ワインレッドのボディーで見た目にもカッコいいオーディオインターフェイス、英FocusriteのScarlett(スカーレット)シリーズが、先日、第3世代となるScarlett 3rd Genとしてフルモデルチェンジし、発売されました。ご存知の通り、Focusriteはプロのレコーディングの世界での名門メーカーで、今も世界中のレコーディングスタジオ、また放送局でFocusriteのコンソールやマイクプリアンプが使われています。
今回誕生したScarlett 3rd GenはUSB Type-Cに対応するとともに、その世界中のプロ現場で使われているISAマイクプリアンプの音質をモデリングしたAIRモードを装備しているのが大きな特徴。しかも内部回路も再設計され高音質化が図られていると同時にレテンシーもさらに小さく抑えられるようになったとのこと。それでいて価格はScarlett Soloで実売12,000円と手ごろなのも嬉しいところ。実際どんなオーディオインターフェイスなのか、Scarlett Solo、Scarlett 2i2、Scarlett 4i4の3機種を試してみました。
Focusriteのオーディオインターフェイス、第3世代となるScarlettシリーズが発売された
製品発表は7月にされていたので、すでにご存じの方も多いと思いますが、2011年に登場したFocusriteのUSBオーディオインターフェイス、Scarlettが第3世代製品にリニューアルされました。第2世代製品が誕生したのが2016年なので3年でのフルモデルチェンジ。パッと見は赤いボディーに黒い顔なので、端子がUSB Type-Cになっただけで、とくに変わっていないでは……なんて思っていましたが、まったくの新設計になっているようです。
USB Type-C接続となったScarlett 3rd Gen
確かに3年前の記事「出た!1万円のオーディオIF、英名門Focusrite・Scarlett G2の破壊力」で撮影したときの写真と比較してみると、フロントパネルのデザインも大きく変わっているのが分かります。
この第3世代として発売されたのは、以下の6製品。
製品名 | 入出力数 | マイクプリ | MIDI | 実売価格(税抜) |
Scarlett Solo | 2in/2out | 1 | 非対応 | 12,000円 |
Scarlett 2i2 | 2in/2out | 2 | 非対応 | 17,400円 |
Scarlett 4i4 | 4in/4out | 2 | 1in/1out | 25,200円 |
Scarlett 8i6 | 8in/6out | 2 | 1in/1out | 32,000円 |
Scarlett 18i8 | 18in/8out | 4 | 1in/1out | 42,000円 |
Scarlett 18i20 | 18in/20out | 8 | 1in/1out | 51,500円 |
さらにFocusriteのコンデンサマイクとモニター用ヘッドホンをセットにしたDTMエントリーパックとして以下の2製品も登場しています。
製品名 | 実売価格(税抜) |
Scarlett Solo Studio | 20,000円 |
Scarlett 2i2 Studio | 25,000円 |
繊細な音をレコーディングする上で重要な役割を担うコンデンサマイクは単品で買うと、普通数万円はするものですから、そのコンデンサマイクと一緒に入っていて、マイクケーブルも付属し、しかもモニターヘッドホンもセットになっているのですから、かなり割安感のあるパックですよね。
コンデンサマイク、ヘッドホンとセットになったScarlett Solo Studioのパッケージ
さて、今回のScarlettシリーズ、時代の流れに沿って端子はUSB Type-Cになったため、リアパネルもよりスッキリとした感じです。もっとも付属するケーブルはUSB Type-C-USB Type Aなので、従来からのPCでもそのまま接続可能です。
付属のコンデンサマイクで、かなり高音質にレコーディングできる
一方で、MacBook Proなど最新のUSB Type-C端子のPCの場合はUSB Type-CーUSB Type-Cのケーブルを別途用意する必要があります。とはいえ直接接続が可能であり、別途変換用のHUBを用意する必要はないので、とってもスッキリ接続できますね。
では、1つずつ接続して試してみたので順に見ていきましょう。まずScarlett Soloは左側にマイク入力、右側にライン/ギター入力を装備した一番小さい製品。左右それぞれの入力ゲインの調整ノブがあり、これで入力レベルを調整します。そのノブの周りにLEDがあり、入力レベルの大きさによって緑から赤まで変化するので、これを見ながら調整するわけです。
48Vのボタンをオンにするとファンタム電源が供給されコンデンサマイクを使用できるようになる
コンデンサマイクを使う場合は48VのボタンをONにするとファンタム電源が供給されて使えるようになります。これによって標準のマイクプリアンプが駆動した状態で使えるのですが、さらに隣のAIRボタンをONにすると、マイクプリアンプがAIRモードとなり、音が少し変わります。
AIRボタンをONにするとISAマイクプリアンプをモデリングしたサウンドになる
AIRボタンをONにすると微妙に音量が上がると同時に、よりシャキッとした音になる印象で、音の輪郭をよりクッキリと捉えてくれます。Scarlett Solo Studio付属マイクで少し使ってみた感じでいえば、常時ONの状態でいいのではないかと思いましたが、たとえばボーカルの声質によってON/OFF切り替えてみて気に入ったほうを使うというのでいいのかもしれません。
ちなみに、このAIRモードは以前に「プロ用機を7万円で実現させたFocusrite Clarett 2Preの脅威」という記事で紹介したClarettシリーズに搭載されているものとほぼ同様の機能であると思われます。Rupert Neve氏設計の伝説のマイクプリアンプ、ISA 110の系譜を引くマイクプリアンプが、12,000円で入手できてしまうと考えると、グッとくるところですよね。
Focusrite Proのマイクプリアンプ、ISA One
一方、右側の入力はラインおよびギター接続のための端子で、パッシブのギターやベースを接続する場合はINSTボタンをONにしてハイ・インピーダンス入力状態にして使います。
さらにその右側にヘッドホン出力があり、大きいMONITORノブで音量調整が可能。また、その上にあるDIRECT MONITORボタンをONにすると、マイクやギターなど入力された音をそのままヘッドホンにダイレクトモニタリング可能となっています。
リアはシンプルにTRSフォンの出力が2つあるだけの構造で、この出力もMONITORノブで調整でき、ヘッドホン用の出力調整と連動する形になっています。
一方、Scarlett 2i2は左右の入力ともにコンボジャックとなっているので、マイク、ライン、ギターのいずれも接続可能なオールマイティー。また左右ともにAIRボタンが用意されているので、2つ独立したISAプリアンプが利用可能となっています。
一方、Scarlett 2i2のほうはSoloと異なり、リアのメイン出力調整用のMONITORノブとヘッドホン出力用のボリュームノブが独立した格好となっています。
そして、DIRECT MONITORボタンは3段階での切替になっているのがポイント。つまりオフの状態のほかに、モノとステレオが用意されているのです。モノにした場合、左に入ってきた音も左右で聴こえるようにモニタリングされ、ステレオにした場合は左右独立した形でモニターできるのです。この辺は非常に使いやすい設計ですね。
さらに、Scarlett 4i4はフロントにマイクプリ搭載のコンボジャック入力が2つあるほかに、リアにもライン入力が2つ装備されて、そのライン出力のほうも4つあるので、トータルで4in/4outという構成です。
Scarlett 4i4のリアパネルにはMIDI入出力も装備
実は第2世代のScarlettに4i4という製品はなく2i4という2in/4outの製品だったので、ここはラインナップ的にみても大きな変更点ですね。リアパネルを見ても分かる通り、4i4はMIDI入出力が搭載されているのもSoloや2i2との大きな違いとなっています。
気になったのは、4i4は2i2と比較してボタンが少ないこと。そのため、フロントパネルはスッキリしているのですが、これでどうやってINSTモードにしたり、AIRモードにするのかという点。これはFocusrite Contolというコントロールソフト画面で設定するようになっているんですね。また、フロントの2つの入力に対してはPADも使えるようになっているという違いもあります。
Scarlett 4i4の入力部の操作はFocusrite Contolを使って行う
フロントパネルで操作するか、ソフト側で操作するかという、人によって好みは分かれるところですが、個人的には、ボタン操作ができる2i2のほうが使いやすいかな…とは思いました。
Focusrite ControlではScarlett 4i4の出力のルーティングを設定できる
また4i4だけは出力のルーティングを、このFocusrite Controlで設定を変更できるようになっているのも大きなポイントです。このルーティングにはループバック機能も用意されており、PCで出力する音を、外部入力とミックスした上でPCに入力することも可能。これを使えば、ゲーム実況などのネット放送、動画作成などにも役立ちそうですね。
ところで、ここでもう一つ試してみたのが、iOSデバイスとの接続性について。先日購入したiPhone 11 Proで使えるのか、チェックしてみました。Lightning端子のデバイスと接続する場合、カメラアダプタが必要となりますが、iPhone 11 Proの場合、バス電源供給の電力が小さいので、通常のLighting-USBカメラアダプタでは動作しません。そこで、電源供給を可能にするLighting-USB3カメラアダプタを使ってみたところ、3機種すべて問題なく使うことができました。
Lighting-USB3カメラアダプタ経由でiPhone 11 Proと接続することができた
一方、USB Type-C端子を持つiPad Proでも試してみました。これは特にアダプタ不要で、両端子ともUSB Type-Cのケーブルで接続してみたところ、バスパワーのみでしっかり動作してくれます。もちろんScarlett 4i4の場合、4in/4outとして認識してくれました。こうした点を見ても、iOSデバイスとの接続性は問題なく、安心して活用できそうですね。
iPad ProとはUSB Type-Cケーブルで直接接続でき、バスパワーで駆動できた
ちなみに今回の第3世代になり、レイテンシーがさらに縮まったとのことなので、これについてもちょっと実験してみました。チェックしてみたところ、Windowsだとバッファサイズを8Sampleまで小さくすることができたので、24bit/192kHzで試してみたところ、入出力合計で2.69msecという数字を出してくれました。この低価格のオーディオインターフェイスで、これだけの性能が出せれば十分すぎるといえるのではないでしょうか?
レイテンシーは2.69msecと小さい値をたたき出してくれた
なお、これら第3世代のScarlettシリーズには数多くのソフトがバンドルされているというのも見逃せない重要なポイントです。具体的には
Pro Tools | First
Focusrite Red 2 & Red 3 Plug-In Suite
Softube Time & Tone Bundle
XLN Audio Addictive Keys
のそれぞれ。
さらに、以前「毎月プラグインがタダでGETできる!?Focusrite/novationが展開するPlug-in Collective,Sound Collectiveは絶対チェック!」という記事で紹介したFocusrite Plug-in Collectiveも利用可能です。
たとえば11月7日まではタイミングだとUjamのギター音源、Virtual Guitarist IRONがゲットできます。このIRON、国内代理店であるクリプトン・フューチャー・メディアのSonicWireで買うと、14,979円(9月23日時点の価格)。もうこれ1本だけでScarlett Soloの元がとれちゃうというか、お釣りまで来ちゃいますね!
※2019.9.23追記
記事の初回掲載時、「iZotopeのTrash 2がもらえる」としていましたが、これはnovationユーザー向けのSound Collectiveのほうでした。お詫びして訂正したします。
11月7日までの間なら入手できるUjamのVirtual Guitarist IRON
さらに100万種類以上のサンプル音源から好きな素材を選んでダウンロードできる、話題のサブスクリプションサービス、Splice Soundsの3カ月間無償トライアルも使えるので(通常7.99ドル/月)、これを試してみるのもよさそうですね。
【関連情報】
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