昨年末のVOCALOID4登場の時から、ずっと期待の声が高かったインターネット社のMegpoid(メグッポイド)の新バージョンが、ついに発表され、11月5日から発売されることとなりました。その新バージョンは、Native、NativeFat、Adult、MellowAdult……と計10種類の歌声ライブラリとなり、さまざまな歌い方のMegpoidを利用できるようになっています。
もちろんVOCALOID4なので、がなり声で歌わせ方ができるグロウルが各ライブラリで利用できるようになっているほか、クロスシンセシス機能を利用することで、NativeとPowerの間の歌声を出したり、AdultからSweetへモーフィングさせるなど、従来ではできなかった、さまざまなことが可能になっているのが特徴です。
合計10種類の歌声ライブラリが揃ったVOCALOID4版のMegpoidが登場
改めてMegpoidについて紹介すると、これはインターネット社が開発、発売するボーカル音源。声優であり歌手である中島愛(なかじまめぐみ)さんの声をレコーディングして作られたVOCALOID用の歌声ライブラリのことです。MegpoidのイメージキャラクタであるGUMI(中島めぐみさんの子供ののころのあだ名から名づけられたそうです)は、漫画家である、ゆうきまさみさんがデザインしたもので、人気キャラクタとして、幅広く使われていることは、みなさんもご存じだと思います。
GUMIの腕に「4」の数字が入ったMegpoid V4 Nativeのインストール画面
そのMegpoidが最初に誕生したのはVOCALOID2時代の2009年6月。それまでSinger Song Writerなどの音楽制作ソフトを開発してきたインターネット社が、ついにVOCALOIDを始めたのか!と驚いた記憶がありますが、その後、2011年10月にはVOCALOID3版Megpoidを4製品リリース、さらにMegpoid Native、Megpoid ENGLISHを発売したのち、今年ついにVOCALOID4版へと進化してきたという歴史を持っています。
VOCALOID2 | VOCALOID 3 | VOCALOID 4 |
Magpoid | Megpoid Native | Megpoid V4 Native |
Megpoid V4 Native Fat | ||
Megpoid Adult | Magpoid V4 Adult | |
Megpoid V4 Mellow Adult | ||
Megpoid Power | Megpoid V4 Power | |
Megpoid V4 PowerFat | ||
Megpoid Sweet | Megpoid V4 Sweet | |
Megpoid V4 NaturalSweet | ||
Megpoid Whisper | Megpoid V4 Whisper | |
Megpoid V4 SoftWhisper | ||
Megpoid ENGLISH |
今回のVOCALOID4版のMegpoid V4は全部で10ライブラリとなっていますが、その進化の流れを表したのが、上の表です。ここからもわかるとおり、オリジナルのVOCALOID2のMegpoidの流れを汲むのがVOCALOID3のMegpoid Native。またVOCALOID4のMegpoid V4 Nativeとなっています。一方、VOCALOID3のときには、アダルトな歌声で魅了するAdult、パワフルでアタック感がある歌声のPower、キュートでかわいい歌声のSweet、そして優しくささやくようなウィスパーボイスのWhisperと4種類のバリエーションが生まれたのですが、VOCALOID4になると、それがさらに分化しているのです。
つまりNativeがNativeとNativeFat(太いFatボイス)、AdultがAdultとMellowAdult(アダルトなメロウボイス)、PowerがPowerとPowerFat(Power感は残しつつ、ダークでFatな声質)SweetがSweetとNaturalSweet(可愛さはそのままにMegpoid V4 Sweetに比べナチュラルな声質)、WhisperがWhisperとSoftWhisper(Whisperに比べ息の成分の少ないソフトな声質)となっているんですね。
このように10種類ものバリエーションになったについて、インターネット社の村上昇社長に伺ってみたところ「今回MegpoidをVOCALOID4対応にしようという企画の中、せっかくなら新しいライブラリを追加できないだろうか…と考えたのです。ただ、すでにVOCALOID3版で5種類もあるので、まったく違う声質を追加するとなると、収拾がつかなくなりそうなので、既存のタイプから少し違う声質追加してみよう、となったのです。若干太目の声とか、少し暗くした感じとか……。こうした声質をエフェクトで作るのは無理ですし、フォルマントをいじると、いかにも合成音的な声になってしまいますからね。とはいえ、これだけの種類となると、レコーディングも大変になるので心配したのですが、中島さんに打診をしたところ、快諾いただいたので、実現することができました」と話しています。
たとえばMegpoid V4 Nativeのインストーラを起動すると2本のライブラリが収録されているのが分かる
またユーザーにとって嬉しいのはVOCALOID3バージョンから分化した2つのライブラリは、製品としては1つにまとまっているため、1つ買えば2つのライブラリが手に入るとうい点。
クロスシンセシス機能を使うことで、2つのライブラリの間の声質で歌わせることが可能
ご存じの通り、VOCALOID4の大きな特徴としてクロスシンセシスという機能があり、たとえばNativeとNativeFatを持っていれば、その声質間をモーフィングさせたり、中間の声質で歌わせたりといったことが簡単にできます。つまりVOCALOID3時代に比べると、歌声のバリエーションの幅が非常に大きく広がっているんですよね。
もちろん10種類の歌声ライブラリそれぞれでグロウルを使うこともできる
さらに10種類あるすべてのライブラリがグロウルにも対応しているため、迫力ある歌わせ方を実現するなど、こちらでも表現力が広がっているわけです。
そもそもVOCALOID4ではVOCALOID3のライブラリを利用できるようになっており、クロスシンセシスを利用することも可能です。ではVOCALOID3版のMegpoid PowerとVOCALOID4版のMegpoid V4 Powerがあった場合、グロウルが使えるかどうかを除けば、まったく同じものである、と考えていいのでしょうか?この点について、村上社長に伺ってみると
「確かにVOCALOID4版のPowerでは、VOCALOID3用にレコーディングしたものを利用しているし、ここにエフェクトを掛けるといったこともしていないので、声質は従来のままです。ただ歌声ライブラリのデータベースの制作自体は、ほぼゼロから作り直しているんです。VOCALOID3版をお使いになられた方なら、よくご存じかと思いますが、母音からダ行(d)、バ行(b)、ラ行(4)へとつながる歌詞において、ノイズのようなものが発生する事象がありました。音声合成を行う際に『ボコッ』といった音が出るケースがあったのです。これは音程などによっても違いがあるし、オケを載せてしまえば気づかないレベルではあるものの、アカペラで歌わせると、ちょっと気になるケースもありました。そこで、その辺に細心の注意を払って新しく歌声ライブラリを作り直したので、声質が変わることなくクオリティーは格段に上がっていると思います」とのことで、まさに新バージョンとしてアップグレードしているわけですね。
インストールした状態では利用できるクロスシンセシスは同じパッケージ内の2種間のみとなっている
もちろん、クロスシンセシスは異なるパッケージのライブラリ間でも利用することが可能です。たとえばNativeからPowerへ変化させるといったことも可能となっていますが、これを実現する上で、一つユーザーが準備しなくてはならないことがあります。それがシンガーエディターでの設定です。
シンガーエディターを開いた上で、「追加」ボタンをクリックする
たとえばNativeのパッケージを購入した場合、あらかじめNativeからNativeFatへ、NativeFatからNativeへと変化させるシンガーが用意されており、これを選べるようになっています。ところが、NativeのパッケージとPowerのパッケージを両方入れた場合、これらをクロスシンセシスで行き交うための設定が用意されないため、自分で作らなくてはならないんですよね。
たとえばプライマリーをNative、セカンダリーをPowerというように設定すればいいだけ
といっても設定自体はいたって簡単。元となる歌声をプライマリシンガーとして、変化先の歌声をセカンダリーシンガーと設定した上で、わかりやすい名前を付ければいいだけ。初めての人でも3分もあれば、設定できると思います。
NativeからPowerへと、いまシンガーエディターで追加したクロスシンセシスが可能になった
でも、10種類あるライブラリ、どの組み合わせでも気持ちよくつながるのでしょうか?また、とくに効果的なつなぎ方はあるのでしょうか?この点についても村上社長に聞いてみました。
「クロスシンセシスの使い方はいくつかがあると思います。たとえばPowerとSweetの間のパラメータで一定化するといった使い方であれば、まったく新しい歌声ライブラリを作り出すことに匹敵します。これは、ぜひユーザーのみなさん自身で、いろいろなと探ってみていただければと思います。一方で、長音において、だんだん太い声に変化していく…といった使い方なら、SweetからNaturalSweetとかNativeからNativeFatなど、同系列で利用するのが使いやすいと思いますね」とのこと。
ただし、現在VOCALOID3版のMegpoidを持っている方が、VOCALOID4版のMegpoid V4と混在させてクロスシンセシスをしようとしても、それはVOCALOIDの仕組み上不可能だ、とのこと。ここはすべてをアップグレードするなどの投資が必要になりそうですね。
※私の勘違いで、他製品だとV3、V4混在が可能なものもあるようです。
※
10本の歌声ライブラリーすべてが収録されているMegpoid V4 Completeのパッケージ
そういう意味では、10本のライブラリすべてがセットになったCompleteというパッケージを入手してしまうのが簡単ですが、まずはNativeを購入した上で、好みに応じてPowerやAdultを追加していくというのもよさそうですね。ちなみに10本のライブラリすべてインストールしてみた結果、トータルで7.38GBの容量となりました。
Windowsに10本のライブラリをインストールした結果、7.38GBの容量だった
「今回のVOCALOID4版のMegpoid V4シリーズの歌声がどんなものなのか、ぜひ聴いてみてください。とくにグロウルの表現力の豊かさを確認していただけると嬉しいです。当社のMegpoid V4の製品紹介ページの下のほうに、10種類それぞれの歌声と、それぞれでグロウルを歌わせたサンプルを聴けるようにしています。また、現在、既存ユーザーの皆様向けの優待販売や、11月5日までの早期割引キャンペーンも実施していますので、ぜひご利用ください」(村上社長)とのことなので、まずは新しいMegpoidの歌声を確認して、お気に入りの歌声を見つけてみてはいかがですか?
Megpoid V4は歌声ライブラリのみのパッケージと、VOCALOID4 Editorとセットにしたスタータパックがそれぞれ6種類ある
【関連情報】
VOCALOID4 Megpoid V4製品情報
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