実売15,000円程度で、192kHz/24bit対応で2つの高性能マイクプリ搭載で、かつCubase AI8という高機能DAWがについてくるというコストパフォーマンスの高さから大ヒット製品になっているSteinbergのオーディオインターフェイス、UR22。あまりにもの人気で、品切れになるケースがしばしばでしたが、この秋に入ってからは、ほとんど入手不能という状況になっていました。
どうしてなんだろう?と不思議に思っていたところ、UR22の後継モデルとなるUR22mkIIがYAMAHA&Steinbergから発表されました。この新型に切り替えるために店頭から在庫がなくなっていたんでしょうね。見た目はこれまでのUR22とそっくりなUR22mkIIですが、ここには大きな機能の違いも隠されています。さっそく実機を入手して試してみたので、今回は新旧で何が変わったのかに焦点を当てて紹介してみたいと思います。
機能が刷新されたSteinbergの大ヒット・オーディオインターフェイス、UR22mkII
旧型のUR22と新型UR22mIIを並べてフロントから見ると、おそらくロゴ以外に何も違いがないソックリな機種であり、192kHz/24bit対応の2IN/2OUTで、D-PRE対応のマイクプリを2つ搭載しているという点では何も変わっていません。
※追記(2015.11.15)
アナログ入力段のダイナミック・レンジが95dBから101dBに、周波数特性も20Hz-20kHzが20Hz-22kHzと高域特性が向上しています。
前から見えると新型のUR22mkII(上)も旧型のUR22(下)もロゴ以外、大きさもデザインもまったく同じ
ところがリアパネルを見ると、ちょっと違いがあるのに気づきますよね。microUSBの端子が追加されるとともに、POWER SOURCEというボタンが追加され、+48のファンタム電源スイッチの位置が変わっています。
リアをみると、ちょっと違いがある。上がUR22mkII、下がUR22
勘のいい方なら、この写真を見ただけでお気づきかと思いますが、今回のUR22mkIIでは、USBバスからの電源供給での動作だけでなく、microUSB端子からの電源供給を可能にすることで、iPadとの接続を可能にしているのです。
microUSB端子にACアダプタを接続し、POWER SOURCEをmicroUSB側に設定することで、iOSデバイスでも使えるようになる
またそのバックではUR22mkIIのシステムがCC(クラス・コンプライアント)モード対応になったため、Lightning-USBカメラアダプタ経由でiPadと接続して使えるようなったわけです。また実際にはiPadだけでなくiPhoneでも使うことが可能で、私が試してみたところGaragebandでもFL STUDIO Mobileでも問題なく使うことができましたよ。
実はSteinbergのオーディオインターフェイス、URシリーズ6機種のな中で、唯一UR22だけがCCモードに対応しておらず、iPad/iPhoneへの接続ができなかったのですが、今回UR22mkIIとなったことで、すべて揃ったわけですね。
ここで改めてその6機種のスペックを比較してみたのが、以下の表です。
UR12 | UR22mkII | UR242 | UR44 | UR28M | UR824 | |
入出力合計 | 2IN/2OUT | 2IN/2OUT | 4IN/2OUT | 6IN/4OUT | 6IN/8OUT | 24IN/24OUT |
アナログ入力 | 1XR,1TS | 2Combo | 2Combo, 2TRS |
4Combo, 2TRS |
2Combo, 2TRS |
8Combo |
マイク入力 | 1 | 2 | 2 | 4 | 4 | 8 |
Hi-Z入力 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
アナログ出力 | 2RCA | 2 | 2 | 4 | 6 | 8 |
最高bit/kHz | 24/192 | 24/96 | 24/192 | |||
USBバスパワー | ○ | ○ | × | × | × | × |
CCモード | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ループバック機能 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
DSP機能 | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
実売価格(税抜) | 10,000円前後 | 15,000円前後 | 20,000円前後 | 30,000円前後 | 35,000円前後 | 80,000円前後 |
これを見てもわかる通り、24IN/24OUTという大規模な入出力を持つUR824からエントリーレベルのUR12にまで一通りのバリエーションが揃い、いずれもCCモードに対応したわけですね。
ccモードに対応したので、Lightning-USBカメラアダプタ経由でiOSデバイスとの接続が可能になった
また全機種CC対応記念ということなのでしょうか?11月2日よりApp StoreにおいてCubasis LEというDAWアプリが無償で公開されました。Cubasisについては「iPad版のCubase、“Cubasis”は超強力DAWだった!」「いつの間にか超高機能DAWに進化していたiPad用Cubasis」といった記事などでも紹介してきましたが、今回登場したCubasis LEはその機能限定版。
無料ダウンロードが可能になったiPad用のDAW、Cubasis LE
6,000円のアプリであるCubasisとはトラック数などいくつか違いがありますが、最大の違いはCubasis LE単体をインストールしただけでは、単なるデモ版であって、あらかじめ用意されているデモ曲の再生ができるだけで、レコーディングも編集もできないということ。「そんなデモ版いらないよ」と思った方、実は違うんです。ここには特別な仕掛けが施されているんです。
AppleのLightning-USBカメラアダプタ経由でiPadをURシリーズと接続すると、Cubasis LEの制限が解除される
そう、単体で使った場合は、マルチトラックプレイヤーに過ぎないCubasis LEではありますが、Lightning-USBカメラアダプタ経由で、これらURシリーズ6機種のいずれかを接続すると、デモモードが解除され、レコーディングや編集など、すべての機能が使えるようになるのです。もちろん、D-PREを経由する高品位なサウンドでレコーディングできますよ。
もっともCubasisになるのではなく、Cubase LEであるため、機能的な違いはいくつああります。たとえば最大トラック数がCubasisでは無制限なのに対し、LEはオーディオ4トラックとMIDI4トラック。また最大同時入力が24オーディオトラックなのに対し、LEは2トラック。またCubasisは24bit/96kHzまで対応しているのに対し、LEは16bit/44.1kHz……といった感じです。とはいえ、とりあえず使うDAWとしては十分機能してくれますから、URシリーズのユーザーにとっては、Steinbergからの大きなプレゼントといえそうですよね。
3,600円のアプリ内課金でCubasisへのアップグレードも可能に
なお、デモモードが解除された状態であれば、3,600円のアプリ内課金によるCubasisへのアップグレード機能というものも用意されているのもポイント。つまり単体だと6,000円するCubasisがURユーザーなら3,600円で入手できるというわけなんです。「Cubasisを買おうかな…」と思っていた方は、ここは要チェックポイントですよ!
ループバックのチェックボックスをオンにすれば、ループバックが可能になる
このCCモード対応と同時に、もうひとつUR22から追加された機能が、ループバック機能です。ループバック機能とは、UR22mkIIから出力した音をそのまま入力してしまう、という機能です。何のために役立つのかというと、たとえばニコニコ生放送やUSTREAMといったネット配信の際、音声をマイクから入力するとともに、iTunesで鳴らす音楽やゲームを鳴らす音などもループバックによってミックスして放送することができるのです。
当たり前のように思える機能なのですが、ループバックという仕組みがないと再生音をそのまま放送したり、録音するということはできないんですよね。使い方はいたって簡単で、単純にドライバ画面のチェックボックスをオンにするだけです。
このループバック機能も、6機種あるURシリーズの中でUR22だけが対応していなかったのですが、今回のUR22mkIIによって、これも使えるようになりました。
URシリーズすべてにCubase AI 8のライセンスが付属しており、ネットからダウンロード可能になっている
ところで、URシリーズのユーザーにとってDAWが無料入手できるのはiPadだけに限りません。冒頭でも触れたとおり、UR22mkIIをはじめとするURシリーズすべてにSteinbergのCubase AI 8がバンドルされているというのも、ほかのオーディオインターフェイスにはない重要なポイントです。そうCubase AI 8はCubase Pro 8、Cubase Artist 8、Cubase Elements 8と同じユーザーインターフェイスを持つDAWであり、オーディオレコーディングからMIDIの打ち込み、編集、さらにはミックスまで一通りの機能を備えた高機能なソフトです。
エントリーユーザーはもちろん、ちょっとしたレコーディングであれば、Cubase AI 8で十分こなせてしまう実力を持ってますからね。実際、私が隔週で行っているニコニコ生放送、DTMステーションPlus!でも、たいていCubase AI 8を使ってレコーディングやミックスなど行っていますから、間違いないですよ。
ついにWindows 10へ正式対応となったCubase 8シリーズ。Cubase AI 8ももちろん使える
で、そのCubase AI 8を含む、Cubase 8シリーズについて、先日また新たな動きがありました。以前、「DAWを片っ端から入れてWinodws 10のDTM環境をチェックしてみたら…」という記事でも書いた通り、Windows 10環境でCubase 8シリーズがうまく動作しないという不具合がありました。実は、これWindows側のバグともいえるものが原因だったのですが、10月22日に出たWindows 10のアップデータにより、問題は完全に回避されたようです。
実際、Windows 10環境でCubase AI 8をインストールするとともに、UR22mkIIを動かしてみましたが、オーディオもMIDIもまったく問題なく使うことができました。これでいよいよWindows 10へ本格的に移行しようかな、と私自身も考えているところです。
以上、Steinbergの新オーディオインターフェイス、UR22mkIIについてみてきましたが、いかがだったでしょうか?15,000円という値段でここまでのことができるので、これからDTMをやってみたいという人はもちろん、すでにオーディオインターフェイスを持っている人でも追加で持っていて損のない製品だと思いますが、いかがですか?
【価格チェック】
◎Rock oN ⇒ UR22mkII
◎宮地楽器 ⇒ UR22mkII
◎Amazon ⇒ UR22mkII
◎サウンドハウス ⇒ UR22mkII
【製品情報】
Steinberg UR22mkII製品情報