中学・高校生なら誰でも知っている音楽コラボアプリの「nana」。みなさんは使ったことありますか?昨年も「女子中高生が熱狂するnanaのレコーディングセミナーに潜入してみた!」という記事で紹介したことがありましたが、そのnanaがさらに進化を続けており、DTM観点から見ても、とっても面白い「場」になってきているのです。
ご存じない方に一言で説明すると、nanaは、スマートフォンで簡単に歌声や楽器演奏が録音・投稿できるアプリです。ユーザー同士で拍手やコメントをつけたり、重ね録りをしてコラボしたりと、音楽を通して世界中の人とコミュニケーションを楽しむことができるツールで、現在のユーザー数は350万人。そして1日5~6万の新規投稿があるというトンでもない世界になっているんですよね。そのnanaでDTMユーザーの投稿に非常に注目が集まっており、まさにモテモテの状態なんだとか。実際、どういう状況なのか探ってみました。
スマホの人気アプリ、nanaにDTM楽曲をアップすると、注目度が抜群!?
先日、nanaの広報担当である鈴江美月さんから「いまDTM作品を投稿してくれる人が少ない状況なんですが、何かいい方法はないですかね?」という相談を持ち掛けられたんです。どういう意味なのか、最初よく分からなかったので、運営会社であるnana musicのオフィスにお伺いして話を聞いてみたところ、歌い手はものすごい数がいるけれど、トラックを作る人がまだまだ少なく、DTMユーザーが引く手あまたな状況なんだとか……。
話をしていくと、やっぱりDTMユーザーがnanaの現状をよく知らないのが投稿の少ない最大の原因だろうし、DTMユーザーにとってもnanaは非常に面白い状況になってきているようなんです。というわけで、いまのnanaの実情について、少し整理しながら、改めて紹介してみたいと思います。
まず、nanaを使ったことがない方は、アプリ自体はiOS版もAndroid版も無料でダウンロードでき、その利用も基本的に無料なので、ぜひ一度試してみることを強くお勧めしたいのですが、サービスを見てみると、nanaが若い歌い手さん達に大人気となっている理由が、すぐに見えてきます。
nanaでは見た目にもカッコイイ画面で誰でも簡単にレコーディングできる
そうnanaでは最大90秒という縛りの中、誰でも楽曲を簡単にアップロードすることができ、その作品を誰もが聴くことができるというシンプルな世界。そうしたアップロードされている作品の中で自分の気に入った曲があれば、そこにオーバーダブの形で歌などを入れていくことができ、それを投稿することが可能となっているんです。
DTMユーザー的視点からすれば、「オーバーダブではなく、マルチトラックで……」なんて思ってしまうところではあるのですが、単なる重ね録りだからこそ、中学生・高校生はもちろん小学生だって簡単に使うことができるんですね。しかも、iPhoneやAndroidの内蔵マイクで簡単に録音でき、無料で投稿できちゃうからこそ、毎日5~6万という莫大な投稿があるわけです。
気に入った楽曲を見つけ、画面左下の「コラボ」ボタンを押せば、すぐに重ね録りが可能になる
またオーバーダブすることを、nanaでは「コラボ」と呼んでいるのですが、コラボ作品をアップロードしても、もちろん元の作品はそのまま残っているし、どの作品に対して誰がコラボしたのかもアイコン情報で分かるようになっています。
たとえば、カラオケ的に作られたインストの楽曲に対して、誰かがボーカルを入れたコラボ作品をアップし、そのコラボ作品に別の人がコーラスをハモって別のコラボ作品としてアップすることもできるし、「私のほうが歌が上手なはず!」といって元のインスト楽曲にコラボしてアップロードなんてことが簡単にできるのです。この際、作った人に許可を取るといった必要はなく、誰でも気軽にコラボでき、アップしていいのがnanaの使いやすいところでもあるんです。ここでネックとなってくるのは、誰がそのインストの楽曲を作るのか、という点です。
「もちろんアカペラをアップして、それに重ねていくこともできるのですが、やっぱりしっかりした演奏されたサウンドの曲だと、自ずと注目され、みんながそれにコラボする形で歌っていき、すぐに何十人という人がコラボしていくし、曲によっては数千人が……といったことも珍しくないんですよ」と鈴江さんは説明してくれます。
録音したサウンドにエフェクトが使えるというのもnanaの大きな特徴なのですが、先日そのエフェクトに「nana-Tune」なる新しいエフェクト機能が追加されたことで、DTM作品への注目度に拍車をかけているようなのですが、ちょっと以下の2つのコラボ作品を聴いてみてください。
どうですか?聴いて分かる通り、まさにAuto-Tune風なケロケロボイスなわけですが、機材に詳しくない歌い手さんでもこんな音作りを簡単にできてしまうというのがnanaの楽しい点でもあるのです。使い方としては、まずマイクからボーカルを普通にレコーディングをします。この時点では、元の楽曲と、歌った音は別々に存在しています。ここで15種類あるエフェクトからnana-Tuneを選んだ上で、楽曲のキーを指定すれば、これでOK。上記のようなケロケロボイスに変わってくれるんですね。
レコーディング後、nana-Tuneを選べば簡単にケロケロボイスに仕立て上げられる
ちなみにほかのエフェクトとしては、リバーブ、コーラス、フランジャーといったものはもちろん、モンスターボイス、ラジオボイス、電話ボイスといったものも選択することが可能。さらにダブラー、オクターバー、ハーモナイザーといったものもあるんですね。
「すべてのエフェクトは無料で使うことができ、お手元でレコーディングして、すぐに試すことが可能です。ただ、nana-TuneやDoubler、Harmonizerなど一部のエフェクトを使った作品を投稿する場合には、nanaプレミアムという会員になっていただく必要があるんです」と鈴江さん。昨年10月から月額580円(初月は無料)の有料会員制度であるnanaプレミアム(現在のところiOS版のみ対応)というサービスがスタートしており、投稿にはこの会員になることが必要とのこと。でも、こんなエフェクトが簡単に使えて投稿できるとなると、プレミアム会員になる人も多そうですよね。
さて、ここで気になるのは、DTMユーザーはどんな楽曲を作って投稿すればいいのか、という点でしょう。もちろん、どんな楽曲をアップすることも可能ですし、nanaは基本的にオーバーダブで音を重ねていくことができるサービスだから、最初にドラムをUPし、それに誰かがベースを重ねて、ギターを重ねて……といったネットセッション的なことも可能ではあるのですが、やっぱり最初からカラオケ的に作ったトラックがウケそうではあります。その点について鈴江さんに伺ってみたところ
「そうですね、著名楽曲のウケがいいのは事実です。ケロケロボイスが使えるようになってからは、Perfumeやセカオワなどの楽曲や、VOCALOID楽曲がとくに人気で、すぐに多くの人たちにコラボされる傾向があります。またnanaは女性ユーザーが多いことから女性のキーに合った曲だと注目が集まりやすいですね」とのこと。
なるほどオリジナル曲というよりも、人気曲をカバーするというのがウケるわけですね。もちろん完璧な耳コピというのもいいですが、自分なりのアレンジをして……というのも良さそうですから、ここはDTMユーザーの腕の見せ所でもあります。またJASRAC、NexToneとの包括契約をしているから、ヒット曲をカバーしてアップするのはOK。洋楽やVOCALOID楽曲の場合は、二次創作が可能かどうかは確認しておくのがよさそうではありますが、いろんなことができそうですね。
このようにして自分のアップした作品に多くに人たちがコラボしてくれるというのは、それだけでも楽しいところではありますが、さらに一歩進んだnanaの活用法というのもありそうです。そう、数多くの歌い手さんと出会えるチャンスがあるということです。
コラボされていく作品の中には、「この人、プロ並みの歌唱力!」なんていうものも、いろいろ出てくるし、ものすごく上手なコーラスを付けてくる人もいるので、ボーカリストとしてスカウトしたくなっちゃうケースもありそうです。
nanaのコミュニティ機能を通じてユーザー同士のコミュニケーションも可能
「nanaでは、直接メッセージを送る機能は搭載されていませんが、コミュニティーやコメントでの会話で仲良くなり、実際、ボーカルトラックをWAVデータでやりとりした……といった話を伺ったこともあります」と鈴江さん。
もちろん、著名楽曲だけでなく、自分のオリジナル曲をアップして、nanaで盛り上げていくというのもnana活用法の一つです。
「たとえば廣野ノブユキ(@nobubunobu1214)さんというユーザーさんによるオリジナル楽曲『Rainy』はnanaで大ヒットとなり、3000人以上のユーザーにコラボされ、累計再生回数は100万回を突破しました。その後CD化とカラオケ配信がされているんですよ。また、Okayu(@okayu_official)さんというユーザーさんの博多弁を題材にしたオリジナル楽曲『おっとっととっとってっていっとったとになんでとっとってくれんかったとっていっとーと』も数千人にコラボされて大きな話題になりました。単純にオリジナル曲を公開したら、100万再生いきました、というだけではなくて、nanaの場合はコラボして拡散している人たちがいます。リーチされた側も聴くだけではなくて自分も歌って参加しているので、もとのコンテンツに対して非常に愛着を持つという傾向があるようです」と鈴江さんは話してくれました。
nanaにDTM作品を投稿する価値は大きいはず、と話す鈴江さん
このようにnanaはDTMユーザーの作品の発表の場として見たときに、ニコニコ動画やYouTube、SoundCloudなどともちょっと違う面白い広がりを見せています。一度チェックしてみる価値はあると思いますよ。
ちなみにnanaはWAVやAACなどのファイルを直接アップロードするという機能は備わっていません。そのため、DTMで完成させた楽曲を再生しながら、nanaで録音し、それをアップロードするという手順を踏む必要があります。できるだけいい音でアップロードするには、iPhoneやAndroidにオーディオインターフェイスを取り付け、これを使って音を取り込むのがよさそうですので、この辺はうまく工夫してみてくださいね。
なお、鈴江さんによると、このタイミングでDTMによる作品をnanaに投稿すると抽選でSteinbergのUR22mkII Recording PackやYAMAHAのAG03-MIKUがもらえるキャンペーンも実施しているとのこと。詳しくは、nanaのページで内容を確認してみてください。
※追記 2017.6.5
本日6月5日より「第1回 LUMi DTMクリエイターコンクール」なるものがnanaアプリ内で開催されています。これは公開されたばかりの新VOCALOIDライブラリ「VOCALOID4 Library LUMi」(現在時点は無料体験のみ公開されており、製品版は後日発売される予定)を用いた作品コンクールで、7月2日まで募集しているもの。最終選考に残った曲は、7月8日から文化放送で放送される音楽番組(MCは先日の記事で紹介したAKB48の竹内美宥さん)で紹介されるほか、さまざまな特典があるとのことなので、下記サイトをチェックしてみてください。
http://nana-music.com/topics/lumi-dtm/
【nanaアプリダウンロード】
◎App Store ⇒ nana
◎Google Play ⇒ nana
【関連情報】
nana DTM投稿企画キャンペーンについて
nana musicサイト
第1回 LUMi DTMクリエイターコンクール