これまでに膨大なシンセアプリ、楽器アプリが登場してきたiOSの世界。PCのプラグイン音源と違い、アプリを起動すればすぐに音が出るという意味でも簡単で使いやすいのですが、「あのヘッドホン端子から音を出すのはちょっと……」「かといって大きなオーディオインターフェイスを持ち歩くのも……」なんて思っていた方も少なくないと思います。
また「液晶パッドで演奏するなんて論外だし、Lightning端子にUSB-MIDIキーボードを接続したらオーディオインターフェイスも接続できないんだよね」なんて声もよく聞きます。そんなさまざまな問題を一気に解決しちゃおうという、ある意味、決定版的な機材が7月23日、KORGから発売されます。手のひらに収まる小さな機材、plugKEYを一足早く入手したので、紹介してみましょう。
KORGが7月21日より発売するplugKEYを使ってみた!
今回発売されるKORGのplugKEYはiPhoneやiPadに接続可能なMIDIインターフェイスとオーディオインターフェイスをまとめて一つの小さな機材。その意味では、何かまったく新しいものが生まれたというわけではなく、これまでも同様のものはいろいろと存在していました。でも、これまであったどの機材も、「帯に短し、襷に長し」という思いでいた人も少なくないのではないでしょうか?
plugKEYはiPadやiPhoneとLightningを用いて接続するオーディオ&MIDI機器
今回発売されるplugKEYは、「iPhone、iPad、さらにはiPod touchを楽器にする」ことを目的に特化してコンパクトな機材なんです。一般ユーザーの方が便利に使えるというのはもちろんのことながら、プロミュージシャンがステージでも不安なく楽器として使え、レコーディング現場でも、ホンモノの楽器として使えることを実現した、「まさに、これが欲しかった!」と思える仕様になっているんですよね。
といっても、とってもシンプルな機材なので、難しいものではありません。またホワイトモデルとブラックモデルの2種類がありますが、ここではホワイトモデルのほうを使ってみたので、1つずつ確認していきましょう。まずこの手のひらに乗る小さなplugKEYは、iPadやiPhone、iPod touchとLightning端子で接続します。もちろん、Appleの認証をとった機材ですから、「iOSをアップデートしたら使えなくなった…」なんて心配はないですね。
iPadと接続すると、とっても小さい機材であることがよくわかる
これを接続すると、その瞬間にオーディオ機能はiPad/iPhoneからplugKEYへと移ります。つまり、iPadやiPhoneのヘッドホン端子から音が出なくなり、plugKEYから出る形になるんです。これは楽器アプリを使った場合に限らず、iTunesのライブラリ、ゲームをした際の音もすべてです。
オーディオのメイン出力はLとRに分かれた標準ジャックから出てくる
そして、その音はplugKEYのメイン出力およびヘッドホン端子の双方から出る形になるんです。そう、最大のポイントともいえるのは、メイン出力がLとRに分離した2つの標準ジャックになっていることであり、PAのミキサーに接続するにしても、レコーディング機器に接続するにしても、安心して行えるというわけですね。
ヘッドホンの出力は隣にあるツマミでレベル調整可能
一方、反対側にはステレオミニのヘッドホンジャックがあるので、ここでも同時にモニターすることが可能で、その音量は左にあるボリュームツマミで調整可能です。このボリュームツマミはヘッドホン・メイン出力ともに調整できるのが大きなポイント。シンセ同様、手元で音量調節できるのは嬉しいところであり、PA担当者がいないステージでも演奏しながらバランスが取れるのは重要なところです。
実際にiPhoneのヘッドホン端子から出る音と、plugKEYから出る音を比較してみると、音質もよくなっているように感じました。最大ボリュームにした音量はiPhoneのヘッドホン出力そのままよりも若干音量が上がるイメージ。極端に違うわけではありませんが、音量が下がってしまうわけではないのも、安心材料の一つだと思います。
楽器のMIDI OUTとplugKEYのMIDI INを1本のMIDIケーブルで接続すればOK
そして、もう一つのポイントとなるのは、plugKEYにMIDI IN端子が装備されているという点です。最近、MIDIケーブルを使うケースが減ったという人は多いとは思いますが、やっぱり本気で弾くなら自分の愛用のキーボードで…という人は多いと思います。そして、しっかりしたキーボードなら、MIDI OUT端子は搭載されているはずですから、シンセサイザでも電子ピアノでも、お気に入りのキーボードに接続すればいいのです。
またmicroKEY Airやnano Studio Seriesなど、BLE-MIDI(MIDI over Bluetooth LE)デバイスがあれば、このMIDI-IN端子ではなくiOS側と直接接続することもできるので、いろいろなシーンで利用することができるわけですね。
側面に用意されているmicroUSB端子をACアダプタと接続する
さらに、このplugKEYが優秀なのは、ここにmicroUSB端子が用意さている、という点。そう、これはUSB-MIDIキーボードを接続するというわけではなく、これをACアダプタと接続することで、iPadやiPhoneを充電することが可能になるのです。iPadやiPhoneをライブなどで使用する際、もっとも心配になるのがバッテリー残量です。
plugKEYを通じて、iPadやiPhoneを充電することが可能になる
比較的バッテリー寿命が長いiPadやiPhoneですが、本番中に電源が切れたら最悪な事態に陥ります。plugKEY自体が省電力設計になっているとはいえ、やはり周辺機器として電力を消費するので、iPadやiPhone単体で使っているより消費電力は増えますから、心配はなおのこと。でも、この端子を通じて充電できるのなら、その心配は一切なくなるわけで、とっても安心して使うことができますよね。
plugKEYはとってもシンプルで小さな機材ではありますが、このように実践を考慮して、考え抜かれた設計だな、と感心するばかりです。
シンプルにMIDIキーボードでの演奏をヘッドホンで聴く、という使い方
実際の利用シーンについて改めて考えてみると、まずはシンプルにヘッドホンを接続してiOS音源を思う存分弾くというのが利用法の1つ目。
キーボードでの演奏をモニタースピーカーで聴いたり、それをオーディオIFに接続して録音する、という使い方
また、モニタースピーカーで音を出すことで、より楽器としての威力を発揮できるようになるし、その出力をPCのオーディオインターフェイスなどに突っ込んで、レコーディングに利用していくというのもありですよね。
そして、PAのミキサーに接続してステージで利用する、という使い方
そして本領を発揮するのがステージでの活用。plugKEYからの出力をPAのコンソールに送ってやれば、ほかの楽器と同じようにiPadやiPhoneを音源として利用することができるわけです。こうしたステージでも必要に応じてヘッドホンでモニターすることで、PAからモニターバックしてもらわなくても聴くことができるため、モニター環境が貧弱な小規模なステージでは、より大きな力を発揮してくれるのではないでしょうか?
なお、plugKEYはiOS用にある、さまざまな音源アプリを利用できますが、KORGから無料のアプリ
・KORG Module Le
・KORG Gadget Le
という2種類の無料アプリもリリースされています。
ModuleやGadgetについては、これまでも何度か記事で紹介しているので、ここで詳細は割愛しますが、いずれも非常に強力な音源です。この無料版のLeは、有料の製品版と比較して利用可能な音源・音色の数が限られてます。たとえばModule Leならピアノ1音色のみ、Gadget Leなら3音色です。
KORG Module LeにplugKEYが接続されると、接続されたことを自動検知する
ところが、plugKEYを接続すると、制限されている機能がアンロックとなり、利用できる音色数が増え、機能も強化されるのもうれしいところです。もっとも、製品版のModuleやGadgetになるというわけではないのですが、それでもかなり使えるアプリに進化するので、使わない手はないですね。
実際、Moduleを使ったことのある方ならご存じのとおり、膨大なサンプリングデータを使った、超高品位なピアノ音源。音色数が限られるとはいえ、無料で入手できるModule LeとplugKEYの組み合わせなら、それを手軽にどこへでも持ち歩ける意義は大きいと思いますよ。
KORG Gadget LeもplugKEYとの初回接続時に、2種類のガジェットが追加される
以上、KORGが23日に発売する小さな機材、plugKEYについて見てみましたが、いかがだったでしょうか?iPad/iPhoneを持っている人なら、1つ持っていて損のない機材だと思いますよ!
【価格チェック】
◎宮地楽器 ⇒ plugKEY(白)
◎Amazon ⇒ plugKEY(白)
◎サウンドハウス ⇒ plugKEY(白)
◎宮地楽器 ⇒ plugKEY(黒)
◎Amazon ⇒ plugKEY(黒)
◎サウンドハウス ⇒ plugKEY(黒)
【関連情報】
KORG plugKEY製品情報