以前「同人もCDからカード&ダウンロードの時代へ。クリプトンのSONOCAが秀逸」という記事でも紹介した、クリプトン・フューチャー・メディアの音楽ダウンロードカードのSONOCA。自分のオリジナル楽曲をCDに焼くのではなく、音源をサーバーにアップロードしておき、そのダウンロード情報がQRコードで印刷されたカードを販売できるとあって、利用するミュージシャンの方がどんどん増えているようです。
オープン記念プライスとはなっているものの、100枚9,800円という手ごろな価格でありながら、サーバー費用からカードの印刷代まですべて込み込みであったのが人気の理由。そのSONOCAが、新たにハイレゾオーディオというオプションが追加され、24bit/96kHzでも、24bit/192kHzでも、FLACの形であれば簡単に利用できるようになったのです。実際、どんなサービスになったのかを紹介してみましょう。
クリプトン・フューチャー・メディアのSONOCAがハイレゾ対応に
メジャーレーベルから、インディーズ、同人に至るまで、最近の音楽配布メディアは、ずいぶん多岐に渡る状況になってきています。アナログレコード、アナログカセットテープでの販売が話題になる一方、24bit/96kHzや24bit/192kHz、さらには384kHzやDSDに至るまで、いろいろなフォーマットが使われていますからね。
もちろん、いまもCDが主流であることは確かですが、最近CDを扱うのって面倒になってきているんですよね。実際、私が使っているPCも光学ドライブはなくなってしまったので、CDを再生したりリッピングするには、わざわざ外付けのドライブをUSB接続しなくちゃいけない状況。しかも、それをiPhoneに転送となると、iTunesを経由させて同期させて……と考えるだけでも嫌になっちゃいますからね。
SONOCAはクレジットカードサイズのもので、裏面に書かれたコードを利用することでセキュアに音楽をダウンロードできる
そこに登場したSONOCAは、ネット環境さえあれば、PCでもスマホでも簡単にダウンロードできるという点で、すごく扱いやすいんですよね。もちろん、カードに記載されたコードで音楽をダウンロードできるというものは、SONOCAに限らず、いくつかのものがあるようですが、レーベルに所属していない、アマチュアのミュージシャン、DTMユーザーであっても、気軽に利用できるという意味で、SONOCAの存在意義は非常に大きいわけです。
SONOCAの裏面。ここにシリアルコードが記載されているのだが、今回Hi-Res AUDIOのロゴが入っているのが注目のポイント
そのSONOCA、以前、クリプトン・フューチャー・メディアに話を聞いたときは、「来年以降にハイレゾ対応を検討したい」ということを言っていましたが、どうもユーザーからの要望が思っていた以上に多かったようで、予定を大幅に早めて、11月28日より、ハイレゾオーディオというオプションが追加され、ハイレゾでの音楽販売が誰でも簡単にできるようになったのです。
まずはSONOCAのサイトで「新規クリエイター登録」をしておく必要がある
では、具体的にハイレゾオプションを選択すると、どんなことができるのか、実際の手順を追ってみていきましょう。SONOCAで自分のオリジナルカードを作るためには、事前に「新規クリエイター登録」というものが必要になります。ここではメールアドレスを入力し、パスワードを設定するだけで簡単にできるので、これを行っておきます。
ダウンロードするだけなら、TwitterやFacebookアカウントからより簡単にサインインできる
ちなみに、カードを購入してダウンロードするリスナーもSONOCAへのリスナー登録が必要となりますが、こちらはメールアドレスで登録する方法以外にもTwitterやFacebokのアカウントでサインインする方法も用意されていますよ。
そこから先の手順も、基本的にはこれまでのSONOCAを作成する場合とほとんど変わらないのですが、最初の時点で「収録曲」のところで「ハイレゾオプションを利用する」にチェックを入れておくのがポイントです。この場合、通常料金+8000円となるので、100枚作るなら17,800円。1000枚作るなら通常で81,800円なので、89,800円になるという計算です。
チェックを入れない場合は従来通り、最大700MBまでの16bit/44.1kHzのWAVファイルをアップロードする形になっているのに対し、ハイレゾオプションにチェックを入れた場合は、FLAC形式でアップロードする形になります。
つまり、DAWなどで24bit/96kHzや24bit/192kHzのデータをWAVファイルの形でミックスダウンしても、そのままでアップロードすることはできないため、FLACに変換しておかなくてはならないんです。もっとも、今はCubaseでもStudio OneでもSONARでも、たいていのDAWはFLACでの書き出し機能を持っているので、これを利用するのが手っ取り早いですね。
Studio One 3でのエクスポートでFLACファイルを選択すればいい
このFLACでは圧縮率によってレベル設定ができるようになっていますが、これはいくつに設定しても大丈夫です(エンコードにかかる時間とファイル容量から考えてレベル5あたりにしておくのが無難)。ただし、SONOCAのハイレゾオプションを使ってアップロードするには、1つ条件があるんです。
ハイレゾオプションを選んだ場合、SONOCAのカードの裏面にHi-Res AUDIOのロゴが掲載される
それは、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が定義するところのハイレゾオーディオであること。詳細は「ハイレゾオーディオの呼称について(周知)」(http://home.jeita.or.jp/page_file/20140328095728_rhsiN0Pz8x.pdf)というPDFにありますが、要するに「CDスペックを超えるデジタルオーディオ」であることが求められているのです。その判断基準によると、例としては
48kHz/24bit →(CD スペック同等/CD スペック超)→ ハイレゾオーディオ
96kHz/16bit →(CD スペック超/CD スペック同等)→ ハイレゾオーディオ
96kHz/24bit →(CD スペック超/CD スペック超) → ハイレゾオーディオ
48kHz/16bit →(CD スペック同等/CD スペック同等)→ 非該当
96kHz/12bit →(CD スペック超/CD スペック未満)→ 非該当
32kHz/24bit →(CD スペック未満/CD スペック超)→ 非該当
となっているので、注意してくださいね。仮に44.1kHz/16bitのFLACをアップロードすると、非適合データとして受け付けられないようになっているんですよ。
でも、どうしてそんな制限があるのでしょうか?実は、ハイレゾオプションをオンにしてSONOCAの注文をすると、SONOCAのカードの裏に、あのHi-Res AUDIOというロゴが表示されるようになっているんですよ。そのためには、明らかにハイレゾである必要があるんですね。おそらく個人の作品、個人の製品にこのロゴが入れられるのは、今のところSONOCAだけだと思いますよ!
SONOCAサイトにもハイレゾオプションに関する詳しい記載がある
SONOCAのカードを購入する側の人が、ハイレゾ楽曲を聴ける環境を持っているかどうかは、分からないし、本当にニーズがあるのかをすぐに判断するのは難しいところでもありますよね。そこはうまくできていて、ハイレゾのSONOCAであっても、これまで通りMP3-320kbpsでのダウンロードも可能になっているんです。
正確にいうと同じコードでFLACで1回、MP3で1回ダウンロードできるようになっているので、どちらのデータが必要な人でも大丈夫なんです。ちなみに、iPhoneやAndroidなどのスマホアプリでダウンロードする場合はMP3となります。スマホ用ハイレゾプレイヤーを用いてFLACを聴きたいという人の場合、予めPCでFLACをダウンロードしておき、それをiPhoneへ転送するという手順になります。
この辺が多少煩雑なところではありますが、現在の通信環境を考えれば無難なところではないでしょうか?
プラスティック素材のSONOCA(上)と紙素材(下)のSONOCA。
なお、SONOCAでは、このハイレゾオプションが追加されたのと同時に、カード材質として従来からの紙(マットポスト)に加えて、プラスティック(PET)も選択可能になりました。こちらは紙より単価が高く100枚なら24,800円、300枚なら58,800円と値が張りますが、クレジットカードなどと同等の素材だから、紙のカードよりも高級感は出てきますよね。
自分の大切な作品を収めるカードですから、ジャケットをどうするかをしっかりデザインしていくと同時に、ハイレゾオプションや、カード素材を選択できるというのは嬉しいところですよね。
【関連情報】
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