鍵の小さなUSB-MIDIキーボードです。まあ、USB-MIDIキーボード自体は数多くのメーカーが発売していますし、激安コンパクトという意味ではKORGのnanoKEY 2などがあるわけですが、このMiditechのK32sはほかにはないユニークな特徴を持っています。
底面にはスピーカーが装備されており、単3電池x3本でも動作するようになっている。さらにeneloopなどを充電できるのもポイント
それはこのK32s自体にGMレベル1の音源を内蔵しているため、計128音色+5ドラムセットを、K32s本体で鳴らすことができるという点。しかもスピーカーを内蔵しているので、DAWを起動しなくても、さらにいえばPCと接続しなくても、これ単体で演奏することができるのです。
USBでPCと接続するとMIDIポートとしてK32sというものが見えるようになる
すごく高音質な音源……というのをアピールする製品ではなく、いたって普通なGM音源なわけですが、電池駆動でき、USBバスパワーでも動作し、すぐに鳴らせるという意味ではとっても便利な機材だと思います。しかもユニークなのは、eneloopなどの充電池を入れた状態で、USB給電すると充電できてしまうというのも他にはない特徴だと思います。
そのGM音源、鍵盤を弾く場合は1音色しか鳴らすことはできませんが、USBでPCと接続すれば、昔懐かしいMIDI音源モジュールとして使うことができ、この場合は16パートを同時に鳴らすことができます。そう、RolandのGS音源やYAMAHAのXG音源が華やかだったころと同じ感覚で使うことができるわけですね。
試しにWindowsのシステムに入っているMIDIデータ、flourish.midをCubaseに読み込ませ、出力先をK32sに設定して鳴らしてみたのがこちら。
いかがですか?それなりにしっかりした音が出ているのがお分かりいただけると思います。とても小さいキーボードだから、いつもどこでもお持ち歩け、すぐに、こんな音が出せるので、いろいろ便利に使えると思いますよ。
気になるのは、その機能。32鍵のミニキーボードではありますが、一通り何でも備わっています。前述の通り、単3電池x3本で動作し、USBバスパワーでも動作するK32s。サイドにはそのMiniUSB端子と並んでGM音源の音を出力するヘッドホン兼ライン出力のステレオミニ端子、またサステインペダルに接続する端子も用意されています。
USBポートと並んでサステインペダル端子、ステレオミニのヘッドホン/ライン出力端子がある
またキーボードの左側にはピッチベンドスライドパットがあり、ここに指をスライドさせることでピッチベンドが行えます。またその上下にモジュレーション/サステインスイッチがあり、通常は上下ともにモジュレーション用に使えるほか、SHIFTスイッチを使って切り替えることで、サステインボタンに変身させることも可能です。
ピッチベンドはスライドパッド式になっている。その上下のボタンがモジュレーション/サステイン用
またその右横には-/+と書かれたオクターブボタンがあり、これでオクターブ変更できるほか、SHIFTキーを押しながら-/+ボタンを押せば、音色番号を変更することも可能です。ちなみに音色番号変更はこの方法のほかにもSHIFTキーを押しながら右側のキーボードに割り振られている番号を直接指定することで入力することも可能です。
OCTAVEボタンでオクターブを上下3オクターブの設定が可能
さらに、SHIFTキーを押しながらTRANSPOSE指定すれば-7~+7の範囲でトランスポーズさせることも可能だし、SHIFTキーを押しながらReverbを押すと、リバーブを0%、50%、100%の3段階で設定することができ、GM音源のサウンドを引き立てることが可能です。またSHIFTキーを押しながらTOUCHのSoft/Norm/Hardを選ぶことでベロシティカーブを変更し、キータッチをソフトにするかハードにするか……といった設定もできるきめ細かなキーボードとなっています。
SHIFTキーを押しながらTRANSPOSEキーを押すことでトランスポーズ設定が可能
そしてもう一つ特筆すべきポイントは、SHIFTキーの右にあるスライダーとノブ。GM音源を鳴らす上においてスライダーはブライトネス(ローパスフィルターのカットオフフリケンシー)の調整用として機能し、ノブはSHIFTキーを押しながら回すことで、音色番号を変更することに使うことが可能です。
しかし、PCとUSBで接続している場合、PCに対してはスライダーを動かすことでMIDIコントロールチェンジ21番、ノブを回すことでMIDIコントロールチェンジ22番を送ることが可能。つまりこれらをDAW側が受けることで、フェーダーやPANを動かしたり、ソフトシンセやエフェクトのパラメーター調整用のリモコンとして利用することも可能なのです。こうして見てみると、コンパクトながら非常に強力なUSB-MIDIキーボードだと思います。
iPhone/iPadでもバスパワーで動かすことができた
ちなみに、このK32sをLighning-USBアダプタ経由でiPhone/iPadと接続してみたところ、バッチリ動作することも確認できました。音源内蔵で、スピーカーも鳴らすので、電源容量的に足りないのでは……と思ったのですが、まったく問題なく使うことができますね。考えようによっては、iPhoneを電源にしてK32sを動かすことも可能な低消費電力なデバイスということもできるわけで、とっても優秀です。
さて、そんなK32sがこの度、国内発売されたわけですが、MiditechではこのK32sのほかにもさまざまな機材が発売になっています。機会があれば、改めて記事で詳しく紹介してみようと思っていますが、いくつかを簡単に紹介するとPianobox miniはK32s同様のGM音源でMIDI IN端子を通じて外部シーケンサからこれを鳴らすことができるほか、USBホスト機能を持っているので、手持ちのUSB-MIDIキーボードを接続して弾くことも可能というものです。ここには大容量のリチウムイオン電池が内蔵されており、最高5時間の演奏ができるのも大きなポイント。そして、ここからその電池からの電源供給でUSB-MIDIキーボードを動かすことができるため、どこにでも持ち歩いて演奏できる環境を実現することが可能なのです。もちろんMIDIキーボードだけでなく、EWIなどのMIDIウィンドコントローラー、以前紹介したmalletKATやmalletStationのようなMIDIマリンバで利用することもできます。
MIDI端子のないUSB-MIDIキーボードでMIDI出力を可能にするUSB MIDI HOST
またUSB MIDI HOSTはPianobox miniのUSBホスト機能を取り出し、音源を鳴らすのではなくMIDI OUTへ変換するというものです。つまり各社のUSB-MIDIキーボードをPCなしに、MIDI出力できるキーボードへと変身させる機材です。
さらにMIDI THRU 7はまさにMIDI INから入ってきた信号を7つのMIDI OUTへ分配するためのMIDI THRU専用機材。マスターキーボードを弾いて、複数の音源をレイヤーさせて鳴らしたいというときに、便利に使えそうです。
16bit/48kHz、16bit/44.1kHzで動作するUSBオーディオインターフェイス、Audiolink III
そしてもう一つAudiolink IIIはMIDI機材ではなく実売価格8,900円という安価な2in/2outのUSBオーディオインターフェイス。最高で16bit/48kHzという仕様であるため、さすがに高品位とはいえないものの、PC内蔵のサウンド機能に比較すれば断然高音質だし、2chともファンタム電源供給も可能なので、オンライン会議用にも活用できそうです。
このようにMiditech製品を見渡してみると、どれもニッチな用途に向けた製品であり、誰もが欲しがる製品ではないかもしれません。でもほかにない便利な機材が揃っているので、一度チェックしてみる価値はあると思いますよ。
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