先日の記事「オーディオインターフェイスを大規模コンソール化する画期的技術がapolloに誕生」において、DTM革命だ!として紹介したUNIVERSAL AUDIOのapolloの新バージョン、UAD v8.0がリリースされました。DTMステーションでも何度か取り上げてきたapolloはThunderbolt対応のオーディオインターフェイスではありますが、普通のオーディオインターフェイスとは一線を画す別次元の製品。プロのミュージシャンのプライベートスタジオや、プロのレコーディング現場においても急速に普及していっている新世代機材の代表といっても過言ではありません。
今回のシステムソフトウェのバージョンアップでは、最大4台までのapolloを1つのMacに接続することが可能となり、それらを1台の巨大チャンネルのオーディオインターフェイスとして扱うことができるようになります。というよりも、システム全体が大型ミキシングコンソールのように返信すると同時に、各apolloに搭載されているDSPパワーを結集することも可能になるのです。とはいえ、あまりにも強力なシステムすぎて、なかなか全体像が想像できないのも事実。ちょうど、このUAD v8.0のリリースに合わせ、米UNIVERSAL AUDIOからインターナショナル・セールスマネジャーであるユウイチロウ“ICHI”ナガイさんが来日されていたの、少し話を伺ってみました。
apolloの最新技術について、UNIVERSAL AUDIOのユウイチロウ“ICHI”ナガイさんに伺ってみた
--今回発表されたUAD v8.0、いろいろなところで話題になっていますが、改めてどんなものなのかを教えてください。
ICHI:apolloは3年前にスタートしたシリーズ製品ですが、昨年リリースしたapollo twinはコンパクトで10万円を切ったこともあり、DTMユーザーを中心に世界的なヒット製品になっています。apolloは単なる機材ではなく、世界中で使われるプロ用のスタジオそのものなんです。そして今回出したVersion 8は、これまでのapolloシリーズを最大4台まで、そしてUAD-2を2台まで接続でき、これによってとんでもないデバイスを作ることができるのです。
apollo、apollo twinなどapolloシリーズを最大4台、さらにUAD-2も2台まで接続できるようになった
--apolloシリーズは、オーディオインターフェイスでありながら、DSPコアを搭載したUAD-2のシステムなんですよね。
ICHI:その通りです。UAD-2は世界中のスタジオで使われている、数々のアナログの機材を、そっくりそのままの音で再現するプラグインを動かすことができるシステムです。NeveやStuder、SSLなどのコンソールの音を再現するもの、MANLEY、AMPEX、Lexiconなどのエフェクトを再現するものなど、どれも各オリジナルメーカーの協力を得ながら再現した、いわばホンモノなのです。すべてUAD-2に搭載されているDSPだけで処理するため、PC側のCPU負荷が掛からないのもメリットであり、DSPの数が多いほど、より多くのプラグインが動く設計となっています。従来、1つのライセンスがあれば、最大でUAD-2を4つまで束ねて使うことができましたが、今回のVersion 8では6つまで利用できるようになっているのも大きなポイントです。
世界中のレコーディング現場で使われているアナログ機材の音そのものをUAD-2で実現できる
--今回のバージョンアップに合わせて、新たなプラグインも登場していますよね。
ICHI:そうですね。従来のUAD-2のプラグインとは少し違うものを、いろいろと投入しました。一つはピッチ補正の代名詞ともいえる、あのAuto-Tuneをリアルタイムに使うことを可能にしたプラグイン、Auto-Tune Liveです(※リリースタイミングが遅れており、2015年3月末現在、まだ出ていません)。DSP処理しているので、実質的に1.1msecというローレイテンシーで使えるのが大きなポイントであり、かつ価格的にもUAオンラインストアで$249と手ごろになっています。またピエゾ搭載のアコースティックギターのサウンドをスタジオでマイクレコーディングしたサウンドに変換してしまうSound Machine Wood Worksは、ぜひ多くの人に体験していただきたいです。これはギターのレコーディングの革命ですよ。そして真空管アンプをシミュレーションするFriedman Amplifierプラグインコレクションも秀逸です。さらにUNISONテクノロジーで実現するディストーションもすごいですよ。
ピエゾピックアップの音をマイクレコーディングの音に摩り替えることができるSound Machine Wood Worksプラグイン
--ピエゾピックアップの音が、本当にマイクレコーディングの音に変身するとしたら、それはすごいですね。どこまでの音なのか、ぜひ今度試してみたいです。さらにディストーションですか…。この辺も奥が深そうですよね……。
ICHI:多くのミュージシャンに「時代を変えたディストーションって何だと思う?」という質問を投げかけると、多くの人からは同じ製品名が上がってきます。具体的には、TUBE SCREAMER、Pro Co Rat、Big Muff Piの3つに集約されます。そこでこれら3種類のディストーションをまとめて再現したのがUA Distortion Essentialsプラグインバンドルなのです。これらだけのためにapollo twinを買っても損はないというほどのものですよ。
UNISONテクノロジーで実現させるTUBE SCREAMER
--このディストーションのプラグインは普通のUAD-2のプラグインではなく、UNISONテクノロジーである…という話が、どうもしっくり来ないところなのです。そもそもUNISONテクノロジーって、Neve 1073など、マイクプリをエミュレーションするプラグインでしたよね……?
ICHI:UNISONテクノロジーは、マイクプリ専用のシステムだと打ち出していましたが、もう少し正確にいうと、アナログの回路特性そのものを再現するものなんですよ。
UNISONテクノロジーではアナログ入力の電気的特性自体をホンモノとそっくりに変えることができる!
--??? これまでのUAD-2のプラグインだって、アナログ回路をエミュレーションしているんですよね?
ICHI:UAD-2のプラグインはDSPパワーによって、デジタル的にアナログ回路をエミュレーションしていますが、UNISONテクノロジーでは、アナログ回路特性自体が変わるのです。もっといえば、入力インピーダンス自体が違ってくるのです。ウルトラ・ハイ・インピーダンスにも対応したシステムとなっているのですが、この入力部のインピーダンスを測定すると、実機と同じインピーダンスになるんです。機材によってこのインピーダンスは異なり、それによってマイクやギターの動きも変わってくるため、単にデジタル処理だけでは実機のようなニュアンスを出せません。そうしたところまでサポートしているのです。
UNISONテクノロジーでは外部から見たアナログ特性も含めマイクプリやストンプエフェクトを再現する
--なるほど、はじめてUNISONテクノロジーを理解できたような気がします。本当にアナログ回路自体が変わってきているということなんですね。これはPCのCPUパワーだけで動作するプラグインでは絶対に再現できませんね。
ICHI:そこがUNIVERSAL AUDIOの大きなアドバンテージなのです。当社は単にデジタル機器、ソフトウェアを提供しているというのではなく、ベースには長年培ってきたアナログの技術があり、現在でも多くのアナログ機材を作っているメーカーだからこそ、できることなのです。
UNIVERSAL AUDIOの技術について力説するICHIさん
--そういう意味でも、apolloは単なるオーディオインターフェイスとは一線を画すところなんですね。
ICHI:そして今回のバージョンアップの目玉は、UNIVERSAL AUDIOの歴史の中で、もっとも難しいチャレンジであったConsole 2,0です。従来のコンソールから、大きく進化させたもので、複数のapolloを1台の機器に見えるようにすると同時に、ユーザーインターフェイスも大きく進化されており、完全に業務用のコンソールと同様のものにしているのです。これは以前からずっとやりたかったことなのですが、これを実現するにはThunderboltが必須であったため、1年の開発期間を経てようやく可能になったのです。
複数台接続したapolloを1つのコンソールとしてみなすことができる
--apolloが業務用コンソールに変身するという意味だったんですね。apollo twinが1つで2IN/6OUTのアナログ入出力があったと思いますが、これを2台接続すれば4IN/12OUTになるということですか?
ICHI:apollo twinの場合、アナログで2IN/6OUTあるほかS/PDIFやADATなどのデジタルチャンネルもあるので、最大で10IN/6OUTのコンソールです。ただ、Thunderbolt特性上、デイジーチェーンでの接続となるため、apollo twin同士を接続することはできません。apollo twinにはThunderbolt端子が1つしかないからです。Console 2.0で拡張するためには、Thunderbolt端子が2つあるapolloやapollo 16が必須となり、apollo twinの接続はその最終段になるわけですね。
Thunderboltはデージーチェーン接続となるためapolloやapollo 16が必要となる
--apolloやapollo 16となると、価格的には20万円台、30万円台となっているので、DTMユーザーには、ちょっと縁遠くはなりますが…。
ICHI:DTMユースの場合、そこまでのチャンネル数は必要とすることはないので、apollo twinで使ってもらい、大規模の業務用として使う場合、apolloやapollo 16との接続にするという形でいいのではないでしょうか?Console 2.0ではグラフィックエンジンも大きく変更しており、Retina Displayに対応させており、リサイズも自由自在になっているんですよ。
Console 2.0では膨大なチャンネルを自由自在にコントロールできる
--なるほど、DTMユースであっても、業務用であっても、同じくクオリティーが、apolloで実現できるというわけなんですね。あとはWindows対応を期待したいところです。
ICHI:現状、まだWindowsベースのマシンでのThunderbolt搭載マシンがまだ標準になっていないのと、MicrosoftがThunderbot用のドライバを標準搭載していないので、これを待っているという状況です。現在はFireWireマシンでのみapolloが使える状態ですが、多くのユーザーからも要望されているところなので、ぜひ早く実現させてたいですね。
--期待しています。今日はありがとうございました。
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