ソフト音源をハードウェア感覚で使える新コンセプト鍵盤、AKAI ADVANCE KEYBOARDS

5月12日のニコニコ生放送・DTMステーションPlus!でも「新製品発表会」を行ったところですが、AKAI PROFESSIONALから、新たなコンセプトのUSB-MIDIキーボード、ADVANCE KEYBOARDSが発表され、6月12日より発売されます。

このキーボード、バーチャル・インストゥルメント(ソフトウェア音源)とADVANCE KEYBOARDSを有機的に結び付けることで、まるでハードウェアのシンセサイザを扱う感覚でプレイできるというユニークな機材。市販のソフトシンセでも、オンラインソフトでも、このキーボードから自由に呼び出すことができ、さまざまなDAWとの連携も可能になっているのです。なかなかユニークで便利な機材なので、具体的に紹介してみたいと思います。


AKAI PROFESSIONALのADVANCE KEYBOARDS 61 



AKAIのADVANCE KEYBOARDSは見た目にもカッコイイ機材で、アフタータッチにも対応したしっかりとしたタッチのセミウェイト鍵盤を採用。さらに8つの大型コントロールノブ、カラーLEDのバックライトを搭載したMPCパッド、各種ボタン、4.3インチのフルカラー液晶などから構成されるキーボードです。

61鍵のADVANCE KEYBOARDS 61 

バリエーションとしては25鍵、49鍵、61鍵の3種類があり、25鍵モデルのみは、発売が少し先になるとのこと。価格的にはいずれもオープンですが、実売価格でいうとADVANCE 49が59,800円、ADVANCE 61が69,800円(いずれも税込)となっています。

このADVANCE KEYBOARDSは、一般のUSB-MIDIキーボードと同様の使い方もできるのですが、最大の特徴ともいえるのはハードウェア側と対をなすVIP(Virtual Instrument Player)というソフトが存在すること。これによってさまざまなソフト音源をハードウェア感覚で使うことを可能にしてくれるのです。


VSTインストゥルメントのホストアプリとなるVIP

VIPを一言でいってしまえば、VSTインストゥルメントの母艦。DAWなしで各種VSTiを読み込んで使用できるホストアプリなんですね。もちろんWindowsでもMacでも使えるハイブリッドアプリ。これを起動した状態で、ADVANCE KEYBOARDSとUSB接続すると、お互いが連動するようになるのです。


 ADVANCE KEYBOARDSの液晶上でもVIPの画面と同じ用に音色を選択していくことができる

まず音色の選択ですが、組み込んだすべてのソフト音源を一律に眺めることが可能で、楽器やスタイル、奏法といったものから選択することもできるし、もちろんプラグインを指定して選ぶことも可能です。

これをVIP上でマウスを使った操作ができるのは当たり前ですが、同じことがADVANCE KEYBOARDSの画面上でもできるため、PC側を操作する必要がないんですね。選択すると、液晶には、そのプラグインのアイコンが液晶に表示されると同時に、各種パラメータがノブに割り当てらえるので、音色エディットなどもADVANCE KEYBOARDS側のみで行うことが可能です。


MULTIボタンを押すと、マルチ音源モードに切り替わる

またMULTIというボタンを押すと、マルチ音源モードとなります。いわゆるパフォーマンスモードといえばいいでしょうかね。最大8つまでの音源をレイヤーしたり、スプリットする形で割り当てることが可能なのです。もちろん、どの音色をどう割り当てるかは自由自在に設定できますよ。


8つあるパッドで割り振られた音源をミュートしたり、そのうえのツマミで音量バランスを調整できる 

この際、ユニークなのは、8つあるパッドがカラフルに光ること。実はこの色がVIP側にある8つのチャンネルの色と同じになっており、プレイしながら、このパッドを押すことでミュートすることもできるし、上のツマミでレベル調整することもできます。また、そのチャンネルごとのバランスを確認できるミキサーを液晶画面に表示させることもできるようになっているのです。


アルペジエーターも搭載されており、ADVANCE KEYBOARDS本体のみで操作できる

さらにアルペジエーターなども搭載されており、さまざまなパターンが予め用意されています。こうした操作もすべてADVANCE KEYBOARDSのみで行うことができるので、ユーザーとしてはまさにハードウェアのシンセサイザ・キーボードを使っている感覚になるのです。


フリー音源なども割り当てて使うこともでき、液晶画面にはアイコンが表示される

このように、手持ちのソフトウェア音源を自由に組み込んで使えるVIPですが、この製品にはAIRのソフトウェア音源が7+αバンドルされているのも大きなポイントです。具体的には
●Hybrid 3
高解像度アナログ&ウェーブテーブル・シンセサイザ
●VACUUM PRO
ポリフォニック・アナログ・チューブ・シンセサイザ
●LOOM
加算合成のポリフォニック・シンセサイザ
●XPAND!2
4系統マルチティンバ音源モジュール
●Eighty Eight Ensemble
リッチでナチュラルな高品位ピアノ音源
●Velvet
ビンテージ感溢れるエレクトリックピアノ音源
●TransFuser
リアルタイム・グルーブ制作プラットフォーム

の7つで、そのほかにToolroomというHybrid 3用の追加プリセット・パックも用意されているんですね。


ADVANCE KEYBOARDSにバンドルされているアナログ&ウェーブテーブル・シンセサイザ、Hybrid 3

この音源名を見て、あれ?と思った方もいるのではないでしょうか?そう、これらはPro Toolsにバンドルされいる音源やその上位バージョン。以前Avid Technologyの中にあったAIRが現在、inMusicへと移籍した関係で、AKAI製品にバンドルされているんですね。これらの音源だけでもかなりの価値があると思いますよ。


VIPから音源を追加購入することもできる

またこのVIPの中からinMusicブランドおよび協賛デベロッパのソフト音源を直接購入できる機能も用意されているんです。これを考えるとVIPって、iTunesのソフト音源版みたいな感じですよね。フリー音源を含め手持ちのVSTインストゥルメントを管理して呼び出すことができ、追加購入できるわけですから……。

さて、ここで気になるのはDAWとの関係です。ADVANCE KEYBOARDSを各種DAWと連携させるにはどうしたらいいのでしょうか?


Cubase上からはVIP自体がプラグインの音源として見える 

実はこれがとっても単純なんです。そう、VIP自体がDAWのプラグインとして動くんです。しかもVSTだけでなくAU、AAXのプラグインとしても動作するため、現在あるほとんどすべてのDAWでVIPが使えるというわけなんです。

つまりPro ToolsやLogicなどVSTが使えないDAWであっても、VIPを介すことによって、VSTインストゥルメントのプラグインが使えてしまうという副次的な効果もあるわけです。

たとえばCubaseにVIPを組み込んで使ってみると、VIPをスタンドアロンで起動しているのとまったく同じようにADVANCE KEYBOARDSを操作し、音色を選んだり演奏することが可能です。この際ユニークなのはMULTIモードを利用することで、1つのインストゥルメントトラックで複数のソフト音源を同時に鳴らすことができるという点でしょう。Cubase単独でこれを実現するには、複数のインストゥルメントトラックを作り、ここに同じMIDIデータをバウンスして……という操作になりますが、VIPを使えば簡単にできてしまうわけです。

1つのCubaseプロジェクト上で複数のVIPを起動できる

さらに、DAWにプラグインとしてVIPを組み込んで使う場合、VIP自体を複数起動させることも可能となるので、かなり複雑なことまでできそうですよね。もちろん、どれだけ多くのソフト音源を同時に使えるかはマシンパワーによりけりではありますが、VIP自体はとても軽いソフトなので、結構なことはできそうですよ。


Ableton Liveからも同じようにVIPをプラグインとして立ち上げることができる 

以上、簡単にADVANCE KEYBOARDSとVIPについて紹介してみましたが、理解いただけたでしょうか?ADVANCE KEYBOARDS自体はPCからのUSB電源供給で動作し、オプションのACアダプタを使えば、スタンドアロンで動くMIDIマスターキーボードとして使うことも可能です。


ADVANCE KEYBOARDSのリアパネル。MIDI入出力にエクスプレッション、サステインペダル端子もある 

リアにはMIDI入出力のほかエクスプレッション・ペダルとサステイン・ペダル接続用の端子も用意されているので、61鍵モデルを購入してマスターキーボードとして使うのも悪くないと思います。逆に、すでに愛用のマスターキーボードがあるという場合は、サブキーボードとして25鍵モデルを購入し、セットで利用するというのもいいと思いますが、いかがでしょうか?

【関連情報】
AKAI ADVANCE KEYBOARDS製品情報

【価格チェック】
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Commentsこの記事についたコメント

11件のコメント
  • bonanza

    いつかどこかがやると
    思ってました、このアイデア。
    どれ位重いソフトが動くんでしょうか?
    さすがに大容量サンプリング音源はムリですよね。
    あと、画面が小さいので細かいエディットどうするのか。
    pcでエディットして、キーボード側に転送とか?
    でも、VST母艦➕フィジコンというだけでも面白い製品ですね。

    2015年5月13日 12:50 PM
  • Jimi♪

    ハッキリかかれてないんで誤解が生じてますね。
    PCレスでは動かないですよね。
    PC/Mac上でVIPというソフトを動かすことで、VSTiをADVANCE KEYBOARDS上で切り替えたりコントロールしたり出来ると・・・。
    気になるのはライブとかで使う際に、VSTiを切り替える際にかかる時間とか、VSTiにVSTエフェクトを掛けて使えるのか?とかその辺ですね。同一VSTi内でプリセットを切り替えるのは、VSTiごとの音色切り替え時間に依存するんでしょうけど、異なるVSTiに切り替える際に、新たにVSTiをロードするとなると曲中の音色切り替えとかは無理そうなので、そのへんが気になるところ
    あとライブとかで使う時のためにUSBオーディオIN/OUT欲しかった。(INは要らないんだけど)
    機材が一個増えるだけでセッティングがメッチャ大変になるんですよねー。
    あと、VIPにはアルペジエーター機能とかコードパッド機能とかはあるのかな

    2015年5月13日 5:17 PM
  • SUSTAIN

    些細なことですがサステインではありませんか?

    2015年5月13日 8:57 PM
  • 藤本健

    bonanzaさん
    VIP自体は軽いソフトなので、ほとんど負荷は気にならないと思います。
    DAW上で問題なく動く音源なら、同じように動くと考えていいはずですよ。
    超重たいサンプリング音源でも、普通にうごくはずです。そのPCで動いているならですが。

    2015年5月14日 7:56 AM
  • 藤本健

    Jimiさん
    PCレスで動かす場合は単なるMIDI鍵盤になります。
    おっしゃるとおり、課題はライブなどでの使用時の音色切り替えです。
    重たいサンプリング音だと、確かに音が途切れます。
    レイヤーをどのくらい使うかにもよるのですが、
    マルチモードだと8レイヤーまで組めるので、使用する音源1つでいいのであれば、このレイヤー(VIPではスロットと呼んでます)に1曲中で用いる音色すべてを入れておいて、パッドを使ってバンク切り替えのようにミュートを掛けたり解除することで、途切れない音色切り替えが可能になります。
    コードパッド機能はなかったように思いますが、記事にも書いた通りアルペジエーターは搭載しています。

    2015年5月14日 8:00 AM
  • 通りすがり

    高性能vstラッパーのハード+ソフトウェア、といった位置付けでしょうか、発売が待ち遠しいですね。質問なのですが、VIP内でvstエフェクトは扱えるのでしょうか。もし扱えるのでしたらライブ中にvstインストゥルメントにエフェクトをかけて演奏したいなー、等と考えています。

    2015年5月14日 5:19 PM
  • クバセ

    ハードシンセを扱う感覚で作業できるのはとてもありがたいです、AKAI製品はユーザー視点で企画開発されているなといつも感心しています。

    2015年5月14日 9:04 PM
  • 藤本健

    通りすがりさん
    いま確認してみたところ、やはりVIP自体にはVSTエフェクトを組み込む機能はないようです。やるとしたら、軽めのDAWを起動し、その中にVIPを設定したうえで、VIPを組み込んだトラックにエフェクトを掛けるという流れになりそうですね。

    2015年5月15日 6:39 PM
  • supersense

    8インチくらいの小型タブレットPCなんかと組み合わせると持ち運びしやすそうですね。
    しかし、いっそのことキーボードの側に Atom CPU を搭載して、VSTi をそのまま読み込んで
    ハードキーボードとして演奏できる奴ぁ出ないのか? というのが私の思うところでして・・・

    2015年5月16日 7:35 PM
  • ロマン親父

    「PCレスでVSTiが動かせる」という誤解がこのコンセプトだと起こりやすいんですかね…
    その実現の為にはキーボード側にwinやmacと互換性のあるOSが動く基盤一式を組み込まなければならないわけですよね
    独自のプラットホームを作り、その上で動くVSTを各々に開発して貰う(たとえばローランドsystem-1のプラグアウトをMIDI規格並の国際基準にしてソフトシンセに取って代わるほどの開発環境を提供してもらうとか)…というわけではなくパソコン用に作られた今のVSTiを小型鍵盤の上でエミュレートできるのかもと誤解するわけですか
    詳しく読んでませんが、もしかしたらAKAIの書き方が相当悪いのかもしれないですね(笑)

    2015年6月10日 8:19 AM
  • 小太郎

    数年前に同じようなコンセプトでVSTiを読み込んでスタンドアロン化できる製品があったと思いますが、動作が不安定だったのでしょうか、あまりはやらなかったですね。
    VIPは当然64bitのVSTiしか対応してないんでしょうね。
    昔の32bitのVSTiをjBridgeをかませて鳴らすことができるといいなぁ…

    2015年8月13日 8:06 PM

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