DTMステーションで、これまで何度か取り上げてきた魔法のようなことを実現するプラグインメーカーのドイツZynaptiq(ザイナプティク)。人工知能でミックス、マスタリングができるINTENSITYやステレオミックスからドラムを消せる魔法のツールのUNMIX DRUMS、既存曲のコードを自在に変えられる魔法のツールPITCHMAP……などなど。
そのZynaptiqから非常に強力なリバーブプラグイン、SUBSPACEがWindowsおよびMac用に、無料でリリースされました。Zynaptiq製品の国内代理店であるエムアイゼブンジャパンによるとZynaptiq製品の認知度向上のための無料公開とのことですが、これがまた強力で、かなり利用価値が高そうなリバーブなんです。実際自分でも入手し、インストールした上で、試してみたので、どんなエフェクトなのかを紹介してみましょう。
Zynaptiqのリバーブ、SUBSPACEを無料で入手できる
Zynaptiqは、まさに魔法のようなユニークなツールを次々と出すメーカー。同社のロゴマークの下には「science ,not fiction」とも書かれていますが、「なんでこんなことができるの!?」と、いつも本当に驚かされます。
ZynaptiqのADAPTIVERB
でもその一方で、まさに業務でも使える実用的なツールもいろいろと出しています。たとえば高品質のオーディオ・タイム・ストレッチとピッチ・シフトを提供するTIME FACTORY IIやリフレクションに依存しない革新的なリバーブ・プラグインのADAPTIVERB、5種類のモーフィング・アルゴリズムを備えるMORPH 2、荘厳なものから極端なものまでさまざまな効果をハイクオリティーに実現できるマルチエフェクトのWORMHOLE……などなど。
マルチエフェクトのWORMHOLE
Zynaptiqは「魔法と実力」、その2つの顔を持つプラグインメーカーだと思うのですが、その実力のほうを見せつけてくれるリバーブが、今回リリースされたSUBSPACEなんです。MacにおいてはAU、VST 2/3、RTAS、AAX、WindowsにおいてはVST 2/3、AAXの各プラグイン環境で利用可能なソフトとなっています。
まずはドラムに対してSUBSPACEがどんな効果を発揮するのか試してみたので、以下のビデオをご覧になってみてください。
極めてみずみずしいリバーブサウンドを実感できたと思います。実際何をしたのか、もう少し具体的に説明してみましょう。
このSUBSPACEは非常にシンプルなリバーブであり、A、B、C、Zと4種類のプリセットがあるのみ。また右下にドライ/ウェットバランスを決めるパラメータがあり、ここで0~100%の範囲での設定が可能になっています。
SUBSPACEは4つのプリセットを選ぶだけのとてもシンプルなUI
通常DAWでリバーブを使う場合、エフェクト用のバスを設定した上で、センド/リターンで調整する方法をとりますが、ここでは単に1トラックのみなので、インサーションでSUBSPACEを組み込んで鳴らしています。
ここではStudio One 4 Professionalのオーディオトラックにインサーションで組み込んでみた
デフォルトでの設定では、ドライ/ウェットバランスが35%(元の信号が65%、リバーブがかかった音が35%)となっていたので、このままの状態で、リバーブをON/OFFさせるとともに、A、B、C、Zと切り替えていったわけです。聴いてみるとわかるとおり、A、Bは比較的応用範囲が広そうなリバーブであり、Cになるとだいぶロングリバーブになっているのが分かります。
画面右下でドライ/ウェットの調整ができる
さらにZになると、荘厳ともいえる感じの超ロングリバーブであり、普通ならば音が濁りそうですがAIにより残響の響きが制御されいるのです。単音におけるドローン・ミュージックなどにもかなり効果的に使えるのではないでしょうか?最後の余韻を聴くと、リバーブ音だけをじっくりとチェックできると思います。
同様にピアノサウンドにもSUBSPACEを掛けてみたので、こちらも聴いてみてください。
今度のデモは単にON/OFFとリバーブタイプの切り替えだけでなく、ドライ/ウェットバランスを0~100%まで上げていく変化も分かるようにしてみました。これを聴いてみていかがでしょうか?一般的なリバーブにあるリバーブタイムやルームサイズ、プリディレイ……といったパラメータはありませんが、即実践可能なよくできたプリセットであると思いませんか?
少し種明かしをするとA、B、Cのそれぞれは前述のZynaptiq製品であるMORPH 2とWORMHOLEに搭載されているリバーブでサイズを変えたプリセットとなっています。一方、ZはADAPTIVERBのハーモニック・トラッキング・リシンセシス・リバーブのプリセットを使ったものとのこと。
ストラクチュアル・オーディオ・モーフィングエフェクトのMORPH 2
これらが無料なのは嬉しいですね。もっとこのリバーブサウンドを突っ込んで使っていきたいというのであれば、これらのエフェクトを購入した上で調整していくことで、さらに奥深くへと突き進んで行けそうですね。
では、このSUBSPACEはどのように入手し、インストールするのか。その手順を簡単に紹介しておきます。
SUBSPACEのサイトへアクセス
基本的にはエムアイゼブンジャパンのZynaptiq SUBSPACEの製品情報ページへアクセスし、ダウンロードページで、名前、E-mailアドレス、そして使用OSと使用DAW、使用分野を入力するとともに、「ニュースレターの登録」を「はい」に設定した上で「SUBSPACEをGET」をクリックするだけ。これらの入力項目のうち「ニュースレターの登録」が必須となっており(登録しないという選択肢はありません)、SUBSPACEの入手と引き換えに、今後Zynaptiq関連のニュースレターが届く形になります。
名前やメールアドレスなどを入力
この登録を行うと、すぐにメールが届き、ここにダウンロード先のURLおよびアクティベーションコードが記載されています。さっそく、これをダウンロードして起動すれば、簡単にインストールは完了します。またSUBSPACEの日本語マニュアルも用意されているので、これを入手することも可能ですよ。
ただし、SUBSPACEに限らずZynaptiq製品はiLokでのオーソライズが必要になるため、この先ひと手間が必要となります。
SUBSPACEを利用するにはiLokでのオーソライズが必要となるが、iLok自体は必ずしも必要ではない
DAWを起動すると自動的にSUBSPACEが検知されるとともに、オーソリゼーションウィザードが自動的に起動します。もし起動しない場合は、Activate SUBSPACEを実行してこのウィザードを立ち上げます。
メールで届くアクティベーションコードを入力してオーソライズ
ここでZynaptiqから送られてきたアクティベーションコードを入力した後、自分のiLokのアカウントIDおよびパスワードを入力します。もし、アカウントを持っていない場合、この画面から新規アカウント登録が可能であり、すぐに無料でアカウントを発行することが可能です。
iLokアカウントでログイン。アカウントがない場合は「Create new account」で新規作成する
その後、アクティベート先のデバイスを選択すれば完了です。iLokキーを持っていなくても自分のPC本体にアクティベートすることは可能ですが、DTMをする上で、iLokはいろいろなケースで利用するものなので、持ってない方は、この際、一つ購入しておくと便利だとは思いますよ。
インストールしたPCもしくはiLokを選んで完了
以上の手続きで、SUBSPACEが利用可能となるので、ぜひ存分に楽しんでみてください。
【製品情報】
SUBSPACE製品情報
MORPH 2製品情報
WORMHOLE製品情報
ADAPTIVERB製品情報
【無料ダウンロード】
SUBSPACEダウンロード
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ MORPH 2(ダウンロード版)
◎サウンドハウス ⇒ MORPH 2(ダウンロード版)
◎MI7 Store ⇒ MORPH 2(ダウンロード版)
◎Rock oN ⇒ WORMHOLE (ダウンロード版)
◎サウンドハウス ⇒ WORMHOLE(ダウンロード版)
◎MI7 Store ⇒ WORMHOLE(ダウンロード版)
◎Rock oN ⇒ ADAPTIVERB(ダウンロード版)
◎サウンドハウス ⇒ ADAPTIVERB(ダウンロード版)
◎MI7 Store ⇒ ADAPTIVERBダウンロード版)
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