DTMの打ち込みで難しいと言われてきた楽器の代表的存在がギターです。いくら高品位なサンプリングを用いても、普通にMIDI入力したのでは、どうしてもギターのダイナミックさを表現することができず、何か機械的、シンセサイザ的な音色になってしまうからです。そのため打ち込みでギターっぽさを出すためには、ピッチコントロールを駆使してビブラートとチョーキングを表現したり、6本ある弦を鳴らすタイミングを微妙にズラしてストロークを表現するなど、まさにギターリストのプレイの一挙手一投足を真似しながら細かなMIDI入力をしていく必要があるのです。
当然ギターの知識と経験が豊富でないと、そんな入力はできないし、膨大な手間もかかります。そんなことをするくらいなら自分でそれなら自分で弾くか、ギタリストに頼んでレコーディングしてもらったほうがよほど簡単ということになってしまいますが、そんな知識も手間も不要で、手軽に本気のギタープレイを打ち込みで再現できる音源が出てきています。その一つがThree-Body Technologyという会社が開発したHeavier7Stringsというメタル系のギター音源。実際に試してみたところ、打ち込みではもちろん、MIDI鍵盤でリアルタイムに弾いても、まさに本気のギター!というサウンドになってくれる、感激ものの音源なんです。どんな音源なのか紹介してみましょう。
メタル系を中心としたギターサウンドを作り出せる強力でリアルなギター音源、Heavier7Strings
実際の説明の前に、Three-Body Technology社がデモビデオをYouTubeにUPしているので、これを見ると、どんなサウンドで、どんな雰囲気の音源なのか分かると思うので、まずはご覧ください。
どうですか?かなりパワフルで、リアルなエレキギターサウンドですよね。見た目にもヘビメタな世界観が表れている感じですが、ヘビメタ用、ハードロック用はもちろん、さまざまな音楽ジャンルで活用可能なギターとなっています。SoundCloudにもデモ演奏が掲載されているので、これを聴いてみても、かなりなサウンドであることがわかります。
では、もう少し具体的に見ていきましょう。
Windowsの場合、スタンドアロンのほか、VSTおよびAAXの64bit/32bit環境で動作する
まずHeavier7Stringsは、その名称からもわかる通り、7弦のギターをシミュレーションする音源です。WindowsでもMacでもプラグインでの動作可能であり、スタンドアロンでの動作のほか、Windowsの場合はVSTの32bit/64bit、AAXの64bit/32bit、Macの場合はVSTの64bit、AudioUntsの64bit、AAXの64bitで動作するという仕様になっています(Logic 9は非サポートで、Logic Pro X以上が対象)。
スタンドアロンモードでの動作画面
基本はサンプリング音源で、4年をかけて収録してきた10,000を超えるサンプリングサウンドが入っているというだけに、インストーラの容量は結構大きく、6GB強。仕様を見ると、10GB以上のハード空き容量が必要とのことです。私はSSDにインストールして試してみましたが、ストリーミング技術をうまく活用しているので、HDDであっても問題なくスムーズに動作するようですよ。
Cubase Pro 9.5上で起動させたVST版のHeavier7Strings
さっそくDAWのインストゥルメントトラックとしてHeavier7Stringsを起動。ここで画面に表示された鍵盤を弾くか、MIDIキーボードで単音で弾いてみると、ほぼクリーンな素の状態でのギターサウンドが響きます。試しに「ドミソ」とコードを弾いてみると、コードが自動検知された上で、上の5弦を使ったCのコードが押さえられ、「ジャラ~ん」とストロークで鳴ってくれるのです。これだけでも、「ホンモノのギターだ!」という感じがするのです。
Three-Body TechnologyによるとTHRASH(The Tonal/Harmonic Reconstruction and Shaping)という独自開発のDSPエンジンを利用しているから、このギターらしさが実現できているとのこと。サンプリング音源ではあるけれど、弦のテンションも調整しながら、ピッキングする状況をチェックしながら鳴らしているからこそ、こうした音が出せているのだとか。
単なるLFOでのビブラートではなく、よりリアルなビブラートになっているとのこと
また単にサンプリングされた音がプレイバックされているというのではなく、左指を揺らしながら弾く、ギター特有のビブラート効果を出しながら鳴らしているのも、「これがギターだ!」という感じさせる大きな要因のようです。しかも、このビブラート、単なるLFOというわけではなく、強さにも揺らぎを持ったビブラートになっているというのもリアルなギター音になるポイントなんですね。もちろんビブラートの深さやスピードも調整できますが、アームを動かしながらの演奏もできるようになっています。
patternsボタンをクリックすると、膨大なフレーズ集が表示され、試聴できる
でも、Heavier7Stringsが面白いのはここからです。左側にある「patterns」というボタンをクリックすると、ジャンルとパターンの一覧が表示されます。ここで、適当にジャンルを選択し、その中にあるパターンを選び、プレイボタンを押してみると、かなりいい感じのループフレーズが鳴ってくれます。これをいろいろと選んでいるだけでも楽しいのですが、このプレイボタンの右にある「Drag&Load」というボタンをドラッグしながらDAWのHeavier7Stringsのトラックへドロップすると、そのフレーズがMIDIデータとして貼り付けられ、いま鳴っていた音色設定とともに、DAW上で再現可能となるのです。
気に入ったフレーズがあれば、DAWへドラッグ&ドロップすることで、そのまま使えてしまう
もちろん、ここで貼り付けられるのはMIDIデータですから、「カッコけど、ちょっとキーが違う」とか「フレーズを少し修正したい」といった場合、DAWのMIDIエディター上で簡単にエディットができてしまうのです。もちろん、音色だけを取り出し、このMIDIデータを参考にしつつ、完全にゼロからフレーズを組み立てることだって簡単にできますよ。
ドラッグ&ドロップしたMIDIデータを開いてみると、こんな感じ
画面上にはさまざまなパラメータがあり、シチュエーションに応じていろいろと活用することができますが、簡単に使えてなかなか便利だなと思ったのが「DOUBLING」というボタン。これは、まさにダブリングを行うものです。
ダブリングボタンを押すと、微妙な感じでバラけながらタイミングを左右でズラしてくれる
つまり二人のギタリストが同じフレーズを同時に弾くのを表現するもので、オフだとモノラルサウンドなのがオンにすると、2人のギタリストがそれぞれ左、右にいるような広がりあるサウンドにしてくれます。これも単純にタイミングをズラしているだけでなく、それぞれのタイミングが揺らぎを持ちながらズレているから不自然さもないとのことです。
さらに、Heavier7Stringsを強力なギターにしている要素が、ここに搭載された数多くのエフェクトです。アンプシミュレータはもちろん、ブースター、スクリーマー、オーバードライブ、EQ、フランジャー、コーラス、ワウワウ、コンプ、ディレイ……、とさまざまなエフェクトが搭載されており、自由に組み合わせて使うことが可能です。もちろん、それぞれを組み合わせたプリセットもたくさん用意されているので、まずはこれらを利用してみるのがよさそうですね。
ステッパーなどもエフェクトとして用意されているほか、アンプシミュレータもなかなかいい具合だ
ちなみに、これらエフェクトは別として、ギター単体での音作りという意味では、それほど多くのバリエーションがないのは事実です。あるのは普通のギターと同様、ボリュームつまみと、TONEつまみがあるほか、ピックアップの切り替えスイッチが用意されているほか、テンションの調整また、それと関連するレゾナンスというパラメータがあるので、これらを使ってギターとしてのサウンドを作っていく格好です。
一方で、普通の奏法だけでなく、ミュート奏法や、ハーモニックス、ハンマリング、タッピング……とさまざまな奏法も可能であり、MIDI鍵盤で弾く場合は低音のキーが、奏法の切り替えボタンとして活用することが可能となっています。
各パラメータは自由にMIDIのコントロールチェンジ番号を割り振れる
また、ここにあるさまざまなパラメータはあらかじめMIDIのコントロールチェンジが割り振られていて、これらを動かしながら演奏することが可能ですが、コントロールチェンジ番号は必要に応じて自由に振り返ることも可能になっているので、MIDI打ち込みの際は、より細かく作り込んでいくことも可能になっていますよ。
ただいま、ハロウィンのセール中とのことで、通常の249ドルが199ドルとなっている
気になる価格ですが、通常249ドルのところ、現在ハロウィンのキャンペーンで199ドルとなっています。ネットからのダウロード販売のみとなっており、購入はクレジットカードかPayPalを使う形です。試してみたところ、購入画面は日本語で利用可能となっており、8%の消費税はかかるようです。11月23日現在、$1=111.3円程度なので、税込み約24,000円となかなか手ごろな価格だと思います。
Webサイト自体は英語だが、決済は日本語が使えるようになっている
購入する前にやっぱり試してみたいという場合には、デモ版も用意されているので、これで確認してみるのもいいかもしれません。この場合は、一度アカウントを作成した上で、コメント欄に何等かの投稿をすると、ダウンロード可能なDropboxのURLを入手できるようになっています。このデモ版、数分で音が途切れるといった制約はあるようですが、音はしっかり確認できるとともに、ダウンロードした約6GBの音色データは製品版でもそのまま使えるそうですよ。
よりリアルなギターサウンドが欲しいという方にとっては、なかなかいい音源だと思いますよ!
※2018.3.7追記
現在、また期間限定で20%OFFの$199のキャンペーンが行われています。「日本語マニュアルもリリース。まだまだ進化するメタル系・超ギター音源、Heavier7Strings」の記事でも書いた通り、すでに日本語マニュアルもあり、購入も日本語ページで行えるので安心です。
【関連情報】
Heavier7Strings製品情報(英語)
Heavier7Stringsデモ版ダウンロード
【価格チェック&購入】
◎share-it ⇒ Heavier7Strings