NAMM Showで見た製品の中で個人的にスゴイと思ったものの一つが、イタリアIK Multimediaが展示していたAmpliTube LeslieおよびT-RackS Leslieという製品です。これはギター/ベースアンプシミュレータのAmpliTubeにレスリースピーカーを組み込んだもの、およびミキシング/マスタリングソフトのT-RackSにレスリースピーカーを組み込んだというものです。
実際に会場でデモしているサウンドを聴いても、まさに!という音だったのですが、これはレスリースピーカーの本家であるハモンドUSAと鈴木楽器製作所の研究開発部門とIK Multimediaの共同開発による製品とのこと。つまり本家お墨付きのホンモノのサウンドなんですね。IK Multimediaの開発トップである、CTOのDevide Barbiさんにもお話を伺ったので紹介してみましょう。
レスリースピーカーを再現するAmpliTube Leslie、T-RackS Leslieが3月発売
本題に入る前に、みなさんはレスリースピーカーというものをご存知でしょうか?知っている方なら、「何をいまさら」と言われてしまう話ですが、実物を見たことがない方も少なくないと思います。ハモンドのオルガンサウンドで、ウヮンウヮンウヮンという不思議な効果を出すスピーカーで、一般名称的にはロータリースピーカーと呼ばれるもののことです。
レスリースピーカーの構造図
個人的には一番最初にロータリースピーカーを経験したのは小学校1年生のときだったので、もう45年も前のこと。当時、祖父が弾いていたヤマハのエレクトーンのあるスイッチを音にすると、エレクトーンの中に入っているモーターが回りだして、ウヮンウヮンという妙な音になったんです。まさにドップラー効果によるうねるサウンドで、そこで聴いていると乗り物酔いしたようになって好きでなかった記憶がありますが、大人になってから本家がハモンドオルガンなどに使われたレスリースピーカーであったことを知った次第です。
AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieはレスリー本家のお墨付き
そのハモンドオルガンの国内発売元でもある鈴木楽器製作所によると、
レスリー・スピーカーは内蔵された「ローター」と呼ばれる音の出口が物理的に回転することによってドップラー効果を生み、独特な揺らぎを伴ったサウンドを発生させます。その個性的な音色はジャズやロックなどに留まらない、様々なミュージシャンに愛されることで、ハモンドオルガンと共に無くてはならない物となりました。
一般的にレスリースピーカーにはアンプと2つのローター、高音担当の「ホーンローター」と、低音担当の「ドラムローター」が内蔵されており、各ローターにはスピーカーと速度可変のモーターが付いています。
とのこと。物理的にモーターで回しちゃうからこそ、他では得られない独特なサウンドが作れるわけですね。
レスリースピーカーを再現するAmpliTube Leslie
今回、そのレスリースピーカーをIK Multimediaが正式に、そして世界初で再現したというのが、AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieなんです。
IK Multimediaの採鉱技術責任者・CTO、Davide Barbiさん
Davideさんは
「今回、ほぼ2年に渡ってハモンドUSA、鈴木楽器製作所の研究開発部門とやりとりを繰り返し、彼らにも見てもらい、音を聴いてもらいながら、製品開発を進めていきました。最終的には、これは紛れもなくホンモノのサウンドだ、と驚いてもらうこともでき、製品化にたどり着きました」
と話してくれました。
AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieは、IK Multimediaが鈴木楽器製作所、ハモンドUSとともに共同開発
ここで、ふと思ったのはレスリースピーカーって、1940年代にアメリカで作られ、発展してきたものだけど、なぜそれをIKが鈴木楽器と共同開発したの?という疑問でした。が、後で調べてみたら、現在はモンドオルガン、レスリースピーカー自体の商標権と製造権を鈴木楽器が持っていて、Hammond Suzuki USAと連携する形でハモンド製品とレスリー製品の製造、販売を行っている本家だったんですね…。
で、その結果実現したというのが、以下のようなサウンドです。
聴いてみても、なかなかカッコイイし、ほかのエフェクトとかでは、なかなか作れないサウンドですよね。このAmpliTube Leslie、T-RackS Leslieでは、レスリーの5つのアンプと6つのロータリースピーカーキャビネットが使うことができ、レコーディングやライブ演奏時のエフェクトとして利用可能、とのこと。
しかもマイクの距離や角度、精密なレベルバランスはもちろんのこと、オリジナルにはないアンプとキャビネットの組み合わせや、回路の歪みやその強さ、ロータリースピーカーの加速度や減速度、ホーンとドラムのバランスなどが設定- 再現可能になっているそうです。
どうやって、それを実現させたのか、Davideさんに伺ったところ、
「やはり、まずは実際にモーターを使って動くシステムなので、物理モデリングで実現しようとしました。ここではアンプ部の電気回路を完全な形で再現するとともに、モーターで回ることによる空気の動きなどもすべてモデリングしているのですが、それだけでは、どうしてもレスリーの音そのものにはなりません。やはり、キャビネットの鳴りがレスリースピーカーにおいて大きな要素なんです」
レスリースピーカーの筐体の鳴りをIRで再現。画像はLeslie 147
「そこで、実際の鳴りをサンプリングしたIR=Impulse Responseを用いて、モデリングしたものに鳴りを響かせるのです。その結果、ホンモノと違いがまったく分からないレベルでのサウンドを実現できるにいたったのです」
と説明してくれました。
ここでいう物理モデリングが、Dynamic Interaction Modeling、そしてIRを使った鳴りの再現がVolumetric Response Modelingというものなんですね。
まだ、私もNAMMでのデモを見ただけで手元で動かしたわけではないのですが、レスリーの5つのアンプと6つのロータリースピーカーキャビネットをどう組み合わせるかで、サウンドはいろいろ変わるとともに、アンプのパラメータであったり、マイクの位置を変えるだけでも、だいぶ雰囲気が変わるのだとか。オルガンだけでなく、さまざまな楽器に使ってみると面白そうですよね。
ちなみにAmpliTube Leslie、T-RackS LeslieともにWindowsおよびMacで動作し、それぞれスタンドアロンで使えるほか、VST、AUそしてAAXのプラグインとして各DAWとともに使うことが可能になっています。
AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieとともに、2つをパックにしたLeslie Collectionが発売に
気になる価格ですが、AmpliTube Leslie、T-RackS Leslie、いずれも3月発売で、それぞれ通常価格で15,000円(以下すべて税別)とのこと。またAmpliTube Leslie、T-RackS LeslieをセットにしたLeslie Collectionというものもあって、こちらは通常価格が21,000円となっています。
ただ、すでに予約販売がはじまっており、イントロ価格として、AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieそれぞれが11,000円、Leslie Collectionが17,000円となっているので、欲しいと思った方は早めに予約しておくといいかもしれませんね!
【製品情報】
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