すでに完全にバレバレなティーザー広告が出ていたので、周知の事実のようになっていたヤマハとクリプトン・フューチャー・メディアの初のコラボ製品、AG03-MIKUが本日3月9日の「ミクの日」に正式にアナウンスされました。これはすでに1月末にヤマハから発表されていたミキシングコンソール、AG03の初音ミクモデルであり、Cubase AIのほか、VOCALOID Editor for Cubaseの39日間の体験版や初音ミクのOriginalとDarkの39日間体験版、さらにSonicWireのサンプル素材を100個程度バンドルしたという特別版なのです。
当然、標準版のAG03より高いんだろうな…と思っていたら、価格はまったく同じで、実売価格が15,000円程度(税抜)とのこと。しかもよく調べてみると、この価格からは信じられないほどの高機能、高性能のミキサーなんです。「初音ミクのモデルだから欲しい」という人はもちろん、「それはちょっと……」という方にも標準モデルが用意されているので、こちらを選ぶのも手。さらに初音ミクモデルはないものの、より高機能な上位版のミキシングコンソール、AG06という実売18,000円程度のモデルもあるのです。DTMユーザーなら、1つ持っていて絶対に損はないと思える製品なので、これが一体どんなものなのか、主に機能の面から紹介してみたいと思います。
ヤマハとクリプトン・フューチャー・メディアの初のコラボ製品?AG03の初音ミクモデル
AG03、AG06はヤマハが5月に発売を予定しているコンパクトサイズのミキシングコンソールです。この見た目から「あぁ、よくある小型のミキサーね」なんて思ったら大間違い。“羊の皮を被った狼”というのでしょうか……、ものすごい機能を装備しているんです。
カタログを見ても、その凄さがピンと来ないかもしれないので、まずスペックから私が勝手に解釈して、特徴をピックアップしてみたので、ご覧ください。
- AG03は計7ch、AG06は計10chのミキシングコンソール
- AG03はマイク、ギター、ラインなどアナログ3ch、AG06はアナログ6chの入力を装備
- 上記とは別にステレオのAUX INを装備
- USB接続の24bit/192kHz対応のオーディオインターフェイスである
- ループバックが可能で、ネット配信等への利用が簡単
- DSP処理のEQ、コンプ、リバーブを搭載
- AG06はギターアンプシミュレータを搭載
- USBクラスコンプライアントなのでiPadとの接続もOK(おそらくiPhoneでも使えるはず)
- USBのACアダプタへの接続でスタンドアロン動作可能
といった感じです。
AG03の初音ミクモデルと通常モデルは色違いなだけで、本体の機能自体はまったく同じ
※初音ミクOriginalとDark、VOCALOID4 Editor for Cubaseの体験版、SonicWireのサンプル素材が付属するのはミク版のみ
「難しそうでよくわからない…」という方に簡単に説明すると、まずこれは小さなミキサーではあるのですが、PCと連携ができる機材であるのが大きいポイントです。ミキサーに入力した音を、そのまま高品位にレコーディングできるし、PCで再生した音を高音質でミキサーへ入力することができるのがミソです。
リアパネルにUSB端子があり、これをPCやiPadへ接続できる
たとえば単純な話、iTunesを使ってカラオケを再生し、AG03に接続したマイクで歌えば簡単にカラオケシステムができてしまいます。しかも、このマイクに対してリバーブをかけられるほか、EQ=イコライザやコンプレッサも搭載されているので、かなり作りこんだ音で思う存分歌うことができます。
しかも、このミックスした音は、ヘッドホンや接続したスピーカーから鳴らせるだけでなく、そのままPCへと流すことができるんです。そのため、そのカラオケサウンドをレコーディングすることはもちろんのこと、ニコニコ生放送やUSTREAMといったものへ接続すれば、そのまま自分の歌を生放送できてしまうわけですね。もちろん、iTunesでカラオケを鳴らす代わりにゲームの音をミキサーに送ればゲーム実況などに使うこともできるし、楽器を接続すれば、「演奏してみた」などを生放送で行っていくこともできますね。もちろん、生放送に限らず、YouTubeやニコニコ動画用のレコーディングなどにも最適ですよ。
ボタンを押すだけで簡単にEQやコンプ、リバーブなどがONになる
「EQやコンプ、リバーブの使い方が難しそうで……」という人も大丈夫。よさそうな設定がプリセットで用意されているので、基本的には単純にボタンを押すだけで使えるようになっているのです。そうCOMP/EQボタンを押せば、「締まった感じの音」にすることができ、EFFECTボタンを押せば、リバーブがかかるようになっているから、ホントに簡単ですよ。
AG06はアナログ入力が計6chあるほか、AMP SIMボタンも搭載されている
AG06のほうには、これとは別にAMP SIMというボタンがあり、ギターを接続しているときに、これをオンにすると、いい感じに歪むクランチサウンドにすることができるんですよ。これで鳴らした音を「掛け録り」の形でPCへと持っていくことができるのです。
でも「簡単に操作できるのはいいけれど、やっぱり自分でパラメータは設定したいよ」という方も多いと思います。そんなことは可能なのでしょうか?ヤマハでAG03、AG06の設計を行った白井瑞之さんにお伺いしてみました。
AG03、AG06を開発したヤマハ PA開発統括部アナログミキサーグループの白井瑞之さん
「心配はいりませんよ!実は内部パラメータはPCからコントロール可能となっており、そのためのユーティリティソフトであるAG DSP CONTROLLERも用意しています(画面は開発中のもの)。またEQ、コンプ、リバーブを含め、一度設定したら本体側が覚えてくれるので、PCと切り離してスタンドアロンで使った際にも有効になります」とのこと。これはますます便利ですよね。
PCからAG03、AG06のエフェクトのパラメータを細かくコントロールすることができる(画面は開発中のもの)
「さらにこのソフトを使うことで、本体だけではできない隠れた機能を引き出すこともできるんです。AG06に搭載されているギターアンプシミュレータは実はAG03にも搭載されており、これを使えるようになるのです。画面下に見えるのが、そのアンプシミュレータです。これはSteinbergのUR44などに搭載されているアンプシミュレーター“Guitar Amp Classics”の中の1つ、”LEAD”というアルゴリズムをベースにチューニングし直したライト版になります」と白井さんは明かしてくれました。
市販のアダプタを利用することで、iPhone用のマイク付イヤフォンを有効活用できる
ちなみにマイク入力にはヤマハ自慢のマイクプリ、D-PREが装備されており、ファンタム電源も使えるのでコンデンサマイクを使っての高音質レコーディングも可能です。一方で、もっと気軽に生放送などができるように、ヘッドセット用のマイク入力の端子も用意されています。これとヘッドホンをまとめる市販のアダプタを利用すれば、iPhoneなどのヘッドホン・マイクを使うなんてワザもありますよ!
さて、このAG03やAG06をオーディオインターフェイスとして見ると、どんなものになっているのでしょうか?これはどちらも24bit/192kHzの2IN/2OUTという仕様であるため、マイクプリアンプの数からみれば、AG03はSteinbergのUR12相当、AG06はUR22相当といってもいいと思います。またヘッドアンプを通った後にすぐにA/Dされるのため非常に高品位な音でレコーディングすることが可能なのです。
AG03の初音ミクモデルのパッケージ。※写真は発売前の試作なため色やデザインが変更になる可能性があります。
もちろんエフェクトを通った後の音をレコーディングすることも可能ではありますが、このDSP自体が48kHzサンプリングレートでの動作するので、96kHzや192kHzでのレコーディングの場合の精度は落ちてしまうようです。が、まあ、それは仕方ないところですね。
AG03 初音ミクモデルのボトム面には秘密のデザインが施されている!?
ちなみにAUX INにはボリュームなどは搭載されていません。白井さんによると、これはiPhoneなどと直結することを想定した端子だとのことで、シンプルな構成なんですね。もちろんiPhoneに限らず、シンセなどの楽器に接続することも可能なので、シンセ側での出力レベル調整とはなりますが、かなり便利に活用できそうですよね。
AG03のブロックダイアグラム。上記をクリックすると詳細なPDFが表示されます
なお、AG03およびAG06のブロックダイアグラムをいただくことができたので、ここに掲載しておきます。これを見れば、細かい信号の流れまで分かるので、見るときっと欲しくなってしまうと思いますよ!
AG06のブロックダイアグラム。上記をクリックすると詳細なPDFが表示されます
なお、この初音ミクモデルの発表に合わせ、詳しい製品案内をするニコニコ生放送が、3月9日20:00~行われるそうです。ここではや前出の白井さんとクリプトンの初音ミクの産みの親、佐々木渉さんが登場とのこと。さらに3月31日19:00~東京渋谷で「WEBCASTING LIVE 2015」と題したイベントも行われます。これは八王子Pさん、ゆよゆっぺさんなどが登場しライブやDJ、さらにはゲーム実況などが行われるのだとか……。現在、その観覧希望者を募集しているほか、当日はニコニコ生中継も行われます。詳しくはjp.yamaha.com/mikuをご覧ください。
【関連情報】
ウェブキャスティングミキサー情報ページ
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