超強力でかつレバー一つで音圧を爆上げできることで一世風靡したDeeMax。そのDeeMaxを開発したDotec-Audioでは、これまでに、音を太くするプラグインのDeeFat、誰でもいい感じの音質に整えられるDeeEQ、音量を自動的に整えてくれるDeeTrimなど、ユニークで非常に実用的なプラグインを続々とリリースしてきました。
そのDotec-Audioの動きを見ながら、「いつかは強力なエフェクトを作ってくれるのでは……」と期待していた人も多いと思います。私もそんな一人であるのですが、ついに待望のエフェクトがDotec-Audioから誕生しました。見た目にもド派手で、合体ロボ!というイメージのこの新製品は、DeeFX。ディストーション、フィルター、ディレイの3大エフェクトを1つに統合したプラグインで、それぞれがワンパラメータで操作できる強力な武器となるものです。開発者であるフランク重虎さんにもお話を伺ったので、これがどんなプラグインなのか紹介していきましょう。
Dotec-Audioから待望のエフェクト製品、DeeFXが誕生! (Photo by らいと)
これまでDotec-Audioが手掛けてきたプラグインはDeeComp、DeeMax、DeeFat、DeeTrim、DeeEQ……と、いずれも音圧や音質、レベルなどを整えるものとなっていました。3月7日のニコニコ生放送/Fresh!のDTMステーションPlus!にフランク重虎さんに出演いただいた際も、「DeeEQのリリースで一連のシリーズは一通り出そろいました」と話していた一方、「今後もいろいろなプラグインを企画しています」とも言っていたので、個人的にもどんなものが出るのか楽しみにしていました。
Dotec-Audioのフランク重虎さん(左)と飯島進仁さん(右)
そこに登場したのがDeeFXだったわけですね。「最初はルーパーなどのツールも考えたのですが、特定のジャンルが流行らなくなると廃れてしまいますよね。Dotec-AudioのDeeシリーズのコンセプトは、時代に左右されないツールを作るということなんです。道具箱に常に入っているドライバーのようなモノを作りたい、と。これまではチャンネル系のツールであり、音の基礎を固めるものが中心となっていました。しかし、今回のDeeFXは音を彩るものとして、そのベースとなるディストーション、フィルター、ディレイというエフェクトの基本ともいえる3つをピックアップしました」と語るのはフランク重虎さんです。
DeeFXは各種DAWのVSTおよびAUプラグインとして動作する
左から、ディストーション、フィルター、ディレイとなっているわけですが、毎度のことながら、インパクトのあるデザインですよね。
「いつもと同じように、出雲重機さんによるデザインです。今回は合体ロボのイメージで作ってほしいとお願いして出来上がったのが、これ。これまでのDotec-Audio製品と比較して横幅が大きくなったので、DAWのUIともよりフィットする形になりました」と語るのはVSTやAUへの実装を手掛ける飯島進仁さん。上のグルグルと回るアニメーションもなかなか強烈です。
とはいえ、ディストーション、フィルター、ディレイなんて、いたって普通のエフェクトであり、「手元に複数のものがあるよ!」という方も多いはず。今さら、新しいエフェクトを購入する必要性なんてあるんでしょうか?まずは、理屈で説明するよりも音で説明するのが一番。以下のディストーションのデモをご覧ください。
どうですか?普通のディストーションと比較しても、太いサウンドで低域がしっかりとした安定感のある迫力だと思いませんか?
ディストーションを上げていくと、かなりボトムの太いサウンドが出る
「一般的なストンプのディストーションだけでは、なかなかボトムの太いサウンドが作れません。こうした音にするには事前にEQで調整したり、そのあとにアンプシミュレータを通してBASSやTREBLEなどのTONEコントロールを用いるなど、経験と工夫が必要となってきます。そこで、そうした面倒なことをしなくても、レバーを上げていくだけで、いい具合に多くの人が欲しがるサウンドにするようにしたのです」(重虎さん)
アンプシミュレータ機能をこのディストーションの中に組み込んだのかな…と思ったら、そういうわけではないようです。「ギターなどのサウンドの場合、この後にアンプシミュレータを置くことで、ロックなサウンドを作り出すことができます。一方、パーカッションやドラムなどを歪ませて、インダストリアルなサウンドを作る場合は、このまま使ってください。どちらにしてもドッシリとした歪みが得られるはずです。ちなみに表記上はDISTORTIONとしていますが、これはディストーション&ファズという構成にしてあるんです」と重虎さん。
歪み系エフェクトの仕組みについて、いろいろとレクチャーしてくれる重虎さん
そもそも歪み系のエフェクトって、ディストーション、ファズ、オーバードライブなどいろいろありますが、これらの違いが厳密に定義されているわけではありません。「歪み系エフェクトの回路は、単純にダイオードで切るもの、ゲインを上げて過大入力にして飽和させて歪ませるもの、ある閾値(スレッショルド)を超えると反転させて波形そのものを歪ませるもの、さらにはそれらを混在させたもの、などいろいろあります。ただ、サウンドの違いとしてオーバードライブはナチュラルに、ディストーションは高域にも鋭くエッジのあるサウンド、ファズは中低域にキャラクターがある音、というのが一般的なとらえ方。ここではそういう意味でのディストーション&ファズとなっているのです」と重虎さんは解説してくれました。ディストーション一つとってもなかなか奥が深いですよね。
さて、真ん中の青い部分がフィルターです。これについても、まずは以下のビデオをご覧ください。
普通、フィルターというとカットオフとレゾナンスがあり、その2つのパラメータを動かして使うわけですが、このDeeFXのフィルターは、やはりDotec-Audio製品だけあって、レバー1つだけ。でも、すごいいい感じにフィルターが効いているのが分かりますよね。そう、半分より上がハイパスフィルター、下がローパスフィルターとなっており、まったくの初心者でも簡単に効果的な操作ができるようにしています。「フィルターを使いこなしている方ならご存じのとおり、カットオフを上げていくと、ここら辺でレゾナンスを下げないとマズイ……というポイントがありますよね。そうしたところを自動でうまく調整しているんです。DJ機器のフィルターなどもいろいろと研究しながら、ここに行きつきました」と重虎さん。
真ん中の青い部分がフィルター。ボタンを押すとディレイとリンクする
これなら、まったく初めての人でも、簡単にいい感じの音にできるし、普段フィルターを使いこなしている人であっても、かなり魅力的に感じるサウンドになります。しかも、このフィルターのは上下にそれぞれDELAY LINKなるボタンが搭載されているのが特徴で、これがほかにはない大きな威力を発揮してくれるんです。
「その名の通り、右にあるディレイと連動させるためのボタンです。実際、フィルターを使う場合、演出上、盛り上げの部分でフィルタリングしながら、ディレイで音を飛ばしたりします。でもDAWでリアルタイム操作している場合、普通マウスでの操作となるので、複数パラメータを動かすのは大変だし、ディレイの使い方にもかなりコツがいります。そこで、このDeeFXでは、レバーを動かすだけで、ディレイとうまく組み合わせてくれるようにしているのです」(重虎さん)。
合体ロボのデザインだから、比較的ゴッツイ単純なシステムように思いがちですが、内部的にはものすごく繊細に数多くのパラメータをコントロールしながら動いているんですね。ちなみに、このDELAY LINKボタンがオンになっている場合、右のディレイのパラメータは無効になります。
そして一番右の緑のパートがディレイです。このディレイについても、以下のデモビデオをご覧ください。
ディレイって一般的には1/〇といった表記だったり、msecといった時間表記だったりしますが、このDeeFXのディレイは音符表記になっているのがユニークなところ。上半分がLチャンネル、下半分がRチャンネルになっており、別々に設定できるほか、リンクボタンをオンにすれば、連動する形になっています。また1/2にすれば半分、x2にすれば倍になるので、x2で4分音符を選べば2分音符になるわけですね。さらにREVをオンにすると、ディレイサウンドがリバース(逆再生)される形になります。
一番右の緑の部分がディレイ。下に音符がボタンでディレイタイムを決めることができる
このディレイだけのためにDeeFXを入手しても十分納得のいくものだと思いましたが、逆にいうと、なんでDeeFXとして3つまとめたのかな……というのが素朴な疑問。DeeDistotion、DeeFilter、DeeDelayのように3つのエフェクトとして販売してもよかったのでは、と。
「私も最初は3つバラバラにかんがえていました。ただ、これら3つのエフェクトは組み合わせて使うことが多く、とくにDELAY LINKボタンのようにフィルターとディレイを連携させる場合、別々のエフェクトだと、操作が難しくなってしまいます。やはり、これら3つのエフェクトは基本中の基本。だからこそ、合体ロボのイメージで組み合わせたんです」と重虎さんは説明してくれました。実際、その3つの組み合わせが有効に機能しているのが以下のビデオからも分かると思います。
ちなみに、DeeFXは、ほかのDeeシリーズとの組み合わせの相性も抜群のようです。組み合わせる場合は、基本的にあDeeFXの前にDeeFatやDeeEQ、DeeTrimなどを置くようにしてください。ただし、DeeMaxだけは最終段に置く形になりますね。
ここで気になるのがDeeFXの価格ですが、これはこれまでのDotec-Audioの多くの製品と同じく、海外での販売も視野に入れたドル設定で、ペイパル=クレジットカード払いなら$49となっています。一方、クレジットカードを利用しない人のために郵便振替も行っており、こちらは日本円で5,000円とのこと。
「すでにDeeMaxなどDotec-Audio製品をご購入された方であれば、シリアルキー割引というのを行っており、$15引きの$34となります。またDotec-AudioのTwtterやFacebookなどをチェックいただければ、初めてユーザー様用にクーポンを発行しており、$10引きでご購入いただけます。郵便振替の方もクーポン割引や複数本同時購入での割引などを用意していますので、ぜひご活用ください」と飯島さん。
また現在、Dotec-Audio製品はクリプトン・フューチャー・メディアが展開するサウンド配信サイト、SonicWireでも販売しており、こちらでも現在セール価格となっていて、微妙に値段も違っているので、ぜひチェックしてみてください。
デザインは出雲重機さんによるもの。上部のアニメーションもグッとくる
さらに、今回のDeeFX発売記念として、4月30日に開催される音系・メディアミックス同人即売会 [M3]で、重虎さん、飯島さんのお二人がブースに立って特価販売が行われるとのこと。
「会場にご来場いただいた方限定となりますが、DeeFXは3,000円で販売する予定です。ほかのDotec-Audio製品も割引販売を行いますので、よかったら、ぜひ足を運んでください」(飯島さん)とのことでした。M3に行く予定のある方は、ここで入手するのがお得のようですが、まずは体験版を試してみてはいかがでしょうか?
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